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4、年上彼女への魔よけってことだよ

カーテンの隙間から入る冬の日差しが眩しくて目を開ける。

枕元にある時計で時間を確認すると目覚ましをセットした時間よりも五分早く目覚めた。

部屋のカレンダーにも明日のところが赤丸で印がついている。

まだ昨日のことが夢のような気がしていて現実味がない。自分の好きな人が自分を好きだったなんて、今まで初めてではないけど、不思議と今までと違う気がする。こんなに不安になることもなかったし。それはやっぱり年齢を気にしている自分がいるんだなと思う。

どっちかっていうと長い時間一緒にいたい私は昼間の生活時間帯が違うだけでも不安になってしまうのだ。


「もう…こんな弱気じゃ優也に嫌われそうだよ」


窓を少し開けて冷たい風に当たる。

部屋の空気を入れ替えてから制服へと着替えた。彼氏ができたという新たな生活の始まりってことでいつもよりメイクにも時間をかけた。別に朝から会えるわけじゃないんだけどね。何となくそんな気分だった。


朝ごはんを食べていると隼人が降りてきた。自分の席について朝ごはんを食べ始めた隼人が何故だかじっとこっちを見ている。


「何? 私の顔に何かついてる?」

「いや。そうじゃないんだけど…姉ちゃんさ、もしかして昨日コンビニに行ったときに優也と何かあった?」

す、するどい。何で? どうして?

私は持っていた茶碗を危なく落とすところだったけど何とか平静を保ちながら隼人へ聞き返した。

「何で? 特に何もないけど」

心臓はバクバクしているけど声は震えてないしきっとバレないはず。

「そうなんだ。てっきり告白されたかと思ったのに」

「え? ななな何で!? どうして隼人がそんなこと思うのよ」

ヤバイ。めっちゃ動揺しまくった。

隼人はそんな私に気づいたかわからないけど、お母さんには聞こえないよう小声で淡々と言う。

「だって優也の好きな人って姉ちゃんだし。本人は言わないけど毎日うちに来るようになったのも姉ちゃんが高校入ってからだしさぁ。姉ちゃんのこと話すときは嬉しそうに聞いてるし。それに前に告白されたときに好きな人はいるけど小学校にはいないって言ってたし。何となく優也って姉ちゃんが好きなのかなって思ってたんだよね。でも違ったのか」

私の知らない小学校での優也を少し知った気がして嬉しくなった。

顔が赤くなるのを感じたけど、今はまだ隠しておくことにした。

「私じゃないでしょ。年が離れすぎてるし。隼人の気のせいだよ」

「そうかな? それに年齢とか別に関係ない気がするけど。おれなら好きな人が高校生だろうが大学生だろうが別に気にしないけどな」

今の小学生ってみんなこんな感じなの?

年齢を気にするのって私だけ? そんな錯覚をしてしまう。まさか隼人までそんな風に思ってるなんて知らなかった。そもそも隼人とこんな話すらしたことないし。

「まあいいや。でも優也はいい奴だから、本当にそうだったとしてもちゃんと考えてあげなよ」

そう言って食べ終わった隼人は部屋を出る。

「生意気。ってゆうか優也がいい奴だってことは私が一番良くわかってるし」

食べ終わった食器を流し台へ運び、隼人の後を追うようにして学校へ向かう。

私の通う高校は小学校よりも少しだけ遠い場所にあるから運よければ優也に会えるかもしれない。そんな淡い期待を抱いて自転車を飛ばす。


家を出て少し走ったところの小学校前で偶然にも優也と隼人を見かけた。他にも数人の女の子や男の子と歩いている。優也と隼人は小学校へ行く道が違うはずなのに、会えたことが嬉しい。

まさか優也も私が通るかもしれないって思って? なんて朝っぱらからうぬぼれてみたりする。

平常心を装いながら優也たちの横を通り過ぎる。


「愛美」

大好きな声に呼ばれ少し先に行ったところで自転車をとめ、振り返ると優也がこっちに走ってきていた。

今日もグレーのニット帽を被る優也は相変わらず小学生っぽくない格好でかっこいい。


「…おはよ。まさか朝から会えるなんて思わなかったよ」

自転車に乗ったままだから見下ろすような格好で優也を見ると何か考えているかのようにじっと全身を見る。

「愛美に会えるかもって思ってわざと隼人ん家のほうから来た」

照れたように言う優也が可愛くて抱きしめたくなる衝動を必死で抑えた。

この年齢で女心をがっちり掴むとは…おそろしい子だ。

「それよりさ、スカート短すぎ!」

「へ? そうかな?」

膝より少し上だから女子高生としては標準な長さだと思うんだけど。

「まあいいや。それよりさ、今日はバイト?」

「うん。今日は夕方からバイト」

「…ふーん。じゃあ、これ持ってて。明日返してくれればいいから」

そう言って腕を引っ張り、バランスを崩しそうになった私の頭にニット帽を被せた。

「じゃあね」

笑顔で立ち去る優也にドキドキしつつ私も学校へと向かう。

借りたニット帽がすごく暖かくてドキドキが治まることがなかった。



一部始終を見ていた同級生たちは二人のやりとりを不思議そうに見ていた。

隼人と一人の女の子を除いては。


年上彼女を持つ優也にも色々苦労はあるようで。

ニット帽はある意味魔よけです。

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