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51.ポスター手渡し会

〈〈〈〈〈キャーッ!!〉〉〉〉〉

〈〈〈〈〈みかっぺ~っ!!〉〉〉〉〉

〈〈〈〈〈さとっち~っ!!〉〉〉〉〉

〈〈〈〈〈小歩路様ーッ!!〉〉〉〉〉

〈〈〈〈〈手神さーんッ!!〉〉〉〉〉

「皆さ~ん! ちょっと待っててね~♪」

「これからポスター渡すんで」

「はな、後ほど・・・」

「少々お待ちくださーい」


4人がステージから退場し始めたと同時に、会場からは惜しみない拍手と、ファンの口から発せられる黄色い声に包まれた。

さらに通路の両サイドからは、どうにか退場する4人に触れようと、大勢のファンが両手をめいいっぱいに伸ばしながら手を振っている。

そんなファンの数名にハイタッチをしながら、未佳達はポスター手渡し会を行う予定のテーブルの方へと向かった。


ポスター手渡し会を行う予定の場所は、ステージに上る際に使用する階段を下りた先。

しかもテーブルを横に3つ並べただけ、というかなりシンプルなものだ。

ちなみにこのようなセットにした理由は、単に足元などが余計な道具等でゴチャゴチャしないことと、後片付けの際に手間が掛からないから。


(とは言っても・・・。やっぱりセットはちゃっちいかなぁ~・・・)

「坂井さん、坂井さん」

「あっ?」

「『あっ?』じゃないですよ! それよりさっきステージでやってたこと・・・。“アレ”、ホンマにやるんですか?」


長谷川の言う『アレ』とは、言うまでもなく『プランB』つまり『生サイン記入』のこと。

その長谷川の問い掛けに、未佳はハッキリと頷いた。


「当たり前よぉ! 今回は事務所スタッフのミスのせいだけど・・・。ファンには何の罪もないんだから」

「ま、まあ・・・。それはそうやけど・・・」

「さぁ! さとっち、早く定位置に着いて! ポスター手渡し会始めるよ!」

「・・・・・・・・・ハァー・・・」

「ほら! 溜息吐かないっ!!」


未佳に最後に喝を入れられ、長谷川達は苦笑しつつもポスター手渡し会を行う予定のテーブルの方へと移動する。

移動してまず最初に行うのは、サイン記入されているポスターが入れられた段ボール箱の口を、全て開封させる作業。

ただしこの作業は全て、現地スタッフや栗野達が行う作業だ。


続いての作業は、手のひらの乾燥を防ぐための保湿ローションの用意。

これは、これからポスターを手渡しするメンバーのためのものだ。


というのも今回ポスターを包装しているビニール袋は、通常の食品などを入れているビニール袋よりも真空パックに近いような材質のもので、通常のビニール袋のような通気性の穴がない。

また水に濡れた際にその水を弾くための加工等もされているので、袋の表面は常に乾燥してしまっているような状態。


そんなビニール袋に長時間素手で触れていると、乾燥している表面から水分が奪われてしまい、手が乾きやすくなってしまうのである。

よくビニール袋を触っていて手のひらがツルツル、もしくはサラサラな状態になってしまうのは、これが主な原因だ。

そしてそんな状態が極度にまで達してしまうと、自然と指先や関節部分の皮が剥けてきたり、あかぎれなどを引き起こしてしまう。


そうならないようにするため、またポスターを握った際に滑り止めの働きをするためにも、このローテンションは絶対に必要不可欠なものである。

ましてや今のような乾燥している時期となれば、それは尚更のことだろう。


ちなみにこのローションはスプレータイプのもので、両手に吹き付けるのは、10分置きの休憩時に1回ずつ。

乾燥状況によっては5分置きという場合もあるが、今日は乾燥もそんなに酷くはないので、おそらく10分置きというパターンになるだろう。


そしてこれを用意するのも、基本はマネージャーである栗野の役目。

メンバーである未佳は手伝わない。


ではメンバーは一体何を用意するのかと言うと、正確には何もない。

強いて言うとすれば、手渡した際に相手に向ける笑顔と、受け取った相手から返ってきたコメントの受け答えくらいだろうか。


(とはいえ・・・。これも全然簡単じゃないのよねぇ~。軽い気持ちでなんか絶対にできないことだし・・・)

