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37.真夜中の謎

「よーし! じゃああとは明日の本番リハーサルで頑張ることにして、今日はここでお開きにしましょう! ・・・みんな若干疲れてるし・・・」

「「「ハハハ・・・。はーい♪」」」

「じゃあみんなお疲れ様~」

「お疲れ~」

「お疲れ様~」


前日の最終練習もようやく終わり、未佳達はお互いに声を掛け合いながら、自宅へ帰るための荷自宅をし始めた。


この時の時刻は夜の7時半。

少々イベント前日にしては切り上げるのが早すぎるように思われるかもしれないが、これが彼女らのバンドでは当たり前のこと。

むしろ前日だからと言って長時間練習をさせ、かえって体調を崩されてしまったら元も功もない。

練習が足りないと感じる人は、ここに周りに迷惑を掛けない程度に練習をする。

それがリーダーでもあり最年長でもある手神の、イベント&ライヴ前の方針だった。


「じゃあ自宅で練習する人は、当日のこともよく考えてから、妥当だと思う時間までしかしないようにね? やり過ぎて疲れちゃうと大変だから・・・」

「大丈夫っすよ、手神さん。このバンドのメンバー、みんな意外と丈夫ですから」

「そう言って安心してると体調崩すだろ? 長谷川くん」

「・・・・・・・・・今のは否定しません・・・」

「あっ・・・、あのー! 皆さーん!!」

「「「「ん?」」」」


ふっとその声のする方に視線を向けてみれば、スタッフルームからやや慌てて戻ってきたらしい栗野が、手帳を片手にメンバーに口を開いた。


「今スタッフの方からのご連絡で、ちょうど現地の最終確認を終えられたスタッフの方達が、これから事務所に戻ってくるらしいんですけど・・・。ついでにそのまま車で『ザース』に向かう予定らしいんでー・・・」

「「「「・・・・・・おっ?」」」」

「『夕食を「ザース」で食べたいという方は、ついでに車に乗ってください』とのことだそうなんですがー・・・。どうします~?」


そうニヤニヤしながら訪ねてくる栗野に、未佳達は一斉にノリよく叫ぶ。


「食べたーい!」

「行く! 行く!」

「同行させていただきます!!」

「僕も! それなら夕食、コンビニのやつにしなくてもいいし」

「確かに! 行けばたらふく食べられますもんね!」

「それに私喉のこともあるから・・・」

〔・・・?〕

「でも刺激物避けたものだとあんまりコンビニとかで売ってないし・・・。お腹いっぱいになる分まで買ってったら高いし・・・」

「確かにせやね・・・。それに比べたら『ザース』はサラダバーもあるし、夜は昼より品数減るけど、一応自然食コーナーもあるもんね」


実は『ザース』ではその日の時間帯ごとに、サラダバー以外の料理の種類をこまめに変えているのだ。


まず朝の朝食コーナーはパンやスクランブルエッグなど。

和食はご飯や納豆、焼き魚などのメニューが中心になる。

また一日中出しているスープバーも、ミネストローネやコーンスープ、みそ汁やお吸い物などと言った、基本朝に合うようなものが並ぶのだ。


それから時間が過ぎて11時半辺りになると、養殖はパスタやピザ、スープカレーなどと言ったイタリアン系のものが。

和食は煮物や煮魚、そばや自然食などと言った、少々軽めのものが主体となる。

そして洋食コーナーにあったパンも、デニッシュやブールなどと言った小さめのものから、パリジャンやバタールなどの固めなフランスパンに変わるのだ。


そして午後2時くらいになると、洋食はオムライスや重めのパスタ、カレーなどが主体となり、和食も肉じゃがやうどん、揚げ物などと言ったものが中心になる。

またその他にも、スープバーのみそ汁は普通の味噌から白味噌に。

洋食のスープはシチューやクラムチャウダー、オニオングラタンスープなど、朝よりも若干重い感じのものに変わって、それと同時にデザートバイキングの種類も一番多くなるのである。


