63.波乱の駅弁
ようやく長谷川と手神とのいざこざが収まったところで、栗野は一時的に閉じてしまっていた手帳を再び開いた。
「なんか争うごとも収まったようなんで、ミーティングに戻ります。・・・え~・・・っと・・・。それで皆さんのお部屋なんですが、未佳さんは9階の903号室。厘さんは904号室になります。まあ微妙に位置はズレていますが、一応部屋の場所的には未佳さんと向かい合う形になってますんで」
「「はーい」」
「あっ・・・。あと私の部屋は、未佳さんの隣の905号室。日向さんは厘さんの隣の906号室ですので・・・。何かありましたら隣の部屋に駆け込んでください」
「「はーい」」
「それで長谷川さんと手神さんの部屋は、8階の803号室になります」
「・・・・・・ん?」
ふっとその部屋番を聞いて、長谷川は一瞬渋い顔で栗野に聞き返すかのように首を向ける。
すると栗野も、一体彼が何を聞き返したいのか察したらしく、説明を補足して伝えた。
「・・・なんか階聞いて分かったみたいな反応されてるようなんで言いますけど、長谷川さんと手神さんの真上の部屋は、未佳さんの部屋になります」
「あっ・・・、やっぱり?」
「! あっ、そっか! 903と803やもんね」
「もろ私の真下なんだ・・・」
「はい、なので“くれぐれも!” ・・・未佳さんはギャーギャー騒がないように・・・。特に最近、お互いのどちらかの部屋に入って女子トークみたいなことしてる傾向が強いようですし」
ギクッ!!
しかし実際今までのホテル宿泊の場所は、自分達の宿泊している場所の下が空室であるのかどうかを確認した上で、こうした女子トークを行っていた。
なのでもし下の階に人がいるようなのであれば、そのようなことをするつもりはさらさらない。
しかしその話を聞いてやや不安になったのか、長谷川と手神は二人揃いも揃って栗野に聞き返す。
「なんでそんな状況なのに、二人を僕らの真上の部屋にしたんっすか!?」
「僕達の部屋をズラすとか・・・、そういう案はなかったんですか!?」
「いえ・・・。逆にこうした方が、女性陣は縛りがあって騒がないだろうっていう上の人の案でこうなりました」
ドテッ!!
そのサラっと帰ってきた栗野の返事に、長谷川と手神はその場に頭から倒れる。
一方で、その話を隣の栗野から聞かされた未佳と厘は、少々別のことで不満があったらしく、同時に二人は顔を顰める。
さらに未佳に至っては、納得行かなげに両腕を組む始末。
そして不満がとうとう口先にまで来てしまったのか、未佳と厘は続けざまに不満をぶちまけた。
「何よ、それ・・・。まるで女子は『縛りがあれば融通が利く』みたいな言い方じゃない。・・・別に今までだって、下の階に人がいたんなら静かにしてたわよ」
「せやせや! そうやなくても壁が薄くて音が筒抜けみたいなところも、女子トークなんてしてへんかったし」
「トークする時はちゃんと周り確認しながらやってたわよ。そんな『何も考えずにトークしてる』みたいな感じに言わないでほしい」
「うん。めっちゃ不快な気分・・・」
そう口にして顔を背ける未佳と厘に、栗野は苦笑いを浮かべながら二人を慰めに掛かる。
「ちょっ・・・。二人ともそんな怒らないでください。一応あなた達が言いたいことはこちらも分かってますから・・・。ちゃんと周りのこと考えながらしてましたもんね?」
「「うん」」
「だったらいいんですよ。勝手に上の人に言わせておけば・・・。逆に何か反論してしまったら、そっちの方が恥ずかしいですし、大人げないですよ?」
「それはそうだけど・・・」
「まあ・・・、私も内心納得いかなかったご意見だったんですけどね? 一応、私も一人の女性として・・・」
