2月3日節分企画 魔大陸的新年行事らしいよ
顔文字表記があるので横書き閲覧推奨。
もう、何て言うか…目の前の光景を顔文字で示すのなら、「( Д ) ゜ ゜」ですよ。
ゴメンなさい。私の拙い語彙では、この驚きと衝撃を言い表せない。
「うおるあぁぁぁぁぁっ!」
「なんのぉー!」
「くたばれっ、ごるぁっっ」
『へぶしっ!』
「よくもやりやがったなぁっ! これでも食らいやがれえええぇぇぇっっ!!」
私の目の前、北の魔王城の入口広場では現在、紅白の鉢巻きで鬼軍・福軍に別れた近衛・近習部隊を除く隊員達による仁義無き豆まき戦争が勃発しております。
これが魔大陸的新年兼節分の成人男性の伝統的行事、豆まきだとか。えええぇぇぇ……。
魔大陸での新年である土の一月(日本で言う二月)の朔日に餅つきをした翌日(昨日)、ディルナンさんを筆頭に調理部隊の面々が忙しく何かの特別注文品の納品受付や手順の確認をしていた。
不思議に思って聞いてみたら、なんと魔大陸では新年の行事が土の月三日にあるとの事だったのだ。
二月三日の行事と言えば…と思いつつ、詳細を聞いてみたら案の定というか節分的行事でした。
でもこれ、最早豆まきなんて可愛いモノじゃないよ。豆のぶつけ合いと言うのも生温い。冗談抜きでマシンガンレベルの弾幕だと思う。
この際、死者が出ない様に外見は大豆だけど、フニャフニャと柔らかいフニ豆なる特別な豆を使用するのが伝統なんだと実物を渡してくれながらオッジさんが真顔で言ってた。
食べてみたら食感はハードタイプのグミで味は普通に大豆。摩訶不思議なお豆さんです。
…の筈なのに、北の魔王城の兄さん・おっちゃん・じーさまが全力で投げたフニ豆は何故か弾幕化して当たったら人が吹っ飛ぶ威力を発揮してるんですけど?!
あんなの当たったら私なんか普通に死んじゃうから。良くて大怪我だよ(汗)
なので私は戦闘圏外の怪我人用の救護テントにて医療部隊要員として待機と言う名の特別避難中です。だから、ナース服着用中。
因みに鬼軍大将が赤い長鉢巻の設備部隊のヤエト隊長で、福軍大将が白い長鉢巻の鍛冶部隊隊長のジョットさんと二大マッチョ揃い踏みです。筋肉に物言わせた恐ろしくスピードとパワーの乗った豆の弾幕は冗談抜きで頑強な騎士の兄さん達さえも軽々と吹っ飛ばしてます。細身の人なら二、三人纏めて。わぉ。
そんな二人のSFかと思う様な一騎打ちが始まれば、怖がる所か盛り上がる熱血漢共。確かに遠目で見てる分には躍動する二人の素敵筋肉に私も胸が高鳴りっぱなしですよ。絶対に近付きたくはないけど。
調理部隊の面々も福軍として豆で人をブッ飛ばしております。特にオルディマさんが群を抜いてつぉい。
そして、さり気無く鬼軍としてエリエスさんとマルスさんも参戦中。エリエスさんは書類部隊隊員を従え、彼らを時に武器として時に盾として頭脳戦を展開しております。素敵過ぎる。
更によく見ると、ヴィンセントさんとバクスさんも福軍として豆まきに参戦中。ヴィンセントさんがこれまたつぉい。ヴィンセントさんの背中をバクスさんが守ってるし、向かって行った騎士の兄さん達が全く歯が立たずに返り討ちにされております。
因みに豆まきでは魔術の使用は一切認められてないんだそうな。だからなのか魔導部隊は狙われまくっている。まぁ、簡単にやられるシェリファス隊長ではないけれど。他の隊員達も善戦しております。
何はともあれ、北の魔王城の隊員の皆様は魔大陸的豆まきに物凄く楽しそう&生き生きとしてらっしゃいます。これも平和…なのかなぁ?
節分って本当は季節の始まり(立春・立夏・立秋・立冬)の前日の事だけど、江戸時代以降からは立春の前日を指す様になったらしいよー。
季節の変わり目に発生する邪気(鬼)が疫病を齎さない様に、豆(魔滅)を鬼にぶつけて追い払い、一年間の無病息災を願って数え歳分の豆を食べるのが私の良く知る節分の豆まき。
あ、私は豆まき戦争が勃発する前に少し豆を貰って一人平和な豆まきをしておきました。
我が佐藤家ではオーソドックスな掛け声だったので、「鬼は外ー、福は内ー」と捻らずそのままですよ。
外見大豆なのに掴むとフニャリと柔らかなお豆さんで豆まきするのはどこか違和感があった事をこっそりご報告しておきます。
一方の魔大陸では日が暮れたら集落全体の邪気を祓いつつ福も取り入れる為に成人した男衆が鬼軍・福軍に分かれて豆まき(ならぬ豆のぶつけ合い)を行って、その後に豆まき中に女性が準備した豆料理を集落全体で食べるとの事。
まぁ、ご長寿の魔族だ。高齢の魔族が数え歳分の豆を食べるのは確かに厳しい物があるから、理に適ってるよ。北の魔王城じゃヴィンセントさんとオッジさんがその筆頭かしらん。
取り敢えず今回は何の準備もしてない事だし、何も考えずに魔大陸的節分に参加です。この後の豆料理が楽しみ。
日本で節分と言えば恵方巻きが有名だけど、恵方巻きを再現するには材料準備云々よりももっと難しい問題が。…吉方はどこですか?
