6、姉と友人の怪しい関係 ~隼人side~
同じ頃、優也と隼人が通う小学校では隼人による質問攻めを優也は受けていた。
給食の時間は終わり、今は昼休み。普段は外でサッカーをやっているけど今日は朝のことが気になって優也を問いただしたくなった。二人で屋上の前の階段に座る。
姉ちゃんと優也の朝のやり取りは明らかにおかしい。被ってた帽子を姉ちゃんに貸すのも意味不明。絶対この二人は昨日の夜何かあったとしか思えない。優也が姉ちゃんを好きだって言うのは毎日見ているからわかる。クラスの女子とかとは全然態度が違うし。あんまり笑わない優也が姉ちゃんの前だとよく笑う。
姉ちゃんに言っても応えてくれないだろうから、優也に聞くしかない。
隼人はそんなことを思いながら優也へ質問した。
「優也さぁもしかして姉ちゃんと昨日何かあった?」
何て聞いたらいいかわからず直球で聞いた。
だけど優也は慌てることなくいつものように冷静に答えた。
「何で?」
「だって昨日優也が帰った後にすぐ姉ちゃんもでかけたし。コンビニ行くってのはうそっぽかったから、てっきり優也と何かあったのかなと」
「愛美に聞けば? コンビニ行くって言ったんだろう?」
「朝聞いたけど、何もないって言われた」
でも姉ちゃんは明らかに動揺してたけどね。すごい怪しい。
「愛美がそう言うならそうだよ」
何かうまく言いくるめられた気がするんだけど。
「じゃあさ、朝の姉ちゃんとのやり取りは? 普通あんなとこであんなことする?」
この質問には優也も少し考え込むような素振りを見せた。
けれどすぐにいつもの調子に戻る。
「あー、何となく? おれがそうしたいって思っただけだし」
「優也ってさ、姉ちゃんのこと好き?」
「……何で」
「だって金井(クラスの女子。優也を好き)とかと態度が全然違うし」
首をかしげながら考えるふりをする優也。
やっぱりおれの思った通りだった…と思ったんだけど。
「そうか? 隼人はさ、おれが愛美を好きだって言ったらどうする?」
「そりゃあもちろん反対はしないけど…本当に姉ちゃんでいいのかって思う」
弟からみれば姉ちゃんのどこがいいのかわからない。性格は凶暴なときもあるし、ぱしりに使うし。わざわざそんな人のどこがいいのかって思うけどね。
おれがそんなことを考えていると隣で笑い声が聞こえた。
「え? 今って笑うとこ?」
何がおかしいのか優也は笑い続ける。
「隼人は愛美が好きなんだなって思っただけ。真剣に考えちゃってるし」
「なっ!! べ、別に好きじゃねえよ。性格悪いし、ぱしりに使うし」
「はいはい。そーゆうことにしとくよ」
そう言って優也は立ち上がる。
そのまま階段を降りていき、一番下まで降りたところで振り向いた。
「隼人だから言うよ。おれ、愛美のこと好きだよ」
それだけ言った優也は今まで見たことないような顔で笑った。
やっぱり優也は姉ちゃんのことが好きだったんだ。
それを聞いて少し嬉しくなった。優也が自分のことを話してくれるのは滅多にないことだから、それだけでも嬉しかったんだ。
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教室へ向かいながら優也は隼人との会話を思い出していた。
そんなにおれってわかりやすいのかな?
愛美のがすごいわかりやすいと思うのに。姉弟だと気づかないもんなのか?
兄姉のいない自分にはわからないことだけど。
まあ隼人には悪いけど愛美とつき合うことになったのは、もう少し秘密だな。
愛美が小学生(おれ)とつき合うことを気にしなくなったら言ってもいいかな。
隼人は愛美も優也も大好きだから応援してあげたいと思ってるんです。
小学生の男子らしからぬ会話ですね(笑)