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私は平凡周りは非凡   作者: 雪香
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波乱の朝食

遅くなりました。閲覧ありがとうございます。


案の定、薄目を開けて父を睨む四毅と母を冷たく見る三弥。


「…うるせえ、クソ親父。」

「…止めてくれる?母さん。」


やっぱりね!

「反抗期~!」と騒ぐ両親に、溜め息を吐き思ったままを口にする。


「…だから反抗期じゃないって。思春期の男子をいきなり起こすって、無理に決まってるでしょ?」


頼れる娘にビシリと言われれば、ショボンと萎れる両親。


「でも、由香利ちゃんは大丈夫でしょ?」


由香利は、弟達に布団をかけ直す。


「当たり前だよ。母さん達がほっといた間、二人を見てたのは誰ですかね~。」


少しだけ棘を付けてみる。由香利ちゃんなら任せられると、小学生の時から弟達の世話をさせられたのだ。少し位文句を言っても良いでしょ。しかし、由香利の遠回しな文句は違う方向へ行ってしまった。


「…由香利ちゃん。」

「…由香里。」


ウルウルと眼に涙を溜める両親、それに戸惑う慎二。

や・な・よ・か・ん。


「ゆかりいいい~!!」


ガバリと、父に抱き締められる。

ギャアアア?!


「そうだよな~。由香利だって、甘えたい年頃なのに…ごめん~!」


隣では、止める事もせず鼻をかみウンウンと母が頷く。

いやいや。もう高校生なので、そんな時期は遥か昔です。さようなら。


抵抗も空しく、父に更に力を強められると、部屋から出てきた隆一と慎二の視線が恐ろしい事になっていた。

気付け、バカップル!ああ、双子まで起き出したし!

妙な空気になる室内でアワアワと慌てる由香利だが、やっと天の助けが現れた。


「…おはようございます。有川様、ご朝食の用意を致してもよろしいですか?」

「…お願いします!」


何とか返す自分に拍手をしたい。


「お腹が空いたんだ~。」と二人で笑う両親に、脳内サンドバックの刑に処すべきだと思う。


やっと落ち着いた頃、浴衣から私服に着替えた面々は、ゆっくり朝食を口にする。

勿論、両隣は双子にキープされています。はあ、大変な日曜日だよ。誰か助けて下さい。普段の休みといえば、思う存分睡眠を摂っていた筈だった。私の安眠を返して欲しい、切実に。


既に1日分は精神力を消耗して朝食を食べ終わり、荷物を持って最終チェックである。通常運転でイチャイチャする二人を放置し、慎二と隆一は各部屋を見直す。


「じゃあ、行こうか。」


まだ少し疲れているが、何とか笑顔を張り付けチェックアウトの為、ロビーのカウンターに向かう。


……あれ?

ロビーの前には、どう見ても従業員ではないスーツ姿の人物が。


「…………。」


明らかに三弥の雰囲気が変わり、由香利は知らず汗を掻く。


「おはよう。今から帰るの?」

「…あ、おはよう。うん、そうだよ。」


なんとか笑顔を向ける。三弥の表情も怖いが、他の弟も表情が無くなっている。


さーて、さっさと帰ろう。


「あらあ?由香利ちゃんの知り合いなの?格好いい子ねえ。」


のほほんと首を傾げる母に、一ノ瀬は「初めまして」と微笑む。


「一ノ瀬と言います。由香利さんとは同じクラスで、一緒に委員会もしています。」


その笑顔は充分年上の女性もときめく物だったようで、母も「あらあ~。良い子だわ。」と見惚れている。父はそれを見て少しむくれているだけなので、かなりほっとした。


よかった…昨日の事覚えてないかな。

…と思っていたのだが。

空気の読めない父が声を上げた。


「…あれ?君って、昨日由香里と一緒に居た子じゃないか。もしかして、彼氏なのかい?」


父の言葉にその場の空気が凍る。

わあ。息が出来ない。

顔を上げられない由香利を余所に、一ノ瀬は爆弾を投下した。


「いえ。でも、そうなったら良いなと思っています。」


それはそれは、爽やかな笑顔だったそうである。この時、由香利はときめくより、本気で心臓が止まりかけたそうだ。





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