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73.ようこそ Jelly・Fishへ

それからしばらく経つこと、約10分。

栗野と日向達の視界に、何やら聞き覚えのある名前の看板と建物が見えてきた。


やや大きめのカーブした長方形型の建物に、下にはホテル関係者用のバスやトラックなどの行き来用でもあるスロープ道路。

そしてそのスロープ道路のやや下の方には、大きな青いガラスのオープンゲート。


それは紛れもなく、今回の宿泊場所でもあるニューオープンホテル『Jelly・Fish』の正面出入り口と建物だった。

ちなみに今回、未佳達の乗っているこのバスは予定として、ホテルバス用スロープ道路には一切上らずに、そのまま一般宿泊者用正面口で下してもらうことになっている。

その理由としては『そっちの方が手間も掛からず、面倒も少ないから』と、事務所側の現地スタッフやホテルの関係者達が判断したからだ。


しかし『手間が少ない』ということは、それと同時に『早めに目的地に辿り着く』ということも意味する。

そうとなれば、当然のんびりなどもしてはいられない。

栗野と日向は早速手分けして、未だ眠りの中に落ちているメンバーやスタッフを起こしに掛かった。


「皆さーん! 早く起きてくださーい!!」

「起きてる方はすぐに下りられる準備をお願いしまーす!! あっ、日向さん」

「はいっ」

「長谷川さん起こすのお願いします。私その前の二人起こしますんで」

「あっ、はい。・・・長谷川さん、起きてー!!」

「二人とも起きてくださーい! ほらっ、早く!!」


しかし実はこの時。

先ほどまで起きていたはずのスタッフとメンバー6人の内、約2名ほどが仮眠組に入ってしまい、起こしに掛かっていたのはたったのスタッフ3名のみ。

しかも一度寝たらなかなか起きない人間が集中して眠っているのだから、この少人数でそんな人達を起こすのは容易なことではない。


ちなみにその『起きている人間』と『寝ている人間』の人数からあぶれている約1名は、起きているにも関わらず、栗野達のこの作業に手を貸していない人間である。


しかし、そんな『他人事』と澄ました顔で読書をしている人間を見逃すほど、栗野も甘くはない。


「厘さん! あなたもギリギリまで本読んでないで、少しは寝てる人起こすの手伝ってくださいよ!!」

「・・・・・・えっ・・・」

「『えっ・・・』じゃなくて・・・!!」

「たったのスタッフ3人だけじゃ一杯いっぱいなんで、お願いしますっ!!」

「・・・・・・ハァ~・・・。今ええトコやったんにぃー・・・」


さすがに二人に注意されては無理だと判断したのか、厘は嫌々読んでいた文庫本をパタリと閉じた。


「ほんで? ・・・ウチ誰を起こすん??」

「じゃあ一番厘さんから近い位置にいる手神さんをお願いします!」

「・・・・・・え゛っ!? アレェ~?!」

「そうです! アレです・・・って! 私まで『アレ』って言っちゃダメだ~・・・」

「嫌やぁ~! ウチ~!! 手神さん全っ然起きないんやもん!!」

「嫌なら強制的に一番難易度の高い長谷川さんにしますが?」

「・・・・・・・・・」


その最後の発言が効いたのか、厘は黙ったまま文庫本を手に持った状態で、手神の座席の方へと向かった。


「手神さ~ん! 手神さん起きて~!!」

「Zzz・・・」

「・・・バ~ス! 着~く! よぉ~?!」

「Zzz・・・」

(アカン・・・。ダメやぁ~・・・)