ちなみに『ザース』が一番込む時間帯は、言うまでもなく夕食時の夜。

それもいつも奇数の日に限定されていたのだが、それにはこんな理由があった。


「ところで今日って、お肉だっけ? 魚だっけ?」

「今日奇数でしょ?」

「奇数だったらー・・・、肉っすね」

「・・・・・・人凄いんじゃない?」


そう。

実は『ザース』ではいつも2時以降のメインメニューを、日付が奇数か群数かによって変えているのである。

一体どういう風に変えているのかというと、奇数の場合は肉料理中心、群数の場合は魚料理中心と、いたって簡単な決め方だ。


そして肝心の今日の日付はというと、今日は3月9日と奇数なので、ディナーバイキングの中心は肉料理。

なんだかんだで条件的にはそこそこ込んでいる時間帯だ。


「でも今日は火曜だし、そこまで凄い込み方をしているわけでも・・・」

「でも夕食時だよ? 仕事帰りの人とかが子供連れて行ってそうだけど・・・」

「・・・まあその時はその時で考えましょうよ。とりあえず下に下りません?」

「・・・・・・そうね。じゃあみんな下に移動しよう」


その後メンバーは全員一階へと出向き、最終確認を終えて帰ってきた事務所スタッフ達と共に『ザース』へと向かった。

元々徒歩でも十分行ける場所だったので、車で乗り込んでから目的地に到着するまではそう時間は掛からず、椅子に座っている時間もざっと5分くらいである。


しかしその車を駐車場に停めて下りるまでの工程が、今回はかなり手間取らせられた。

未佳達が予想していたとおり、駐車場内は全て満車になってしまっていたのだ。


「何処に停めて下りるの? これ・・・」

「下りられー・・・、へんよね・・・」

「・・・これって何処かが空くのを待つか、あるいはどっか別の場所に車を停めるっていう感じっすよね?」

「でもそれって・・・、場合によっては違法駐車なんじゃ・・・」

「とりあえず皆さんは、私と一緒に先に車から下りてください。駐車場に関しては、スタッフの皆さんがどうにかしますんで・・・」

「「「「あっ・・・、はい」」」」


内心『もしかして帰りは車ではないんじゃないか』などと思いつつ、未佳達は車から下り、店内へと足を踏み入れた。

そして店内に入った早々、メンバーはその人の多さに思わず目を見開く。


店内には小さな子供を連れたファミリー層を始めとする来客者達が、あれよあれよと犇めき合っていた。

実は夜の『ザース』にやってくるのは数ヶ月ぶりで、しかもその日は群数かつ、少し遅めの時間帯だったため、そこまで人は込んではいなかったのだ。

この初めての光景に、未佳は表情を曇らせる。


「・・・これって小歩路さんが一番嫌がるパターンの込み具合じゃない?」

「うん・・・。ウチ今この時点で頭痛が痛いもん・・・」

「まさかこんなに混んでるなんて思っても見なかったですもんね」

「・・・にしてもなんか異様な混み方やなぁ~・・・。なんかあるんか? 今日・・・」


長谷川はそう口にしながら店内を見渡し、ふっとあるものにその目を止める。


長谷川達の真後ろにあった出入り口近くの壁。

そこにはデカデカと目立つように『「ザース」Wイベント! 3月7日(土)~3月28日(土)まで 小学生以下のお子様連れの方のみ、バイキング1000円引き!!&季節限定のオススメ品!! ~油トロットロ♪ あぶりガツオのゆずポン酢刺&特上黒毛和牛使用! 黒毛和牛のローストビーフ~』と書かれたポスターが貼られていた。