怒涛の豆まきを終えて怪我人の応急処置をしていたら、調理部隊の面々の炊き出しが始まっていた。
今回の豆料理は、鶏肉とフニ豆のトゥート(トマト)煮と善哉です。全員が全員、甘い物が得意じゃないから両方用意したみたい。
しかも、さり気無く鬼軍VS福軍による餅つき合戦が開始されている。どうやらたった二日で新たな臼と杵をジョットさんとヤエトさんは用意したらしい。返しに入っているのはラダストールさんとディオガさん。この二人はどこまでも静かに有能です。
どっちがより早くお餅を作成出来るかを競い合ってるけど…やっぱり餅つきの早さがオカシイから。
その一方で、オッジさんとディルナンさんは善哉の、シュナスさんとオルディマさんはトゥート煮の仕上げを行い、三馬鹿トリオの兄さん達が盛り付け準備を行い、アルフ少年が配膳の整列を始めている。
応急処置が一段落した所でヴィンセントさんに許可を貰い、ディルナンさんにも確認を取ってからアルフ少年に合流。善哉の整列に回ります。
「おー、ユーリちゃんが整列係かー」
「あい。ご協力おねがいしましゅ」
「ここに並べばいいのかー?」
「こっちはあまーいお豆さんです。しょっぱいお豆さんはにーにの所でしゅ」
『甘いお豆さん(笑)』
気さくに声を掛けてくれた騎士の兄さんに説明したら、周囲にいた各部隊の隊員達が爆笑した。何故だ。
「おい、こっちは甘いお豆さんだとよ」
「しょっぱいお豆さんはあっちらしいぜー」
首を傾げている間に、説明が見る見る間に広がって整列が進んでいく。
「それにしても甘いお豆さんなぁ?」
「とっても美味しいですよー。つきたてのおもちもしあわせなの」
「そうか、あれが入るんだな?」
「あいっ」
この世界に餡子の概念は無かったから、甘い豆と言うのが想像つかないのだろう。
しかも、お餅も初体験。餅つき合戦は妙に盛り上がっている。そんな光景に、並んでる隊員達も興味津々だ。列も明らかに善哉の方が長い。
善哉、美味しいのよ。
餅つきで餡子、お餅のファンは確実に生まれている。アルフ少年がその筆頭だ。
小豆の旨味と幸せな甘さが詰まった温かい汁に、贅沢にも搗き立てのお餅が入った善哉。
これで更なるファンが増えるに違いない。そうすれば、餅つきがまた行われるでしょ。
本当に善哉が楽しみで仕方無い。本当は整列よりも早く貰いに行きたかったりする。考えたら涎がー。
程々に列が伸びた所で折り返し、折り返し地点の書類部隊の兄さん達に目一杯の愛嬌を振り撒いて列の説明と最後尾の案内をお願いする。
愛しの善哉ちゃんとの出会いまであと少し。私、頑張る!
鬼軍の勝利で無事に餅つき合戦が終わり炊き出しの配膳が始まると、人並みに巻き込まれたら危ないので炊き出し用のテントに引っ込む。ほぼ同時にアルフ少年も戻って来ていた。
「ユーリのお蔭で整列が随分楽だったな。ありがとなー」
「どいたちましてー」
「…っ、ユーリ!」
笑顔でお礼を言うアルフ少年に同じく笑顔で返すと、何故かアルフ少年に抱き抱えられてしまった。
「にーに?」
「何だよ、この可愛い生き物っ。ウチの子一番っっ」
…アルフ少年が壊れた様です。
でも役得。ドサクサ紛れに甘えまくってやるー。すりすり。
暫くアルフ少年と仲良ししてると、配膳列が落ち着いたのかオルディマさんが善哉を私とアルフ少年に持たせてくれた。
お餅をみょーんと伸ばしつつハフハフ言いながら食べていると、アルフ少年はさっさと食べ終えて鶏肉とフニ豆のトゥート煮までちゃっかり食べてラダストールさんとディオガさんと交代してしまった。
私が善哉一杯食べている間に、どんどん調理部隊の面々が交代で豆料理を食べていく。
トゥート煮は一人前はとても食べきれないのでオッジさんにあーんで一口貰った。
加熱したフニ豆の食感は普通に大豆の水煮状態だった。やはり摩訶不思議なお豆さんだ。でも、うまうま。
炊き出しで準備した物が全部食い尽くされると、自然解散の流れになる。
調理器具や片付けの必要な物が片付けられると今日はこれでおしまい。広場の清掃は、明日の朝一で清掃部隊が暗躍するらしい。
…暗躍?
お腹が膨れたら途端に眠くなるのがお子ちゃま体質。
目を擦りながらアルフ少年に連れられて就寝準備を済ませると、丁度部屋に戻って来たディルナンさんに寝かしつけられていつの間にか眠っていた。
夢の中で今日の豆まき(?)に巻き込まれる夢を見て魘されつつも、初の魔大陸的イベントを体験して楽しかったです。まる。
土の一月朔日に行われた餅つき小話は、活動報告(1月2日、4日)にこっそりUPしております。




