↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デビル・ミュータント  作者: 竹林十五朗
28/194

    戦いは終わる④

 喜べ。死んだと思っておった友が生きておったのであるから。

(殺す気満々で攻撃してきてたけど?)

 その件に関しては先に此方(こちら)が一発腹にキメた故、おあいこだ。

【……ちとそのまま待機しといてくれ】

 思案後、そう言ってブルースは他の三人と連絡を取り合っておる。釈然とせん訳ではないが、旧友の誼(よしみ)として大人しくしておくか。珍しく、士も不平を言わん。

(なぁ、あれって無線みたいなモン?)

(ああ、奴の耳にイヤリングが付いておろう? 有効範囲内であれば、あれで離れた仲間との脳内会話が成立する。それも複数人の間で)

 奴がお洒落であの様な物を身に着ける筈がないからな。

(テレパシーの応用か)

(そうだ。以前と比べて察しが良くなってきたな。もう理解しておる様であるから説明はせんぞ)

(いや、一応頼む)

(あー、今は時間がないからまたその内な)

 周りが無音になってから数分後、戦線を離脱しておった三人が集合したのだ。

(応援の要請だったのか?!)

 否、奴等に攻撃の意思は感じられん。その証拠に四人で会議を始めた。

(そもそも、己の部下に救援を求める様な奴ではないわい)

 仮に、ピンチに陥ってもせぬであろう。

(なんでワザワザ集まったんだ?)

(電話で長々と会話する位であれば、直(じか)に会って話した方が早いからな)

 アレを用いればタイムラグは発生せぬし、以心伝心を実現できる。だが、心の中での通話とは意外に負担となるモノだ。教えとうない事まで聞かれてしまう。更にそれを隠そうとすればする程、ドツボに嵌(はま)る。

(なぁ、今なら逃げるなり後ろから襲撃なりできんじゃね?)

(いや、あの四人を同時に相手するのは流石にキツい。大体、その様な卑劣極まる行為をする気もない。それに見ろ)

(ん?)

 四人が四人とも我等に背を向けておる。だがブルースの尻尾、蛇頭が此方(こちら)を見張っておる為、逃亡も奇襲も不可。それを確認すると、士も仕方なく不埒(ふらち)な真似(まね)を諦めた。

「えぇ~っ!? そりゃ無いっすよぉっ?!」

 突如、大声で不満を主張したのは緑髪の射手。服装が変わっておるな。黒くない。

「確かに。今さらその様なことをおっしゃられても納得できかねます」

 剣士も、何やら得心がいかぬ様子。

「でもボクらコイツに負けてるんだから何も言う資格ないよね」

「「ん~っ、言われてみればその通りだ」」

(説得されんの早っ!)

 暗殺者に核心を突かれ、二人はそれ以上文句を口にする事はなかった。

「はぁ、しゃーねぇ、帰るとしますか」

「明日も早いしね。一時間目は体育だし」

「チッ。あークソ、また手ぇ抜かなきゃなんねぇのか」

「そ、それでは、お先に失礼します」

 王の御前(おんまえ)とは思えぬ態度を取る、不逞(ふてい)な暗殺者と射手。その二人に成り代わり、剣士は焦燥混じりに恭(うやうや)しく一礼。己の非礼を自覚した二人も、それに続いてブルースに頭を下げ、礼儀正しく挨拶をした。

「うむ、気をつけて寄り道せずに帰るのだぞ」

 奴はそれに対し、特に咎(とが)めもせず優しく送り出した。

「「「はーい」」」

 元気良く返事をし、帰路に就(つ)く三人。宛(さなが)ら小学生と教師の様な間柄である。

(え?! 帰んの!?)

 あまりにも展開が早過ぎて、士は付いていくのがやっとである。

「ったくよぉ~。やってらんねーってぇの。あ~っ、メッチャ消化不良だわぁ~」

 決着が付かずに解散と相成ったからか、射手は不満タラタラである。

「それよりも来週から中間テストが始まるワケだが、オマエたち大丈夫なのか?」

「っあぁっ!! やっべ! なんもやってねぇっ!!」

「はぁ~、せっかく忘れてたのになんで思い出させるかなぁ~?」

「忘れてどうするんだアホどもめ。……オレも他人のことを言えないか」

 奴等の間で交わされる他愛のない、何処(どこ)にでもある遣り取りが段々と遠ざかって往く。それを見送ったブルースは、怪物から人間の姿へと戻った。

【オイオイ! せっかく出てきたのにそりゃねーぜ!?】

【そうですよ! これでは甲斐が無いではありませんか!】

 途中で雄牛と牡羊が騒いだが、奴はそれを無視。抗議の声は、口が肩に埋没する間際まで聞こえた。ふぅ、これでやっと静かになったわ。

「あ~、戦闘は老体には堪えるわい」

 ブルースは爺(じじ)むさい事をボヤきながら、腰をトントンと叩く。戦闘狂と雖(いえど)も寄る年波には勝てんか。その割には、意気揚々といった風であったが。

 む? 奴が虚空から何かを取り出したぞ。

「オマエさんも着ろ」

 そう言って、奴が投げて寄越したのは着衣一式であった。靴もある。

 ブルースは特注のソレを手早く着ていく。我も奴に倣(なら)って悪魔化を解き、いそいそと着込んだ。

 実に有難いのだが、一点、気掛かりな事がある。これ、新品か?

「そう怪訝な顔をするな。安心せい。買ったばかりの物だ」

((良かったぁ~))

 その一言で我等は安堵し、服を着る速度をアップさせた。

(すげぇモヤモヤとか、やり切れなさとか残ってるけど、積もる話もあるみたいだから俺寝るわ。終わったらまっすぐ帰れよ)

 空気を読んだらしい士が、自ら眠りに入った。

(うむ、気を遣わせて悪いな)

(スゥ……)

 もう寝たか。まあ、肉体はまだしも、精神的な疲労は溜まっておったであろうしな。ゆっくり休むが良い。明日も授業、

 服を着終えた我々は、改めて対峙した。ただし、今はお互いに敵意はない。

「まぁ座れや」

 ブルースが勧めたのは切り株。奴はというと、己で組み上げた丸太の山にドカッと腰を下ろした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。