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91.電話に出たのは誰・・・?

「・・・なぁ~? そういえば栗野さんと日向さんは?」

「「「あっ・・・」」」


ふっとその厘の一言で、3人は一斉に缶やペットボトルを口元から放し、その場に固まる。

厘がその単語を口にするまで、完全に二人のことを忘れてしまっていた。


「そうだ・・・。あの二人今何処にいるの?」

「・・・知らん!」

「僕達は会ってないよ?」

「ウチも会うてない・・・」

「・・・ヤバくないっすか。それ・・・。下手したら今頃血眼になって探してますよ?」

「!! というか今何時?!」


時間を尋ねられた長谷川が慌てて腕時計を見てみれば、この時既に7時15分過ぎ。

予定では『7時30分には3階のカフェで朝食』ということになっていたのだから、この時間まで大浴場付近で和んでいたのはかなりまずい。


きっと今頃、栗野達は未佳達を部屋から呼びに。

もしくは部屋にいないことに慌て、辺りを探し回っている頃だろう。


そしてもう一つ未佳がやってはいけなかったことは、部屋に自分の携帯を置き忘れたこと。

特に長居する予定もなく、ついでに持っていっても荷物になるだけだと思い、あえて持っていかなかったのだ。

まさかその小さな自己判断一つで、数週間前のスーパーでやったのとまったく同じ失態を仕出かすなど、未佳には思ってもみなかった話である。


「あっちゃ~・・・! 私携帯、部屋に忘れてきちゃった・・・。どうせまた部屋に戻ると思ってて・・・」

「ウチも持ってきてない。カバンの中・・・」

「だよね。手神さんは?」

「僕も机の上だな。・・・長谷川くんは?」



ピリリリ・・・

ピリリリ・・・



「・・・聞かれたその場で携帯鳴ったわ・・・」


そう言ってジーパンの後ろポケットからスマホを取り出してみれば、画面には当然のことながら『栗野奈緒美』の文字。

それもご丁寧に電話で、だ。


とりあえず今の自分達の居場所を伝えなくてはならないのだが、どういうわけか長谷川は画面を黙って見つめるだけ。

一向に電話に出ようとする素振りを見せない。

そんな長谷川の様子に、3人はやや慌てながら長谷川を諭す。


「さとっち、何してんの?」

「早く電話に出ないと・・・!」

「栗野さんずっと呼んでるんだから・・・!」

「分かってます・・・。それは分かってます! ・・・・・・んだけど・・・」

「・・・だけど?」

「めっちゃ怖いねん! コレ出るの~っ!!」


確かにあの栗野が携帯を使って未佳達を呼び出すということは、もはや捜索する上での第二手段。

ついでにただ今長谷川に電話を掛けているということは、おそらく順番的に未佳と厘に電話を掛けたあと。

そんな栗野が、この電話の向こうで怒っていないわけがない。


それは即座に未佳達も察したのだが、何せ今鳴り響いている携帯の持ち主は長谷川であり、栗野も長谷川を指名している。

ここで違う人間が電話に出るのはNGだ。

仮にそうでなかったとしても、ただで長谷川の代わりに逆鱗を受け止める偽善者になど、彼には申し訳ないがやるつもりもない。


そんな半ば酷過ぎる結論にそれぞれ達したところで、3人は長谷川の気持ちを十分理解しつつも、その電話に出るように口と手を動かした。


「何今更言うてんの! 別に栗野さんに怒られるの毎回のことやし、もう慣れっこやん!!」

「確かに毎回のことっすけど、別に慣れてなんてない・・・! むしろ恐いねん!! 嫌やねん!!」

「そんなこと言ったって仕方ないだろう?!」

「さとっち宛ての電話なんやから、さとっちが出ぇへんと・・・!」

「そんな僕無理やて・・・! 誰か代わりに出てや! なぁ~、お願いっ!!」

「もうっ! だっらし無いなぁ~・・・! さとっちもう今年34の男でしょ?! 気合いでコレくらい頑張りなさいよ!!」

「・・・・・・僕に『気合い』なんてものがあると思います・・・?」

「「「・・・・・・・・・・・・」」」

「やっぱり誰か出てぇ~!!」

「「嫌!!」」

「嫌だよ!!」


そんなことをスマホ一つの前で言い合うこと数秒。

結局救いを求めて突き出したスマホを突き返され、長谷川は右手を震わせながら、スマホを耳元へ。


ただし、完全に耳には当てず、少し耳との距離を取った形で、通話画面を親指で押す。


