2月14日バレンタイン企画 DOKIDOKI☆バレンタイン
皆様、いよいよ決戦の日です!
土の一月(二月)十四日といえば乙女(?)の祭典ですよ!! この日に向けて美味しいチョコレート菓子が出揃うのだから、製菓会社の陰謀と言う無かれ。十二分に楽しんでなんぼですよっ。
さあ、いざLet'sバレンタインっっ。
今日のこの日の為に、私が協力要請したのは北の魔王城…では無く、周りの集落の女性陣。
ヴィンセントさんの奥さんであるお素敵リィンママに、オッジさんの奥さんの優しいマリタおばーちゃん、ディルナンさん達にごく稀に連れて行ってもらうリタの酒場の美人なお姉様達を中心に巻き込みました。
そして、そこから女ならではの口コミで各集落に爆発的に広がって行きましたよ。
チョコレートを持って堂々と告白するも良し、家族や親しい人に日頃の感謝を込めて渡すも良し、仲の良い友達同士で美味しい物を共有するも良し、自分のご褒美に美味しいチョコを奮発するも良し、楽しみ方は人其々です。
女の子が本命に渡すチョコレート---この世界ではショコル---のお菓子作成には男子禁制でしょ? 購入チョコなら話は別だけど。
そして、男性が本命チョコを渡すなら話はまた変わるけどさ。個人的にはそれも大いにありだと思ってる。
男性・女性、異性・同性関係なくね。だって年に一度の堂々告白デーだし。
因みにバレンタインの為にリィンママと作ったのはショコルクリル。
マリタばーちゃんと作ったのは小さなショコルパイ。
リタの酒場で作ったのは、美味しいお酒を使ったトリュフと普通のトリュフ。これはちょっぴり高級ラインです。
そして、甘い物苦手な人の為に小さなミートパイ。これは、マリタおばーちゃんが作ったのを分けてくれた。
皆様とってもお料理上手でした。
それらをしっかり味見して、渡す人に合わせてラッピングすれば準備完了。
でも、お酒を使ったトリュフだけは味見して無いの。だって、ヴィンセントさんこぁい(ガクガクブルブル)
ここまでやる前に勿論布石は打っておきました。
バレンタイン前に出るらしい会報にバレンタインがどんな日かを大々的に特集して貰うべく、コーサさんに裏取引を持ち掛けて買収済み。協力して下さる親衛隊(私なんかに本当にいいのかね?)の皆様にもお礼として義理ショコルを準備しました。
男同士の友ショコルにはお菓子屋さんに早めの協力を要請しました。中々に儲けたらしく、お礼にお菓子詰め合わせを貰っちゃった。
そして、何と言ってもホワイトデーですよね?
これについては集落の女性陣に大体の企画基準を決めるのにもご協力頂きました。
この情報は次回の会報に情報を流して貰う事になっている。
面倒なので、土の二月三日…お雛様な桃の節句にホワイトデーを合体して女の子の日としてしまおうかと。
色々楽しみだよね(にこっ)
バレンタインの会報が出回ったのか、あちこちで男同士のショコルのやり取りが観察できております。中々に濃いバレンタインIn北の魔王城。各部隊の隊長達は特に沢山貰っている模様。
精悍な顔を赤く染めて、野太い声で「貰って下さい!」とな。素直に受け取っちゃう相手も素晴らしい。
その一方で全力で拒否する人、拒否して戦った挙げ句に熱い友情(?)で結ばれて受け取る人等色々あるが。
調理部隊も大人気だった。ゴツイ騎士の兄さん達を筆頭に調理部隊にって貢物をどんどん置いて行くので、緊急処置として食堂の隅っこにショコルを入れるケースが設置された。
余談だけど、本日のお昼の食事のデザートに絶妙な口どけのとろとろショコルプリンが用意されました。作成者は何とアルフ少年。でもこれが超うまうまで、ディルナンさんとオッジさんも褒めていた。
前半組で夕飯を食べて片付けに参加しようとしたら、ディルナンさんに厨房から放出された。
目を丸くしてディルナンさんを見上げたら、「さっさとショコルを配って来い」とのご命令。…相変わらず男前過ぎです、隊長。しかも、笑って同じ様に見送ってくれる調理部隊の面々。こりゃ、ショコルが貢がれる訳だわ、納得。
お言葉に甘えて、早速行ってきまーす! 調理部隊は後で配ろう。
毎回恒例の部隊周りは、上の階から攻めて行く事に。
取り敢えず書類部隊に足を運んでみたら、エリエスさんとマルスさんの執務室に長い行列が出来ていた。しかも全員がラッピングされた可愛らしい箱を持っている。実に良く似合わない(笑)
…まさかのプレゼント行列!?
