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私は平凡周りは非凡   作者: 雪香
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新入生レクリエーション?


学級委員と呼ばれ、逃れられないと判断した由香利が立ち上がると同時に千尋も立ち上がる。


「じゃあ、有川と一ノ瀬は書記を頼む!」


そう言う桐島は由香利にチョークを、千尋に一冊の冊子を手渡す。


板書かあ。チョークで書くのって苦手だけど…しょうがないか。千尋君のあの冊子何だろう?何々?新入生レクリエーションについて?


「では、レクリエーションだが…毎年内容は違ってな。今年は、林間学校になった!」


元気良く言い切った担任を他所に、生徒の雰囲気は暗い物となる。

林間学校…か。えー。山?山登り?


とりあえず、林間学校とだけ書いておく。不満そうだったり、面倒臭げな表情が多い中、何故か夏希は目を輝かせて桐島を見つめていた。そんな最中、冊子に目を通していた千尋が声を上げる。


「…先生。林間学校は、泊まりですか?」


そういえば…。千尋君は家の手伝いもあるから、重要だろうな。

実は私としても、男子だとしても家に中学生だけを残したくないし。

しかし、願いという物は簡単に打ち砕かれるのだ。


「うん?今回は、二泊三日だぞ。あ、おやつは特に制限しないからな。」

「…えー。」

「マジかよ!」


って…二泊三日?!いやいや修学旅行じゃないんだから。でも行事だから仕方ないか~。

千尋もそう思ったのか「分かりました」と小さく頷いていた。由香利が板書を終えると、桐島が「そこでだ」と声を張り上げる。


うん。声がデカイ。


「今からグループ分けを行う。えー、5人のグループが7つ出来ると思うが、好きなメンバーで作って見てくれ。何かあったら、相談するように!」


桐島が窓辺の椅子に腰掛けると、生徒たちも次第に動き出す。

さてと、どうしよっかな?

グループ分けと書き終えた由香利がチョークを置いた時、後ろから聞き慣れた声が掛かる。


「ねえ、一緒に組もう?」

「あ、夏希!うん、勿論。」


にこっと可愛い笑顔を向けられ、由香利は直ぐに快諾して笑みを返す。

あと、3人だっけ。


「由香利。俺も入れて貰っても良いかな?」


レクリエーションの冊子を持った千尋の爽やかな笑みに、由香利の瞳が瞬いた。


「え?千尋君?」

「良いかな?一緒のグループの方が、何かと楽だろうし。藤野さんも良い?」

「私は別に良いけど…。」


理由としては可笑しくは無いので由香利は特に深く考えず答えるが、夏希は千尋の表情に何か感じたのか含み笑いを見せる。


「ふーん。そっかあ…勿論、いいよ!」

(あの入学式から告白され続け、でもガードの固い一ノ瀬君が女子を名前で呼ぶなんて)


何で、夏希笑ってるんだろ?え?私、何かした?


「ありがとう。じゃあ、よろしく。…これで3人かな?あと、二人だけ…。」

「由香利、お前の所に入れろ。」


千尋の言葉が終わらない内に、一人の人物に遮られた。


「昴。え?ここで良いの?」

「ああ。こんなんくっだらねえが、お前がいるんなら行ってやる。」


酷い言い草だが、参加しようとするなら協力してあげないとかな。不良だから孤立してるみたいだし?この機会に、友達でも作れる様に手伝ってあげるか。


本人が聞いたら怒りそうな、あまりにもな考えである。千尋と夏希にも聞くと、直ぐに了承を得られた。その後二人で何か囁き合っているので気になるが、敢えて気にしないで置こう。


(一ノ瀬君、ライバル出現だよ?頑張らないと。)

(うん。藤野さんも、協力してくれる?)


良くわからないけど、仲良いんならそれで良いけど。ちょっと寂しいんですけどね。


「…おい。あと一人なんじゃねえのか?」


つまらなそうな昴の発言に、3人は思い出した様に頷く。


「あと一人かー。」


周りを見渡せば、大体のグループは出来上がっている様だ。


「…あ、あの人はどう?」


夏希が指を差した方を見れば、一人の男子生徒が目に入る。


「ああ。立花 陸君か。」


千尋の呟きにインフルエンザで休んでいた由香利は首を傾げ、サボってばかりの昴は眉根を寄せた。立花という生徒は、グループ分けに全く関心が無いようで無表情に窓の外を見つめている。良く見れば黒い髪を綺麗に切り揃えられ、瞳は涼やかに切れ上がっていた。


そこで担任桐島の「あと5分ー!」という声が聞こえた。

あ、これは急がないと。


「とにかく、あと一人だから聞いてみるよ。」


時間の為、立花に近付き肩を軽く叩いてみれば、無表情に見返される。

ん?これは…。

無表情だが、相手の瞳には戸惑いと疑問が浮かんでいた。

もしかしたら、立花君って…。まあ、良いか。


「あの、良かったらうちのグループに入らない?一人足りなくて。」


なるべく好意的になる様に柔らかく言い終わると、立花が不思議そうに由香利を見つめ少し間を置いてから口を開く。


「…良いんですか?」


それは思っていたよりも、ハッキリとした声であった。




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