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かわいいコックさん企画部屋  作者: 霜水無


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2013年12月22日の活動報告より 冬至も立派なイベントです

風の二月(十二月)下旬。


日本ではそろそろクリスマスを迎え、年の瀬の準備や年賀状に大掃除と日々追われる頃だ。


でも、ここ魔大陸では来月の風の三月を終えてからが新年だからまだ穏やか。


クリスマスツリーも、衣装も、交換用のプレゼントも準備万端だし、今日のお休みはのんびりデーに決めた。







「ジーンたいちょ、こんちはー!」

「おー、今日も元気で何よりだな」


のんびりお散歩をしてたら、畑で知った顔に遭遇なう。

北の魔王城の植物の事ならこの人にお任せ!

農作部隊のジーン隊長。


そんなジーン隊長を中心に、農作部隊の隊員さん達が何やら少し大掛かりな畑の手入れをしていた。


「…これ、なんでしゅか?」

「今日は『一陽来復』だからな。美味い野菜が取れる様に何時もより手を掛けてやるんだ」

「『いちようらいふく』?」


ジーン隊長から不思議な単語出てきたぞ。


「1年で一番日が短い日の事だ。明日からは日が伸びる様になるから、太陽の復活の日とも言われてるな」


…あれ、そんな行事、覚えがあるよ?


「何かするんでしゅか?」

「ククッ、相変わらず祭り好きだな。

『一陽来復』は、「ん」が付くモンを食うんだ。縁起担ぎだな。調理部隊が用意してる筈だぞ」


何か、私の知る行事と違って簡略化されて無いのかもしれない。


この時期で、日照時間が一番短い日。

それはつまり、『冬至』だよね?


因みに、実はクリスマスのルーツと言われてるのがこの冬至だったりする。どうでもいい豆知識。


「他にはー?」

「他? …特には無い筈だぞ」


何と。南瓜(カボチャ)を食べる風習以外に無いとな。


「ゆず湯ないー?」

「ユズユ…? あんなモンどうすんだ⁇」

「う?」


あれ? 何か、会話が噛み合って無い気がする。


「ユズユなら腐る程生ってんぞ」


首を傾げてたら、ジーンさんからとんでもない言葉が飛び出してきた。

柚子湯が生ってるって、何⁈




手際良く作業を進め、幾つか指示を出したジーンさんに連れられてやって来たのは医務室側の畑。


その側には、ドッジボールサイズの見事な柚子がたわわに実っていた。


「ほれ、ユズユ」

「ほわー…」

「っつってもコイツは酸っぱいし、殆ど食う所がないがな」


ジーンさんの説明を聞きつつ近付いてみると、ふんわり覚えのある香りが鼻を擽った。

紛う事無く柚子だわー。


「ジーンたいちょ、コレほちーの」


ここにブツがあるのに柚子湯をやらない手は無いでしょう!

早速おねだり。


「別に構わねぇが、何すんだ?」

「お風呂に入れるのー」


にぱっと笑って質問に答えると、ジーンさんが目を丸くした。


「…ちょっと待て」


少し考え、ジーンさんが徐に窓に近付いて行った。


「ヴィンセント、いるかー?」


窓をノックしつつジーンさんが声を掛けると、暫くして室内からヴィンセントさんが姿を現した。


「どうした?」

「ユーリがユズユを風呂に入れるっつってんだが、問題無いと思うか?」

「ユーリが?」

「ヴィンしぇントたいちょ、こんちはー」

「あぁ、こんにちは。今日も元気そうだな」

「あい!」


ジーンさんが質問すると、ヴィンセントさんが私に気付いたのでご挨拶。


「それで、ユズユを風呂にだったか…」

「あい。いーにおいでね、ポッカポカのお肌ツルツルなのよー」


私の知る限りの効能を上げると、ヴィンセントさんが少し考える。


だって、昔から日本人はやってたのよ?


