5月5日端午の節句企画 今度は柏餅を作ってみた
水の一月。日本では五月です。
この月の行事と言ったら、「こどもの日」と呼ばれる『端午の節句』と「母の日」が思い浮かぶ。
先ずは「こどもの日」を実行したいと思います。
『端午の節句』は元々はこの時期の植物である蓬や菖蒲などを軒に挿し、粽を食べて厄除けを行なう日だったみたい。
それが今の形に変化したのは江戸時代。
厄除けに使っていた菖蒲が尚武に通じる事から鯉のぼりや武者人形、兜などを飾る男の子の節句へと変化したんだそうな。
時代的に武士がヒエラルキーの最上位にいたからだろうなぁ。
そして端午のお菓子といえば粽もだけど、何と言っても柏餅。
柏の葉は新芽が出るまで古い葉が落ちないことから家系の永続と繁栄につながる縁起物とされていた、と。
そんな行事です。私の知る概要を復習がてらまとめてみました。
でもここは異世界、魔大陸。
子供の少ない魔大陸の皆様にも楽しく参加出来る行事でいいじゃない？
去年は紙袋で作った兜と剣でチャンバラトーナメントが発生したんだっけ。
今年は丈夫な赤と青の二色の紙で装備を作成しておいて、魔術禁止の単純なチャンバラをメイン行事にしてっと。男の子の日だからね。
加えて参加賞として皆で美味しく食べられる柏餅を作ってみようかと。
どうせ内輪のこじんまりとした行事だしねぇ。
柏の葉はジーンさんと出掛けた山で見つけたので、若葉を摘んであったり。
柏の葉の保存方法は確か乾燥保存と塩蔵があったと記憶していたので、両方してみました。
乾燥保存の葉は香りは良いけど、陰干しでの乾燥や使用前のアク抜きといった手間が掛かる。
一方の塩蔵の葉は使い易いけど、茹でて塩に漬けているので、風味が乾燥の物に劣るって何かの文献で読んだけどうろ覚えだったし。
柏餅本体の材料は、餡は何度か作成したので大丈夫。これは粒餡と漉し餡を既に沢山作って保存してある。
問題は生地だけど、この度糯米の他に普通の粳米もゲット出来る様になりました。
一部地域でしか生産されてない高級食材って聞いていたのに何とビックリ、この辺りでは畜産飼料で存在していたよ。
お財布にも優しい粳米、大好きです。おにぎりも食べられる様になりました。
後はその加工だけがネックになるんだけど。
そんな訳で、お休みの日に製粉屋さんに持ち込んで試行錯誤の末に立派な米粉にして頂きました。
何に使うのか興味津々なご主人と奥さんに台所をお借りして、柏餅の本体を試作ついでに味見してもらったら驚いてた。
思い掛けずに試作出来たのはラッキーだった。試食もしてもらえたし、我ながら納得の出来でしたよ。
お餅系って、洋食中心の生活では中々食べる事のないお菓子だもんね。
なのでお餅じゃなくて、米粉を使ったパンやお菓子のレシピをいくつか紙に書き出して渡してきた。試作してみて美味しかったらレシピと一緒に試験的に売り出してみるって。売り出されたら是非とも買いに行こう。
閑話休題。
こうなると残る問題は二種類の柏の葉な訳で。
多めに試作した柏餅本体はまだあるから、柏の葉をそれぞれ戻して完成品を作ってから食べ比べてみようと思います。
「………それでオレに試食を持って来た、と」
「げんせいなる審査をおねがいしましゅ」
比較の為の審査員は、北の魔王城一甘味にうるさいと思われるアルフ少年です。
私の答えは出てるけど、ここはもう一人他の意見も欲しいし。
そういう訳で目的を話して協力してもらいました。
「ユーリ、お前また新しい餅菓子を作ったな」
「今度はお米の種類と作り方が違うのー」
「そういう問題じゃ無いだろ。また製法を喋らない気だな？」
「これはボクだけの特別レシピでしゅから！」
ジト目で見てくるアルフ少年に、強気で返す。
「その内オレだって作ってみせるからな」
「待ってる！」
「…そこで喜ぶのがお前だよな」
何、宣戦布告にこの私が警戒するとでも？
他の人が作ったお餅が食べられるのは大歓迎ですとも。
そんなアルフ少年が呆れつつも柏餅に手を伸ばす。
「ふむ。…こっちだな」
アルフ少年が食べ比べて指差したのは、乾燥保存の葉を使った柏餅。
まぁ、葉っぱがお餅に与える風味が全く違うもんね。
よし、これで柏餅は決定！
水の一月五日。
都合のついた親しい人達だけを誘って、「こどもの日」チャンバラトーナメントを楽しんで。
私も参加したけど、当然ながら一回戦でオルディマさんに弄ばれただけなのに周囲に笑いを提供して終わり。何故だ。
最後にサプライズで参加賞の柏餅を振る舞い。
再び調理部隊の面々にアレコレと突つかれたけど、教えてあげないもんね！
そんなこんなでこどもの日は過ぎて行きました。まる。
【後日】
「ユーリちゃん、どんなに小さなイベントでも教えて下さいとあれ程、あれ程お願いしたではないですか…！」
「コ、コーサしゃん、ごめんしゃい……」
現在、親衛隊（笑）の隊長のコーサさんに超近距離に涙目で詰め寄られております。
常ならばトーナメントに参加せずとも姿の欠片を見せるコーサさんが居なかった事を不思議に思ったエリエスさんがコーサさんに質問して、「こどもの日」の事がバレちゃった模様。
内輪のイベントのつもりだったからなー。
この人、どうしよう。怖い。
「んとね、コーサしゃんにも柏餅あげるー」
「ユーリちゃん…っ！」
「それとね、今度はね、十一日にナイショのイベントがあったのー」
「何と!?」
取り敢えず、面倒臭いので全部話してしまおうか。
柏餅を亜空間から取り出して渡し、「母の日」の事を伝える。
リィンママやリタママには内緒だと言う事をキッチリ約束して貰ってからお話しましたよ。
絶望の表情を浮かべて物凄い勢いで詰め寄って来た行きとは裏腹に、嬉々として帰っていくコーサさんの後ろ姿に、取り扱い方法の教訓を得た気がした。
疲れた…。
