127.もんじゃ焼き商店街
あの港から豊洲駅までの距離は掛かったものの、そこから月島へ到着するまでは、ざっと10分程度しか掛からなかった。
地下鉄列車から降りてすぐ、未佳達の視界に飛び込んできたのは、巨大な新築タワーマンションへの移住者募集報告。
そして、ただ今お目当てでもあるもんじゃ焼き商店街の宣伝ポスターであった。
ちなみに何故タワーマンションの広告があるのかというと、月島は豊洲同様、海に程近い土地となる。
そのため人が住むために建てられている建物は皆、高層ビルやタワーマンションなど、津波被害や浸水被害等を想定して建てられているものばかりとなっているのだ。
しかも月島に建てられている高層ビルやタワーマンションの階数は、少なくとも20~30階建て。
最高クラスのものとなれば、50~60階建てのものも少なくはない。
「! うへぇ~! この広告のマンション50階建てやって・・・! こんなん一体誰が住むん?!」
案の定唯一の関東組である手神が予想していた通り、関西ではありえないようなタワーマンションの広告に、厘が両目を大きく見開いて叫ぶ。
続けてその内容に続くよう、長谷川達も口を開き始めた。
「しかもマンションの購入費も家賃もヤバイっすよ・・・」
「住むだけで2000万以上・・・。家賃は月300万!? 『0』一個見間違えてるどころのレベルじゃないじゃない!!」
「こんなん京都府民も無理やわ・・・。さすがは関東・・・」
「いや。別に『関東だから』ってわけじゃ・・・。ただ豊洲とか月島は元々、高級住宅街だからね。日本のお偉いさんとかが住む感じの土地なんだよ」
「ま・・・、まさかもんじゃ焼きも結構・・・」
ふっとそれを聞いて、長谷川の脳裏に最悪な想像が過る。
もしや『もんじゃ焼きもかなりの額が飛ぶ代物なのではないか』と、顔を青褪めさせれば、やや慌てた感じに手神が首と手を横に振った。
「いやいやいや・・・! 大丈夫! 大丈夫!! もんじゃ焼きは大体250~450円ぐらいだから。あんまり関西のお好み焼きと変わらないだろう?」
「あっ・・・。そうっすね。ちょっと高くもなく安くもないレベルの値段っすね。それなら・・・」
「私大体その値段ぐらいのお好み焼き食べるよ? あんまり安すぎると、な~んか『ベタ~・・・』ってしてるの多いんだよね。中が・・・」
「あ゛ッ・・・! それめっちゃ分かる!!」
「分かるでしょ!?」
「分かる! 分かる!! あとマヨネーズの塗られ具合めっちゃ雑やねん!!」
「そう! もう『ボテッ』みたいな・・・!」
「私なんて昔『豚玉』注文したら中、ハムだった」
「「「「「アッハッハッハッ!!」」」」」
そんなそれぞれの『お好み焼き武勇伝』に盛り上がりつつ、6人は地下から地上へと出る階段を上り、高層ビルやタワーマンションばかりが立ち並ぶ路上へと出た。
ここから先は少々ルートが分かりにくいということもあり、しばし手神のスマホで位置を確認しながら、ビル街の狭い路地へ、路地へと進んでいく。
しばらく歩いていると、辺りはビル街から少々掛け離れ、今はやっているのかどうかも分からぬ居酒屋や、一般的な一階建ての古い民家などが立ち並ぶ路地へと変わった。
さらにその民家なども、大半のものはかなり年季の入った木造のものばかりであり、まるで一昔前の街並みのようだ。
「なんかー・・・。よくある下町風景みたいな感じになってきましたね・・・」
「この辺の建物・・・もうどれくらい経ってるんやろ・・・。6~70年は余裕でいってそうな感じやね」
「京都にも似た感じの街並みはあるけどー・・・。やっぱりなんか関西とは違うね。私はどっちも好きだけど・・・」
「ちょっと『ぶらり』なんちゃらしてる気分っしょ?」
「ま、まあね」
「でも~・・・。肝心の『もんじゃ焼き』の看板はないんですね。味のある感じの居酒屋さんばっかり・・・」
「ほんと~・・・・・・・・・。なんか肴とか熱燗が美味しそうな・・・」
「栗野さぁ゛~ん゛!!」
「余計なこと言わんとってくださ~い! 呑みたくなるっしょ~っ!?」
思わず栗野の口から零れたその言葉に、空かさず未佳と長谷川が非難の叫びを上げる。
