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かわいいコックさん企画部屋  作者: 霜水無


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2015年9月21日の活動報告より 敬老の日をお祝いし隊!

火の二月(九月)。

一昔前は十五日だったけど、今では第三月曜日となった祝日。


「敬老の日」でござる。


始まりは兵庫県のとある村の村長と助役が、お年寄りを大切にして昔から伝わる知恵をお借りしようと、一九四七年に「としよりの日」を提唱した事かららしい。

それが老人を敬愛し、長寿を祝う日として一九六六年に法律で制定され今に至る、と。


そんな「敬老の日」、実は日本ならではの行事だったり。

まぁ、外国からやってきた行事(母の日とか父の日とか)と違ってちゃんと祝日に制定されてるし。


それは兎も角。


コレは今までの行事の流れ的にお祝いするしかないよね。

って事で、またまた親衛隊と共に会報という形で情報拡散、お祝いの下準備に走りまーす!




私のおじいちゃん、おばあちゃんと言ったら勿論、日頃からお世話になっているオッジさんとマリタさんな訳で。


何が良いかなー。とオッジさんに隠れて頭を悩ませる事数日。


そうこうしている間に、気付けば調理部隊の面々も合同でオッジさんにプレゼント用意する事にしていたり。

私は全く誘ってもらえなかったから少し寂しんぼしてみたら、どうでもいい弟子もどき一括りと孫とじゃ比重が違うからしっかり用意してやれとディルナンさんにいなされてしまった。


そ、そんな事言われたら仕方ないじゃないか。気合を入れて用意するよ!


………折角人がやる気になったって言うのに、陰で調理部隊の面々に揃いも揃って単純だと笑われているのが妙に切ない。

あれ、何だか目から汗が止まらないかもしれない。




時間を作っては雑貨屋さんと乾物屋さんに走り、農作部隊にお邪魔し、休みの日にはヴィンセント隊長のお宅の台所をちょっくらお借りし。


時々ストーカーな気配を感じつつも(まぁ、色々と協力してもらった恩があるので黙認し)着々と準備を進め、いよいよやって来ました、「敬老の日」。




調理部隊の面々は朝一でオッジさんがコック服の下に愛用している綿のシャツの詰め合わせを渡していた。

思いがけないプレゼントにオッジさんがいつも以上の仏頂面になっていた。

でも耳だけは赤くなってて、オッジさんが照れてるんだって一目瞭然だったり。


それをからかった三馬鹿トリオの兄さん達はいつも通り残念過ぎて、オッジさんも直ぐにいつも通りに戻っちゃったけど。


これは提案者として負けてらんないわ。

お仕事上がりにオッジさんと一緒にお家に帰って明日までお世話になる予定だから、お仕事上がりが勝負ですっ‼︎


…………時間が経つにつれて他部隊からもオッジさんに渡されるプレゼントが次々やって来たけど、ま、負けないもんっっ‼︎!


お昼休憩に騎獣部隊隊長のヤハルさんにちょっとしたプレゼントを渡しに抜け出しつつ。

取り敢えずお仕事頑張る!







「お疲れ様でしゅ!」

『お疲れ』


仕事が終わるなり調理部隊の面々とはお風呂には入らずにオッジさんと獣舎へ向かい、カフルに乗せて貰って第一の集落のオッジさん宅へ。


「おばーちゃん、ただいまでしゅ!」

「ユーリちゃん、お帰りなさい。よく来たねぇ」


元気良く玄関を潜ると、マリタおばあちゃんがいつものおっとり笑顔で出迎えてくれる。

…はぁ、何か癒しのオーラ出てる。


「あなたもお帰りなさい」

「あぁ」


オッジさんがマリタおばあちゃんに応えている間に、ふと部屋の違和感に気付く。

部屋中に所狭しと飾られた沢山の花や、テーブルの上に綺麗に積まれたお菓子達。


「……プレゼント、いっぱい」

「それはね、今日が「敬老の日」だからって近所の人が下さったんだよ」

「そうか」

「おやまぁ、あなたも頂いたの?」

「…………職場の若造共にな」

「あらあら、まぁまぁ」


さ、流石はマリタおばあちゃん。

プレゼントの数が半端無い。うぐぐぐぐ。

完璧に出遅れたっ。


頑張って用意したけど…完全に見劣りしちゃう。

ううぅぅ……涙が出そうだ。


「おや、大変。どうしたんだい? ユーリちゃん」

「ボク……こんなしゅごいプレじぇント、用意できてない、でしゅ………」

「プレゼント? ユーリちゃんが来てくれた事が何よりのプレゼントだよ。ほら、そんな泣く事は無いだろう」


優しくガーゼのハンカチで涙を拭われるが、何だか妙に敗北感。


「ユーリ」

「ぅい」

「……出してみろ。調理部隊の若造共がニヤニヤ笑ってた位だ。お前のプレゼントは凄いんだろう」


ゔ。

何ですか、オッジさん。そのとんでもないプレッシャーは。


「それは楽しみだねぇ」


しかも、マリタおばあちゃんまでニコニコ超笑顔。


…こうなったらヤケクソだい!


暫し迷ったものの、大人しく用意して来たモノを取り出す。


マリタおばあちゃんには、農作部隊にお邪魔して種から育てた秋桜の苗を。

オッジさんにはコツコツと慣れないなりに作った煉切風の生菓子の詰め合わせを。

それと、二人の似顔絵と感謝の言葉を書いた手紙。


「秋桜…季節の花だね」

「おばーちゃんのお庭に、いっちょに植えたいなって思ったの。来月に綺麗に咲くって農作部隊のジーンたいちょが教えてくれたから、また一緒にお庭でお茶しゅるの……」

「まぁ!」

「三人揃ってお茶する時の菓子がコレか」

「あい…………」


今回は完全に滑ったかもしれない。

だって、先にこんなに一杯素敵なプレゼントを二人共貰ってるんだもん。


「…………調理部隊の皆さんは良く分かってるのねぇ。ほーんと、何よりのプレゼントだよ」

「う?」


マイナス思考に落ち込んでいたのに、マリタおばあちゃんの言葉に顔を上げると、マリタおばあちゃんだけでなくオッジさんまで微笑んでいた。


「勿論、物だって貰えて嬉しいよ。でもね、可愛い孫にプレゼントと一緒に次の約束まで貰えて喜ばない祖父母がいるもんですか」

「買うモンよりも、オレ達にはずっと価値のあるモンだな」


これ、夢じゃない?

私が望んだ通りの笑顔があるなんて、都合の良い幻じゃない⁇


「明日は早速三人で一緒に秋桜を庭に植えましょうねぇ。丁度良い場所があるんだよ」

「茶菓子はしっかり亜空間にしまっとく」

「咲き頃に合わせて美味しいお茶も用意しないとねぇ。あぁ、来月が本当に楽しみだこと」


思いっきり頬を抓ってみるけど、間違いなく痛い。

そして、目の前の笑顔も消えない。


安心したら、また涙が出てきた。


「お前は何をしてるんだ」

「あらあら、こんなに赤くなるまで抓ったのかい? そんなに泣く程痛くして」


笑顔を苦笑に変えて、私の面倒を見てくれる優しいおじいちゃんとおばあちゃん。


本当に大好きです。


大人になったらもっと孝行するから。

いつまでも元気で長生きして下さい。

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