12月25日クリスマス企画その後 お菓子ぱーてぃー
クリスマスからすっかり日が経ち、新年(魔大陸では二月一日)が近付いて来ております。
クリスマスに発行した『ゆっくり済ますおかしこうかん券』の出番がいよいよやって参りました!
オルディマさんが券を配った人達に声を掛けてくれて、今日、食堂が片付け終わる頃に全員一斉に来てくれるんだって。オルディマさんってばなんて良い人なんだろう。
と言う訳で、今日の仕事終わりの後にお菓子パーティーにします!
食事の提供が一段落した所で、片付けの前にフライヤーを借りる事にした。
今日の食事での揚げ物使用はポテトのみ。しかも北の魔王城はこまめに油を交換するから、十分綺麗な油です。
フライヤーの前にいたディオガさんにお願いして使わせてもらおうとしたら、ディオガさんが揚げてくれる事に。…まぁ、外見子供だもんね。でも何か悔しい。
亜空間に収納していた簡易アップルパイとチョコバナナパイを取り出し、美味しそうなきつね色になるまで揚げてもらう。
ほんのり甘い匂いを嗅ぎ付けて近付いて来ようとしたアルフ少年に盛大なる牽制をし(「こっちきたら、にーに嫌いよー」って拗ねた振りして言ってみたら速攻でUターンした。案外使える手だ)、しっかり油が切れた所で、完成品を洗ってシートを敷いたトレーに盛り付けて再び亜空間へ。
全部収納すると危なくない様にフライヤーから離れた所へディオガさんに連れて行かれたので、お礼と一緒に『大好き攻撃』しておいた。
北の魔王城の保護者達は、何故か『大好き攻撃』をするとそれは素敵な笑顔をみせてくれるので、どうやらお礼として有効と見てます。最上級のお礼には『ほっぺにちゅー攻撃』を食らわせます。これは殆ど使わないけど。どうでもいい余談。
さて、お菓子交換券のお菓子の準備はOK。雑貨屋さんで紙皿と紙コップと紅茶、普通のお菓子も出張お菓子屋さんのおっちゃんからしっかり仕入れたので、直ぐに準備出来ますよー。
食堂の片付けが終わる頃、厨房からホールにアルフ少年と共にディルナンさんに放出されてテーブルとお菓子の準備をしていたら続々とおかし交換券を手にお客さんが食堂にやって来た。
書類部隊からはエリエス隊長とマルス副隊長と親衛隊とやらのコーサさんとイルムさんとタグさん。
医療部隊からはヴィンセント隊長とバクス副隊長とお薬指導員のフォルさん。
鍛冶部隊からはジョット隊長とカラフ副隊長に服飾担当部門のお兄さん達。
設備部隊からはヤエト隊長とルチカ副隊長。
情報部隊からはヴァス隊長。
他にも渡せたらと思ったけど別館には勝手に入りづらいし、全員には会えなかった。
まぁ、基本忙しい人達ばかりだから仕方無いかな。
次の他の機会こそはとリベンジを狙っております。
「まぁまぁ、こんなに準備してくれたの?」
「カラフおねぇちゃま! 来てくれてありがとうございましゅ!!」
「ユーリちゃんのお誘いなら余程の用事が無い限りは意地でも出席するわよ」
「おねぇちゃま、だーいしゅきっ!」
「アタシも大好きよ、ユーリちゃん!」
来るなり、子供の用意する拙いお菓子パーティーにも関わらず喜んで見せてくれるカラフさんってば何て良い人だ。
思わず『大好き攻撃』しつつ飛びついてしまった。完全なる俺得です。えへっ。
調理部隊の面々が片付けを終えてホールに出て来た所でお菓子パーティースタートです。
お菓子交換券と交換で簡易パイを乗せた紙皿を渡し、好きな席に座って貰う。
揚げたてで亜空間に入れておいたので、熱々ですよ。
一通り行き渡った所で、残ってしまった簡易パイのトレーも他のお菓子と同様にテーブルに乗せて私も座る。…下座に行こうとしたら、何故かお誕生日席に補助椅子が用意されてました。