これがこの人の数の理由だったのである。


「これだ・・・! だから人の数がいつもよりも多いんですよ!!」

「なるほどね・・・」

「でもローストビーフか~・・・。なんかいいね」

「えっ? ・・・手神さん、お肉食べる気?」

「・・・何なんですか? 小歩路さん・・・。そのまるで『毒』みたいな表現は・・・。僕だってお肉は大好きだから食べるんですよ!? この身体ですけど・・・!」

「手神さん・・・。『この身体ですけど』って言うと僕が切なくなるんで止めてください・・・」

「あっ・・・、ご、ごめんね。長谷川さん」

「・・・・・・別にいいですけど・・・」

「ほら、皆さん! いつまでも出入り口近くで喋ってないで、早く席の方に移動しますよ!?」

「「「「・・・えっ?」」」」


ふっとそう口にしてすたこらと先へと進む栗野に、メンバーは後ろを振り返りながら戸惑った。

というのも自分達が立っている出入り口付近のソファーには、他にも大勢の人達が順番待ちのため座っていたのだ。


「ちょっと待って、栗野さん! 私達って、席案内されたの?」

「僕ら順番的にはかなり後ろの方なんじゃ・・・」

「も~う・・・。何言ってるんですかぁ~、二人揃って・・・。今回は予め、事務所の上の方が事務所の名前で予約取ってくれてます。だからすぐに席に着けるんですよ?」

「あっ・・・」

「そ、そうなんだ・・・」

「第一イベントが明日に控えているっていうのに、たかが夕食を取ってもらうためだけに長時間も並ばせるようなことすると思います? ちゃんと皆さん考えてやってるんですよ」

「ハ、ハハハ・・・。すみません、わざわざ・・・」


ふっとそんなことを話しながら予約席の方へと進んでみると、なんと一番端にあった全12人掛けテーブルが丸々一つ、キレイな空席として用意されていた。

おそらくあとから自分達がやってくるであろうということを想定して、テーブルを少し多めに予約していたに違いない。

その証拠に今回のスタッフの人数は、全員でたったの6人だけである。


やがて何処かの駐車場の車を止めてきたスタッフとも合流し、12人掛けのテーブルの人口密度があっという間にいっぱいになった。


〔なんか一気に人の数増えたね・・・〕


思わずずっと無言のままだったリオがポツリと呟いた。


「ハハハ・・・、なんかもうギュウギュウ・・・」

「ホンマ・・・。まるでいつものイベントのあとみたい・・・」

「まあ、とりあえずー・・・。何か食べ物取りに行きません?」

「・・・そうね。ずっと座ったまんまっていうのも変だし」

「それなら僕はお先にっ!!」

「〔・・・・・・はっ?〕」


ふっといきなりそれだけ口にして席を離れる長谷川に、未佳とリオは同時に口を開きながら長谷川を目で追った。

やや許容範囲内の小走りで長谷川が向かっていった先には、肉料理がズラリと並んでいるあの洋食コーナー。

もちろん言うまでもなく、長谷川の狙いは期間限定のあのローストビーフだ。


「たかが肉料理ごときで恥ずかしいなぁ~・・・。もう早速取りに行ったわよ!? あの弱肉食系男子!!」

〔(じゃあ・・・『弱』って・・・)〕

「まあまあ、未佳さん。じゃあ私も取りに・・・」

「それじゃあ僕も長谷川くんの次に♪ あっ・・・、お二人はどうします?」

「何かリクエストがあれば取ってきますけどー・・・」

「あぁー、私はいいや。ちょっと喉のこともあるし・・・。食事は自分で選んで取ってくるから」

「ウチも今日はサラダとか麺とかパンとかで済ませるから・・・。栗野さん、自分の好きなやつ取ってきてええよ?」

「手神さんも自分のと、何ならさとっちが喜びそうなものでも取ってきてあげてよ。特に煮物類とか」

「確かに。長谷川くんの好物だもんね。・・・じゃあ、なんか取ってきます」

「はいはい」

〔・・・ねぇ〕

「ん?」


ふっとその声のした方に視線を向けてみれば、そこには唯一の空席に、リオがちゃっかりと座り込んでいた。


「何? リオ」

〔『喉のこともある』って、喉がどうかしたの? なんかさっきも言ってたけど・・・〕

「あぁ~、ううん。そうじゃなくて・・・。個人的に気を付けてることなんだけど、私なるべくライヴとかイベント前には、刺激物を避けるようにしてるの。なるべく喉を大事にしないといけないから・・・。だから今日は前に行った時以上に、食べられるメニュー少ないかも」

〔ふーん・・・。それでお腹に溜まるの?〕

「だから今日は夕食がバイキングで助かったのよ。コンビニとかで買うと、かなり高いから・・・」

〔なるほどね〕

「みかっぺ~♪ これからサラダ取りに行かへん?」

「あぁ~、行く行く♪ 酸味の少ないドレッシングサラダ、今日あるかなぁ~?」

「無かったらそのまま食べたら?」

「・・・・・・それも手としてはあるわね・・・」


その後未佳達は2時間ほど『ザース』で夕食を取った後、再び事務所の車へと乗り込んだ。

ちなみに未佳達が食事をしている間、車は近くにあるスーパーの立体駐車場に停められていたらしい。


(まさかわざわざ別の駐車場見つけて止めておくだなんて・・・)

