表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は平凡周りは非凡   作者: 雪香
22/34

ゲームバトル

ただ遊んでいます。


三弥といちご牛乳を飲みながら、先ほど一ノ瀬にこっそり囁かれた事を思い出す。


『もし来られたら、10時にロビーに来てくれる?』


……10時かあ。結構微妙な時間だな。四毅と慎二は寝てないかもしれないし。うーん…。


その思案は顔には出さない様に、三弥の手を引いて弟達の居るだろうゲームコーナーへ向かう。卓球コーナーへ着くと、なんとなく若い女性客の視線が集まっている。理由はたぶん、いやきっと想像通りだろう。


ほーら。やっぱりね。


少し…いやかなり嫌だったが仕方なく三弥と卓球台に寄り、熱中する三人を見た。浴衣姿で意外と熱中する三人は、隆一対慎二&四毅で中々良い勝負となっている。更に近付けば、三人が由香利に気づいた様だが、打つ手は止まらない。勿論それをただ見ている由香利では無い。台のミットの前で早口で叫ぶ。


「はい!古今東西、草冠の漢字は!」


由香利の瞬時の追加ルールを咄嗟に判断し、隆一が打つ。


「…夢!」


焦りつつ慎二がスマッシュを決める。


「えーっと、草?!」


それを隆一が素早く打ち返す。


「花!」


四毅が迷いつつ構え当てた。


「…stem!」


ボールは隆一のよこを跳び後方へ。 敗けを認めボールを拾い、息を整える隆一は眉を寄せる。


「…お前、それ卑怯だろ?」


兄さん怖っ…と言う慎二の横で、四毅はニヤリと笑う。


「別に日本語で、とは言って無かったと思うけど?」


ほーう?と言いつつ、四毅の頭をグリグリと撫で潰す長男の目は怖い。


…おとなげ無いぜ?隆一くん。


とりあえず隆一を横に押し出し、台の前を陣取る。隆一は少し不満顔だが、由香利には口答えはしないので黙って場所を譲った。

隣では三弥もラケットを構える。三弥と由香利対慎二と四毅での対戦となり、隆一が審判を担う。勿論男子の力に敵わない由香利に向けては、力を弱めて打つ相手側。上手く続くラリーに、チラリと審判の隆一に視線を送る。


「隆~、お題!」

「分かった。…」


由香利の言葉に頷き、一瞬思案し口を開く。


「…お題、5文字でしりとり。」


慎二が固まり、直ぐに打つ。


「…え?!ユーラシア!」


三弥は淡々と軽く打ち返す。


「アイランド。」


四毅はぐっと言葉に詰まるがギリギリ叫ぶ。


「…っドライヤー!」


由香利は迷いながら強く打つ。


「やかたぶね!」


由香利の打った玉を片手で止めた慎二は、小首を傾げる。


「…ドライヤーって、あ…じゃないの?」


ああ、と四毅もそれに賛同し頷く。

…むむ。これは負けを認めるべき?いや。

由香利はビシッと手を上げて隆一に向く。


「審判、ドライヤーは゛や″でも゛あ″でも良いと思いませんか?」


うんうんと三弥も頷く。隆一はどちらでも良いと思うが、姉の中の株を上げる為思いきり寄せた。


「確かに、間違いじゃないな。」

「ほら?」


えー、と不満そうな二人にだめ押しをしておく。


「いやあ、慎ちゃんもしーくんも優しいから大好きだなあ~?」


にっこりと笑みを浮かべれば、コンマ1秒で落とされる二人。


「…てか、ドライヤーって、どちらかと言えば゛や″だよね!」

「むしろ゛あ″の方がいねーだろ。」


姉の掌で転がる弟たちに、微かに頬をひきつらせる隆一である。


(恐るべし姉貴。きっと、俺も同じなんだろうが。)


卓球を堪能した後、一度部屋に戻った由香利はある事を思い出す。


「あー、そうそうジャンケンしないと。」


ん?と四毅が不思議そうな表情を浮かべる。


「何の?」


思い浮かぶのは和室に布団三枚、洋室1にベッド二つ、洋 室2にベッド二つ。


「うん、それは今日の寝る場所でしょ。えーっと、母さん父さんは洋室2で良いとして。」


あとはジャンケンで決めようか?と言う由香利に、四人の瞳は燃え上がる。


((((姉さん(姉貴)と同じ部屋!!))))


由香利はというと、少し複雑な気持ちであった。

10時に抜け出すには、早く寝る三弥か隆一と同じ部屋じゃないとなあ~。あーそれに、ちょっと気まずいな~?流石に中学生男子と同じ部屋って良いの?私は全然気にしないけど。


「じゃあ、いくよー?最初はグー…ジャンケン…ぽい!」


はい、決まりました。チョキの由香利と四毅。残りは項垂れるパーの三人。


「…じゃあ、私は和室で。」


口には出さないが、理由は出口に近いから。


「俺も和室。」


え!ちょっと、マジか?

顔には出さず自然を装うと、残りの三人がにらみ合いジャンケンを初めていた。


「…ジャンケンぽん!」


三弥が小さく微笑み、拳を握る。


「…和室にする。」


後ろでは、がくりと膝をつく隆一と慎二。その長男と次男の光景を気にせず、今夜の作戦を一人考えるのであった。


四毅を早く寝かせないと。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