ふっとその最後の言葉を聞いて、未佳はそれを話した相手が『男性』だったのだと察した。
さらに厘の方は、あえて確認も兼ねて、栗野にその部分を訊き返す。
「・・・もしかしてソレ言うたん男の人?」
「えっ? ・・・あっ、はい。“現在40代”の企画部にいる・・・」
「それって手神さんじゃないですか!」
「『40代』の情報だけで僕にするな! 違うよ!!」
「あぁ~っ!! 40代!!」
「だから違うってばっ!!」
その後栗野からのミーティングにより、ホテルの部屋に着いて荷物を置いた後は、7階にある大広間で300枚のポスターにサイン記入。
そしてそれが終わった、もしくはキリのよくなった辺りで、1階のランチルームへと向かい、そこで夕食。
その後はサイン記入を再開しつつ、交代で大浴場で入浴し、終わり次第就寝という手順になった。
「もちろん。サイン記入をディナー前に書き終えられましたら、ディナー後に皆さんに相談して、浴場に行ってもらって構いません。あと、朝に入浴したい方は、明日の7時半までに出てきてくださいね? よろしいですか?」
「「「「はーい」」」」
「じゃあ後はー・・・・・・。特にないですね。じゃあ新幹線の乗車券と特急券を配布しますんで、一人ずつ受け取ってください」
栗野はそう言うと、1枚ずつ番号を確認しながら、乗車券と特急券を手渡した。
ちなみに渡された特急券の番号では、未佳がA6番の窓側。
長谷川がA7番の窓側。
厘がB6番の通路側。
そして最後の手神が、B7番の通路側という並びだったのだが、その番号を見た長谷川はふっと厘に対して質問で聞き返す。
「小歩路さん・・・。何なら僕と席交換します?」
(! ・・・・・・)
「・・・えっ?」
「うん。小歩路さん長谷川くんと交換して、席窓側にいった方がいいんじゃない? 人目も気になるし・・・」
「えっ、でも・・・。さとっちええの?」
「うん。僕は別に・・・。坂井さんもいいですよね?」
「えっ? あっ・・・、うん。別にさとっちと小歩路さんがいいんならそれで・・・」
「じゃあそうしましょうよ。こういう場合は女性優先ってことで♪」
「それはちょっと手神さんアレやけど・・・。二人がそう言うんやったら・・・。せっかくやし、席変えよっかな」
「はい。じゃあ交換♪」
こうして長谷川と厘が、お互いの席を交換。
最終的に決まった席順は、窓側の席に女性二人、通路側の席に男性二人という形になった。
「はい。じゃあ席も決まりましたし・・・。あと決めないといけないことは~・・・・・・・・・ん?」
「「「「・・・・・・・・・」」」」
「・・・あなた達今・・・、“食べることしか”考えなかったでしょ?」
「「「「いやいやいやいや!!」」」」
そう答えながら首と右手を左右に振る4人だったが、やはり栗野の鋭い目は欺けなかった。
そもそも栗野は、かれこれ10年近くもメンバーの面倒を見ている人間だ。
そんな人間を、こんなメンバー全員で慌てて首を振って誤魔化すなど、そんなものが通じるはずがない。
「嘘言わないでください! 今完全に目が『メシ』っていう言葉になってましたよ!? 皆さん!!」
「! 嘘だぁ~! 私そんな汚い言葉思い浮かべてないもん!!」
ドテッ!!
「た・・・、単にそれ、言葉の言い方が違ってただけでしょ!?」
「でも『メシ』なんて思ってない! 私普通に『ランチ』だもん!」
「えっ? ウチ『駅弁』やったよ?」
「え゛っ?」
「僕はそのまんまで『昼食』って思ってたけど・・・。長谷川くんは?」
「そんなん『南屋』の『味噌カツ重』に決まってるやないですか!!」
ガタンッ!!