ちなみに本日はこの二人に『酒を呑むな』という指示は下されていない。
しかし一アーティストとして名を馳せている人間が、いきなり別の土地にやってきて酒を、それも昼間っから口にするのは少々はしたないと思い、共に考えないことにしていたのだ。
それがこの栗野の一言本音で、この様である。
「あら? 今日は禁酒指示出されてましたっけ??」
「・・・ないっすけど!」
「昼から呑むの、なんか図々しいかなぁ~って・・・。ちょっと暗黙の了解で控えるつもり・・・」
「エッ!? ・・・ウチ『もんじゃ』って聞いた時からめっちゃ呑む気でおったんやけど・・・。打ち上げ精神で・・・」
「マジっすか?! 小歩路さん・・・!」
「うん! ・・・とりあえずまず一発目でビールいくやん?」
「ビール。ビールは定番っすからね。乾杯時の」
「次焼酎でしょ??」
「あぁっ、焼酎ね? 確かにもんじゃ焼きみたいなボテ系には相性いいっすわ。うん」
「ほんで次日本酒いって」
「しんみりとね? はいはい」
「そのあと熱か」
「多いっ! 多いっ!!」
さすがに指折りでの数が尋常でなかったので、話を聞いていた長谷川は慌ててその会話を遮断させる。
別に厘がいくら呑んでも酔わない体質であるのは分かり切っていることなので、その部分に関してはまったく心配などしていない。
問題は、その厘と共酒をするメンツの方だ。
今日は生憎、いつも共に長時間呑み合う仲である栗野が勤務中であるため、普段のようには呑み合えない。
だから本日は、多少本人が感覚的に呑み足りないと感じても、途中段階でストップさせなければならないのだ。
「小歩路さん、今日は栗野さんがお供できないんっすから、呑む量抑えとってくださいね?」
「えぇ~? 別にそんなウチの呑む量に合わせへんでもええよぉ~・・・。ウチ一人酒でもええから」
「そんな~。みんながこんなに集まってるのに、一人だけ酒走りしてるのなんて寂しいよ。小歩路さ~ん・・・」
「そぉ~? ・・・・・・・・・でもウチどうしても・・・焼酎と熱燗だけは呑みたいんよね~・・・」
「もう誰も止めへんわ」
「おっ・・・。ここかな??」
ふっと長谷川の投げ出し発言と手神のスマホが目的地到着を知らせたのは、ほぼ同時のことであった。
民家が建ち並ぶ路地を直進し、ややT字路になっている通路へと出てみると、そこにはまるで真ん中の大きな歩道と車道を囲むように、多くの飲食店が横並びに建ち並んでいた。
さらに飲食店で囲まれた通路の頭上には、夜には点灯する仕掛けとなcつているのか、よくイルミネーションなどに使われる小さな電飾。
歩道と車道の境には、ガードレールがない代わりに多種多様な樹木が植えられた植木鉢が置かれており、しかもその多くは柑橘系であるのか、時折爽やかな香りを放っていた。
さらに歩道は3色ほどの茶褐色系のレンガが敷き詰められており、一見お洒落に見えるその一方で、何処か一昔前に戻ったような懐かしささえ感じられる。
まさに下町の商店街のようだ。
しかしその建ち並んでいる店屋には皆、ある共通項があった。
「! あっちももんじゃ? ・・・そっちももんじゃ?? 向こうももんじゃ焼き?!」
「ここ並んどる3つ、全部もんじゃ焼き屋さんっすよ?」
「スゴーイ!! 話は聞いてたけど・・・こんなにあるの~?! ・・・コレ全部ッ!?」
「そうだよ。この通りにあるお店は、全部もんじゃ焼き専門店。通りすべてを名付けて『もんじゃ焼き商店街』! ・・・・・・まあ・・・、今はちょっと違うお店も混ざって建ってるけどね」
「スゴ~イ♪♪ ・・・何処に入ろうか迷っちゃうね・・・」
「えっ? ・・・・・・でも手神さん、入るお店に目星付いてるんっすよね?」
「ま、まあね・・・。でもさっきも言ったけど、今もやってるかは分からないよ?」
そう再度忠告を入れつつ、手神はその昔の記憶を頼りに、再び道を歩き出す。
その途中、商店街をあえて抜けるように狭い路地へと曲がり、民家の中にチラホラともんじゃ焼き屋が建っているような脇道へ進んだ。
「たーぶん・・・・・・この辺りの何処かだと思うんだけど・・・」
「名前とかって覚えてないの?」
「『野の兎』って書いて『野兎』って読むとこなんだけど・・・」
「野兎・・・・・・・・・」
