第1話:転校生!?の巻
*本作は「島耕作」シリーズとは関係有りません。
島は激怒した。
母親に「転校先の高校は都会にあるよ」と言われ、父親に「トップレベルの人気校だぞ」と言われた。
都会?いや、一面田んぼだ。
人気校?ここ10年は定員割れって聞いたけど。
とにかく、島怪作は騙されたのだ。
「え〜…新しく…本校…怒田舎高校にぃ…転入してきた…」
じらったらしい副校長の話が始まった。島はあくびを一つした。
「…では…すこし長くなりましたが…話を…終わらせて頂きます…ウッフォン!」
島は顔を上げた。体育館の窓からは青い空が見える。
副校長がステージから降りた時、島の近くに13HRの担任が寄ってきた。顔に『頑固』という感じが出ている。
「おい、島…」
担任は言うのだ。
「私が担任の福田だ。よろしくな」
島は教室に入った。
その途端、教室は静まり返り、皆が島を見た。白い目で。
……なんて最近のいじめドラマみたいな事は無い。
「おー!島ちゃーん!」
短髪の男が近寄ってきて、大声で言った。
「よろしくなぁ。俺は夏目ソウタっていって、このクラスの学級委員だから」
「おー、よろしく。俺は島怪作」
「漫画に出て来そうな名前だね」
「まぁな。作者のユーモアの一つだから仕方がねぇ」
すると、唐突にソウタは、何か思い出したように声をあげた。
「やっべぇ〜!今から学級委員長会だ。ゴメンな。じゃ、また…」
「おう!じゃ…」
ソウタは走って教室から出て行った。
[キンコンカンコーン…掃除の時間です、掃除の時間です、掃除の…]
突然の放送に島は驚いたが、みんなが掃除の準備に移り始めたので、島もその後に続いた。
しかし、奇妙な放送だ。ずっと「掃除の時間です」と繰り返している。
島は近くにいたクラスメートに話しかけた。
「これが掃除の放送か…?」
「うん、そうだよ。授業が始まる時は「授業開始時間です、授業開始時間です」…って繰り返すんだ。それで、授業終了の時は…」
「分かった。大体予想がつく」
島は掃除へ向かった。
(携帯のベルみたいな放送だな……)
掃除が始まった。
島は「ゴミ捨て」の担当になった。
「それじゃ、島くん、教室のゴミ、捨ててね」
黒板みたいに四角い顔の女子が、島に言った。島はゴミ捨てよりも、その女子の顔がたまらなくおかしかった。
(ゴミ捨てかぁ……)
島はゴミ箱を見たが、まだ何も入っていない。ついでに辺りを見回すと、汚い箱があった。そして、その中には綺麗な石が入っていた。
「石か……ゴミだな。ごみごみ」
窓から石をぽいっと外へ放り出し、捨ててしまった。その時
「あっ、島くん。その箱さわらないでね。副校長先生が、ダイヤモンドを天日干しにしてるらしいから…」
「うえっ!?」
島は窓から身を乗り出して下を見た。地面がきらきら光っている気がする。
(…………。)
島は辺りを見回して、誰も見ていないことを確認し、教室の隅に溜まっていた砂を、箱の中に入れた。
「あの副校長だ。どうせ気づかんだろ」
箱を元の位置に戻した時、チャイムが鳴った。
[キンコンカンコーン…掃除終了時間です…掃除終了時間です…掃除…]
……やっぱり…。
掃除が終わり、朝礼が終わってまだ1時間も経っていないうちに、帰りの会=SHRが始まった。
島は再び空を眺めた。どこまでも青い。そして広い。
しかし、一点は黒い。
「あ…ラジコンヘリだ…」
その一点はラジコンヘリであった。しかし、おかしい。近づいてくるたびに、何だか大きくなってくる。
「え…え……!?えっ!?」
ヘリは13HRの直前で止まり、旋風を巻き起こした。
グオオオオオオオ!
ヘリから、一人の男が出て来た。
サングラスをつけ、学生服は青っぽく、品のある顔のイケメンである。
「おい!貴様は日本を敵襲しに来た北朝鮮か!」
「すみませんね。僕もこのクラスの、万俵祐太です。今日は神戸にいたもんですから、ヘリで来ました」
「神戸から静岡まで、ヘリで通学するなっ!」
「これから気を付けますよ、島先輩」
「まったく……!?今、島センパイって言ったか?」
「えぇ。年齢的に、先輩たちより一つ下です。中学校じゃ物足りなくてね…」
(日本はいつから飛び級制度を作ったんだ……!?)
しかし、島はそんなことよりも、ヘリに興味がいった。
「おい!そのヘリは何ていうんだ?」
「これはタイガーヘリです。ロシアの軍隊から買ったんですけど…」
「俺にも乗らせてくれ!」
島は祐太の返事を聞かないまま、ヘリに乗り込んだ。
「う〜ん…!この操縦室の重厚感。たまらない!」
「先輩、やめてくださいよ!自転車の免許しか持ってないでしょ!」
「大丈夫だ!ここをこうすれば、上がるんだろ…」
島は操縦桿をぐいと前に倒した。
「あー!それをやると…!!」
ヘリは傾き、13HRに突っ込んだ。
グワグワグワーン!
「学校に…突っ込んじゃい…ますよ…」
祐太が言った。
「こらー!貴様ら何をやっとるー!!」
担任の福田が言った。
「あいてて…転校早々、こんな目に遭うなんて…先が思いやられる…」
島が言った。
〈つづく…〉
『高校生・島怪作』は
毎週土曜更新です!
次回「文豪漫画家!?の巻」をお楽しみに!