「あっ・・・、そうだ! 皆さん、コレ一人1本! 手神さんは2本ですけど・・・。それぞれ持っていてください!」

「「「「へっ?」」」」


ふっと栗野がそう言いながらテーブルの上に並べたのは、4本の黒いサインペンと、1本の太い青インクのマジックペン。

それもまだ袋に入れられたままの新品未使用なものだ。


「何っすか? コレ・・・」

「『何』って・・・、サイン書くためのペンですよ!! 『プランB』の・・・!!」

「えっ!? やっぱりアレ書くん?! ウチらアレ書くんっ?!」

「はい! ・・・あくまでポスターが足りなくなった時用ですが・・・。その時は書いていただきます!」


その容赦のない栗野の発言に、厘は『ガクッ!』と頭を下げる。

しかしその後は諦めたのか何も言おうとはせず、厘はただ黙ってサインペンを一本だけ手に取り、自分の定位置で立ち尽くした。


「で、でも栗野さん・・・。よくこんなタイミングでサインペンなんて用意できましたね」

「うん。それもこんな本数と青いのまで・・・」

「ええ! さっき用具係の人間4人を捕まえて借りたんです! もう・・・、結構大変だったんですよ~!?」

(べっ・・・、別に“簡単そうだった”とは思ってないけど・・・)


そんなことを胸中で呟きつつ、未佳もサインペンの一つを手に取り、衣装のポケットに引っ掛ける。

さらにその後に続くよう、手神と長谷川もそれぞれサインペンを手に取り、テーブルの上には青いマジックペンだけが残された。


「じゃあ・・・。この青いペンは手神さんのですね?」

「えっ?」

「『えっ?』じゃないですよ、手神さん!! 大阪は手神さんが日付けと場所を記入するんでしょうっ!?」

「あっ・・・、あぁ~・・・。そっか~・・・」

「ほら。リーダー落胆しない」

「・・・・・・やっぱりやらないとダメ?」

「ダメです! 当たり前やないっすか!!」

「・・・何なら長谷川くんやってみたら?」

「嫌っすよ!!」

「やってみなよ。久々に」

「『久々に』って・・・、僕今までそんなことやったことないっすよ!?」

「じゃあ尚更だからやってみなよ。初体験で♪」

「『初体験』って・・・・・・。そんな軽い話じゃない・・・」

「どう?? 長谷川くん♪」

「だから『嫌や』って僕、さっきから言ぅ」



バンッ!!



「もう二人ともいい加減にしぃッ!!」

「一体いつまで青ペン押し合いながら言い合ってんのっ!! 私とあの行列がポスター手渡し待ってんの分かんないっ!?」

「「あっ・・・・・・」」


その未佳の指差す先には、既に会場全体を折り返して階段にまで並んでいるファンの列。

しかも先頭から20人目くらいの人達は、時折『まだか、まだか』とこちらに顔を覗かせている。


そんなファンの列に申し訳なさが込み上げてきたのか、長谷川と手神は無言でゆっくりと、やや無表情ながら頭を深々と下げた。


「・・・べ、別に『頭下げればええ』っていう話違うんやけど・・・・・・」

「はいはい! 二人とも頭下げてる暇あったら早く自分の持ち場に立って~。ほら、早く!」


そう言いながら、未佳はえいっえいっと二人の背中を押す。

こうして押し出された手神と長谷川は、自分達の立ち位置へと移動し始めた。


「まったくも~う・・・」

〔なんか色々大変そうだね〕

「ホントよぉ~って・・・! リオ!! いっ・・・、いたのっ!?」

〔うん、今さっき・・・。未佳さん、歌上手いんだね〕

「まあねぇ~♪ って・・・。あの・・・、コレ私の本職なんだけど・・・?」

〔ここでポスター渡すの?〕

「うん。・・・ところでコレやってる間、リオは何処にいるの?」

〔・・・・・・じゃあ僕・・・、お客さんが通る通路の真ん中にいようかなぁ~。あえて・・・〕

「あっ、そう・・・・・・。どうせ透けるもんね」

「あ゛っ?」

「ん・・・? あぁ~っ! なんでもない! なんでもない!! こっちの話!」


ちなみにメンバーの立ち位置は、まずは先頭に坂井未佳。

その隣に長谷川智志。

その次に小歩路厘。

そして最後尾には、リーダーの手神広人という順番だ。

さらに未佳の前の方には、栗野達の手伝いを行う事務所女性スタッフの一人、日向ひなたあおいが待機していた。

彼女はよく物販コーナーやプレゼントBOXの管理、お客様相談室などで働いているスタッフで、今回は一人ひとりのポスター手渡し券の枚数を数え、それを栗野達に伝える役目を任せている。