「・・・も・・・、もしもし?」


やや震える声で呼び掛けてみたその瞬間。

長谷川の手のひらサイズほどの機械から、とんでもないほどの大音量の怒鳴り声が轟いた。


『「もしもし?」じゃないでしょおおおォォォッ?! 勝手に個人行動してぇー・・・っ!!』

「「「「・・・~ッ!!」」」」


その栗野の怒鳴り声に、長谷川は一応耳の方向に向けたまま、できる限り耳元からスマホを遠ざけて対処。

一方の未佳達はというと、その怒鳴り声が飛んだ瞬間に両目を瞑り、肩を窄めて小さく縮こまった。


『ま~ったく! 一体何回電話を駆け回れば繋がるんだか・・・! 長谷川さん!!』

「あぁっ・・・、はい!」

『今そこにいるのはあなただけ?』

「えっ? え~っと・・・」

『違うわよねぇ~? いるわよねぇ~?!』

「あっ・・・、は、はいっ!」


そう答えたとなれば、次にやってくる栗野からの要求は、長谷川以外の他3人に対して。

案の定その予感は的中し、栗野は『電話を一旦未佳さんと厘さんに向けて』と、何とも低い声で要求してきた。


とりあえず逆らうと尚のこと恐いので、長谷川はスピーカーモードにしたスマホを未佳達の方へと向けてみる。

するとその電話の向こうでのやり取りを聞いていなかった未佳は、突然向けられたスマホに少々ギョッとしつつ、長谷川をサッと睨み付けた。


「なんでこっちに向けるのよ!」

「栗野さんからの要求・・・。『坂井さんと小歩路さんに向けて』やて・・・」

「・・・・・・ゲッ・・・!」

「えっ? ウチも??」


厘が自分の方を指差しながら聞き返すと、長谷川は小刻みに2回ほど頷き返す。

そしてそれからあまり間を置かぬ間に。

おそらく二人の方に電話が向いた、と気配で察したのだろう。

再び電話の向こうの栗野が口を開いた。


『未佳さん、厘さん、そこにいますね?!』

「「う、うん・・・」」

『なんで二人とも・・・! 揃いも揃って電話に出ないんですか!! 私一体どれだけコールしたと思ってるの!!』

「「ひっ・・・!」」

『まさかまた「携帯を部屋に置き忘れた」なんてことをしてたわけじゃないですよねぇ~?!』

「「・・・・・・・・・」」


さすがは10年来の専属マネージャー。

ちゃんとこちらのやってはならない失態を把握しきっている。


そして『返事がない』ということが全ての答えであると察したところで、スマホからは重い落胆の溜息が聞こえてきた。


『まったく・・・。まあ未佳さんはともかく、厘さんはいつも持ち歩く習慣を付けてください! いいですか?』

「・・・えっ?」

『いいですか!?』

「! は、はーい・・・」

『それで長谷川さん』

「あぁ・・・! は、はい?」

『私これから手神さんに電話を掛けようと思ってたんですけど・・・。手神さんは?』


尋ねられたと同時に未佳の左隣に視線を向けてみれば、そこにはやや申し訳なさそうに、苦笑しながら手を振っている名指し者が。


「あ・・・、手神氏も一緒です・・・」

『でしょうね。それで? あなた達今何処にいらっしゃるんですか?』

「え~っと・・・。大・・・浴場?」

「の外!」

「マッサージ機の近く」

「・・・です」

『・・・あぁ、あそこね・・・』


昨日の今日ということもあり、栗野にはすぐに長谷川達の現在地が分かったらしい。

さらに最初に長谷川が『大浴場』と口にしたこともあってか、自分達の行動目的が『朝風呂』であったということも、栗野には想像が付いたようだった。


『・・・ところで朝風呂にしろ、何にしろ。自分達だけで行動する時はいつもどうしろって、言ってましたっけ?』

「「「「・・・・・・内容をメールか電話で報告・・・」」」」

『それを「4人全員行わない」ってどういうことですか?』

「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」

「・・・どういうことでしょう」

『「聞き返せ」とは言ってないんですよ、長谷川さん・・・。それと「まさか」とは思いますが、手神さんまで「携帯を忘れた」なんてことないですよねぇ~?』

「えっ・・・」

『どうなんですか? バンドリーダー?!』

「・・・もっ・・・! もちろん持ってきましたよ?! ちゃんと・・・!」

(えっ!?)

(えッ!?)

(エッ!?)


