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7月7日七夕企画 笹の葉さらさら

水の三月(七月)。

七月のイベントといえば七日、七夕。

笹の葉に願い事を書いて、七月七日の夕方に海に流すと願いが叶うという行事が有名。


織姫と彦星の伝説も有名。

働き者だった二人が結婚生活が楽し過ぎて働かなくなったせいで天帝の怒りを買って引き離され、年に一度、七月七日にしか会えない様になったっていう。

しかもオマケでは七月七日に雨が降ると天の川の水嵩が増し過ぎて川を渡れず、会えない二人の涙が地上に降ると催涙雨と言われるとか。

色々な説話があるし、行事も地方によって違うから私が知ってるのはほんの一部なんだけれども。


でも、確か大元は旧暦七月七日に水辺で巫女が天下る神の為に機を織って穢れを祓う神事(棚機たなばた)と、中国の芸事の上達を願う乞巧奠きっこうでんという行事が結びついて、更に七夕伝説が加わって今の形になったと言われているのですよ。

流石は日本と言うべきか。




まぁそんな訳で、七夕に向けて笹を探しています。

取り敢えず、食堂の片隅に笹の葉飾りを置く許可をディルナンさんとエリエスさんにちゃんと取りました。短冊も雑貨屋さんに注文完了してる。後は肝心の笹だけ。ダメなら最悪は適当な木を置こうかな。

心当たりが一ヶ所あるので、今日は下準備にそこへ向かいたいと思います。







やって来たのは---騎獣部隊。

農作部隊だと思った? でも違うのだよ。

何故、騎獣部隊かと思うでしょ?


その理由は、カフルです!


カフルは、オッジじーちゃんの騎獣。

チェリンというとっても大きなパンダな種族なのです!

パンダと言えば餌は笹じゃね? という事で、突撃取材。

取材先は、騎獣部隊副隊長のツェンさん。今日は隊長のヤハルさんはお休みとの事でした。


ツェンさんは調理部隊の騎獣の世話の第一人者との事。なんでもレツ以外にも問題獣もんだいじが多いからとの事。あらま。


調理部隊の獣舎にお邪魔してツェンさんを待つ間、カフルのお腹辺りに抱っこされながらユラユラ揺すられて遊んでいました。これが中々に楽しいのだよ。ふんわりな毛並みと意外に柔らかいお腹がナイスです。

勿論、他の騎獣達を撫でくり回すのも忘れませんが。


「よく来たね、ユーリちゃん。今日はどうしたんだい?」


一通りのお仕事が終わった所で、ツェンさんが騎獣と戯れる私をお迎えに来てくれた。

今日も素敵にマイナスイオンに満ち溢れているツェンさん。側にいるだけで何だか癒されます。


「ツェンふくたいちょ、カフルのエサは何でしゅか?」

「カフルの餌か。そう言えば今日は肉じゃ無かったから不思議になったのかな」


質問すると、ツェンさんが連れて行ってくれたのは餌の貯蔵庫。

丁度業者さんや他の隊員さん達も作業中だった。「こんにちは」と挨拶をしておく。


「カフルは基本雑食で、肉でも野菜でも食べるんだけど…。一番好きなのはコレ。サシャという葉っぱ」

「あっちゃ!」


ツェンさんが示してくれたのは、正しく笹だった。

興奮の余り叫ぶと、思いっ切り舌を噛む。痛みに悶絶していると、ツェンさんに「大丈夫かい!?」と超心配されてしまった。恥ずかし過ぎる…。


「ツェンふくたいちょ、コレほちいのー。どこにありましゅか?」


色々な意味で半泣きになりつつサシャを手に聞いてみると、貯蔵庫が何故か静まった。


「さ、サシャが欲しいのかい? おじさんがあげちゃう!」

「ホント?」


そうかと思ったら、業者のおじさんが手を上げて来た。


「でも、カフルのご飯なくなっちゃう…?」

「お、おじさんに任せなさいっ」

「おじちゃま、しゅてきー!」


思い掛けない申し出にもう一押ししてみると、非常に美味しい答えが返って来た。

これにはお礼代わりに持ち上げてみると、妙にはぁはぁされる。


「お客さん、これ以上の接近は許可出来ないなー」

「ウチの子、お触りは基本厳禁だから」

「お触りしたかったら…ね?」


そこに、騎獣部隊の面々がノリノリで乗って来る。

物凄い連係プレイで値切り交渉始めたー!? そして業者のおじさん、本当にそこで迷うなよ。ここは如何わしい場所じゃございません。


「は、半額でどうだ!」

『まいどありー』

「ユーリちゃん、おじさんに「ありがとう」ってお礼出来るかな?」


遂には本当に結果を出しちゃうおじさんに騎獣部隊の隊員さん達が一斉に言い、ツェンさんから私への指示が出現する。

これには勿論従いますよ。タダでサシャを手に入れられるんだから。


とっとこ業者のおじさんに近付き、にっこり笑顔で足に抱き着いてみる。


「おじちゃま、ありがとー」

「ぐふぅっ!」

「よし、話が纏まった所でユーリちゃんは戻ろうか。…後は頼んだよ」


お礼を言うと、業者のおじさんが悶絶する中ツェンさんに回収される。お礼のつもりだったんだけど、私、そんなに酷い顔してた?


そんな事を考えていると、流れる様にツェンさんが私を抱き上げて隊員さん達に後を頼む。それに妙に力強いサムズアップが返って来たのでツェンさんに抱っこされつつ私も返しておいた。







「いやぁ、ユーリちゃんのお蔭で餌代が少し浮きそうだよ」

「ボク、役にたったー?」

「とっても。流石はユーリちゃん」

「うわーい」


ツェンさんに頭を撫でられると、とても気持ちが良い。騎獣達がツェンさんに懐くのがとってもよく分かるよ。


「サシャが届いたらどこに持っていけばいいのかな?」

「食堂におねがいちます」

「食堂だね。了解。…また何かイベントかな?」

「あい!」

「そうか。楽しみだね」


ツェンさんのこの言葉に、更なる準備をしっかりしようと心に決めた。







そして水の三月(七月)七日。

食堂には騎獣部隊から譲ってもらったサシャが飾られ、様々な隊員さん達の願い事が書かれた短冊が沢山吊るされた。

食堂にやって来た隊員さん達が楽しそうに願い事を書いたり、他の人の願い事を見て笑ったりと地味なイベントながら少しは楽しんで貰えてるみたい。

海に流すのは無理だけど、終わったらきちんと証拠隠滅と昇華の為に燃やしておく事になった。


食堂の窓から開いた風が通ると、笹と短冊がサラサラと心地良い音を立てる。


皆の願い事が、どうか叶います様に!

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