一方その頃、厘に手神のことを任せた栗野は、元々のマネージャー専属者でもある未佳を起こしに掛かっていた。

とりあえず栗野は手始めとして、まず大きな声で名前を連呼。

その後は名前を呼びながら、軽く右肩の辺りや右腕の辺りなどを叩いたり、揺すってみた。


しかし、こちらもなかなか起きそうにない。


「未佳さん! 未佳さん、起きてください!! ・・・未佳さんっ!!」

〔・・・んっ・・・?〕


その栗野の大きな声と、未佳の身体が揺すられたことによる振動からか、先に目を覚ましたのは隣で未佳に寄り掛かったまま寝ていたリオだった。

寝起きでしばし意識がハッキリとしていなかったリオは、その場で激しく左右に頭を振り、窓の方に視線を移してみる。


その窓から見えた光景で、栗野が未佳を必死に起こそうとしているワケはすぐに察した。


〔あっ・・・。もしかしてアレが例のホテル?〕

「未佳さん! 未佳さん、起きてー! もうじき到着しますよ~?!」

〔ん? ・・・そういえば未佳さん、さっきから何かを耳に・・・・・・あっ!!〕


ふっとリオの位置から見えたそれは、未佳のウォークマンに付いている白いイヤホンだった。

そのイヤホンの存在に気が付いたリオは、しばし両目を上に向けながら『そういえば音楽を聴いたまんま寝てたんだっけ』と、寝る前の記憶を回想しながら呟く。


さらに未佳は寝る際、髪を止めている箇所が座席の背凭れに当たっても痛くならないよう、ゴムの位置も下側にし、さらにはポニーテールの先を右側から方の方へ流していた。

これにより、ちょうど右側から起こそうとしている栗野には一切、このイヤホンが長い髪に隠れて見えなくなっていたのである。


まさか未だに音楽を聴いているなど知る由もなく、

栗野はひたすら未佳の顔の方に大声を上げていた。


「未ぃ~佳ぁ~さぁ~ん~!! ・・・なんでここまでやって起きないのかしら・・・」

〔(・・・・・・ダメだ、こりゃ・・・)〕


これではいつまで経っても起きやしない。

そう判断したリオは少々強引ながらも、寝ている未佳の左耳に入っていたイヤホンコードを掴み、それを軽く引っ張った。

ほんの少しの力であったにも関わらず、引っ張られたイヤホンはそのまま引っ張られた方向に耳から外れ、最終的には未佳の膝の上辺りにポロリと落下。


するとその耳に感じた違和感からか、一瞬瞼を震わせたり、瞬きを繰り返すなどの反応も一切見せぬまま、未佳の両目が一気にパチリッと見開く。

そしてたった一度だけ瞬きをした後、未佳はゆっくりと隣に立つ栗野の体を下から見上げてゆき、栗野の顔が視界に入ったところで一時停止。


それから意識がハッキリと浮上し始めること、約3秒。


「・・・あ゛っ!!」

「『あ゛っ!!』じゃないでしょう!? 私何回も起こそうとしたのに・・・! 未佳さん、音楽聴いたまんま寝てたんですか!?」

「ハ、ハハハ・・・。す・・・、すみません・・・」

「笑って誤魔化さないでください。まったく・・・、こっちが体揺すってた衝撃で落ちたんでしょうけど、そうじゃなかったらずぅ~っとイヤホンの存在に気付かなかったわ~・・・」

「お姉さん起きました~?」


ふっと先ほどから前方の座席で聞こえていた大声が気になったのか、あの陽気なバス運転手がミラー越しに、こちらの様子を尋ねてきた。

その運転手のやや心配してくれている様子に、栗野はやや苦笑いを浮かべながら返事を返す。


「あっ・・・、はーい! おかげさまでどうにか~」

〔本当は僕がイヤホン抜いたのに・・・〕


そうほんの少しだけ拗ねたように呟くリオに、未佳はウォークマンの電源を切りながら『分かってる。ありがとうね・・・』と小声で伝えた。

まさにその時。



・・・カコンッ!



「「「〔「んっ?!」〕」」」


ふっと突然車内に、何やら妙に美しい響きの高い音が鳴り響いた。

どうやらこの音の出所は後ろの方のようだが、このいきなり聞こえてきた物音に、未佳や栗野、日向や運転手達はお互いに顔を見合わせる。


「な・・・、何? 今の音・・・」

「な、なんでしょう・・・?」

「なんか『獅子脅し』が戻る時みたいな音だったな」



ジャ~・・・・・・・・・カコンッ!



