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132.Close Heart・・・

2階でのネックレス購入後。

未佳とリオは一旦他の階を見回るのを後回しにし、8階にあるレストラン街で少々早めの昼食を取っていた。


二人が入ったのは、例のごとく女性ばかりが入っているような洋食レストラン。

未佳はそこで、店の看板メニューでもあるデミグラスソースのオムライスを頬張りながら、リオとの軽い言い合いをしていた。


というのも、先ほど偶然1階で再開した芹澤のことについて、リオがネチっこくこちらに尋ねてくるのだ。

しかもかなりニヤついたような嫌らしそうな顔付きで。


そのしつこさに、最初こそ苦笑混じりに答えていた未佳も、ここまで問われるともはや苦笑すら返せなくなり、現時点での突っ張り態度となってしまった次第である。

さらに質問攻めされ続けた苛立ちのあまり、普段リオとの会話ではあまり出さないような声量まで出してしまった。

幸い店内がかなり賑やかであったおかげで、未佳の発した声も見事に揉みくちゃにされて助かったが、これがかなり静かな場所であったら到底誤魔化せない。


第一何故そんなことをこのような場所で尋ねてくるのか。

それも未佳としては不快要素満載である。

いくら気になるとはいえ、何故自宅に帰ってからにできないのか。

こういうところは典型的な男子・・・いや子供だろうか。


〔ねぇ~? どうなの? 未佳さん〕

「だから・・・何度も言ってるでしょ?! 同級生! た・だ・の! 同級生!!」

〔でも『ラブレター渡した』ってさっき〕

「アレは、綺花のラブレターよっ! 綺花のっ!! ・・・・・・彼女、自分の好きなタイプに目を付けるのは早いんだけど、ラブレター渡すのとか告るのはからっきし苦手だったから・・・」

〔それで代わりに渡したの?〕

「そうよ~? 『未佳~ッ! ウチやっぱりアカーン・・・! とても優輝くんに渡す勇気ないぃー! 代わりにコレ渡したってぇ~!!(涙目)』って・・・。切羽詰まってダジャレまで入れながら、私に泣き付いてきたのよ」


オムライスのスプーン片手に綺花のモノマネをする未佳に、リオはややジト目のまま『アハハハ・・・』と空笑いを返す。

実際綺花に出会ったのはほんの一度、それもわずか3分もないほどの間であったので、彼女がどんな人物像であえうのかは分からない。

けれどその未佳のマネを見て、確かに未佳とは気が合いそうだと感じた。


「だから代わりに『はい』って」

〔・・・・・・結構そういう部分では信頼されてたんだね・・・〕

「その『結構』は何よ!? 『結構』は!」

〔逆にぃー・・・未佳さんが惚れたりすることはなかったの~?? ねぇ~?〕

「あなたソコもしつこいわよ・・・。水泳部なんて、私とは完全に縁がないわねぇ~・・・。別に泳げなかったわけじゃないけど、泳ぐの好きじゃなかったし」

〔でも性格とか~〕

「性格はー・・・どっちかっていうと引っ張られ過ぎて気疲れする感じね~・・・」

〔・・・マスクとか〕

「個人的には中の中・・・」

〔じゃあ成績!〕

「私の方が単位う~え・・・」

〔・・・・・・・・・〕


自分で未佳に尋ねておきながら、確かにコレは気が合わなそうだと、リオは思う。

と同時に妙にムカつくような感じがするのは、こちらの気のせいだろうか。


「それに『成績』って、私達の通ってた高校は関西の名門よ? そもそもできる人しか周りいなかったわ・・・」

〔あぁ~・・・。そっか・・・・・・。実際同級生で好きな男子とかいたの?〕

「はっ? ・・・『なんでそんなことリオに?!』って、言いたいトコだけど・・・・・・。そういう道理もないわね」

〔・・・・・・つまりは『いない』ってこと?〕


そうリオが聞き返すと、未佳は大きくゆっくりと、リオに一度頷いた。


「勉強と音楽と・・・軽く息抜きしてるような学生時代だったから・・・。そういうのはまったく意識してなかったなぁ~・・・・・・。そもそもいい感じの男子もいなかったし」