そしてメンバーの後ろには、日向から伝えられた枚数のポスターをメンバーに手渡す係の栗野が、かなり真剣そうな面持ちで待機していた。


ところで肝心のポスターを手渡す人間だが、実はこれが今回はかなり細かく決められているのだ。


まず、基本的に未佳が手渡す予定のポスターは、全てのサイン入りポスターとそのサイン入りポスターを贈呈後、再度並び直した人の1枚目。

またそれ以外に、4枚以上の券を持っていた人の場合、5枚目・9枚目・13枚目と、4枚ずつ増えていく数のポスターを担当。

その隣の長谷川は、未佳とは数字が一つずれ、2枚目・6枚目・10枚目・14枚目の順番で4つずつ増えていく数のポスター。

さらにその隣の厘は、3枚目・7枚目・11枚目・15枚目と増えていく数のポスター。

そして最後の手神は、4枚目・8枚目・12枚目・16枚目の順番で増えていく数のポスターを手渡すことになっている。


つまり分かりやすく言ってしまえば、手渡し券が1枚なら、未佳からポスターを1枚。

3枚持っていれば、未佳・長谷川・厘からポスターを1枚ずつ。

5枚の場合は、未佳からのみ2枚。

その他のメンバー3人からはそれぞれ1枚ずつ、ポスターが手渡されるというやり方だ。


ふっと、栗野は長谷川と厘の間辺りに置かれていたケーブルマイクを手に取り、もう既に並んでいる人々の方に向かって口を開く。


「はい! 大変長らくお待たせしました! ではこれより、CARNELIAN・eyesのメンバーによる、ポスター手渡し会を開始します! ポスター引換券をお持ちのお客様は2列になって、お並びください! また今回はかなりの混雑が予想されますので、メンバーのいる机が見える方は、全てのポスター手渡し券を出した状態で、順番に前へお進みください! 皆さんのご理解とご協力のほど、よろしくお願いいたします!!」


その栗野のアナウンスを聞くや否や、未佳の目から見てやや後ろの方に並んでいた人々は、少々スローな動きながらもポスター手渡し券を引っ張り出し始めた。


ちなみに今回のCDは、ミュージッククリップDVD付きの初回限定盤と、CDのみが挿入されている通常盤の2種類のみ。

そのためメンバーやスタッフ達も『今回のポスター手渡しは、きっと未佳と長谷川が中心的になるだろう』と、そう思い込んでいた。

そう予想して、タカを括っていたのだ。


最初の一人目の枚数を知るまでは。


「はい、何枚ですか? ・・・4? 4ですね? はい、栗野さん4枚ー!」

「よっ・・・、4枚っ!?」

((((いきなり・・・っ!?))))

「皆さん一本ずつ! はい・・・! はいっ! 厘さん、手神さんに渡して!」

「あぁ、はいっ! ほいっ」

「ど、どうも・・・」


こうしてポスター4枚をメンバーに手渡すのに掛かった時間は、約20秒。

ちなみに先頭に並んでいたのは、デビュー当時からずっとライヴやイベントにやってきてくれている常連の男性ファンだった。


「はい。いつもありがとうございま~す♪」

〈あっ、ありがとうございますっ!! あの・・・! とっ、東京も見に行くんで・・・!〉

「! ありがとうございますっ!! 是非お待ちしておりますんで」

〈はいっ!〉

「・・・ほいっ。今日はありがとうございました~!」

〈あぁ~、ありがとうございます!! さとっち、髪型似合ってますっ!〉

「あっ、そうそう! 髪型カウントダウンの時と変えたんで・・・。気付いてくれてありがとうございます!!」

〈いえいえ〉

「は~い。ありがとうございました~♪」

〈ありがとうございます!! 小歩路さん、今日のトークよかったです!〉

「あっ・・・、ホンマ? じゃあ東京もあんな感じでええかなぁ~」

〈はいっ! 勿論!!〉

((やっ、止めてくれ(てよ)・・・))