「・・・・・・ぶっ・・・!! 獅子脅し・・・っ」

「ほら、未佳さん。噴き出して笑わない・・・」

「だって・・・! 運転手さん、その例え上手い!!」

「それはどうも♪ なにせ母方のばあちゃん家にあったもんだから。年がら年中獣一匹いないくせに『カコンッ!』って」

〔あっ、なるほど・・・〕

「で、でも・・・。『獅子脅し』なんて・・・、誰か持ってきてましたっけ?」

「「・・・うんにゃ」」


そう栗野と未佳が同時に首を横に振った。

その直後。


「痛っ・・・たあ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛~っ!!」

「「「〔「・・・えっ?」〕」」」


ふっとその声のした方に視線を向けてみれば、そこにはつい先ほどまで爆睡していたはずの手神が、何やら座席に座ったまま、頭頂部を両手で押さえて蹲っていた。

さらにその手神の位置から座席を一つ挟んだ先には、平然とした顔で突っ立っている厘。

そして彼女の右手には、ついさっきまで読んでいた例の文庫本が、何故かページ側を挟む形で握られていた。


「て・・・、手神・・・さん?」

「一体何がどうしたの?」

「・・・・・・まっ、まさか・・・っ!!」


この光景が一体何を表しているのか。

それを誰よりも早く理解した栗野は、慌てて厘の立っていた場所の隙間から手神に駆け寄る。


「手神さん!? 手神さん、大丈夫ですか!?」

「あっ、はい・・・。一応、大丈夫です・・・」

「頭の辺り、一体何があったんですか?」

「な、何か一瞬・・・、固いもので旋毛つむじを突かれたような痛みがあって・・・」

「で、ですよね・・・」


しかし幸いにも、手神が感じた痛みはほんの一瞬のもので、痛みを感じた頭頂部も、ほんの少しだけ赤くなっている程度だった。

その手神の頭頂部の状態を確認して安堵した栗野は、すぐさま自分の真後ろに立っていた人間に対して口を開く。


「厘さんっ!! あなたまたやりましたね!? 『本や雑誌の角で人の頭を叩かないで!』って、あれほど言ったでしょうっ?!」

「だっていくら大声出して呼んでみても、体揺すってみても、手神さん全っ然起きないんやもん!!」

「!!」

「だからって『叩いていい』ってことにはならないでしょう?! それに本の角で叩くだなんて・・・! もしも手神さんの頭が切れたりでもしたらどうするんですか!!」

「角ちゃうもーん! ウチが叩いたの背表紙の方やもーん!!」



ドテッ!!



「前、栗野さんに『絶対に何かの角で人を叩いたらダメ~!』って言われてたから、ウチ叩かないようにしてたんやもん!! あれから1回も、角で人のこと叩いてないもん!! 本持ってたからって、疑い掛けんといてよ!!」