〔えぇ~? つまんないのぉ~・・・〕

「あなたねぇ・・・」

〔だって人の学生時代って、そういうので盛り上がるのが主流なんでしょ~?〕

「とうとうあなたも発情期にでもなった?! そんなの人それぞれよ。『主流』も何もないってば」

〔僕的には未佳さん・・・学生時代は結構モテそうな感じに見えるけど?〕


あくまでそれは、未佳の性格やルックス、マイクなどからの一個人見解だ。

特にコレと言った根拠があったわけではない。

けれど未佳は、そんなリオの質問に対し、こんな言葉を返した。


「・・・・・・リオもそう思う?」

〔・・・・・・いやっ・・・! でもコレ、僕一個人の予想だし・・・!〕

「でもそう思うんでしょ? ・・・・・・周りからもそう言われてた・・・」

〔・・・・・・えっ?〕

「学生時代も・・・そのあとも・・・。勉強ができる。音楽ができる。英語ができる・・・。アーティストになった。有名になった。ファンも多い・・・。『だからモテるよねぇ~』って、みんなが決まりごとのように言うの・・・。・・・・・・でも私ね? 実際告白したこともされたこともないの・・・。笑っちゃうでしょ?? 32年間生きてて1回もよ?! 私!」

〔・・・う、うん・・・・・・〕

「だから他人の目利きなんてそんなもん! 宛てになんてなんない♪ なんない♪♪ むしろ。私のこと『モテる』って言った人の方が先越しちゃうんだもん」


『人の予想ほどいい加減なものはないわよ』と、未佳は顔に笑みを浮かばせながら、既に半分以上が皿から消え始めているオムライスを頬張っていく。


告白したこともされたこともない。

それがこの未佳の32年間の中での恋愛事情であった。

正直ここまで実年齢よりも幼く可愛げを見せ付けているような人間なのだから、てっきり甘酸っぱい話の一つや二つは持って入ると思っていたのだが。

どうやら未佳の言っていた『人の予想ほどいい加減なものはない』というのは、まさにその通りであるのかもしれない。


だがその一方で、ふっとリオの脳裏にこんな問いが浮かんだ。


〔・・・・・・・・・じゃあさ・・・・・・。質問変えるけど・・・〕

「ん? 何~?」

〔学生時代以外で・・・・・・未佳さんが好きになった人はいないの?〕



カチャッ・・・・・・



ふっと、たった今までチキンライスを寄せていた未佳のスプーンの動きが、ピタリッとエンジンを停められたかのように停止する。

その様子に恐る恐る未佳の顔を見上げてみれば、未佳は下に伏せた両目を左右に泳がせ、数回瞬きを繰り返していた。

その表情や姿はまるで、何かに大きく動揺し、戸惑っているかのようである。


未佳の中で、尋ねてはいけないことを突いてしまったということは、もはや明らかだった。

しばし不安そうにその様子を見つめていると、やがて未佳の方も先ほどまでの状況に意識が向き直ったのか、再びスプーンをゆっくりと動かし始めた。


〔・・・み・・・未佳さん・・・?〕

「ごめん、リオ・・・。何でもない・・・」

〔えっ・・・。でも〕

「何でもない」

〔今僕・・・、いけないこと聞いたんじゃ・・・〕

「そんなことないよ・・・」

〔あるよ!〕

「ない。・・・そもそもいないし、そんな人・・・」

〔いないわけないでしょ?! だって今・・・!〕

「だからそんな人いないっていばッ!!」



最後にリオに向かって放たれたその声は、まるで未佳自身の悲痛な叫びのようで。

叫んだあとのその表情かおは苦痛と悲哀に歪み、今にも細められた両目から涙が零れそうであった。


聞いてはいけないことと分かってはいたのに、誤魔化されると気持ちに納得がいかなくなり、ついつい奥の方まで追求してしまった。

自身の失態に、リオは視線こそそっぽを向けたものの舌打ちする。


一瞬でも未佳の声が聞こえてしまったのか、先ほどまで騒がしかった店内が、一瞬だけ静かに。

けれどそれから1分も経たぬ内には、また最初の頃の賑やかさへと戻っていた。

そんな店内の様子を肌で感じながら、未佳は一旦伏せていた視線を再びリオの方へと向ける。


「リオ・・・。たとえ仮にそんな私がいたとしても、私はあと数十日で死ぬの・・・。今更そんな人間のことなんて、私は考えない」

〔・・・・・・・・・・・・〕

