3月3日 桃の節句+ホワイトデー企画 女の子(?)の日
土の二月(三月)三日になりました。
あかりをつけましょ ぼんぼりに~ お花をあげましょ 桃の花~♪です。
でもね、私、今は女の子じゃないの(?) 男の子でもないけど。
そして、早くショコル以外のお菓子も欲しい。
って訳で、お雛様とホワイトデーを合体してしまいまーす!
お馴染み、親衛隊長のコーサさんに先日のバレンタインと一緒にお願いしておいたホワイトデーの会報が出来てきました。今回の特集はお雛様プラスホワイトデーのプレゼントの指針。
お子ちゃまにはお菓子(雛あられちっくな色とりどりの飴とかマカロン推奨。因みに菱餅にも含まれる三色は桃色が『魔よけ』、緑が『健康』、白が『清純』、これにプラス黄色で一年(四季)を通しての幸せ祈願とか言われてたりするらしいのよー)とお雛様の代わりに雌雄一対のお人形、お嬢さんにはお菓子や素敵小物、奥さんや恋人には三倍返し! を基準におススメ。いや、これ絶対じゃないけど。
そして同性間の友チョコのやり取りにはクリルやマカロン、飴ちゃんを、それと甘い物が苦手な人にはお手軽小物推奨しました。
同性間の本命へのお返しはお好きにどうぞですけど。
そして、この日におススメの料理も出してみた。ハマグリのお吸い物の代わりに二枚貝のブイヤベースとか、ちらし寿司の代わりに洋風炊き込みご飯とか、菜の花のお浸しの代わりに季節の野菜のサラダみたいな簡単レシピも載せてもらったから、プレゼントじゃなくて行動(料理)でお返ししてもいいのよ? みたいな。
昔ながらの行事の由来とか意味って、素敵な物があるよね。興味がある人は調べてみると面白いよー。
かなり変形しちゃってるけど、魔大陸でもそんな行事が根付けばいいな。
…そんな事を言ってはみたが、大元は私の食欲が根源なのよね。てへっ。
今日はバレンタインに比べて比較的落ち着いている。
隊長達は合同でお金を出し合って、全部隊に飴ちゃんを回していた。
個人間は覚えのある人の間だけみたい。
私個人のホワイトデーのお返しは集落の女性陣に用意してあるけど、明後日のお休みに渡しに行く事にした。そっちの方が落ち着いて渡せるし、一緒にお茶会する約束もしたからねぇ。
調理部隊としても、昼食にクリルをお返しにしてた。
因みに朝一番にディルナンさんにクリルを渡す役目に任命されたので、アルフ少年が焼いた甘さ控えめクリット(ビスケットみたいなの)を三枚ずつ袋詰めしてハロウィンで活躍したバスケット(カボチャ装飾無し)に入れて、カラフさんが用意してくれたノンノ(たれ耳ウサギ)の着ぐるみ姿で配っております。
何故なら、三月三日はこっそり「ウサギの日」でもあるから!
人の流れが切れて少し時間がある時に、格好に合わせて「ソソラ ソラ ソラ うさぎのダンス♪」と即興でウサギのダンスを踊ってみたら意外にウケた。拍手喝采を頂きました。
小さい子供のお遊戯的なアレですね。分かります。
今日のお昼寝は遅めになるけど、任務頑張ります!
ピークタイムを終えた所で後は食事と一緒に渡す事になり、後半組と遅いお昼を食べ、着ぐるみのままお昼寝。
お昼寝タイムが終わったら、コック服に着替えて仕込みに合流。
いつも通りに仕事をこなし、夕飯を食べて片付けをしていく。
…夕飯が、会報で紹介した料理の完全版なのが憎いね、この。
そしてお風呂入ってスッキリして部屋へ戻ると、何故か調理部隊の全員が一緒に部屋に入って来た。
「え? え??」と見回していると、その間に調理部隊の面々がディルナンさんのベッドの下から包装されたアレコレを取り出した。
「…えろ本ー?」
『ユーリ!』
ついついベッド下の定番を聞けば、揃って怒られた。
だって清掃部隊のアスチ隊長と別館の掃除に行ったらお約束の嵐だったから、つい。
「バレンタインにお菓子を貰ったからな。オレ達からのお返しだ」
ディルナンさんが言いつつ渡してくれたのを皮切りに、他の面々も渡してくれた。
「ありがとーなの。開けていーい?」
プレゼントの山にドキドキしつつ聞くと、全員が揃って頷く。
箱を開けると、飴にマカロンにフルーツクレームの挟まったクリルなんかのお菓子類や、もふもふなノンノの番のぬいぐるみ、出掛ける時に持って行ける小さな水筒とお茶のセットに、お菓子と水筒を持ち歩ける子供用ポーチが出て来た。
「しゅごいー!」
「菓子ばっかり食べ過ぎるんじゃないぞ。変な食べ方してたら没収するからな」
「あい…」
テンションが鰻登りだったが、ディルナンさんの見事な釘刺しに大人しくなる。
そんな私の姿に笑いが広がる中、部屋の扉がノックされた。
ディルナンさんが応対に出て行くと、何やらぞろぞろと人が更に入って来る。
バレンタインにショコルを配り歩いた御一行様達だった。
かなり広い部屋の筈なのに、大人の大柄な男性陣がこれだけ揃うと部屋が妙に狭くなるから不思議だ。
全員が全員、それぞれ箱を持参している。
定番のお菓子のアレコレ以外に、医療部隊からは歯磨きセット、装飾担当部門の皆様からは新しい着ぐるみ三着とベッシュの番の大きなぬいぐるみ、書類部隊と鍛冶部隊の皆様から新しいペンが贈られた。
そしてバレンタインで一部の追加プレゼントを渡した方々からは、見覚えのある小さな箱。
恐る恐る開けてみると、私サイズの赤いふんどしアゲイン!