まるで何かの勢いに乗ったかの如く、厘はそれだけ栗野に口が開くがままに言い返すと、そのまま『プイッ!』と、そっぽを向いてしまった。

そんな厘の態度に栗野が重い溜息を吐いていると、ふっと先ほどから二人の口論の様子を見ていた手神が、恐る恐る聞き返す。


「あのー・・・。コレ僕が何かしたんでしたっけ・・・?」

「・・・えっ? いっ・・・、いえいえ! 手神さんは何にもしてないですよ?! あなたは単なる被害者さんなんですから・・・!」

「でも・・・。なんか小歩路さんの話聞いてたら、こっちが悪者になってたような気がー・・・」

「いえ、気のせいですっ!!」

「は、はぁー・・・」


若干無理やりそう言い聞かされたような気がしなくもなかったが、手神は一応そう思うことにした。


「よし! まあとりあえず・・・、皆さん、全員起きましたね?」

「あっ、いえ。栗野さん・・・」

「ん?」

「それがまだ前の大台の方が・・・」


そう言って日向が指差す前方に視線を向けた栗野は、その視界に写った光景に思わず、自分の顔を右手で『バッ』と覆いながら落胆した。

もちろんその栗野の視界に入ってきたのは、未だ爆睡状態のあの長谷川である。


しかし、よりにもよって一番起こすのが難しい人間が残っていたとは。


「あ゛ぁ゛~・・・。この人は本当に大台よぉ~・・・。って・・・! なんでまだ長谷川さん寝たままなワケ!? 日向さん起こしてくれたんじゃなかったの!?」

「い、いえ! 何度も起こそうとしましたよ?! したんですけど・・・。全然ダメで・・・」

「・・・ハァー・・・。長谷川さーん! 起きてー!! もうバス止まって到着ーっ!!」


最初からいつものボリュームの口答では起きないと確信していたので、栗野はできる限りの大声で、長谷川を起こしに掛かる。


既にバスはホテルの敷地内に到着。

もう出入り口ゲートに差し掛かるまで時間がない。


「長谷川さ~んっ!! ・・・・・・・・・ダメだわ・・・。起きない・・・」

「ほならまたウチがコレで・・・」

「〔「いやいやいやいや!!」〕」

「小歩路さん。それはー・・・、止めといた方がいい・・・」

「・・・やらん方がいい?」

「うん。僕の場合はともかく・・・。長谷川くんは本当に頭皮が切れそうな気がするから・・・」

「そしてそれと一緒に『感情もキレる』っていう」

「! 坂井さん上手い!!」

「イエイッ♪♪」

「上手くないっ!! まったく二人揃って一体何言ってるんですか!! そんなことしたらダメに決まってるでしょ!?」

「「「すみません・・・」」」


しかしこのまま長谷川が起きない状況が続いてしまうのはさすがにマズイ。

『さてどうすべきか』と皆が考えを巡らせる中、次なる策を提案してきたのは、またしても厘だった。


「! そうや! みかっぺにやらせたらええんよ!」

「・・・はっ? えっ?? ・・・わっ・・・、私?!」

「ほら! いっつもさとっち、みかっぺが耳元で嫌いなものの名前言うたら『う゛わ゛ぁっ!!』って言って飛び起きるやん!? アレをしたら絶対に一発やって!!」


厘の言う『耳元で』というのは、ついこの間のポスターサイン記入により徹夜してしまった際、未佳が寝ていた長谷川を起こすのに使ったあの手のことだ。


しかしあれはあくまでも、長谷川がそこまで深く眠っていない状態であるということが絶対条件。

何故ならそれよりも深く眠っていた場合、いくら未佳が嫌いなモノを大声で叫んでみても、結局意識の方にまで声が届かず、相手が起きない可能性が高いからだ。


にも関わらず、皮肉にも『アレをやれば必ず起きる!』と信じている手神は、その厘の発言に指を『パチンッ!』と鳴らす。


「あっ・・・。そうか・・・! その手があったか!!」

「いやっ、ないない! そんな手鼻っからないない!! 第一私、こんなに爆睡してる状態のさとっちにやったことないよ?!」

「でも『モノは試し』やないの。得意なんやし・・・。ねぇ?」

「うんうん」

「ちょっと待って・・・。なんで私の知らないところで勝手に『得意分野枠』みたいになってんの?!」

「そんなん細かいことはどうでもええから」

「細かくない!!」

「いいから早よやって!」

「・・・・・・どうなっても知らないからね?!」


散々手神と厘に『やれやれ』と煽られ、未佳は最後にそれだけ言うと、渋々長谷川の方へ。


そして大きく息を吸い込んだ後、まるで腹の下から一気に息を吐き出すかのように、大声で叫んだ。


「COCKROACHーっ!!」

「・・・ッ!? う゛わ゛ッ!! ギャア゛ァ゛ッ!!」



ドテッ!!

バキッ!

ゴンッ!!