「それにそうでなくても、私は今の事務所の契約上、恋愛関係的な行為は一切禁止・・・。誰かを好きなることもないし、そういう目で見られても困るの」

〔・・・・・・・・・・・・〕

「分かった? ・・・だからこの手の話は・・・・・・もう二度と私にしないで・・・」


視線を再び下に伏せながら、未佳は最後の一口をたいらげ『もうこの件については話し終えた』とばかりに、お冷を一気飲みする。


一体何が未佳をこうまでさせているのかは分からなかったが、きっと今日もこの先も、未佳がその胸の内を明かすことはないだろうと、リオは思う。

『たかだか恋愛感情での話で』と思う部分もなくはないが、それを口走れば、今度はケースに入れられているナイフを投げてきそうだ。

あまり必要以上に触れぬようにしようと、リオは未佳の忠告に遅れて数回頷くと、何気なく視線を横へと反らした。

特に理由なんてない。

ただ視線を合わせたくないだけ。


「・・・はぁー・・・・・・。あ゛ぁ゛っ、もう! なんかあなたに怒鳴ってたら、変に自棄食いしたくなってきた・・・」

〔・・・・・・え゛っ? ・・・今結構な量のオムライスとサラダ食べたばっかりだよねぇ?!〕

「そんなの・・・もう何処に入ったのか分かんなくなっちゃったわよ」

〔・・・いやっ、胃でしょ?!〕

「すみませ~ん!」

「! ・・・はーい!」

「ビンテージストロベリーカスタードパルフェ一つ。それと追加トッピングでチョコソースとコンフレお願いします」

「は、はい」

〔(・・・・・・・・・重っ!!)〕


そんな未佳の注文したデザートとその内容に、思わず冷汗を流しながら両目を見開くリオ。


しかしその一方で、何とかデザート一つで機嫌が持ち直りそうな様子の未佳に、幾分か安堵する気持ちもあった。

この際、未佳の機嫌が直るのであれば何でもいい。

とにかく、自分が仕出かしてしまった失態を、早く未佳の意識の中から消してほしい。

もはやそれだけであった。


その後、最後に注文した特大級のパルフェがテーブルへと置かれ、未佳はソレを、まるで先ほどまで食べていたオムライスの存在を忘れるかのごとく完食。

そして最後に、途中注いでもらったお冷の中身も再び空にし、店をあとにした。



その後二人は、まるで先ほどのいざこざのことを忘れるかのように、8階から下りていくこととついでに、順番に下の階を見回っていた。

目に止まるものがあれば、その度に足を止め、ものを手に取る。

リオが興味を示すものがあれば、それを未佳が分かりやすく説明する。

買うか買うまいかと迷うものは、常にその値段と購入価値について、真剣に吟味する。


そんな店内物色をし続けること、数時間。

気付けば朝早くに出向き晴れていたはずの青空は、もうじき夕焼けの一歩手前に等しいくらいの空に変わろうとしていた。

再び1階へと降り立った未佳の両手は、行きの時と同じく手ぶらなまま。

途中気になるものは複数目に止まりはしたのだが、結局どれも、自分用としては購入しなかった。


理由は『買おう』と踏み切るよりも前に、自分に残された残りの期限のことが気になってしまったから。

前々から欲しかったものを今更購入して、はたしてそれを、元になるまで使い尽くせるか。

それを考えた時、大半のものがその条件に満たなかった。

もちろん『大半』というだけあって、中には『これなら何とか』と思える代物もありはしたが、その場合は逆に『わざわざこんな高いのを買わなくても』という庶民的な想いが脳裏を過ってしまい、結局元あった場所へと戻してしまう。

そんなこんなで何も買えぬまま、未佳は先ほどと同じくシューズコーナーとファッション小物のコーナーの間に立っている。


一応辺りを見渡してみるかぎり、あの同級生の芹澤の姿は見られない。

もっとも、まだ彼がこの場に居たからと言って、どうというわけではないのだが。


〔・・・・・・結局何も買わなかったね〕

「『何も』じゃないわよ。ちゃ~んとっ、目的のパールネックレスは買えたでしょ?」

〔それはね。・・・でも自分のものは買わなかったじゃん。案外気に入ったのが無かった?〕

「そうじゃないけど・・・。なんか『買うだけ贅沢だなぁ~』ってなっちゃって・・・。人宛てのもの選ぶんならたっくさんあるのに、いざ自分のものってなるとなかなか・・・・・・・・・」