その瞬間、一斉に3人の顔が『驚愕』という名の二文字に染まった。


ここで改めて言わせてもらうが、手神は先ほど、未佳に『携帯を持っているか』と尋ねられた際、ハッキリと『持っていない』と答えていた。

さらに同じ部屋に宿泊していた長谷川の目撃情報によると、現在手神の携帯は部屋のデスクの上。

つまり今この場に持ち歩いてはいないのである。


そんなどさくさに紛れて出てきた手神の嘘に、3人はただただ呆気に取られるばかり。

ついでにその手神の発言が真っ赤な嘘であると知らない栗野は、それを聞いた途端にやや満足げな声を出す。


『ならいいです。ちょっと連絡寄越さなかったのはいただけないですけど、・・・まあ携帯持ち歩いていない人よりはかなりマシですから』

((なっ・・・!))

『ハァ~・・・。携帯持ち歩いてたのは男性陣だけか・・・』

「あっ、いや・・・! その・・・!!」

『でも! 男性陣の方も、持ってるんならちゃんと連絡をする習慣を付けてください!! いいですか!?』

「えっ・・・? あっ、はい!」

『じゃあ、私はこれから皆さんを迎えに行きますんで、皆さん絶っ対にそこから動かないように!! いいわね?! それじゃ』

「あっ・・・! 栗野さん!!」

「栗野さん! ちょっと待って・・・!!」



ブチッ・・・



最後の未佳と長谷川の呼び掛けも虚しく、長谷川のスマホはいつもの液晶画面に。

この時未佳は、慌てた勢いで長谷川の右腕に身を乗り出すようにしがみ付いていたのだが、その画面を確認したと同時に、思わず両手で長谷川の右腕を掴んだまま、その場に項垂れた。

そんな未佳の様子に、長谷川は少々申し訳なさそうに口を開く。


「ご、ゴメン・・・。こっちも何とか、言おうとしたんやけど・・・」

「・・・・・・いい・・・。さとっちは全然悪くないから・・・」


そう。

この場合の長谷川に、謝罪をする道理は何処にもない。


確かにあの発言によって、栗野からの男性陣の評価は上げられてしまった。

そこは実に悔しいし、どうしようもなく腹立たしい。


しかし結果はどうあれ、唯一携帯電話を持ち歩いていた長谷川には、嘘も吐いていなければ何も謝る必要などない。


むしろ今謝らねばならぬのは、激怒していたマネージャー相手に嘘八百を並べた、あのリーダー。


「て゛ぇ~・・・か゛ぁ~・・・み゛ぃ~・・・さ゛ぁ・・・ん゛~!?」

「! うわっ・・・。なっ、なんかみんな濁点が・・・」

「なんであんな嘘吐くんよ! 手神さんサイテー!!」

「う゛っ・・・」

「ホンマっすよ! 持ってきてもいない携帯を『持ってきた』って・・・! 僕部屋出る時、デスクの上に置きっ放しだったのしっかり見ましたからね?! この眼で!!」


そう3人が口々に手神に対して怒鳴り掛かると、手神は『まあまあ・・・』という形に両手を出しながら口を開く。


「いや、だって・・・。恐かったんだもん。さっきの長谷川くんじゃないけど・・・。正当防衛だよ! 正当防衛!!」

「『正当防衛』よりも『嘘八百』の方が妥当だと思いますけどね? この場合・・・」

「そんな・・・! 長谷川くんまで見捨てないでくれよ~!!」


などと手神は言っているが、今問題にしているのは『正当防衛か』『嘘八百か』ということではない。


3人が言いたいのは、手神が嘘を吐いたことによって生じた、女性陣の影響についてのことだ。


「ソコじゃないでしょ? 手神さん! ちゃんとしてたのはさとっちだけなのに、なんで『男性陣だけがしっかり者』みたいな扱いになっちゃうのよ!!」

「せやせや! おかげで『だらし無いのは女性陣だけ』みたいな評価のされ方されてしもたやないの!! 実際“フスマ”持ってたの、さとっちだけやったのに・・・!」

「・・・“スマホ”ね?」

「手神さん、栗野さんが来たらちゃんと言うて! 『実は携帯持ってきてない』って・・・!」

「!! 今さっきのこのタイミングで?!」

「当ったり前やろ!?」

「このまま『忘れたのは女性陣だけ』なんてこと言われるだなんて、冗談じゃないわよ!?」

(う、うわー・・・。この二人ホンマにブチ切れてるわ~・・・。今回・・・)