背の高い大人ばかりなので先の状況がよく分からないながら、横から乱入するのも気が引けて取り敢えず並んでみる。その間にも私の後ろにも列が伸びていた。行列に並ぶ人たちの隊服はバラバラ。流石はエリエスさんと言うべきなのかな。
少しずつ行列が進んで行き、代わりに渡し終わった人が出て来る。
どうにか執務室に入ると、机に向かって仕事をこなすエリエスさんとマルスさんの机の前にショコルを入れる箱が置かれていた。よく見ると二人の後ろにはショコルで一杯になった箱が山積みにされている。凄っ!
そして、そんな箱と行列の整理をしているのは親衛隊のお兄様達だった。
何やら名乗って箱に入れているのかしらん? そんな声が聞こえる。
「次の人どうぞー」
「あーい」
コーサさんの指示に返事をして中に入って行くと、エリエスさんとマルスさんが書類から顔を上げた。
「コーサしゃん、おなまえ言って箱に入れるのー?」
「いいえ。直接下さい、ユーリ」
「あい、たいちょ」
大きな人達ばかりで前が良く見えなかったからコーサさんに確認しようとしたら、エリエスさんに声を掛けられた。ご本人の意向に従いますよー。
書類部隊の皆様には仕事の合間にでも摘まめる様にショコルクリルにした。全員甘い物大丈夫なのは確認済み。
「…手作り、ですか?」
「リィンママと作ったのー」
「それはそれは」
「いっぱい『だいしゅき』入れといたです」
他の人達みたく素敵な箱包装ではないけれど、愛情は沢山詰まってまっせ。そして、エリエスさんとマルスさんは特別仕様にしてあります。来月のお返しを考えて頑張りました。でへへ。
エリエスさんにショコルクリルを差し出すと、眩しい程の笑顔で受け取ってくれた。眠気とは違う意味で目が潰れそうだよ。
「ありがとうございます。美味しく頂きますね」
「えへへー」
おまけで頭を撫でてもらっております。羨ましそうな視線が集中しておりますが、この役所は絶対に譲らない!
そしてマルスさんにも無事ショコルクリルを渡し、こちらにも頭を撫でて貰っております。
ついでに親衛隊の面々にも約束の義理チョコを笑顔で渡してさっさと退室。
そのまま三階にある情報部隊や清掃部隊にも顔を出したら、やはり隊長達にはショコルの山が出来ていた。
それでも笑顔で受け取ってくれる辺り、皆優しい。
そして、各部隊の会報担当さんにも賄賂をしっかり渡していきますよ。
二階では、近衛・近習部隊の会報担当さんが態々待っていてくれた。情報部隊の会報担当さんが回ってるのを伝えてくれたらしい。
このお二人には、リタの酒場で作ったトリュフを渡す。ついでにロイスさんとグランディオさんの分も押し付けてみた。
「魔王様には渡さないのか?」
「!?」
近習部隊のお兄様の問い掛けに、思わずギョッと目を剥いた私は悪くない。凄い顔だと思う。そのまま無理無理と勢い良く首を横に振りまくると、何故か苦笑された。
いや、魔王様に見知らぬ子供の作ったモン渡しちゃダメだろ。それこそ一流の職人さんのチョコでもないと無理だから。そもそも魔王様の分なんて全く考えておりませんでした。
因みにロイスさんとグランディオさんには捨てられる覚悟で渡してます。この二人には最近お世話になったばかりだし、一応。
「もし次に何かあったら、魔王様にも用意してみると良いかも知れない」
「最近のイベントはロイス隊長から魔王様にも伝わっているからね」
……何か、今、二人揃って恐ろしい事言った?
