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私は平凡周りは非凡   作者: 雪香
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思案して

相手の鋭い目付きと視線が交差する。

…こわっ。


「…立てる?」


金城は座り込んだまま、怪訝そうに由香里をじっと見上げた。


「おい…てめえ今、四毅って言ったな?…それも、弟だと。」


わーお。

キカレテタ。


自然と由香里を守る様に背に隠した慎二は、それに被せる様に続ける。


「更に俺は、有川四毅の兄だよー。」


し…慎ちゃん?!

由香里から気を逸らす為言った事だろうが、当の本人は血の気が引く。

ちょっと?!見た目緩い系で、喧嘩のけの字も無い実は真面目な男子が出なくて良いよ!

勿論気を引く事には成功し、金城の視線が更に強くなっていく。


「…なら、今すぐ有川四毅の所に連れて行け!」


えー。四毅なら今はイン・ザ・ドリームだよー。

噛みつかんばかりの相手に、由香里は反対に冷静になっていた。


「…てゆうか、その怪我で四毅とやり合えると思うの?」


由香里の指摘に金城も忘れていたかの様に一瞬固まり、図星を突かれて直ぐ顔を歪めた。


たぶん中学生だよね。

一年?かな。

一人で来たからたぶん仲間も居ないと。

そして、負傷済み。

隆一ももう少しで帰って来るし。

よし。


「良かったらだけど、家で手当てしてあげよっか?」

「………はあ?」

「は!?姉さん?!」


怪訝そうな金城と、慎二の視線が由香里に向く。金城を横目に、慎二はそっと由香里に耳打ちする。


「もう放って置かない?危なそうだし。それに四毅家にいるじゃん。」


焦り戸惑う慎二とは逆に、由香里の口調は軽い物だった。


「だーい丈夫だって。しーも寝てるし。こーいう不良?の子って、借りを作って置けば懲りるんじゃない?」

「……えー。」

(そんな上手くいくのかな。…いや、でも姉さんが一回決めた事には逆らえないし。)


結局は仕方なく頷く慎二に、由香里は金城の側に近付く。


「ほら、その傷で彷徨いてたら今度こそ通報確定だよ?」


キッパリとした態度に金城も思わず勢いで了承し、二人の後を数歩遅れてついて来る。

よしよし来た来た。可愛いもんじゃない。


「…そーいえば、四毅とどんな関係?同じ学校なの?」

「ちげえよ、ブスッ。」


あ?


金城の吐き捨てた言葉に由香里が苛つくと同時に、慎二が振り返り相手の肩を掴む。動揺する金城を至近距離で見据える瞳が細まった。


「…お前さ?庇って貰った上に、手当てしてやろうって言ってんのに今、何て言ったあ?例え四毅の友達でも許さないけど?死にたいの?」


淡々と話す慎二の様子に、由香里も反応するのが遅れていた。


うわー。

慎二マジギレモード突入ですね。自分への悪態には仏並みの慎ちゃんだけど、私へはダメみたいなんだよね。


整った容姿の慎二の冷たい視線に、金城もすっかり年相応の表情になっていた。


…流石に可哀想か?


「慎ちゃーん。」


由香里の声に、ハッとした慎二はみるみる冷たい雰囲気が消えた。


「…姉さん。」

「ほら、おいで?」


両腕を広げた由香里に、直ぐに勢い良く慎二が飛び付く。


「怒った慎ちゃんは嫌だって言ったよね?落ち着いて。」


背中に回した手で、相手の背中を軽く叩く。萎れる姿は、中学生らしい幼さが垣間見られる。


「うん。でも…あいつがゆかちゃんの悪口を…」

「慎二、でもは嫌い。」

「…………ごめんなさい。」


すっかりしょぼくれた次男に、小さく笑い頭を撫でる。


「ほら、イケメンが台無しよ?怒ってくれてありがとう。もう大丈夫ね?」

「……はい。」


コクりと頷く慎二の肩越しに、金城の顔を見れば何故か呆気に取られていた。目が合うと、一瞬固まり俯く。


「…………悪かった。」


まあ、良いか。

私も中学生に怒る程、子どもじゃないし。


「謝ればよろしい。」


ニコリと笑った由香里に、金城はまた固まった。


ん?

笑顔がキモいって事?!

内心傷付きつつ、慎二を引っ張り家に向かう。

うう…うん付いて来てるね。


家に着くと、玄関の扉を開き中に入る。リビングへの扉は開いたままで、ソファに座る弟と目が合う。


「…おかえり。姉さんと慎兄。」


よ、良かった…みっくんの方か。しーかと。


「ただいま。…んっと四毅は?」

「寝てるよ。」


金城の存在に気付くも気にした様子の無い三弥は、携帯を弄っている。双子は雰囲気が全く違うので、外見で間違われる事は無いが。

ヤバイなあ…三弥の10分後に起きるんだよねあのこ、何故か。

慎二もそれを知っておりソワソワと時計を気にしているが、几帳面に救急箱を出している。

ちょっと。


「…慎ちゃん、引き留めて来て?」

「ええ?!無理無理!あの低血圧男から逃れんのは姉さんと兄さんだけじゃん!」


三弥も無表情であらぬ方を見ている。


うん。まあ。

四毅を起こしに行き、

慎二は睨まれ舌打ちされ、

三弥は悪態つかれ、

隆一は問答無用で起こすから、その後不機嫌になり。

やっぱり私だけか。


「…慎二、治療さっさとよろしく。引き留めて来るわ。」


早足でリビングを出た由香里の背に、慎二の「がんばって~」という返事が響いた。






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