普段どちらか片方に怒鳴られることはあっても、こうも二人がダブルスになって怒鳴ることは滅多にない。

しかもその相手が自分ではなく、一番立場のいい手神であるということが、長谷川にとってはかなりレアな例だと思った。


ついでにこの光景を見ていると、内心『栗野一人に怒鳴られる方がマシなのではないか』とも思ってしまう。

もちろん、そんな手神を庇うような発言を、この場で口にする気はないが。


「ちゃんと言ってよねぇ~?!」

「言わんかったらウチら、栗野さんに“密告”するから!!」



・・・・・・・・・。



「いやっ・・・! 言うたら『密告』の意味ないて! 小歩路さん・・・!」

「あっ・・・、そっか」

「あぁっ、いた・・・。皆さ~ん!!」

「ん? あっ・・・」

「栗野さ~ん」


まさに『グッドタイミング』と言うべきか。

その声のした方に視線を向けてみれば、そこには少しばかりやつれた感じの栗野が、こちらに大股早足で向かってきていた。

その真後ろには、同じく4人を探していたのであろう、日向や他のスタッフ達の姿もある。


そんな栗野達の登場に、厘は小走りで駆け寄りながら、手神の虚偽発言について話そうとした。

しかし。


「栗野さん、聞いてー! 手神さんが・・・!」

「そんなことよりもあなた達!! いきなり何にも知らせずに姿をくらますって、どういうことですかっ!!」

「っ!!」

「「「ひっ・・・!」」」

「ま~ったく・・・! 長谷川さんが電話に出てくれたからよかったですけど、あともう少しで事務所連絡までするところだったんですよ?! 皆さん!!」

「「「「す・・・、すみません・・・」」」」


ふっとそれを聞いて『あのまま長谷川が電話に出なかったら・・・!』と、4人はその結果の行き着く先にゾッとした。

特にあそこで無理矢理電話を突き返した未佳に対しては、もはや土下座並の感謝である。


「かなり心配しましたよねぇ~?」

「う~ん・・・。特に厘さん!!」

「え・・・?」

「携帯、持ち歩いてなかったのは“あなただけ”でしたよ? これは一体どういうこと?!」

(((・・・・・・えっ?)))

「・・・ほぇ?」


その栗野の口から飛び出してきた謎の発言に、厘は思わずキョトンと。

他の3人は『?』マークを浮かべながら、お互いに顔を見合わせる。


もう一度言うが、この時携帯電話を持ってきていたのは長谷川のみ。

さらに細かく説明すると、未佳は部屋のベッドの横辺りに置き、厘はカバンの中。

そして手神の携帯は、現在部屋のデスクの上に置いたまま。


そして先ほどの電話でのやり取りで、一応一部誤報はあるが、携帯を持ってきているのは男性陣二人だけ。

未佳と厘は携帯を持ってきていない、という話になっていたはずだった。


しかし何故か栗野の頭の中の情報では、未佳も携帯を持ってきていた人間に分類されているのである。

当然、その栗野の発言の意味が分からなかったのは、未佳本人だ。


(えっ? ・・・・・・えっ? なんで??)

