8月20日星企画 天体観測
Tm様主催の星企画参加作品です。
【星企画概要】
[企画名]
星企画
[題材]
星をイメージした作品。
[締切]
・8月20日 / 午後6時から投稿開始 / 午前0時までに(なるべく)作品を投稿してください。
・投稿時間について厳密な制限はしませんが、サーバーさんへの思いやり度をフル稼働してできるだけ更新集中が予想される0時きっかりなどは避けてください。
[原則]
・レイティングは全年齢(R15不可)
・文字制限なし
・短編、中編、長編いずれも可。ただし期日までに完結していること。
・締切厳守希望は8/20ですが過ぎても構いません。(ただし上記のとおり完結厳守)
・タグに”星企画”と記入、他ジャンル・タグなどは自由
詳しくは http://naroutm.web.fc2.com/
注:時系列は本編とは違います
夜、目を覚ましたらディルナンさんの姿がベッドに無かった。
オッジさんは今日は集落にある家に帰ってる筈だから部屋に不在だ。
何となく寂しくて、アルフ少年やシュナスさん、オルディマさんの部屋にも行ってみたが応答無し。
…さては私を置いて、皆でお酒を飲みつつウハウハしに行ったな。
このまま部屋に戻っても寝れる気がしない。それ所か、人恋しくて泣きそうな気がする。
よし、これはずっと狙っていた作戦を決行しに行こう。丁度明日は休みだ。
忍んで向かっている先は、夜の獣舎。
明かりなんて殆ど無いけど、星が沢山出ていて意外と明るい。
獣舎に何をしに行くのかって? そんなの、レツのもふもふを堪能しにですよ!
北の魔王城に来た初日のお昼寝で堪能した、あの暖かな極上毛皮ベッドに寝たい。
だから、暗闇がちょっぴり怖いけど駆け足で目的地に向かってます。
欲望は恐怖に勝るんだい!
レツのいる獣舎に入ると、中にいた騎獣達が一斉に侵入者に気付いて視線を向けて来た。
「レちゅ…」
その殺気じみた気配が怖くて、微妙に涙目になりつつレツを呼ぶと、自分の縄張りで横になっていたレツがのそりと立ち上がり、出て来た。もふもふな顔をそっと擦り付けてくれる。
やっぱりレツは優しいなー。
ぎゅっとレツの首の辺りに抱き着くと、幸せな感触がした。
ううぅぅ、もふもふ最高だー!!
暫くはそのままでいたけど、少ししてレツが一鳴きした。
何かと思ったら、自分の縄張りの方に視線を向ける。これは、レツの縄張りに入って良いって事かな?
レツの首から離れると、レツが縄張りへと体を向けて振り向く。
後を付いていくと、レツも私に合わせてゆっくり歩いてくれた。
…エスコートまでしてくれるなんて、なんて出来てる男なんだ、レツ!
レツが自分の縄張りに着いて、定位置に横になってまた一鳴き。
これは遠慮なんかいらないって事でいいんだよねっ。
レツのお腹に飛びつくと、幸せな世界が待っていた。
そのままレツのもふもふを堪能していたら、急に後ろから別の毛並みの感触がして驚きの余り振り返る。
そこにいたのは、磨き上げられた銀の様な艶を持つ鈍色の毛並みの巨大狼なウルグと、クリーム色がかった白いモコモコ毛並みと立派な角を持つ巨大羊なシエレ。
「ワイしゅ、ローゼ」
狼がシュナスさんの騎獣のワイス、羊がオルディマさんの騎獣のローゼ。
この二匹もお素敵毛並みを持っているんだよなー。
鼻先を撫でてやると、二匹も擦り寄ってくる。本当に人懐っこいし可愛い。
そしたら、レツも二匹に負けじとすりすりしてくるし。
三匹分のもふもふに囲まれるとか、何、この贅沢。極楽浄土かと思う程素敵な感触にウットリするね!
レツはしっとり柔らか。ワイスは少し硬めだけど長い毛足がサラサラしてる。ローゼは流石は羊と言わんばかりのもこもこ。
「ふふふー。くしゅぐったい」
それぞれ感触の違う毛並みに擦り寄られ、寂しさなんか鳴りを潜める。代わりに笑みが零れた。
暫く笑っていたら、この前生まれたばかりの小さなドラゴンのエルトがキュウキュウ鳴きながら走ってやって来た。もふもふパラダイスに突撃してくる。
何、この可愛い集団…っっ!