「ふぅー・・・。もうお腹一杯」

「一人で何回もロービーをお代わりするからですよ」

「しかもそれだけで止めればいいのに、そのあとにデザートまで取ってくるし・・・。ある意味夕食代の元は取ってたけど食べ過ぎよ」

「んなこと言われても・・・」


そう手神と未佳に言われ、長谷川はやや悲しげな表情を浮かばせながら、ボソッと小さく口を開く。

するとその会話が終わった直後、今度は栗野がある用件で口を開く。


「あっ・・・、そうだ! 皆さん! ちょっとスタッフの方からのお願いなんですけど・・・」

「「ん?」」

「何? 栗野さん」

「実はこの車のガソリンが少し危ういそうなんで・・・。途中遠回りなんですけど、ガソリンスタンドに立ち寄ってもいいですか?」

「あぁー・・・。それなら別に」

「仕方ないでしょ? 別に僕は構いませんよ?」

「僕もいいです」

「ウチも・・・。むしろ入っておかへんとアブナイ感じなんやろ? せやったらええよ」

「あ、ありがとうございます。皆さん・・・。じゃあ・・・、途中スタンドに寄りますね」


こうして途中ガソリンスタンドに寄ることが決定し、未佳達は行きよりも10分長めの約15分、車に揺られ続けることとなった。


ところがそのたった15分ほどのナイトドライヴでも、日々の生活リズムやらハードな仕事やらの関係で睡魔に襲われたらしく、ほとんどの人が車が走り出した直後に熟睡。

気付けば車内で起きていた人間は10人中、運転手を除くたった4人だけとなっていた。


(みんな熟睡というよりは爆睡ね・・・。特に小歩路さんなんかとっくにてっぺん超えてるから、もう完全に寝てるし・・・)

「なんかきれいにメンバーお二人寝ましたね・・・。手神さん・・・、寝る時くらいサングラス外せばいいのに・・・」

「・・・さとっちは寝ないの?」

「僕はまだ普通に活動時間ですからね。今は・・・」

「・・・・・・普段何時に寝てんの?」

「・・・大体普段12時過ぎとか3時くらいとか・・・」

「遅っ!! 小歩路さんなんて8時には寝て、3時には起きる生活なのに・・・!」

「早っ!!」


ふっとそんな会話をしつつ自分の左隣の方を見てみれば、そこにはスッポリと嵌り、まるで未佳の方に寄り掛かるような体勢で眠っていた。

一応身体は未佳の左半身に触れていたものの、その際の服のシワ等はそこまで目立っておらず、反対側に座っていた長谷川にも、別に変な風には思われなかったようだ。


(フフフ・・・。こういう時の寝顔はカワイイんだから・・・・・・・・・・・・そういえば・・・)


ふっと未佳の脳裏に、今日リオが言っていた『わらべ歌』という名のお店のことが過ぎた。


どうもリオからはお馴染みのあった店のようだが、少なくとも未佳の記憶上では聞いたことがない。

そもそもあのお店が営業していたところなど、物心がついた時から一切見ていないのだ。


(・・・本当に影が薄いお店だったのかな~・・・? それとも・・・・・・)

「ん? ・・・どした?」

「えっ? ううん、なんでも・・・。あっ、ねぇ、さとっち。さとっちのスマホって、色々なことを検索できるんだよね?」

「えっ? えぇ、まあ・・・」

「じゃあさぁ・・・。『わらべ歌』っていうお店・・・、調べてくれない?」

「・・・『わらべ歌』?」


その初めて聞く店の名前に、長谷川もあの時の未佳と同様、キョトンとし表情を浮かべる。


「そういう名前のお店なんですか?」

「う、うん・・・。私も聞いたことなかったんだけど・・・」

「聞いたこともないお店、調べるんですか?」

「とにかく調べて! 名前の表記は分からないけど、昔大阪府にあったお店だから・・・」

「・・・・・・はいはい。大阪・・・。わらべ・・・、歌・・・っと。検索!」


若干情報も少なめだったこともあったので、一応長谷川は検索の際、キーワードとしてそのお店の名前と、その立っていた場所を入力。

その後移動中の電波の悪さもあって、検索結果が出るまではだいぶ時間が掛かってしまったが、探し求めていた情報は真っ先にヒットした。


「あっ、あった。これや・・・。これでしょ? 坂井さん」


そう長谷川が言って見せた画面には、残念ながら写真は少々古いかつ、モノクロ画面ではあったものの、あの錆びれた姿になってしまっていた店が、やや美しい姿で映し出されていた。


