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2015年2月13日の活動報告より 今年のバレンタインはコレに決まり!

土の一月(二月)十四日が近付いて参りました。そう、バレンタインでございます。




気付けばバレンタインも既に三回目。

出張お菓子屋さんは先月の二十五日からバレンタイン用のラインナップで販売をしております。

流石は商売人。


北の魔王城の周りの集落でもすっかり定着し、本命チョコを始めとして義理チョコ・友チョコ・家族チョコと広がりを見せております。


去年は苺チョコ大福にしたんだよなー。

今年はどうしよう。







「おばーちゃん、こんちはー!」

「おやおや、ユーリちゃんじゃないか。いらっしゃい」


色々悩んだ末にやって来たのは、オッジじいちゃんのお宅。

そして出迎えてくれたのは、オッジじいちゃんの奥様、マリタおばあちゃん。

少しぽっちゃりしていて、いつもニコニコ微笑んでいる柔和な可愛らしいおばあちゃんです。


今回の私のチョコに必要な物のスペシャリストと言ったらこの人が思い浮かんだのだ。


「急に来てごめんしゃい。おばーちゃん、忙しい?」

「こんなおばあちゃんに特別なご用はありませんとも。いつでも来ていいんだよ」

「あのね、おばーちゃんに教えてほしいことがあって来たのー」

「おやおや、何かしらねぇ」


お家の中に通して貰い、まずはお茶でも…と甘いミルクティーを出してくれる。


「それで、おばあちゃんに教えて欲しい事って何だい?」

「あにょね、おばーちゃんのパイ生地を教わりたいのー」


そう、マリタおばあちゃんの料理でも特に美味しいのがパイ。甘い物は勿論、塩気のある物も得意です。

特にチェリー(チェル)パイは他の追随を許さぬ絶品だと思っております。


そんなマリタおばあちゃんに、是非とも秘伝のパイ生地を伝授して貰いたくて今日はやって来たの訳で。


「お安い御用だね。おばあちゃんのパイ生地で良ければ覚えて行きなさい」

「きゃあ! おばーちゃん、だいしゅき‼︎」


ダメ元だったけど、アッサリ了承してくれるマリタおばあちゃん素敵過ぎる。


「じゃあ、お茶したら早速作ろうかね」

「あい!」


よし、頑張るぞー。




お茶を終えて、やって来ました台所。


「薄力粉と強力粉、バターと塩と卵に水があれば生地は出来るよ。おばあちゃんのポイントは卵。普通は入れないけど、おばあちゃんは入れてるんだよ。それと粉の比率が独特だね」


シンプルに材料を並べてくれるマリタおばーちゃんに頷きつつ、分量を手早くメモ。


「粉類を先に混ぜて、バターをさいの目にした物を入れて軽く混ぜる。粉に油が馴染めば良い。目安は、粉が軽く握れる位だね。そしたら中央に凹みを作って水と卵を入れれば良い。バターを潰さない様に指を立てて混ぜるよ。ボールから生地が剥がれて来たら混ぜるのはお終い。後は生地をこの位の四角にして、冷蔵で半刻以上寝かせる」


目の前でどんどん状態変化して行くのを見つつ、ポイントをメモ。


「これが今日使おうと思って昨日の内に作って置いた生地。前日に作っておくと作業が楽だねぇ」


そして冷蔵庫から既に寝かせてあった生地を取り出しつつ、マリタおばあちゃんが打ち粉をして手早く台の準備をする。


「ここからはバターが溶けない様に時間との勝負だよ。もし溶けて来たら、冷蔵庫で落ち着かせてやればいいんだけど、一度で折り伸ばしてやった方が美味しいと思うんだ」


喋りながらも麺棒より少し長い位に生地を伸ばし、これまた少し変わった四つ折りをして粉を払いつつ半分に折り返し、また伸ばす。


繰り返すこと三回。

最後に好みの大きさに伸ばして冷蔵庫に入れれば生地作り完了。


「この後にパイの具材を作って、形を作って、卵を塗って焼けばパイは出来上がりだよ」


冷蔵庫に生地を入れつつ、マリタおばあちゃんが生地作りを終える。


「さ、折角だから、ユーリちゃんも一緒に作ってみようかね」

「がんばる!」


講習を終えた所で、いよいよ実践でございます。

美味しいパイ生地を作るぞ!









そんなマリタおばあちゃん直伝の美味しいパイ生地を携えやって来たのは、毎度お世話になります、鍛治部隊。


「魚の形をした、焼型?」

「あい。この位の大きさで、厚さがこれ位で、挟み込んで焼く焼型が三つ位一緒にあるのが欲しいでしゅ」


メモを使っての変わった特別注文に、ジョットさんがふむふむと頷く。

リアルな魚の焼型にされない様にデフォルメしたお魚を提示したら、ジョット隊長が少し残念そうな表情をしたのは見ない振り。

無駄に技術力高いのも考え物かもしれない。

リアルな魚の形した鯛焼き、怖い。


「この時期って事は、バレンタインか?」

「ジョットたいちょ、サービスするからナイチョよー?」

「また珍しいモン作る気だな? 良いぞ、内緒にしといてやる」


出来上がりの期日を確認し、鍛治部隊を後にした所で部屋に戻る。

バレンタインまでの残りの休みを確認し、落書き帳に大まかなスケジュールを記入しつつ準備する物を書き出しておく。


「魔大陸初のクロワッサン鯛焼きのお目見えでしゅ」


そう、今年は完全に和には致しません。

馴染みのある材料も使って作りますよ、パイ生地で作ったクロワッサン鯛焼きもどき!


ニンマリと笑い、試作の日に思いを馳せる。

鉄板の餡子とチョコカスタード、ツナもどきのマヨチーズ…あぁ、楽しみだ。







出来上がって来た焼型を交渉しておいたリタの酒場の厨房に持ち込んで試作品を焼き上げた所で、まずは試食。

一回に三尾焼けるので、三種類の味を焼いてます。


外見は美味しそうなきつね色な焼き色。


さっくりしたパイ生地のバターと餡子がベストマッチ。チョコカスタードが美味しくないはずも無く、ツナマヨもどきにチーズを入れた物も味が変わって美味しゅうございます。


マリタおばあちゃん、美味しいパイ生地をどうもありがとう!


全部は食べきれないから、一口ずつを食べた所で後日のオヤツ用に亜空間に収納。


厨房を貸して貰ったお礼に、リタの酒場の皆様の分も焼き上げております。


それから一人三種類ずつを何度も何度も焼き上げ、紙袋に入れてはアツアツのまま亜空間に収納して行く。


ジョット隊長のサービス分と、甘い物が苦手なフォルさん専用に塩気三兄弟を焼き上げ、それは少し他とは違う紙袋に。


これでバレンタインに仕事終わってから配りに行ける。

また新しいオヤツのお目見えですよー。


……これで他の人にも焼いて貰える様になったら良いな。むふー。

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