〔・・・・・・ん?〕


ふっと未佳の言葉が途切れたことに気付き、リオはそっとその顔を見上げてみる。

見上げて見た未佳の顔は、何かをジッと見つめたまま、その場に静止していた。


その視線の先にあったのは、あの季節外れのタータンチェック柄のヒールパンプス。

最後に未佳が棚に戻したっきり触れられていないのか、その靴はあの戻された形のまま、相変わらず目立たぬ棚の位置に陳列されていた。


〔さっきの・・・・・・パンプスだね〕

「・・・・・・・・・」


そのリオの言葉には答えず、未佳はそっとその靴の方へと歩み寄り、再び片方の靴を手に取る。

しばしその靴を無言で見つめ、時折気になる箇所を手で撫でてみては、そこでまた一時停止。

そんな動作をかれこれ1分ほど繰り返した頃、ふっと、未佳の口元がこうを描くように笑った。


「・・・・・・リオ」

〔ん?〕

「私ー・・・、やっぱりこの靴買う」

〔・・・・・・・・・〕

「気に入ったから」

〔・・・・・・そう・・・〕


『いいんじゃない?』と、相変わらずぶっきら棒なリオの返事が返ってくる。

『もう少し感想言ってよ』と、軽くからかいながら。

けれど何処か満足げに、未佳はその靴を持ったまま、レジへと向かうのであった。



予約死亡期限切れまで  あと 161日


『食レポ』

(2009年 1月)


※京都市内 飲食店。


みかっぺ

「新年最初のロケ食だね♪」


「しかもみんなで京都も久々やない?」


手神

「なかなか京都での雑誌撮影はないからね。・・・しかも昼食にこんな和食御膳(豪華) いいのかな?」


さとっち

「在住者でもなっかなか食べらんないっすよ?(興奮)」


栗野

「そうだ!(閃) せっかくなので皆さん、その料理で食レポしちゃってください(無茶ブリ)」


みかっぺ・さとっち・厘・手神

「「「「え゛っ・・・?(汗)」」」」


栗野

「伊達に皆さん食べてないでしょ? そのカレイの煮付けで、よろしくお願いします♪(^-^)」


みかっぺ・さとっち・厘・手神

「「「「(どよ~ん・・・)」」」」


※2分後。


みかっぺ

「カレイの身が・・・結構しっかりしてるんだけど、ちゃんと味は染みてるの。それから煮付けのこの汁も、色は濃いけどそんなに辛くもなくて、甘くて美味しい(褒) ちょっと上品な感じ(語)」


さとっち・厘・手神・栗野

「「「「おぉ~・・・」」」」


さとっち

「あんまり先頭が語り過ぎると後ろがヤバいんっすけどね(爆)」


みかっぺ

「(苦笑) 次さとっち」


さとっち

「(食) ・・・確かに身はしっかりしとるね。あとこの千切り生姜もええわ・・・。『カレイ』って僕『エンガワ握り』くらいしか馴染みないんやけど、こういう煮付けもええね。うん。・・・・・・終了」


みかっぺ・厘・手神・栗野

「「「「(爆笑)」」」」


手神

「でもすごい頑張った感は感じたよ(笑)」


さとっち

「(苦笑) ・・・次小歩路さん」


「(食) ・・・・・・んっ。う~ん♪ ・・・・・・えっ? 単純に『美味しい』だけやダメ?」


みかっぺ・さとっち・手神・栗野

「「「「えぇ~?(笑)」」」」


栗野

「まっ、まあ・・・。厘さんの場合はこうなるか・・・」


さとっち

「手神さんちょっと悪い流れ来てるから、なんかいい感じの言うてくださいね?!(期待)」


手神

「ゲッ!(汗) ・・・じゃあ行くよ?(食) ・・・・・・あっ、うんうんうん♪ 確かにいいね。この・・・身の“口ごたえ”あ゛っ!!」


みかっぺ・さとっち・厘・栗野

「「「「ズズズッ!!(倒)」」」


それ言うなら『歯ごたえ』やろぉーっ!!(爆)


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