写真で見る感じだと、どうも建物全体は元は白地で、屋根は赤い瓦屋根だったらしい。

そしてその古い写真には、今や当たり前となっている北堀江車道が一切として映っておらず、また今日長谷川達が助けに来てくれた横道も、何処にもその姿が映されていなかった。


つまりあの店は、北堀江車道と横道ができる前から、あそこに建っていたということだ。


「・・・うん。間違いない! あの北堀江車道の途中にある古い外装のお店はこれよ!」

「あっ・・・。それで調べてたんだ・・・」

「・・・・・・・・・・・・ところでどんなお店なの?」

「なんかー・・・、トンボ玉とかガラス細工とか手毬とか・・・・・・。ようするに和風な小物類を扱ってたみたいですね」

「ふ~ん・・・。つまり小物屋さんだったんだ・・・」


しかしこの直後、長谷川はこのネット上から、あるとんでもない情報を拾ってしまったのだ。


「ところでこのお店・・・。閉店したのは今から“60年くらい前”みたいっすけどー・・・」

「ろっ・・・! 60年っ!? 嘘でしょ!? それ・・・!!」

「いや、ホンマに・・・。この店の亭主がガンで亡くなってからず~っと放置されっ放しだったみたいで・・・。閉じたのが1949年頃・・・。ってことは店自体はもっと前に建ってたんですかねぇ・・・?」

「・・・・・・・・・・・・」

「でもなんでそんなことをわざわざ検索で?」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・? 坂井さん?」

「えっ? ・・・あっ、いや、別に・・・。ちょっと気になっただけ・・・」

「そう・・・。んじゃあやっぱ僕も寝るわ。おやすみ~」


そう言い残して他の3人同様寝付く長谷川に、未佳は無言のまま隣にいるリオに視線を落とす。


リオが普通の人間ではないということは、もう既に分かり切っていることではあった。

未佳以外の人間には一切、姿も声も感じられない。

壁などを自分の意志で擦り抜けられる。

食べ物が無くても生きてゆける。

そして謎の能力ちからを使い、探し物などを探し出す。


もうこの時点で、普通じゃないということは分かっていた。

分かり切っていた。


(・・・リオ・・・。なんであなたは60年も昔のことを知ってたの・・・? ・・・あなたは一体何者なの・・・?)


静かな夜の中、自分を信頼しきって寄り掛かるリオに、未佳はそっと顔を近付けてみる。

たった今あんなことが分かったあとだというのに、不思議とリオの寝顔から感じられたのは『恐怖』ではなく『安らぎ』だった。



予約死亡期限切れまで あと167日


『障害物』

(2007年 9月)


※雑貨・インテリアショップ。


みかっぺ

「うわーっ! この小物カワイイー♪」


「ホンマっ♪ こっちのガラス細工もキレイやねぇ~」


栗野

「なんかどれもカワイイんで、みんな目移りしちゃいますね」


みかっぺ

「うんうん♪」


さとっち

(好きやなぁ~・・・。女子はこういうの・・・)


ゴンッ!!


手神

「痛て・・・っ!!」


さとっち・みかっぺ・厘・栗野

「「「「えっ・・・?」」」」


※ふっと何故か店の入り口付近で頭を押さえ、その場に蹲る手神。


みかっぺ

「手神さん・・・、どうしたの?」


「もしかして何処かに頭ぶつけたん?」


手神

「・・・・・・・・・はい・・・(涙)」


さとっち

「あぁ、も~う! ちゃんと前を見てないからっすよぉ~!! 手神さんもう少し気ぃ付けてください!」


手神

「違うよ!!(涙目) 僕はちゃんと前を見てたよ!!(断言)」


さとっち

「えっ・・・? でっ・・・、でも手神さん・・・。どっか頭を・・・」


手神

「出入り口の天井でぶつけたんだよ!!」


さとっち

(ドテッ!!(倒))



身長が高いと、それはそれで危険です(笑)


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