柚子ゆず=「融通」がきく、冬至=「湯治」なんて語呂合わせがあるんだし。

柚子は実るまでに長い年月がかかるから、苦労が実りますようなんて願掛けもしてた位だし。


「ふむ。…確かに、柑橘類には美肌効果があると言われているな。ユズユは味は兎も角、食用出来て毒性がある訳じゃないし、薔薇風呂もある以上風呂に入れても問題はあるまい」

「じゃあ、いーい?」

「ただし、少しでも違和感を感じたら即中止だ。医務室に来なさい」

「あいっ」


ヴィンセントさんの言葉に思わずバンザイをすると、ジーンさんが顎の無精ヒゲを撫でてた。


農作部隊(ウチ)もやってみっか」

「…なら、医療部隊(ウチ)にも幾つか回してくれ。研究班に回してみよう」


……何だかんだでノリの良い皆様、最高です。








「ただいまー。オヤツくだしゃい!」

「おかえり、ユーリ。丁度出来たてだぞー」


取り敢えず、ディルナンさんに許可を取るべくユズユを一個抱えて厨房に戻ると、アルフ少年が笑顔で出迎えてくれた。


「今日は『一陽来復』だから、ポンプキンのプリンだぞ。運盛りしまくったぞー」

「にーにのプリン!」


アルフ少年の絶品プリン。しかもカボチャ。

…魔大陸のオバケカボチャの名前はポンプキンだったりする(笑)


最近のアルフ少年は成長期もあいまってどこまでも素敵だ。


「所でそのユズユはどうした?」

「貰ってきたのー。お風呂にいれるのー」

「そうなのか? 隊長にちゃんと許可取れよ」

「あい!」


テーブルにどうにかユズユを乗せ、アルフ少年にお返事。

でも、まずはオヤツ〜♪







「風呂にユズユ、な」

「農さく部隊と医療部隊はやるってー」

「…なら問題無いか」


オヤツをしっかり味わってからディルナンさんの所に許可を取りに行くと、ちゃんと許可が出た。

絶対にヴィンセントさん効果だ。




あれからユズユを正式に貰いに行くと、ジーンさんが態々調理部隊のお風呂まで運んでくれた。

大きな湯船にドッジボール大の柚子が浮かぶ様は中々に絶景だ。


そのまま農作部隊のお風呂にも投入し、医療部隊にも幾つか届けて本日のお散歩は完了。


お部屋で日々のアレコレを落書きし、夕飯を済ませたらお待ちかねの入浴タイム。




調理部隊の全員で体の芯から温まり、お肌ツルツル、ほんのり柚子の香りになりました。まる。

【後日:主人公休日】


「ジーン隊長、ユズユくだしゃい」

「うん? 好きに持ってけ」

「ありがとーございます」


ジーンさんの許可をちゃんと頂きまして、ユズユを持って来た袋に二つ回収。ヨロヨロしつつも厨房にやって参りました。


お休み用エプロンを着用し、しっかり手洗いをしていざ作業開始!


用意しますはユズユ、氷砂糖、煮沸した清潔な大きい瓶。


まずはユズユを洗ってしっかり拭いてから半分にカット。

薄く皮を剥いてから千切りにし、果汁は絞っておきます。


皮と果汁の重さを量り、同量の氷砂糖を用意します。


瓶にユズユの皮と氷砂糖を交互に入れ、最後に果汁を入れたら蓋を閉めてそっとひっくり返し、果汁を全体に行き渡らせてっと。


コレで一週間程放置すれば、ユズユ茶が完成!

お湯で溶かしても良いし、ジャムの代わりにも出来るよ。


この際、柚子ユズユの美味しさを北の魔王城に伝えてみようと思います。



***** 一週間後、献立会議 *****


「他に何かあるか?」

「あい!」

「…ユーリ」

「新しいジャムを作ってみまちた」


会議中のテーブルに一週間前に作ったユズユ茶を出してみる。


「…なんだこりゃ」

「ユじゅ・・ユ茶ー。お湯で溶かして飲んでも、パンに付けてもおいちいのー」


シュナスさんの呟きに元気一杯答えると、オルディマさんが静かに人数分のカップとお湯を用意し始めた。


その流れで全員が無言で実食。


「…他のジャムよりも酸味がある分、サッパリしているな」

「あ、コレ美味いっス」

「ユズユにこんな使い方があったか」

「後ねー、お酢の代わりにドレッシングにしてもおいちーと思うのー」

「…ユズユ持ってくるか」







こんな感じで今まで見向きもされなかったユズユが徐々に食べられていったりして。

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