その未佳の大声に驚いたのか、それとも内容に驚いたのか。

はたまた両方からだったのか。

それについてはよく分からなかったが、長谷川はその未佳の発した大声に突然飛び起き、そのまま頭から落下。

色々と鈍い音が響いた後、最後は運転席との仕切りでもある壁に背中を付ける形で、その場にヘタリ込んでしまった。


この長谷川の飛び起き方に、近くにいた手神や栗野は慌てて長谷川の元へと駆け寄る。


「はっ・・・! 長谷川さん?!」

「長谷川くん、大丈夫!?」

「・・・っ・・・っ・・・っ・・・」


飛び起きた長谷川はやや放心状態のような状態ではあったが、一応大きな怪我等はしなかったらしい。


そしてそれからしばらくすると、ようやく意識が少しずつ浮上してきたのか。

長谷川は一回だけ瞬きをした後、こんな言葉を口にした。


「ぽッ・・・! ポニーテールのGメンに喰われる夢見たっ・・・!!」



ズベッ・・・



「あの単語から一体どんな夢見てるんだよ! 長谷川くんはっ・・・!!」

「だっ、だって・・・! なんかいきなり耳元に・・・! ・・・んっ? ってか僕・・・、一体何があったんですか?」

「な、なんか・・・。かなり長谷川さん混乱してるみたいですね。無理もないでしょうけど・・・」

「なぁ? ところでその『ポニーテール』って・・・、みかっぺみたいなヤツのこと?」

「え゛・・・?」

「あっ・・・、あぁ~・・・・・・。そう言われてみれば・・・、なんかちょっと似てた~、かも・・・?」

「ふ~ん・・・。だって」

「ふ~ん・・・。・・・・・・・・・フッ」



バシッ!!





「本日はありがとうございました。ちょっと色々ありましたけど、明日もまた、会場までよろしくお願いします」

「はいはい。まあこの近くには海もあるし、隣の駅とかに行けば、美味しい食べ物や名所もいっぱいありますから・・・。短い期間なんでしょうけど、どうぞ楽しんでいってくださいな」

「はい。本当にありがとうございました。では・・・」


運転手にも無事お礼を言い終え、栗野は先に出入り口に移動していたメンバーの元へと小走りで向かった。


「はい・・・。じゃあ外も少し寒いんで、早速中に入りましょうか」

「うん。なんか思ってたよりも外装オシャレだし・・・。今から中見るのが楽しみ♪♪」

「ホンマやね」

「ねぇ~♪」

「・・・あっ、あのさ・・・、長谷川くん・・・」

「・・・はい?」

「大丈夫・・・? なんかかなりその頬痛々しいんだけど・・・」


手神がそう言って指し示す箇所には、確かに人の手の形をした真っ赤な痣が、長谷川の真っ白な右頬にくっきりと浮かび上がっていた。

すると手神に言われて少々気になったのか、長谷川は皆と同じ間隔でホテルの方に歩き出しながら、痕が付いている箇所をそっと撫でて口を開く。


「痛いっすよ・・・? 冷たい風が当たると余計にヒリヒリしますし・・・、結構ジンジン痛いっすよ・・・」

「・・・だよな? そんなにハッキリ残ってるもんな・・・」

「だってちょっと聞かれたことに対して『うん』って言ったら、いきなり平手で『バチーンッ!!』っすよ?! おかげで意識はハッキリしましたけど、僕前に何言ってたのか覚えてないから・・・。ある意味理由も無しに叩かれた感じで・・・・・・。僕そんなに平手打ちされるようなこと言いました・・・?」