「やっぱりもう無くなっちゃったかなぁ~・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・! あっ・・・、あった!! ・・・あった! あった! あった!!」
ふっと目に止まった看板の文字に、未佳はその場で跳ね飛びながらその看板を指差す。
その指差す先には確かに、白地に黒い太文字で『野兎―NOTO―』と書かれた看板が、路地の先にある古びた店の2階に立て掛けられていた。
しかもその看板の文字デザインと言い、ライティングできる仕掛けのものであることと言い、店自体はまだまだ現役のようである。
「ここじゃない? 手神さんが昔よく行ってたもんじゃ焼き屋さん!」
「・・・・・・うん。ここだ。名前も建物も変わってないみたいだし・・・間違いない!」
「看板があんな白いってことは、看板つい最近新しいのに変えたんっすね」
「じゃあまだやってるんですね? ここ」
「ええ。でも問題は・・・」
栗野がそう言い掛けた通り、問題はここの開店時間だ。
ランチメニューを取り扱っている店舗であるならまだしも、もんじゃ焼きは半分居酒屋メニュージャンル。
下手をすれば、開店時間が4~5時などという場合もある。
もちろんそうなった場合には他の店舗を見て回ることにするが、どうせならこの手神の想い出が残るこちらの店舗に入りたい。
『どうか開いてますように』と6人揃って心の中で祈りつつ、恐る恐る出入り口である古い格子引き戸の前へと近付く。
引き戸の中心に掛かっていた小さい木版には『営業中』の文字。
「あぁっ・・・。よかった~」
「開いとるやん」
「じゃあここにしますか。・・・・・・成り行きだけど、みんなもここでいい?」
「「「OK♪」」」
「はーい」
「いいっすよ~」
「じゃあ入りま~す。・・・すみませ~ん!」
『ガラガラガラ・・・』という木製のガラス引き戸特有の音を聞きつつ、手神達はゆっくりと店内へと足を踏み入れていく。
中に入ってすぐ目に付いたのは、床から二段ほど高い位置に設けられたお座敷3席と、店の右側に設けられたテーブル3席。
お座敷の方は段差のところで靴を脱ぐ形となっており、畳みの床と座布団が敷かれていた。
しかもまだ2時半過ぎぐらいの時間帯であるにもかかわらず、既に店内にはテーブル席とお座敷席に一組ずつ、お客が手慣れた手付きでもんじゃ焼きを頬張っている。
さらに店内の至るところには、まるで数十年前のようなお酒や女優のポスター。
そして、もはや数え切れんばかりの著名人達のサイン色紙が、ズラリと壁一面に貼り付けられていた。
しかもそのどれもが、すべてこの店に訪れた者のサイン色紙である。
飾られているサイン色紙には、未佳達のようなアーティストのものはもちろん。
俳優や女優、芸人、タレントなどなど、様々だ。
中には以前、未佳達と音楽番組等でお世話になった人物のものもある。
(すごい・・・・・・。みんな有名な人のサインばっか・・・)
「いらっしゃいませ~!」
ふっと店の奥にあった調理場から、髪の毛をタオルで巻き込んだ女性店員がやってきた。
さらに厨房で働く店員二人の年齢や会話の言葉遣いから察するに、どうやらここは、一家3人で営んでいるお店のようだ。
「何名様ですか?」
「すみません。6名で予約取ってないんですが・・・大丈夫ですか?」
「はい。大丈夫ですよ~。4名様以上ですと2階のお座敷席になるんですが・・・。女性の方お履きもの等大丈夫ですか?」
「・・・? えっ??」
何故『女性の方』で自分だけ手差しされるのだろうと思い、未佳は自らの足元に視線を落とし、納得した。
この大人数の中、厚底ながらヒールのあるひもブーツを履き込んでいたのは、自分だけだったのである。
「あっ、大丈夫です。すぐ脱げますので」
「大丈夫ですか? ・・・はい。じゃあお2階のお座敷、何処でも大丈夫ですので、お好きなところに座ってください。階段少々急なので、気を付けて上がってくださ~い」
少々早い口調でそう伝えると、女性店員はおしぼりを取りに厨房の中へと入って行った。
その間、残された6人は厨房出入り口の右手側にあった通路に視線を移す。
通路の先には『お手洗い』と書かれた扉。
