2、だから興味本位でつき合ってはダメです
こういう場合ってどうしたらいいの?
同級生に告られることは何度かあるけど、こんな年上の人に告られたのは初めてでどうしたらいいかわからない。
それよりも彩華さんは本気?
おれは彩華さんよりも一回り年下の小学生だし。彩華さんなら他にもっと大人で良い人いると思うんだけど。
年が離れすぎててよくわからない。
「ごめんね? こんなこと言われても困るよね」
何を言えばいいのかわからず、どうしたらいいのかもわからず無言で彩華さんを見ると、少し震えている。
それは泣いているのか、どうか判断できないけど、さっきの声も震えている気がした。
「……困るというか、おれは小学生だし、彩華さんがどうしたいのかよくわからないんだけど」
思ったことをそのまま言うと彩華さんは真っ赤な顔を驚いて上げた。
告られたところでどうしたいのかわからない。
「そう、だよね。優也くんから見たら私なんておばさんだもんね。今のは忘れてくれていいから。ごめんね」
焦ったように言いながら、そのまま立ち上がろうとする。
無意識でおれは彩華さんの腕を掴んでいた。
「そうじゃなくて。彩華さんがどうしたいのかわかるように言ってよ」
中途半端な格好で腕を掴まれた彩華さんは、目を大きく見開きびっくりしたような顔で座り直す。
「……私とつき合ってほしい」
今にも消えそうなくらい小さな声で言う彩華さんは少し可愛く見えた。
「つき合うっておれは小学生だよ?」
彼女のことが嫌いなわけじゃないけど、やっぱり年の差とかありすぎていいのかなと思う。
「それは、わかってるよ。でも私は優也くんが小学生とか関係なく好きになったんだから、優也くんじゃないとダメなの」
そう言う彩華さんは冗談とかじゃなくてすごく本気でおれを想ってくれてるんだということがわかった。
その想いには応えてあげたいと思う。
「そんなにおれのこと好きなんだ」
無意識のうちに声に出ていた言葉は、彩華さんへ衝撃を与えたらしくさっきよりも真っ赤になる。
やっぱり年上なのに可愛い気がする。
おれは彩華さんの手を握り、見よう見まねでキスをしてみた。
「いいよ。つき合っても」
正直、大人の女の人が言う「つき合う」ということがどういうことなのか興味があった。
たまにだけど酔っぱらった母さんが父さんとのことを話すときがあって、二人も年が離れているということを聞いた。つき合い始めたのは母さんが高校生のときで父さんは小学生だったらしい。その頃の母さんよりも彩華さんは年上だけど、小学生なんかとつき合いたいと思うくらいだから、そんなに好きになってもらえるなんて単純に嬉しいなと思う。
その日から母さんが仕事に行った日は必ず来るようになった。
家で宿題やったり、たまに遊びに行ったりもしていた。
夏休みも半分過ぎた頃、近くにあるプールへ遊びに行った。
学校の人たちはほとんどが学校にあるプールに行っていたから同級生に会うことはなかった。
彩華さんは久しぶりのプールだったらしくて、いつも以上にテンションが上がっていて見てるだけでホント可愛い。
おれは夏休み前に散々体育の授業で泳いでいるから、プールに来たところでそこまでテンション上がらないんだけどね。
だけど学校のプールと違い、ウォータースライダーとかジャンプ台とかあるから休日はけっこう混んでいた。
「優也くん、あれやろうよ」
彩華さんが指さしたのはおれも興味のあったウォータースライダー。
二人乗りもできる小さい方に並んだ。
幸い身長制限があったけど、クリアすることができた。
入口の階段のところにある二人乗り用のボートを持って登っていく。
一番上まで来たところで案内のお兄さんの指示に従って、おれが前で彩華さんが後ろに乗った。
勢いよく滑り下り、最後にプールの中へボートごとひっくり返って落ちた。
少し鼻に水が入って痛い……。
同じく落ちた彩華さんを見つけ、片手にボートを抱え、もう片方の手で彩華さんの手を握り、水の中から上がる。
「すっごいおもしろかったね」
そう言って満面の笑みの彩華さんは太陽に照らされてキラキラと輝いて見えた。それがすごく綺麗で上がる寸前に触れるだけのキスをする。
真っ赤になった彼女もすごく可愛い。
何度か滑ってるときに、偶然にも愛美の姿を見かけた。
同じ高校生くらいの男三人と愛美を入れた女三人で楽しそうに笑っていた。
その笑顔は今まで見たことがなくて……少しショックを受けた気がした。
それからは彩華さんといても愛美のことが頭から離れてくれない。
何でこんな風に思うのかわからない。
彩華さんのことは嫌いじゃないけど、一緒にいて楽しいのにどうしてこんな風に思うんだろう?
小学生男子が興味本位で誰かとつき合うとかあるかどうかはわかりませんが、優也はそーいう子なんです。