その瞬間、長谷川を除くメンバーや栗野達は、やや激しい音を立てながらド派手に前の方へと倒れた。
ちなみに今長谷川が言った『南屋の味噌カツ重』とは『南屋』という駅弁を中心に売り出している店の一番人気弁当のことである。
ボリュームがそこそこあることから、主に男性客からの人気が高い。
「って・・・、さとっちもうそんなの決めてんの!?」
「当たり前やないですか!! 『駅弁』言うたらやっぱりアレっしょ!?」
「いや・・・。私朝からいきなり揚げ物はキツイわ・・・」
「あっ・・・、ちなみにですけど長谷川さん」
「ん?」
「その駅弁ですけど『南屋』のはありますが『味噌カツ重』は今回はないですよ?」
「!! 何ぃ~っ?!」
「! ブッハッハッハッ!! 長谷川くんドンマイ!」
「味噌カツ重はまた別の機会にね」
「・・・・・・ハァ~・・・」
「ちなみに今回用意されている駅弁メニューは、こんな感じになります」
栗野はそう言うと、未佳達の目の前に5枚ほど、各店舗ごとに分けられた駅弁メニュー表を広げる。
その駅弁メニュー表には、駅弁の中に入っている料理や駅弁の写真など、それらの情報が事細かに記されていた。
「今日はそこそこのメニューやね」
「うん。・・・・・・あっ」
ふっと何気なく駅弁メニューを見ていた未佳は、ある店舗のメニューに載っていた駅弁を見て、思わず手を止めた。
それは、主に回線駅弁メニューを中心に販売している駅弁チェーン『つばさ』の『特製海鮮弁当』という駅弁。
容器はお櫃をマネた丸い形をしていて、中には頭付きの甘海老やウニ、イカやイクラやマグロ、サーモンなど、新鮮な魚介がきれいに盛り付けられている。
実は焼肉やパスタよりも寿司や刺身の方が好きな未佳。
当然食べようと決め込んだのも、今回はこの駅弁だ。
(おいしそ~♪ しかも大好きなウニまで入ってるし・・・! 私絶対にコレ!!)
「あっ! で、その駅弁なんですけど、いくつかちょっとNG掛かってるのがあるので、それを教えますね?」
「えっ? ・・・NG?」
「はい。と言っても『一部の方に』ですけどね? まず一つ目が・・・」
と言って、栗野は何やらカバンから赤い太めのサインペンを取り出すと、NGが掛けられている駅弁にマーキングをしていった。
「同じ理由のものを先に言っていきますけど『赤目屋』の『激辛肉味噌炒め弁当』と『赤い焼肉重』。『和詞』の『激辛ダレの竜田揚げ弁当』と『山椒味噌の和風野菜弁当』。『錦窓』の『黒胡椒と白胡椒の焼きブリ弁当』。この5つのお弁当は、坂井さんと長谷川さんは食べられませんので・・・。理由分かりますね?」
栗野が確認のため二人に聞き返してみると、二人は2回だけハッキリと聞き返した。
「もちろん。・・・本番でさとっちのコーラスがなくなったらマズイもんねぇ~」
「僕だけ!? 坂井さんが第一じゃないんですか!? この場合・・・」
「それから今上げた『赤目屋』のメニューと『和詞』の『激辛ダレの竜田揚げ弁当』は、残りのお二人もNGです。なんかかなり辛いそうなんで・・・」
「「は、はぁ~・・・」」
「それから『カモメ』という店舗の全8品のお弁当ですが、こちらは厘さんは食べられないので」
「「「えっ?」」」
「『味見』ということでお弁当を回すのも、こちらは禁止です。それからそれらのお弁当のどれかを食べた後の箸で、厘さんのお弁当に触れるのも禁止ですから」
「ちょっ・・・、ちょっと待って!!」
「? ・・・なんですか? 未佳さん・・・」
「なんで小歩路さんだけ丸々1店舗NGなの!? 別に頼んだって・・・!」
「えっ?」
「あっ! 違うんよ、みかっぺ。ウチそもそもそこのお店の食べられへんの。“アレルギー”やから・・・」
「・・・・・・えっ?」
ふっと厘の口から返ってきたその理由は、たった4文字だけのあの言葉だった。
「あっ・・・『アレルギー』?」