そしてそのトイレへと続く通路の手前左手側には、人一人分しか通れそうにない縦長に開けたスペースが一つ。
もしやと思いそのスペースの前へと行ってみると、案の定そこには、先ほどの店員が言っていた急な階段があった。
『急な』という言葉の理由は、明らかにこの角度と足を置く段差の幅的な話であろう。
傾き的に45度くらいありそうな感じであるにもかかわらず、一つの段の幅は足の半分程度しか乗せられない。
その上段差の縦の長さはそこそこ高く、おまけに両手を伸ばせば確実に壁に触れられるほど狭い関係からか、手摺りなども一切取り付けられていなかった。
その見た目や作りは、まるで昭和や江戸時代のもののようである。
「うわ~。年忌入ってますねぇ~」
「確かに、急!」
「ウチのおばあちゃん家みたいやわ・・・」
「とりあえず上がろう。僕らが女性陣囲む感じに上がるでいいかな?」
「そうっすね。踏み外した時にすぐに手ぇ貸せるように」
「OK~♪ ♪~・・・・・・あ゛ッ! ちょっとさとっち! 階段上がってる間、絶っ対に上見上げないでよ?! スカート私だけなんだから!!」
「んなっ・・・! ロンスカから下見えるってどんだけ急やねん!!」
ちなみに今回未佳が履いているロングスカートは、丈的には足首までの長さがある。
正直な話、どうやっても後ろを歩く長谷川には中は見えない。
(そう思う彼女の頭が疑問やで・・・)
階段を上がってみると、そこにはよくあるお座敷の居酒屋のように、靴を脱ぐための段差とすのこ。
そしてその先には、1階と同じく畳の床に置かれた黒い鉄板付きテーブルと、座布団が敷かれていた。
『4人以上のお客様は』と聞いていた通り、2階は宴会や団体客用であるためか、かなり広々とした空間になっている。
また室内の換気のために頻繁に開けるのか、窓には落下物防止のための格子が嵌められていた。
「おぉ~・・・・・・。何処にする~?」
「あそこの窓際とかいいんじゃないですか? 外も見渡せるし、換気にもちょうどいいし・・・。どうせこんな場所じゃあ、ファンも出歩いてはいないでしょうから・・・」
「・・・・・・・・・そうね。途中誰も見掛けなかったし・・・・・・。念のために未佳さん達は窓に背を向ける位置で座っていただきますけど・・・。いいわね?」
「は~い♪♪ 私は食べられればそれでいいから~♪」
「「「「「ハハハハハ」」」」」
こうして6人が、窓側にある4人掛け2テーブルに腰を下ろし始めた頃、先ほどの女性店員が、人数分のおしぼりを手にやってきた。
「よろしければお飲み物を先にお伺いしますが」
「あっ・・・。飲み物どうする?」
「ウチ、ビール」
「あっ、私も」
「こっちも便乗!」
「僕ハイボールにしようかなぁ~・・・」
「おっ? じゃあ僕も♪」
「ダメですよ、長谷川さん! 長谷川さんはすぐに来るんですから~。もっと軽いのにしてください」
「そ、そんなぁ~・・・っ!」
まさかの栗野からのストップに、長谷川は今にも泣き出しそうな表情を浮かべる。
確かに酒が弱いことには弱いが、だからと言ってハイボールまで止められてしまったら、呑めるものも呑めやしない。
ましてやこんなお酒が合いそうなものを食べようとしている時に、一人だけ、最高でもサワー程度のものしか口にさせないつもりなのだろうか。
そう思うと一気に今までの気分と頭がガクリッと下がった長谷川であったが、その頭はすぐに、微かに聞こえてきた栗野と日向の笑い声によって、再び上へと上げられた。
見れば自分の位置から正面に座っているこの二人が、何やら口元に手を当ててクスクスと笑っている。
その様子にポカ~ンとしていると、先陣を切って栗野が口を開いた。
「冗談。冗談よ、長谷川さん」
「このあとは大阪に帰るだけなんですから、誰も呑むのなんて止めないですよ」
「!! ・・・・・・~! よ・・・よかった~・・・。も~う・・・脅かさんといてください・・・」
「その代わり! 量はちゃんと自粛してくださいね?!」
「ハハハ・・・。坂井さんは?」
「ん? ・・・私ゴールデンハイボール」
「はい。・・・あのぉ~、ビールは~・・・」
「えっ? ・・・あっ、瓶二つにコップ三つで」