感動していると、レツの縄張りは獣舎の窓から星が綺麗に見える位置な事に気付いた。
「星、きれいだねぇ」
満面の星が浮かぶ夜空を見上げて呟くと、もふもふ三匹+一匹も一緒に星空を見上げて来た。
だから、君等、どうしてそんなに可愛いんだーっ。私を萌え殺す気なの!?
「星はねー、いろんな形が作れるんだよ。星座っていうのー。
…エルトならりゅう座だし、ワイしゅならおおかみ座、ローゼならおひつじ座かなぁ」
私の知るちょびっとの星座知識を総動員しつつ星座を挙げていくが、この世界にその星座があるのか全く分からない。北斗七星がそもそもあるのかな?
うーんと考えていたら、レツが鼻先で頬を突いてきた。
…虎の星座、無いよな。どうしよ。
「レツはね…んと、星座じゃないよ」
考えつつ言うと、レツがショックを受けた様な表情を浮かべる。
…うん、暗いけど星の光で見えちゃったよ。ゴメン、レツ。
でも、確か虎はギリシャにはいなかったから星座になってないんだったよな。
それ以外に虎で星は………………。
「えとえと。
…星座じゃないけど、星宿っていうのに白虎があるんだよ」
レツが可哀想になり、無い知識を総動員して言うと、レツが小首を傾げる。
可愛いっ。可愛過ぎるよ、レツ!!
心の中で悶えまくり、顔も崩れまくりつつ、レツの鼻先を撫でる。
「レツみたいな白い虎は、西をちゅかさどるっていわれてる風のれいじゅうなの。レツにピッタリでしょ」
確か秋の象徴なんだよね、白虎。
凄く嬉しそうな表情してるけど、間違ってたらゴメンよ、レツ。
そんでもって、何で他のコ達もキラキラと期待した目を向けて来るんだい。
…見事に墓穴堀ったかもしれない。
「…エルトのりゅう座は一年中見れるけど、夏が一番だったから火をつかうエルトにあってるし。
……ワイスのおおかみ座は春だったはずだから、土をあやつれるワイしゅにあうでしょ?
………ローじぇのおひつじ座は秋から冬にかけてだった? から、氷がとくいなローゼにあうんだよ」
無理矢理だけど私の知る星座の特徴にそれぞれの特性に当て嵌める。
こんな事ならもっとちゃんと知っておけば良かったよ、星座。
大丈夫かなと三匹を見ると、三匹もどうやら喜んでるのかな? レツが一番分かりやすいんだよなー。
おっと。それより、更なる墓穴を掘る前にさっさと話を変えようっと。
「あ。あそこにあるのはタシ芋の形ー。あっちがベルモンで、そっちがオル葱ー」
仕込みでよく使う食材の形を、星々の中でも特によく輝いてる星を繋げて勝手に作り上げる。
あれこれ好き勝手してたら、温かいもふもふ効果で少しずつ瞼が重くなってきた。いつもならとっくに寝てる時間だもんなぁ。
欠伸一つして寝る体勢に入ると、もふもふ要員達が包み込んでくれた。
皆、本当に男前だ。魔獣なのが惜しまれる。
おやすみをどうにか言うと、直ぐに眠りの世界が訪れた。
---!
------!!
意識の遠くで、何やら悲鳴の様な声が聞こえた。
でも、このもふもふでぬくぬくな幸せな状態で微睡む時間を手放すのが勿体なくて、目覚めるのを止めた。
再び意識が浮上してきたのは、ゆらゆらと心地いい揺れを感じてから。
もふもふは無いけれど、温かい。私の良く知る、安心できる場所の一つ。
「…んにゅ」
重い瞼を少し持ち上げると、少し呆れた様な、ホッとした様なディルナンさんの顔が見えた。
「全く。お前は人を驚かせる達人だな」
全く意味の分からないディルナンさんの言葉に、寝惚けたままじーっとディルナンさんを見る。
でも、ディルナンさんは理由を教えてくれずに苦笑した。
「まだ眠いんだろ? 今日は休みだし、もう少し寝てろ。飯は取っといてやる」
「あい」
ディルナンさんの言う通り今日は休みだし、朝食の確保を約束されたので考える事を完全に放棄した。そのまま大人しくまだ纏わり付いている眠気に身を委ねる。
---また、もふもふベッドで星を眺めながら寝に行こうと心の中で誓いながら。