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私は平凡周りは非凡   作者: 雪香
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姐さん?!

閲覧ありがとうございます。


午後の授業を受けて、何事も無くHRが終わった。授業中は何だか夏希が妙に落ち着きが無かったが、気にしない様にしていた。


ある爆弾発言を聞くまでは…。


「……ええ?!」


下校時間となり、帰りの支度をする由香利は、人少なの教室で夏希に呼び止められ、驚くべき発言を耳に入れてしまう。


「…桐島先生の事、好きなの?!」


しー、と慌てて夏希が人指し指を立てて、由香利も声を抑えてもう一度聞いてみると、照れながらも「…うん」と返される。

へえ~。生徒が教師に恋なんて、何だかドラマみたいだな。


「あの、この事は秘密にしてね?お願い…。」


顔を真っ赤にして俯く相手を可愛いと思うも、由香利には少し困った事があった。

…先生に、お弁当作るって言っちゃったよ!えーっと、譲る?いやいや、そうすると先生の過去も説明しないとだし。うわ~困ったな。


「…由香利?」

「え?!…あ、うん!勿論ひみつにするよ。」

「うん、ありがとう。」


黙り込んだ由香利に不思議に思ったのか、夏希が首を傾げ問い掛ける。それに慌てて頷くと、安堵して礼を言われた。


「…じゃあ、あの…今日先に帰って大丈夫だよ。」


直ぐに夏希がモジモジと指を胸の前で絡めて言ってくる。と言うのも、授業で分からない所を聞くという体で、距離を縮めるらしい。

か、可愛い!友人の女子力?に感心しつつ、快諾して別れる事となったのだった。


「バイバイ~。」

「また明日ね!」


手を振り返して校門を抜けて、駅へと向かって行く。友達の恋を応援か~。何か青春って感じだよね。ウンウンと一人頷き、周囲の景色を眺めて微笑む。


良い天気だなあ…。


「…こんな日は洗濯日和だね。」


そんな主婦の様な事を呟いた直後、後ろから駆け寄る足音に気付き足を止めた。


「…由香利!」

「え、一ノ瀬くん?」

「じゃなくて…?」

「…千尋、君。」


うん、と笑う相手の笑顔が眩しい。このイケメン力が恐い。


「呼び捨てで良いよ、金城の事も名前で呼んでるみたいだし?」


いや、昴は関係ないじゃん!由香利の胸中が顔に出ていたのか、千尋はクスクスと笑った。


「…やっぱり可愛いな、由香利は。」


可愛い!?

通常の女子なら顔を赤らめる所だが、言われ慣れない由香利は頬を引き吊らせてしまっていた。


「千尋君は、ちょっと変だと思う…。」

「ん?」


微笑を浮かべて小首を傾げる様さえ、絵になるのが驚きだ。だから、顔が良い人は苦手なんだよね。あ、弟も含まれるか。穏やかに話しかけてくる相手に適当な相槌を打ちつつ、思うのは…彼は、ただ気まぐれに関わってるのだという事。


あの夜にちょっと雰囲気に酔って、距離が近くなっただけ。所詮は、もっと可愛くて釣り合う子と付き合うだろう。…今だけだよね。

「………あれ?」

「…まったく。」


駅に着く直前、二人が歩く歩道の横に停まる黒塗りの高級車。


うっわ~!これって、うん千万する車だよね。目を丸くする由香利の隣で、高級車から出てきた人物に溜め息を吐く千尋。


高柳(たかやなぎ)、今日は歩いて帰ると言った筈だが?」


いかにも高そうなスーツに身を包む30代程の男性は、冷静に頭を下げる。


「申し訳ありません、坊っちゃま。旦那様がお呼びでいらっしゃいますので。」


ぼ、ぼっちゃま!やっぱり千尋君って御曹子なんだね。

使用人らしき男性の言葉に、千尋は眉間に皺を作り仕方無さそうに頷く。


「…まったく、タイミングが悪いな。分かったよ。」

「ありがとうございます。」


使用人が恭しく車のドアを開けようとした時、千尋が由香利に振り返る。


「由香利、良ければ乗って。送るよ。」

「え?!あ、ううん!もう駅だから大丈夫だよ。」


絶対こんな高級車乗ったら寿命が…なんて言えないけど。

由香利の言葉に残念そうな千尋だが、最後は微笑んだ軽く手を振る。


「じゃあ、また明日。」

「…うん、バイバイ~。……………………………え?」


手を振り笑みを返すと、物凄い視線を感じて目を向けると、使用人男性の鋭い視線。ブロロロ…と去っていく車を見送り、少し固まった。


あれか?大事な坊っちゃんに馴れ馴れしくすんなって事?金持ち恐い。由香利の千尋への心の距離が開いた瞬間である。


さーてと、そろそろ電車に…。


「そこの女子高生!待て!」


駅の改札を通る時だった。ふいに呼び止められて、かなり嫌な予感がした。何なの?今日は厄日?!


「…何ですか?」


チラリと視線を送り、今度は本当に不思議に思い相手をじっと観察した。

赤?青?緑?

第一印象は正にそれだった。中学生らしい彼らは、学ランに赤、青、緑色の髪に染めていた。学校で怒られないのかな?冷静にそう思うのは、彼らが中学生ぐらいだからか、敵意を感じないからだと思う。


由香利の視線を受け、次に取った彼らの行動に由香利は思考が止まる事となるのだった。


「「「どうか俺達の姐さんになって下さい!!」」」






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