表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は平凡周りは非凡   作者: 雪香
21/34

三弥の黙考

お気に入り登録、ブックマークありがとうございます。



みんな嫌いだし、みんな何を考えているかわからない。周りもそうだ。男は、僕のノート目当てだし、困った事は押し付けてくる。それでも、四毅の事を知る奴は距離を取る。女は、僕の顔と兄達目当てだ。気持ち悪い。

それでも、昔より良くなったと思う。


小さい頃は、少しでも他人に近付かれると気分が悪くて仕方なかったから。家族も苦手だった。両親はたまに会えば勝手にべたべたしてきて、物さえ渡せば良いと思ってるから苦手。

隆一兄さんは、何でも自分で出来て自信があって苦手。

慎二兄さんは、誰とも仲良くなれていつも笑顔で輝いていて苦手。

四毅は、自分の気持ちに正直で裏が無くて苦手。

それ以上に、家族の中心で誰にも優しい姉さんが苦手だった。


でもあの日でそれは変わる…。6才の時、四毅に無理矢理友人の家に連れられ、やっぱり気持ち悪くて家に帰った僕は、玄関で吐いてしまった。恥ずかしくて、泣きながら掃除していた僕の所に、姉さんが来た。

もしかした、嫌われるかも、呆れられるかもと思った。でも…姉さんは笑顔だった。ハンカチで口を拭いてくれて、あっという間に掃除してくれて、気付けば着替えさせられて。


『みーくんは、みんなよりちょっと頑張っちゃうんだよね。』


そう言って頭を撫でてくれたんだ。そのまま号泣してしまった僕を抱き締めてくれた。その時から、僕の一番の拠り所。


だから、今回も姉さんが行くならと温泉に来た。気分が乗らなくても、兄達と温泉に入る。まあ、四毅が兄達に弄られている内に素早く入ってきたけど。少し待っていると、浴衣姿の兄弟がやってきて、隆兄と四毅は卓球を始めた。


慎兄は長風呂だから遅いかな?

そう思い、慎兄を待つついでに自動販売機に飲み物を買いに向かう。


あれ?姉さん?

目に入る姉に急いで近づこうとすると、ふと足が止まる。姉の側で微笑む見知らぬ男。その男の唇が動く。


「…良かったらこの後…。」


…うん?何をするつもり?


思わず体の毛が総毛立ち、静かに苛立ちを生む。


「…姉さん。」


勝手に口を出た声は、思ったよりも普段通りだったと願う。その声に気付き振り返る姉由香利は、温泉に入った後だからか、髪は艶々していて頬も赤みが差している。


僕としては、姉として心から親愛を抱く存在だが、隆兄はたぶん違う。隆兄は昨年から急に姉離れした態度を出しているが、絶対違う。…シスコンを越えたのだろうと。

四毅は1000%純シスコンだし、慎兄は危ないシスコンだ。

僕は違う。普通に姉を慕っている。だから、これも姉を守る為。


「…皆、待ってるよ?」


テトテトと側に寄り、小首を傾げる。姉から可愛がられている事は自覚しているので、控えめに言えば直ぐに頷かれる。


「うん。分かったよ!」


にこっと笑う姉に、知らず三弥も笑みを浮かべた。


「…ご家族と一緒に来たの?」


…空気読めば良いのに。

由香利と一緒に居た男は何を思ったのか、此方に会釈する。


「由香利さんと同じ委員会の一ノ瀬です。よろしく。」


いかにも女子に人気のありそうな笑顔に、嫌悪感を抱くが僅かに頭を下げて置く。

姉さんの外聞が悪いと困るから…。それだけだ。


「弟の、三弥です…。」


そう言って、姉の手を取りさりげなく歩き出す。流石に一ノ瀬も諦めたのか、由香利に何か囁き去って行った。


…ふう。悪魔退散。


「………10時。」


その時、由香里が何か呟いていたのを、安心していた三弥は気付かなかったのである。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