保健室にて
あーまじで痛い。
保健室には偶然養護教諭が不在だったので、金城から強制的に手当てを受けていた。
…やっぱり不良だから怪我が多いのかな?
妙に手際が良いし。
「…終わったぜ。」
相手の低い声に顔を上げ、由香利は小さく頷き礼を言う。
「ありがとう。そろそろ行かないと、あ、先生には言わないから気にしないで?…あと、ちゃんと授業に出た方が良いよ。」
ついでとばかりに早口で言い終え立ち上がりかけたが、金城に腕を取られ足を止める事となる。
「何?」
…殴られる?
ヤバい…えっと、男の急所は…
相手が知れば不穏になるだろう事を思い浮かべていると、思っているよりも静かな声が降り注がれる。
「…何で俺を助けた?」
…ん?
「え?別に、思わずっていうか…体が勝手に…」
正直に答えた由香利だが、金城はその答えに納得できないのか眉をひそめる。
「…見返りでも求めたか?」
…………………はあ?
何それうざっ。
その言葉に機嫌を急降下し、思わず相手を睨み付けた。
「そんな事の為に、わざわざ危険な真似するほど馬鹿じゃないから私…。」
今までとは異なる由香利の冷たい声音に、金城の表情に初めて戸惑いが生まれる。それと共に掴まれていた腕の力が弱まり、自然に離されていた。
「…お前、名前なんつんだよ?」
…何急に。
強面だが整った顔立ちの金城に見つめられ、速まる鼓動に由香利は視線を下げる。
「有川 由香利だけど…そっちは?」
「…金城 昴だ。昴で良い。」
由香利の問いに何故か口調の和らいだ金城に不思議に思いながらも、とりあえず会話を続けていた。
「昴君、ね。あ、私一応隣の席だから、よろしく。」
「…そうかよ。つうか、君はいらねえよ気持ちわりい。」
…呼び捨て?!
初めてなんだけど…
顔色の変わった由香利に、金城は不思議そうに頭を傾げた。
「何だ?嫌かよ?」
何故か不機嫌になった金城に慌てて両手を振り、嫌では無い事を伝えようとつい焦って考えずに口走ってしまう。
「いや、あのさ!私今まで男の子と名前呼んだりしなかったから、緊張するっていうか?」
…ああ~。
彼氏居ないの暴露してる様なもんだよ…死にたい。
「…へえ。」
由香利の気持ちとは裏腹に、金城の表情には笑みが浮かんでいたのだった。
「…由香利、か。」
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