「ま、まあ・・・。あそこで『似てた』って言ったのはマズかったかなぁ~・・・」

「えっ? ・・・僕一体、何を『坂井さんに似てる』言うたんやろ・・・?」


結局長谷川自身の中では心当たりがないまま、11人は最初のブルーガラスで造られたオープンゲートを通過し、2つ目のオープンゲートの中へと進む。

2つ目のオープンゲートは、外側が木製、中心が緑色の両サイド自動ドアになっており、そこからやや進んだ左側に受け付けカウンター。

そしてそのさらに先のところに、3つ目のオープンゲートでもあるパープルカラーガラスの自動ドアが設けられていた。

どうやらあれが、このホテルの内部へと続く最後のオープンゲートらしい。


2つ目のオープンゲートを通ってすぐ、受け付けカウンターにいた若い男性受け付け員の一人が、早速栗野達の元へとやってきた。


「いらっしゃいませ、Jelly・Fishへようこそ・・・。失礼ながらご確認ですが、こちらは本日ご予約団体の『SAND music studio CARNELIAN・eyes御一行様』でよろしいでしょうか?」

「はい。申し訳ございません。少々予定の時間よりもチェックインが遅れてしまって・・・」

「あっ、いえいえ。この度はわざわざ遠い関西から当ホテルをご利用していただき、誠にありがとうございます」

「あっ、あと・・・。一応事務所の証明書なんですがー・・・」


ふっと栗野がカバンの中から取り出したのは、事務所スタッフから事前に受け取っていた、ホテルの宿泊予約証明書が書かれた証明書のコピーだ。

これらの証明書はトラブル防止のため、常に栗野が持参している大事な書類の一つである。


「はい。ちょっと拝見させていただきます。・・・・・・・・・はい。ありがとうございました。御一行様に間違いございませんね。お待ちしておりました。それでは事前に連絡でご説明しましたとおり、7階から最上階の9階までのお部屋が全て、宿泊部屋となります。こちらが鍵です」

「あっ、はい」

「エスカレーターは中へ入っていただいて左側。エレベーターと階段はその奥にございますので、どうぞご利用ください」

「はい、ありがとうございます。じゃあ皆さん・・・、中に入りましょうか」

「「「「はーい♪」」」」


一応ホテルのチェックイン等も無事終わり、栗野達は自然と足取りも軽やかに、3つ目のオープンゲートを通過した。


『こだわり』

(2006年 12月)


※東京 そば・うどん処『夕月夜』。


店員

「ご注文の品は以上でよろしかったでしょうか?」


栗野

「・・・はい」


店員

「では伝票ここに失礼いたします。ごゆっくりどうぞ」


みかっぺ・さとっち・厘・手神

「「「「いただきまーす♪」」」」


栗野

「はい・・・。まあ何はともあれ、今日の生ラジオ。皆さん大変お疲れ様でした<(_ _)> 明日は朝早くに新幹線に乗りますから、くれぐれも寝坊等しないようお願いしますね?」


みかっぺ・さとっち・厘・手神

「「「「はーい」」」」


さとっち

「にしてもラジオの後のうどんは空きっ腹に染みるなぁ~(しみじみ)」


手神

「生だったからかなり緊張したもんね(^_^;)」


みかっぺ

「・・・・・・ねぇ?」


さとっち・厘・手神・栗野

「「「「うん?」」」」


みかっぺ

「私が注文したのって『鍋焼きうどん』だったよね?(確認)」


栗野

「えっ? もしかして違うメニューでした??」


「えっ、でも・・・。うどんあるし、玉子あるし、野菜あるし・・・。お餅もかまぼこもちゃんとあるよ?」


みかっぺ

「いや・・・。そのメニューでは合ってるんだけど・・・。コレ本当に『鍋焼きうどん』・・・!? 何か別のものじゃない!?」


さとっち

「あっ、もしかして坂井さん。『関西』と微妙にやり方違うから違和感あるんでしょ?」


手神

「それはちょっと仕方ないかなぁ~(苦笑)」


さとっち

「そうっすよね? 関西みたいじゃなくても、これが関東風『鍋焼き』なんっすから」


みかっぺ

「『海老の天ぷら』がない『鍋焼きうどん』なんて紛い物じゃない!!(怒)」


さとっち・厘・手神・栗野

「「「「ドテッ!!(倒)」」」」



すみませーん!

トッピングで海老天一つお願いしまーす!!(笑)


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