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私は平凡周りは非凡   作者: 雪香
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赤髪君と




一ノ瀬と教室に入ると、席を教えて貰いやっと腰掛ける。

委員会の事を考え憂鬱になりながらも、教科書を鞄にしまっていく。

名前書いた方が良いのかなあ…等とりとめなく思考に耽っていれば、前の席に座っている生徒が振り向いて来た。


「…来れたんだね?もう大丈夫なの?私、藤野 夏希。よろしくね。」


柔らかそうな髪質のショートカットでふんわりとした雰囲気の女子に、由香利も安心して微笑む。


「…こちらこそよろしく!私は有川 由香利だよ。色々教えてくれると助かるなぁ?」

「勿論。」


可愛らしい外見とは異なり、ノリの良い藤野の性格に由香利もすっかり打ち解けたのだった。尽きない話しの中で、由香利は空いている隣の席に目を向けた。


「そういえば、私の隣ってどういう人?」


ああ、と声を上げた藤野は声を潜めると、辺りを見渡して何かを確認し顔を近付けてくる。


「…実はね、その席は不良君なの。」


…え?

一瞬、不良という言葉に末の弟を思い浮かべた。


「でも、此処公立だよ?それにまだ新入生なのに…。」


最もな由香利の言葉に、藤野も曖昧に笑う。


「…うん、そうだよね。でも、凄かったよ…髪が真っ赤で、アクセサリーはじゃらじゃらで…。態度は悪いし。…でも親が結構偉いみたいで、誰も言えないらしくってさぁ?」


…うわぁ。

由香利は眉を寄せる。


そんなのが隣の席かぁ。

やだなぁ。

私みたいな平凡、パシらされそう。


急に痛み出す胃腸を誤魔化す様に上から押さえ、由香利は肩を落とす。

その時授業開始のベルが鳴り、間も無く入って来た教師に一度話を中断し、藤野は体を前に向けて「またね」と囁く。教師は出席を取り初めると、空いている由香利の隣に目を向けた。


「…金城は休みか?」


教師の言葉に、生徒の幾人かの声が上がる。


「…朝姿は見ましたー。」

「たぶん来てまーす。」


生徒達の声に教師は深く頷き、礼を述べて思っても居ない言葉を投げ掛けた。


「ふむ。そうか…よし、ちょっと学級委員探して来てくれないか?」


…うわ、まさか?


「誰だったか?このクラスは…?」


手を挙げてくれ、との言葉に仕方なく由香利は上げる。一緒に上げた一ノ瀬と目が合うと、なんとなく目配せをし笑みを交わす。


「じゃあ、二人に頼む。見当たらないようなら切り上げてくれ。」

「…はい。」

「分かりました。」


二人は返事を返し、教室から出て行った。今日が初日だと言うのにそれは考慮しない教師へ少々不満は無い募るが、一ノ瀬君の存在にぐっと堪える。


「…私、まだ校内把握出来てないんだよなぁ…。」


由香利の困った様な声音に、一ノ瀬はすぐに頷く。


「…そうだよね。 でも、俺も結構まだ分かってないんだけど…。」


そこまで言うと、何か考えているのか少し口を閉ざしてまた由香利に視線を向けた。


「…じゃあさ、俺が2、3階探すから、有川さん1階と外側お願いしても良いかな?」


…あ、校舎内分からないから、気を使ってくれたんだ。


「うん、分かった。見つから無ければ教室に戻れば良いよね?」

「そうだね。ザッとで良いと思うよ。」


そう言うと、由香利と一ノ瀬はそれぞれ分かれて探す事になった。由香利は一つ一つ教室を覗きながら、まだ分かっていない校舎内を覚えて行く。


…てか、不良君本当に学校来てるの?

なんだっけ、赤い髪でアクセサリーじゃらじゃらだよね。


校舎内を一周し見終わると、上履きから靴を履き替えて裏庭へ足を向ける。


よし、これで終わるぞ。


裏庭を見終われば教室に戻れると思い、すっかり気を抜き近づいた時だった。


「…てめえふざけてんじゃねぇぞ!」

「っぶち殺す!」


不穏な怒声と共に、見るからに穏やかでは無い現場を見つけてしまった。


「…金城ぉ!!てめえ!」


…金城?!



由香利は慌てて、壁に身を寄せて身体を隠し様子を伺う。 数人のガラの悪そうな生徒に囲まれた、赤い髪の男子を目にして眉を寄せた。


…あれだよね?」

ヤバそうだし、誰か呼んで来ないと…。


誰か助けを呼ぼうと踵を返しかけた時、金城の背後に太い木の棒を持った男が振りかぶり襲いかかる。

由香利はその瞬間何も考えず体が動いていた。妙に周りがスローモーションに見える。


振りかぶられた木の棒が、由香利に気づいた男が咄嗟に勢いを殺したとはいえ、その額を打ち嫌な音が響く。直後その場がざわめき立つ。


「何だよ…この女!」

「知らねぇけど…ヤバいだろ…。」


男達が口々に騒ぎ出すと、1人が逃げたのを皮切りに全員その場から走り去って行ってしまった。

その場に残った金城は、額を押さえて踞る由香利を戸惑い気味に見下ろす。


「…おい。お前、大丈夫かよ?」


…痛い痛い!大丈夫なわけないでしょうが!!


金城は何を思ったのか、由香利の腕を掴み踞っていたのを無理矢理立たせる。


「…ちょ、何を…いっつ~!」

「…いてぇのか?」

「っ痛いに決まってるでしょ?!」


ついつい弟と話している様な気分になり、声を上げて目を合わせた。


「………そうか。」


…え?怒った?


勢いで出てしまった言葉に不味いと思い固まっていると、金城は流れる様な動きで由香利を軽々と背負ってしまう。


「…!ちょ、何すんの?!」

「うるせぇ、黙ってろ。」


はぁ?何こいつ!


されるがままの由香利は、あまりの状況の変化に戸惑いそのまま金城に身を任せる事になったのだった。




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