「はい、今日は本当にありがとうございましたー!」

〈あっ、ありがとうございます!! これからもメンバーのこと、支えてってください! 手神さん! 応援していますっ!!〉

「う~ん・・・。最近は逆に注意されることの方が多いんだけどぉ~・・・。努力します!! ハハハッ。ありがとうございました!!」


続いて二番目にやってきた女性ファンも、ポスター手渡し券の枚数は予想枚数を超えた数だった。


「何枚ですか?」

〈8枚です♪〉

「8? ・・・はい! 8まーい!!」

「はちぃ~っ!? 皆さん、2本ずつ持ってください!!」

「さとっち手前の取って!」

「あっ? あぁ~、はいはいっ! はいはいっ!! ほいっ」

「サンキュー♪ ・・・・・・・・・あっ・・・、今日はありがとうございました~!」

〈うわぁ~♪ ありがとうございます!! みかっぺ、東京も頑張って~♪〉

「はいっ、がんばりま~す! フフフ♪ ありがとうございました~」

「次の方5枚ですー!!」

「はーい! 未佳さんだけ2本お願いしまーす」

「あっ、はーい!」


その後も遥かにこちらの予想を超えた枚数を持つ人々が次々と現れ、メンバーが最初の休憩に入った頃には、既に3箱の段ボール箱が空に、4箱目の中身が半分ほどになっていた。