増々私の表情がとんでもない事になってると思うよ。冷や汗ダラダラだし。
しかも、次のイベントは主に返してもらうのなんですけどー(現実逃避)
「ご、ごきげんよー!(壊)」
取り敢えず、恐ろしい現実から逃れる様に脱兎の勢いで二人の前から去ってみた。
一階に逃げ込み、医務室に入るとヴィンセントさんとバクスさんが何故か待ち構えていた。そして、医務室の一角にはやはりショコルの箱の山。
こちらにはマリタおばーちゃんと作ったショコルパイ。ショコルクリルはリィンママからヴィンセントさんに渡るから、別の物にしてみた。
フォルさんは実は甘い物苦手だから、こちらにはミートパイ。
そしたら、妙に感激された。どうやら朝から甘い物に晒され続けて辟易としていたらしい。
そして、勿論ここでも親衛隊会報担当さんへの賄賂は欠かしません。
そこから設備・鍛冶部隊と経由して目的の面々にしっかりショコルを手渡しして来ました。設備部隊と鍛冶部隊にはもう一つの二月十四日にちなんで追加でプレゼントも渡して来ました。筋肉に映える筈。
この世界のお祭りにも使われるそうです。ちゃんとブツがありましたよ。
使ってもらえる様に「たいちょ達のカッコいいとこ見たいの」とコメントも付けておきました。むふっ。
ルチカさんとカラフさんには如何かと思ったので、二人にはショコル菓子を二種詰めにしておいたけど。
そのまま今度は外に出て別館にお邪魔してみたら、丁度お昼の勤務を終えた目的の面々が揃っていた。ラッキー。
こちらの肉体派にもオマケ付きでショコルを渡し、これにてミッション・コンプリート!
そしてやっと戻って参りました、調理部隊・食堂。
片付けが終わって封鎖はされているが、明かりは灯ったままでホールで何やら貰ったショコルの仕分け作業をしている面々がそこにいた。
食堂一杯にショコルの甘い匂いが広がっている。
「たらいまー」
『おかえり』
とっとこ駆け寄りながら声を掛けると、全員が一斉に振り返って声を掛けてくれた。
「ショコル、いっぱいー」
「おうよ。隊長が三割、お前が二割、調理部隊に五割だな。五割を二人以外のヤツ等で山分けしたぞ」
「! ボクにもあるの?」
「沢山ね。くれぐれも食べ過ぎちゃダメだよ?」
シュナスさんがショコルの山の内訳を教えてくれるが、笑顔のオルディマさんに示された山と同時にしっかり釘を刺されてしまった。
まぁ、食べ過ぎたら鼻血ブーだしね。
頷く私の横で、自分の取り分らしい私以上のチョコの山を前にご機嫌なアルフ少年にも釘を刺した方が良いと思うけど。
「んとね、これ、ボクからのばれんたいんー」
調理部隊には作ったショコル菓子詰め合わせにしてあります。
ニコニコしつつ一人ずつに渡していたら、受け取ったディルナンさんがショコル菓子を眺めて難しい顔をしていた。
「たいちょ?」
「いつか、お前も誰かに本命チョコを渡す様になるのか…」
ディルナンさんが妙にしみじみして言うと、全員がピタリと動きを止めた。
え。随分先の話じゃないの? それ。
そして、どんだけお父さんな心境なんですか。
「…ユーリ、じいちゃんの目に適った男じゃないと許さんぞ」
「ジジイ、何言ってんだ。オレ達全員に決まってるだろう」
「ユーリちゃんにつくおかしな虫はしっかり駆除しないといけないかな」
『………』
オッジさん、どんだけ本気なんですか。
シュナスさん、そんな無茶苦茶な。
オルディマさん、爽やか笑顔の筈なのに黒い靄が後ろに見えます。
他の人達、どんより沈むの止めて下さい。
全く、想像だけでこんな状態になるなんて仕様の無い人達だなー。
「ボク、みんなのお嫁さんになるよー?」
必殺、訳の分かってない子供の振りー。
小首を傾げて疑問形で如何でしょうか。というか、これ以上を私に求めないで。
…でも、揃ってこちらを微笑ましそうな目で見る辺り、どうにか誤魔化せたのかな?
「ねーねー、じーちゃ、お風呂はいろー?」
ダメ押しでオッジさんにお風呂をせがめば、オッジさんが笑顔で頭を撫でてくれた。
各自、自分のショコルを亜空間にしまっていつも通りに大浴場へと向かう。
…私、この人達に認められる男性じゃなきゃお付き合いも出来ないって、結婚できる気がしないのは気の所為じゃないよね。とほほ。