「坂井さん・・・、携帯持ってきてたんっすか?」

「確か・・・『忘れてきた』ってさっき・・・」

「う、うん。持ってきてないよ? ・・・だって・・・! 私確かに部屋のベッドの上にっ・・・!!」


ふっとそう言い掛けて、未佳は『あっ・・・』と小さく呟く。


そういえば先ほどの電話の時も、栗野は『まあ未佳さんはともかく・・・』と、少々妙なことを口にしていた。

まるで『未佳は携帯を持ってきていた』と、確信的に思っているかのように。


とにかく、このまま厘一人だけが怒鳴られるような状況にするわけにもいかないので、未佳はすぐさま厘と栗野の間に割って入る。


「ちょっ・・・、ちょっと待って! 栗野さん!! 私も携帯、持ってないよ!?」

「ん? 未佳さんの場合『持ってない』というより『使い物にならない』でしょ? 正しくは・・・」

「使っ・・・! ・・・・・・えっ?」

「電話掛けたら電池切れちゃったみたいでしたし・・・。ちゃんと昨日の内に充電しといてくださいよ~? 今度から・・・」

「ご・・・、ごめん、栗野さん・・・。それ・・・、一体何の話?」


真顔で未佳がそう聞き返すと、今度は栗野と日向が困惑したかのように顔を見合わせる。

そんな二人の様子に未佳が驚いていると、日向が確認のために未佳に聞き返した。


「えっ・・・? 坂井さん・・・、携帯持ってきてないんですか?」

「だから・・・! 私の携帯は今、部屋のベッドの横にあるの! 大浴場の後に部屋に戻るだろうと思って、持ってはいかなかったのよ」

「う、ウチらもみかっぺからそう聞いたよ・・・?」


ふっと未佳に庇われる形で後ろにいた厘が、未佳が嘘を言っていないと口にする。

さらにその厘の発言に便乗するかのように、男性陣二人も『うんうん』と頷き返した。


「だから・・・、私も小歩路さんと同じよ? 携帯部屋に置き忘れたの・・・」


この未佳の話し方が嘘ではないと分かり、栗野と日向はさらに表情を青褪める。


実はこの時。

未佳の知らないところで、栗野の掛けた未佳の携帯に、とんでもない現象が起こっていたのだ。


「えっ、でも・・・。栗野さん出ましたよね? 坂井さんの携帯・・・」

「え、えぇ・・・。電話掛けた時に・・・」

「・・・えぇっ?!」

「でっ・・・! 『電話に出た』だぁ~?! 持ち主おらんのにっ・・・?!」

「一体誰が!?」

「わっ、分かりません・・・! ただ電話を掛けてみたら、一回誰かが出て・・・」

「喋ったんか!? その相手と・・・!」

「あっ、いえ。それが・・・」


その栗野の話によれば、最初に未佳に電話を掛けた際、始めの方のコールで突然コールが止み、誰かが電話に出たような気配があったのだという。

しかし栗野が初めに『もしもし?』と呼びかけてみたところ、その電話は突然切れてしまい、以後繋がらなかったとのことだった。


そしてその電話の切れ方があまりにも唐突過ぎ。

さらに相手が未佳だったこともあり、栗野は『電話に出た瞬間に電池が切れてしまったのだろう』と判断。

その後長谷川との電話でのやり取りで、携帯を忘れたのは厘だけだと思ったのだという。


「えっ、ヤダ・・・! 私一応『未佳さん?』とは言わなかったけど・・・」

「坂井さん。あなたの携帯、本当に今お部屋に・・・? 何処かに落としたりしていませんか?」

「え、えぇ。ちゃんと部屋に・・・。それは間違いないです」

「じゃあ・・・『誰かがみかっぺの部屋に入ってきた』・・・ってこと?」

(・・・・・・!!)


その瞬間。

未佳の脳裏にある可能性が過った。


「まさかっ・・・!!」

「ん?」

「『まさか』・・・?」

「何か心当たりがあるんですか? 未佳さん」

「エッ?! あっ・・・、う、うん! ・・・たぶん故障!」

「「「「「故障??」」」」」


まさかのあまりにもアッサリとした未佳の回答に、5人は未佳の顔を見つめながら聞き返す。


「そ、そう・・・! 故障!! 最近なんか多いのよ~、その手のが・・・。まあ『ガラ』だからしょうがないよね?!」

「『しょうがない』って・・・」

「そうならそうとさっさと言ってくださいよ~! 未佳さ~ん! おかげであらぬ疑いしちゃったじゃないですか~」

「むしろ早めに修理か機種換えしたら~? みかっぺ・・・。それやとめっちゃ不便やん」

「そ、そうだね・・・。アハハハ・・・」


まさか『みんなには見えない人間が電話に出ていた』など、この時の未佳には到底言えるはずもなかった。


『喋る鳥』

(2009年 2月)


※名古屋のとある動物園。


みかっぺ

「あっ、ねぇ~! 見て見て~! オウムがいるよ~!(手招)」


さとっち

「へぇ~・・・。動物園でもオウムなんておるんや(意外)」


手神

「でもインコとかオウムの類を見ると、ついつい言いたくなっちゃうんだよね~(^_^″) おはよう!(呼)」


オウム

「・・・・・・・・・(-_-)」


「喋らへんね」


みかっぺ

「こんにちわ!(呼)」


オウム

「・・・・・・・・・(-_-)」


さとっち

「喋る気ゼロや(呆)」


「そういえば前本で読んだことあるんやけど・・・。インコとかオウムって、オスしか話さへんらしいよ?」


さとっち

「んじゃ、メスなんじゃないっすか?」


みかっぺ

「名前『カズマ』だけど?」


さとっち

「確実に“オス”っすね・・・(゛ ̄)」


手神

「でも今『喋る鳥』って言ったら、やっぱり“九官鳥”の方が有名なのかなぁ~(しみじみ)」


さとっち

「あっ、それは一理ありますね(同感)」


みかっぺ

「えっ!? そうなのっ?!(聞返)」


オウム

「そういう、時代やでぇ~(喋)」


みかっぺ・さとっち・厘・手神

「「「「Σ(゛ ̄)(゛ ̄)(゛ ̄)(゛ ̄)ん゛っ?!(振返)」」」」



おい・・・。

なんか時代も土地も違うはずだが、一体誰が吹き込んだんだ?(爆)


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