「うん。アレルギー。・・・ウチ去年“とろろ”でアレルギー起こしてしもて・・・」
「とろろって・・・、あの山芋の『とろろ』でっ!?」
「うん・・・。あの『とろろ』・・・」
ちなみにこのアレルギーが出てきたのは、丁度去年の秋頃。
何となくとろろを作る段階から手のひらが痒くなってきた感覚があり、その後口に含んでみたところ、一気に口全体に激しい痒みが起こり、さらには蕁麻疹や腫れまで出てきてしまったのだ。
この出来事に驚いた厘は、慌てて栗野にそのことを電話で知らせ、急いでいつもの北堀江救急医療センターへ。
そこで高野からの診察により『とろろ』による過度のアレルギー症状であると診察されたのである。
「私今日それ初めて聞いた・・・」
「僕もですよ! 小歩路さんそういうことは早めに言わないと・・・! 何かの拍子に食べたりでもしたら大変じゃないですか!! アレルギーは酷いと死ぬこともあるんですよ!?」
「えっ? でもウチ、さとっちには話したんやけど・・・」
「「えっ?」」
それを聞いて長谷川の方に視線を向けてみれば、長谷川はやや小首を傾げながら、厘の方に視線を向けて口を開いた。
「・・・『過度の症状』は聞いてないっすよ? ただ『火を通し切れてないヤツは食べられない』っていうのしか・・・」
「あれ? そこまで言わへんかったっけ? ウチ・・・」
「うん、言うてない・・・。ただ前にたこ焼き買おうとした時に、ポロッて言った程度だったし・・・」
ちなみに関西方面で売られているたこ焼きは基本、外をカリッと焼き、中をとろとろにするため、材料としてとろろを使用している。
厘の場合、一応火が通し切れているとろろであれば、あの時のようなアレルギー症状は身体には現れないのだが、たこ焼きは中が半なまのような状態。
そのため以前長谷川と『屋台屋』という焼きそば・たこ焼き・お好み焼きを扱っている店屋に行った際、たこ焼きの注文でやや警戒したことがあったのだ。
「えっ? で、結局どうしたの?」
「ん? あの時は小歩路さんはお好み焼きにして、僕はたこ焼きでしたけど?」
「あっ・・・、結局たこ焼きは小歩路さんは頼まなかったのね?」
「そら頼んでアレルギー出たら大変っしょ!? 店側も変な感じになりそうだし・・・。でもなんでとろろでアレルギー?」
「ウチ・・・、とろろに野菜ジュースとか抹茶とか入れてジュースにして飲んでたんやけど、そしたらいきなり」
「じゅっ・・・、ジュースにしてたんっすか!?」
「むしろそれってシェイクかスムージーじゃない!」
「うん・・・。あれ結構おいしかったから、いつも楽しみにして飲んでたんやけど・・・」
「・・・そらアレルギー出るわけっすね。軽く一生分のとろろ飲み干したわけやから・・・」
「そういえば『カモメ』の駅弁に確か・・・」
ふっとそう口にしながら手神がメニュー表に目をやると、そこには確かに2品ほど『カモメ』のメニューにとろろ弁当の記載があった。
しかもその内の一つは、完全なとろろ丼である。
「明らかにNGって感じですね」
「でもなんで他のもダメなの? 他にはとろろを使ったのはないじゃない」
「でもお弁当を作ってる工場自体は同じなんです。だからちょっと用心して、厘さんには避けてもらいました。実際アレルギーをお持ちの方で、製造場所が同じだったことにより、そこにはないはずのものでアレルギー症状を起こしたっていう話もよくあるので」
「あっ・・・。なるほど・・・」
「それから、最後の一つが『つばさ』の・・・」
ふっと厘の口から出てきた『つばさ』という言葉に、未佳はビクッと反応する。
『つばさ』は今さっき、未佳が食べようと決めた海鮮弁当を扱っていた店だ。
しかもメニュー表を載っている『つばさ』のメニューは、ある海鮮弁当を含めてたったの3品しかない。
ただでさえ品数が少ないというのに、これ以上減らすというのだろうか。
(嘘でしょ・・・? 嘘でしょ!?)