「ほわぁー!」
「却下」
歓声を上げたら、即座にディルナンさんに取り上げられた。そのまま魔術で焼却処分される。
「ボクのふんどし…!」
『ディルナン、何しやがる!』
「テメェ等、いい加減にしとけやコラ。食事差し止めんぞ」
ショックを受ける私を余所に、ディルナンさんと赤ふんくれた面々がにらみ合う中、事態の原因が分かっていない面々が事情を知る調理部隊の面々と情報交換をする。
『…くだらない』
事情を飲み込むなり、そんな声が部屋に広がる。
「でも、ユーリにふんどしはちょっと問題だな」
「カラフ、どうにか出来ないのか?」
「そーねぇ。可愛い水着にでもしましょうか」
「それならまだ許容範囲か」
「火の季節にでも用意するわよ。今じゃ風邪ひいちゃ大変だもの」
更には、ふんどしは何処かへ放り投げられた。ショック…!
ちょっとだけ付け心地に興味があったのよ。子供なら恥は掻き捨てだと思ったのに…っ!!
…と、ここで更にノック音が響き渡った。
これには部屋の訳の分からない騒ぎがピタリと止み、再びディルナンさんが応対に出て行く。
少し遅れてディルナンさんと姿を現したのは…何と、近習部隊隊長のロイスさん!
「ロイスたいちょ!」
「こんばんは、ユーリ」
飛び出して行くと、ロイスさんがいつもの素敵執事笑顔全開で声を掛けてくれた。
「ロイスたいちょ、来てだいじょぶ?」
「長居は出来ませんが魔王様の側にはグランディオが付いていますし、お返しを渡す位は問題ありません。
---…ショコル、とても美味しかったですよ」
「食べてくれたですか?!」
思い掛けない感想に思わずロイスさんに飛びつくが、怒らずに受け入れてくれた。
「タクトに摘ままれましたが、お詫びに気合いを入れてお返しを作らせましたのでどうぞ」
「ふわー」
ロイスさんが言いつつ持って来た巨大なお菓子詰め合わせを渡してくれる。
物凄く芸の細かいお菓子の数々。流石は現魔王様専属食事係の作品。
ふんどしショックが吹き飛んだよー。
「…ロイス、お前、どんだけタクト脅したよ?」
思わず見入っていると、傍で見ていたディルナンさんが頬を引き攣らせつつロイスさんに問うた。
「ユーリが私の為にくれたモノを横から取る方が悪いんですよ。グランディオのも摘まんで殴られてましたし。自業自得でしょう」
『…バカだ』
ロイスさんの言葉に、アルフ少年以外の調理部隊の面々が揃って呟いた。
「ロイスたいちょ、ありがとーございます。グランたいちょにも「ありがとー」って伝えてくだしゃい。あと、タクトしゃんにも「おいしくいただきましゅ」って」
「かしこまりました。…そろそろ私はお暇します。次のイベントも楽しみにしてますよ、ユーリ」
「あい!」
ロイスさんにお礼を伝えると、ロイスさんが颯爽と出て行く。
「にーに、これ、いっちょにたべるー」
「…良いのか?」
「あい」
ロイスさんが去った所で、アルフ少年に話し掛けると驚いて目を丸くした。
「こんどはにーにが作って、みんなで食べたいでしゅ」
「よし来た! そういう事ならオレも頑張るぞ!!」
私の欲望をそのまま伝えると、アルフ少年が楽しそうに笑った。
「それで、お茶会しましゅー」
そのまま次の企画をこっそり打ち明けると、全員の視線が集中する。
お次はお花見でお茶会です!
「そういう事なら農作部隊の出番だな。花の見頃は来月の半ばだ」
「じゃあ、また一緒に企画案を上げましょうね、ユーリちゃん」
「茶会なら、いっそ近習部隊も一部巻き込め」
次々出て来る案にふむふむと頷いていると、ふあーっと欠伸が零れた。
「取り敢えず、今日はこれでお開きだ」
ディルナンさんの号令に、「おやすみ」の挨拶を交わして部屋から去っていく面々。
それにもう一度「ありがとう」と「おやすみ」を返し、完全に人がいなくなるとディルナンさんが片付けを手伝ってくれてベッドに押し込まれた。
何だかまた明日からも楽しみだ。
毛布に潜り込み、これからのイベントに思いを馳せてワクワクしつつ目を閉じた。