ちなみに段ボール1箱に入れられているポスターの枚数は、全部で50枚。

その空になった段ボール箱の中身は、全てサイン無しポスターで、サイン入りポスターの方は、まだ最初に開けた箱の中に10枚ほど残っていた。


ということは、この10分間の間にポスターを手渡した人間は全体のわずか40人ほどで、その人達のほとんどが、ポスターを大体4~5枚近く貰っているという計算になる。

これはメンバーを含め、誰も予想していなかった数字だ。


「すっごい・・・」


ふっとローションを手のひらに塗り付けていた未佳の口から、こんな率直な感想がぽろりと零れる。

さらにもう既にポスターを受け取り終えた人々を見つめ、手神も同じくこんなことを口にした。


「みんな・・・、僕達からポスターを手渡されたいんで、CDを4枚近くも買ってきてるんですね」

「うん。なんかちょっとビックリ・・・」

「しかも2枚しか買うてない人、まだ一人もいてないし・・・」

「ってかよく・・・。こんだけの数の手渡し券、用意できましたよね。僕はそこの方がビックリですよ」

「えっ? それって特定のお店で予約したらその分だけ、枚数取り寄せにしたからなんとちゃうの?」

「私もそう思う。だからスタッフの人とか誰も、枚数を計算してなかったんじゃない?」

「あっ・・・、なるほど・・・。ところでサイン無しの方は足りてるんですか?」


確かにものの10分ほどでこんな状態になってしまうと、その心配はかなりある。

ましてやサイン入りポスターの枚数があんな状態だったのだから、こっちのポスター枚数も少々疑問だ。

もしかしたら、こちらも途中で無くなる可能性だってある。


だがその長谷川の問い掛けに、栗野は自信あり気にこう答えた。


「その辺についてはご心配なく・・・。まだここには5000枚ほどありますし、外の駐車場に富めてある車の中にも、まだ1000枚ほどありますから」

「あっ、あぁー・・・。さいですか・・・」


その後再びポスター手渡し会を再開させた未佳達だったが、やはりやってくるのはポスター手渡し券を4枚以上持った人達ばかり。

むしろその前に、4枚よりも下の枚数を受け取った人間がまだ現れていないのである。


ちなみにポスターを受け取った際の人々の反応だが、これはその人その人で様々だ。


たとえばやや興奮しつつも敬語で話し掛ける者もいれば、まるで友人同士のように慣れた口調で話し掛けてくる者。

興奮しすぎるあまり、メンバーの前で泣き出す者。

はしゃぎすぎる者。

『今日のイベント内容はよかった』と、メンバーを褒める者。

今後の活動に対しての期待を寄せる者。

メンバーに対して、ただ『ありがとうございます』という言葉を連発する者。

どう話し掛ければいいのか分からず、ひたすらお辞儀を繰り返す者。

『尊敬しています』『毎日曲を聴いています』と伝える者。

メンバー全員にお礼を言う者。

特定の人間に対してだけ猛アプローチをする者、などなど。

上げていけばキリがない。


また中にはこんな報告を行う人間もいた。


「あっ、いつもありがとうございます~♪」

〈はい、あの・・・。未佳さん、聞いてください〉

「?」

〈みかっぺ、実は僕ら・・・。この間結婚しました!!〉

〈はい〉

「えっ・・・、えええぇぇぇ~っ!!」

「えっ!! ・・・ホンマにっ!?」

〈はい♪ 式場でCARNELIANの曲も流したりして、結構盛り上がりました!〉

〈まだまだファン歴浅い私達ですけど・・・。こうして出会えたのはこのバンドのおかげだと思うので・・・〉

「「いえいえ!!」」

「それは二人の気が合ったからですよ~! ねぇ?」

「うん。でも二人とも、本当におめでとうございます!! はぁ~、なんか嬉しいなぁ~♪」

〈フフフ♪ あっ、じゃあ・・・。詳しいことはまた別の機会に〉

〈次の報告待っててくださーい♪〉

「ハハハッ・・・あっ、いつもありがとうございま~す・・・・・・、あれ?」


ふっと次にやってきた女性の体を見て、未佳はポスターを手渡しながら小声で尋ねる。


「あのー・・・、もしかしてそのお腹・・・」

〈あっ、は~い♪ 早くもファン歴6年目にして二人目です♪〉

「「「・・・えええぇぇぇーっ!!」」」

「わぁ~っ!! そうですよね!? 確か3年くらい前にもお一人・・・」

〈えっ!? みかっぺ、覚えててくれたんですか~!?〉

「なっ、なんか印象強かったんで」

「ちなみに今どれくらいー・・・」

〈あっ、まだ二ヶ月です~♪〉

「わぁ~、おめでとうございます♪ 今から楽しみですね!」

〈はい!! あっ、じゃあみかっぺ。また今度〉

「あっ、はい。今日は本当にありがとうございました~!!」


その後彼女が去ったのと同時に再び休憩に入り、長谷川は両手にローションを塗りながら、ふっと笑顔を見せつつ未佳にこんなことを呟いた。


「なんかスゴイっすね。これでファン同士の結婚とおめでた報告、何組目やろ・・・」

「そんなの・・・。もう今じゃ数えられないわよ~。『笑顔の数だけ幸せはある』って、そういうことでしょ・・・・・・あ゛っ!!」


ふっと自分の真後ろにあった段ボール箱を見て、未佳は思わず特有の濁点声を上げた。

そのいきなり聞こえてきた声に、長谷川と厘は同時に首を未佳の方に向ける。


「えっ・・・? なっ・・・、何??」

「みかっぺ、どないしたん!?」

「・・・・・・・・・ないのよ・・・」

「・・・・・・?」

「「「何が?」」」

「・・・・・・・・・・・・サインが・・・」


それはポスター手渡し会が行われてから、実に1時間半後の出来事だった・・・。


『バレンタイン』

(2002年 2月)


※事務所 控え室。


みかっぺ

「そういえば・・・。あともうすぐだね♪ 小歩路さん」


「へっ? ・・・何が?(゜゜)」


みかっぺ

「『何が?』って・・・。バレンタインデーよ、バレンタインデー♪ もうあと一週間くらいじゃない」


「へっ? あっ・・・。どおりで最近近所の商店街とかが『バレンタイン♪ バレンタイン♪』って騒いでたわけやね(理解)」


みかっぺ

(今頃~?!(驚))

「とっ、ところで小歩路さんは~・・・。チョコレート渡したりする?」


「その前にみかっぺ・・・・・・・・・。ウチ、バレンタインの内容イマイチよく知らへんのやけど・・・。あれってチョコレートやないとダメなん?」


みかっぺ

「よし! じゃあそこから考えよう!!(爆)」



面倒くさ・・・。


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