「『特製海鮮弁当』がNGになります」
「!! なんで!?」
「・・・えっ?」
「なんでソレが『NG』になるの!? 別に辛いわけでもアレルギーがどうとかでもないじゃない! ねぇ!? なんで!?」
まさかの楽しみにしていた弁当にNGが掛かり、未佳は何度もその理由を栗野に聞き返す。
するとようやく栗野も口を開き始めたのだが、その理由は実に単純なものだった。
「理由は、この駅弁だけが他の駅弁よりも『値段が張るから』です! 皆さんの駅弁よりも2000円も高いんですよ!?」
「「「高っ!!」」」
「いいじゃなーい! 私コレが食べたかったのに・・・!!」
「・・・絶対に未佳さんはそう言うと思いましたよ・・・」
「ねっ? 栗野さん、私半分お金出すから」
「ダメです! それはイベントなどの契約上、皆さんが代わりに出すことは禁止されてるんですから・・・!! 別のにしてください!」
「そんな~!!」
栗野にキッパリとそう言われ、未佳はその場に沈みながら項垂れた。
その姿は、一見すると井戸から這い上がってきたカラフルな幽霊のようである。
「・・・ところで皆さんはメニュー決まりました?」
「ウチ『言の葉』の『季節の山菜小鉢弁当』に、緑茶」
「僕は『豊』の『焼きジャケと五穀米弁当』に烏龍茶」
「あっ、それウチが迷ったやつ」
「・・・何ならあとで味見してみます? 僕が箸付ける前に」
「させて♪ させて♪」
「長谷川さんは?」
「僕は『四季』の『牛タン重』にそば茶」
「・・・・・・なんかちょっと違う路線行ったね。長谷川くん」
「へっ? そう?」
「じゃあ最後ですけど・・・。未佳さんは?」
「・・・・・・ほうじ茶・・・」
「・・・と?」
「・・・・・・・・・おしまい・・・」
ドテッ!!
「みっ・・・、未佳さ~ん!!」
「いつまで引きずってんすか・・・。坂井さん・・・」
「みかっぺ、元気出して。お魚のやつ食べたいんやったら、まだたくさんメニューあるよ?」
「そうっすよ。手神さんの『焼きジャケ』もあるし『鯖の西京焼き』もあるし・・・。他にも揚げたのとか蒸したのとか和えたのとか」
「・・・・・・生ないじゃない・・・」
「「あっ・・・」」
その未佳の口から出てきた鋭い指摘に、二人はふっとメニューに再び目を向けてみる。
確かにこのメニューを見た感じ、生の魚などを使用した駅弁はこれ一つしかないようだ。
「・・・刺身か寿司が食いたかったんっすか? 坂井さん」
「うん・・・。最近全然食べらんないし・・・『ザース』にはないんだもん・・・」
「う~ん・・・」
「しかもその写真見てよ・・・。ウニよ? ウニ。・・・私の大好きなウニなのに・・・、写真だけ見せておいてNGなのよ? ・・・なんでこんな出かける前に悲しみに溺れないといけないの?」
「・・・・・・なんか昔の先人の詩みたいになってますけど?」
「・・・・・・・・・・・・」
「もう! 分かりましたよ!!」
そう突然大声を上げたのは、未佳の注文メニューを記入していた栗野だった。
どうやら先ほどの手神同様、メンバーのワガママに痺れを切らしたらしい。
栗野は大声を上げたかと思うと、メンバーの注文品をメモしていたノートに、何やら殴り書きで文字を書きながら口を開いた。