慣れた様子でディルナンさんに座らされた所で、オルディマさんとシュナスさんが紅茶をさっさと用意して配ってくれた。
あれ? 私がホスト…。
「よし、じゃあ”いただきます”」
トドメと言わんばかりにオッジさんが開始の音頭を取ってしまった。
あ。ちょっと待って。
「「「「熱っ!」」」」
そして何も言う暇が無かった所為か、案の定と言うか、熱々のパイの餌食にアルフ少年と三馬鹿トリオの兄さんが選ばれた。
「…熱ぃけど、コレ美味い。パイだよな」
「にーに、ホント?」
「ホント。皮が普通のよりパリパリしてて食感良いし、ポムルジャムが絡むと美味い。オレ、も一個予約な」
甘味には意外とうるさいアルフ少年の合格のお声に、それを知る調理部隊の面々が感心した表情になる。
三馬鹿トリオの兄さん達だけは口の中火傷でヒィヒィ言ってたけど。
「ユーリちゃん、是非コレのレシピを頂きたい!」
「いーでしゅよ。ひきにくスープの皮にすぱいす混ぜたジャムと、小さく切ったショコルとバナナン入れて揚げただけでしゅから」
「ふむ。次の会報はまた人気になるだろうな。そんなに簡単なら私も作ってみたいと思うぞ。…材料取扱店に記事の旨を申し出る様にしておいた方がいい」
「了解です、ヴィンセント隊長」
コーサさんの思わぬ申し出に、さっさと頷く。念の為に紙に書いて渡そうかな。
そう思ったら、ヴィンセントさんがコーサさんに何か言っていた。材料、別に大層な物は使って無いんだけどな。
残っていた簡易パイ争奪戦が繰り広げられる中、気付けば他のお菓子も残り少なくなっていた。
「…ユーリは美味しい物を見付けるのが上手だな」
一口チョコやクッキー等まだ在庫のあったお菓子を出していると、ヴィンセントさんが紅茶を飲みつつ声を掛けてくれた。
「おいちーのだーいすきでしゅ」
「全部自分で食べたのかい?」
「おかしのおじちゃんが味見させてくれるです。あとは、ひょーばんを教えてもらいましゅ」
美味しい物食べたかったら、自分でのリサーチは必要不可欠ですから。
それに、新しい物を開拓するのって凄くワクワクする。
不味かったらショックだけど、本当に美味しい物を見付けた時の感動を知ったら止められない。
「くだものやさんも聞けば美味しいのおしえてくれましゅよー」
「そうなのか? では、困った時はユーリに聞く事にしよう」
「あい」
ヴィンセントさんならマル秘情報まで教えちゃうかもしれないなー。
取り敢えず、出したばかりのクッキーを摘まみつつにへらっと笑っておいた。
食べる物が粗方無くなった頃、私はすっかりオネムです。
気付けばあっという間に三馬鹿トリオの兄さんが片付けてた。…この人達、こんなに凄いのに何でいつもは残念感に満ち溢れてるんだろうか?
眠くてホワホワしてたら、お客さんな面々が笑いながら頭を撫でて「おやすみ」を言い残し、食堂を後にして行った。どうにかお見送りだけはしました。
…ダメなホスト役で本当にゴメンなさい。
その後オッジさんに抱えられてどうにかお風呂に入り、ディルナンさんにバトンタッチして抱き抱えられた所で「おやすみなさい」を言うと全員が返してくれた。
「おにいちゃま達ー」
「「「ん?」」」
すっかり三馬鹿トリオの兄さん達は一括りで呼ばれるのに慣れている。直ぐに反応が返って来た。
「おかたづけ、ありあと…。………だいちゅき」
眠気に完全に飲み込まれる前にどうにか言うが、それが完全に限界だった。
ディルナンさんの抱っこに安心しきって意識を失う寸前、ばっちーん! と痛そうな派手な音と三馬鹿トリオの兄さん達の絶叫を聞いた、気がした。