「畏まりました。瓶ビールがお二つに、コップが三つ。ハイボールがお一つ。以上でよろしいですか?」
「はい」
「は~い」
とりあえずそれだけオーダーを聞くと、女性店員は特に注文をメモるわけでもなく、そのまま階段を下りて行ってしまった。
そして今さっきになり気が付いたことなのだが、2階には店員を呼ぶための呼び鈴やボタンなどは、一切設置されていない。
つまり次に店員に注文するためには、たった今注文したドリンクが届いたとついでに頼まなければならない、ということだ。
「メインのもんじゃどうする~?」
「さっきの店員さんがやってくるまでに決めとかな・・・!」
「エビ・・・コンビーフ・・・ネギ・・・カレー・・・明太・・・・・・色々あるねぇ~・・・」
ざっとここのメニューに載っていたもんじゃ焼きは、全部で30種類ほど。
ただしテーブルの鉄板の面積や枚数から考えて、一度に焼けるのは2枚が限度だろう。
一応、食わず嫌いな厘のことも考え、最初のもんじゃ焼きは定番なものから攻めていくつもりではいた。
しかし。
「う~ん・・・あっ! キムチ! キムチがあるじゃない♪♪ 私キムチがいい~!!」
「えぇ~!? いきなりキムチはハードやろ?? やっぱ王道は豚やて、豚」
「えぇ~っ?! ヤァ~ダァ~ッ!! 私絶対キムチがいい~!!」
(((〔また始まった・・・〕)))
「豚やろ! 豚!!」
「キぃームぅーチぃーッ!!」
「あっ・・・・・・。なんか貼り紙の方のメニューに『豚キムチもんじゃ』ってのがあるよ?」
「!! なぬっ!?」
「そんなありがたいメニューがあるんっすか?!」
「厘さん、どうします? 向こうは豚キムチみたいですけど・・・」
「う~ん・・・。豆腐は食べ慣れてるしなぁ~・・・・・・。トマト・・・チーズ・・・蕎麦・・・・・・あっ。ちょっとこの納豆気になるわ。納豆」
〔ゲッ・・・!!〕
「あら、納豆いいわね」
「珍しいですよね?! 納豆のもんじゃって・・・」
「粒かな? 引き割りかな?」
「ちょっ・・・、ちょっとソコは分からないですけど・・・」
「じゃあ納豆と豚キムチで! はーい、声がよく通る長谷川さん、お願ーい!!」
「俺かいっ!!」
またしても毎度の如くパシらされ、長谷川は『あ゛ぁ゛ー・・・』と、濁った溜息を吐くのであった。
『節分』
(2008年 2月)
※事務所 控え室。
手神
「お~い! 豆買ってきたよ~(^0^)」
さとっち
「あとスーパーに売ってた鬼のお面も~(笑)」
みかっぺ
「あっ、二人ともthank you~♪」
栗野
「すみません、二人とも。ぶっつけ当日に買い出し頼んでしまって・・・」
さとっち
「いえいえ」
手神
「事務所のみんなで行事パーティーなんて久々じゃないですか。これくらいお安いご用ですよ」
まっちゃん
「ところでー・・・。未佳ちゃん達は一体何作ってんの?」
みかっぺ
「あっ、これ? これは『焼嗅』。節分の時期に飾る飾りなの」
赤ちゃん
「柊の枝に焼いたイワシの頭を飾って、鬼がやってこないようにする、いわゆる『魔除け』の一種だよね?」
小河
「まあ今じゃほとんど見ないけど・・・(^_^;)」
小屋木
「それにしても小歩路さん、遅いですね・・・」
みかっぺ
「うん・・・。イワシの頭、そんなに焼けるのに時間掛かるのかな。。。」
さとっち
「事務所のコンロ、結構年忌入ってますもんねぇ~(--;) ちょっと様子見に行ってきますか」
※とりあえず様子を見に行くさとっちとみかっぺ。
さとっち
「小歩路さ~ん?」
みかっぺ
「イワシま~だ?」
※モワ~ン・・・(臭)
みかっぺ
「臭ッ!!(叫)」
さとっち
「ゲホツ! ゴホッ!!(咳)」
厘
「あっ、二人ともどないしたん?」
さとっち
「そらこっちの台詞や!! くっさっ!!(涙目)」
みかっぺ
「小歩路さん! 何!? この臭い!!(悲鳴)」
厘
「いやな。手頃なイワシが売ってなくて・・・。とりあえず『臭ければ何でもええんやろ~』と思って、代わりにクサヤ買うて炙ってんねんやけどー・・・。なっかなか焼けへんねん(ーー゛)」
さとっち
「アホかぁッ!!(怒)」
それから数週間、事務所の調理室が出入り禁止になりました・・・(苦笑)