「『特製海鮮弁当』! 私が注文したことにして注文しますよ!? まったくもうっ・・・!」
「? ・・・・・・~っ♪ ホ・・・、ホントっ!?」
「仕方ないでしょ。いつまでたっても未佳さんが決めないんですから・・・。それにこのままじゃ、新幹線の時間も間に合」
「ありがとう~っ!! 栗野さ~ん♪」
「ギャ・・・ッ!!」
次の瞬間、ずっと落ち込み沈んでいた未佳の顔が『パッ』と明るくなり、栗野の背中に思いっきり抱き着いた。
その未佳の反応に、栗野はやや呆れたような顔で未佳の方に視線を移す。
「あのー・・・、未佳さん? 一応私怒ってたんですけど?」
「~♪ 栗野さん、ありがとー♪ ダイスキ~♪」
「聞いてないし・・・」
ちなみにその後、ミーティングはこれにて無事終了し、メンバーはいよいよ、新幹線のホームの方へと移動した。
『飲み会』
(2007年 7月)
※居酒屋 『maboroshi』
みかっぺ
「それでは! 6周年ツアーライヴ! 全公演無事開催終了を祝して!!」
みかっぺ・さとっち・厘・手神・栗野
「「「「「かんぱーい!!(祝)」」」」」
※それから3時間後。
栗野
「あっ、すみませーん! 宝魚の水割りもう一杯くださ~い!(注文)」
みかっぺ
「ちょっ・・・! ちょっと、栗野さん! また飲むの!? アレ芋焼酎でしょ!?(驚)」
栗野
「あんなの私はまだまだ余裕ですよ♪ 何せ私は、新潟県民でもあった父の血が流れてる身ですからねぇ~(笑)」
みかっぺ
「それはそうだろうけど・・・(不安)」
栗野
「逆に皆さんは? もうお酒飲まないんですか?」
みかっぺ
「じゃあ・・・・・・、私ライムサワー」←(やや控えめ)
さとっち
「んじゃ僕ハイボールのコーラ割り~♪」
手神
「僕は普通のハイボールにでもしようかな」
厘
「ほなウチ、隠れ鬼」←(芋焼酎)
みかっぺ・さとっち・手神
「「「えっ!?(驚)」」」
手神
「それ結構強いのでしょ? ・・・大丈夫?」
厘
「うん、全然・・・。いつもあったら飲んでるやつやし、まだウチ酔ってないから(余裕&冷静)」
栗野
「厘さ~ん! やっぱり私の飲み友は厘さんだけよ~♪ みんなこの時間になると強めのお酒イッテくれなくなっちゃうから、厘さんがこの場にいてくれるとホント頼もしいわぁ~♪(安心) ついでに女性同士だし(笑)」
厘
「そ、そう?(苦笑) まだ行ける?」
栗野
「全然行ける!! ・・・だって今までの、単なる“味付きの水”みたいなもんじゃない?」←(爆弾発言)
みかっぺ
「ブッ・・・!!(詰) ゲホ! ゴホッ! ガホッ!!(咳)」
手神
「だっ・・・、大丈夫?」
みかっぺ
「ケホッ・・・、だっ・・・、大丈夫・・・。ちょっとビールが喉に詰まっただけだから・・・(汗)」
さとっち
「ったく一体誰っすか? 『栗野さんはお酒が入ると「M」になる』って言ったのは・・・(呆)」
みかっぺ
「・・・・・・・・・さとっちでしょ?」
さとっち
「あっ・・・( ̄□ ̄)」
しかしこの酔った二人の反応・・・(ーー;)
どうか“幻”であってほしかった(苦笑)