119.久々の交流
着替えを終えてから約5分後。
栗野・日向・メンバーの6人は、昼間と同じ関係者用通路の階段で3階へと上がり、今回の夕食場となった洋食レストラン。
『キャンディー☆POP』の出入り口前へとやってきていた。
ここのレストランは、比較的3階のeatコーナーの中でも一番隅の方にあり、またウィンドウなども少ないので、人目にも付きにくい。
さらに昼食の時に入店した『ハワイアン・パラダイス』同様、店内には壁と扉で仕切られた個室があるので、食事の際にもそれなりの安心感は得られる。
そして何よりも一番決定判断として大きかったのは、大半の洋食メニューが店内に取り揃えられていること。
それこそ、大人向けのメニューから子供向けのメニューまで、幅広い料理の品を取り揃えているのだ。
「えっ? ディナー、由美子さんと流星くんも一緒なの?!」
「うん。・・・なんか栗野さんが勝手に話してたみたいで・・・。さっき二人が着替えてる時に聞いたんだけど」
「でもいいじゃな~い♪ 由美子さんと一緒に食事するの、ホンット久しぶりだし」
「それに流星くんも一緒なんやろ~? なんかソレ想像しただけでも楽しそうやん」
「ねぇ~?」
久々にアラサー同士でのガールズトークができると知り、未佳と厘は胸を躍らせる。
特に今回は、女性にとって母性本能をくすぐられるような3歳児も同伴というのが、何よりも一番に楽しみだ。
「3歳の小さい子なんて、そうそうウチら一緒におらへんもんね」
「うんうん♪」
「ところでー・・・。その肝心のお二人は? もしかしてもうレストランに?」
「あぁ。人目のこともあるし、先に入ってもらってるよ」
「あっ・・・。じゃああんまり待たせない内に急がなくちゃね。せっかくこっちから誘ったのに、遅れちゃったら申し訳ないもん」
「そうね・・・。じゃあ私ちょっと様子見てきます」
昼食の時と同様、一足先に通路扉から出た栗野は、足早に店内へと入ってみる。
こちらもまた、仕切られている部屋までの距離はかなり開いていたが、時間帯の関係もあってか、人の数は思いの外少なく。
店内のお客も、かなり年配の一人客か。
あるいはご夫婦らしき二人組の人達以外見受けられなかった。
そもそも冷静に考えてみて、彼らCARNELIAN・eyesのファンであるのなら、こう言ったイベント後はメンバーの好みにあやかり、昼間のロコモコ丼やらイタリアンやら寿司屋などに出向くはず。
ある種こう言った洋食レストランというのは、彼らにとってまさに予想外なジャンルでもあり『穴場』であったかもしれない。
(案外狙い目としてはよかったかしらね・・・)
「いらっしゃいませ~。お客様は1名・・・」
「あっ、いえ。あの・・・先ほど2回ご連絡させていただきました。『栗野』という者なんですが・・・」
と言って先ほどの携帯の控え番号と、いつもの所属事務所の証明書を提示し、店員に確認させる。
すると店員も、今回のような一部屋丸々予約などということはそうそうないのか、名前の時点で予約をしてきた人だとすぐに察した。
「! あぁー! はいっ! ご予約承っております。え~っと・・・。変更でお客様の人数、8名様で・・・よろしかったでしょうか?」
「はい。それであの・・・。先ほどお子さん連れの方が・・・もう入られましたか?」
「はい。もうお先に・・・いらっしゃってます」
「あっ、じゃあ残り5人・・・。ちょっと呼んできます」
「あっ、はい」
「すみません。・・・・・・もういいや、電話にしちゃお」
正直ここから関係者用扉までの距離は5メートルもなかったのだが、わざわざ戻るのも面倒だと考えた栗野は、そのままスーツパンツのポケットから携帯電話を引っ張り出す。
もちろん掛ける相手は、未佳達と共に通路で待っている日向である。
(あぁ~もうっ・・・。こういうところが年取ったと感じるわ)
なんてことを思いつつ、リダイヤル機能で電話を掛けること数秒。
たった1コール足らずで、日向は携帯に出てきた。
「はい。もしもし~?」
『もしもし~? 日向さん。あの・・・店内警戒度0なんで。あの・・・外に出るところだけ注意してもらえれば、あとは大丈夫です~』
「あっ、はーい。分かりました。じゃあ・・・もう出ちゃっていいんですね?」
『うんうん。もう出てきちゃって~』
「はーい」
『はーい』
ピッ!
「・・・・・・栗野さん、なんて?」
「うん? ・・・なんかもう『入っちゃっていい』って。ところでなんで電話なの??」
もちろん何故栗野が電話を使ってきたのかなど、未だ『面倒臭い』という症状が現れていない日向にとっては、永遠に謎な話である。
その後外の様子を軽く伺いながら、未佳・長谷川・厘・手神は足早に店内へと進み、中で期待していた栗野の元へ。
そして待ち合わせ場所でもあった個室部屋の前へと着くと、手神が先陣を切って扉を引き開ける。
「たぶん僕がやった方がいいよね? ・・・・・・失礼しまーす・・・」
「由美子さん・・・いますか~?」
「んっ・・・・・・あぁ、皆さん」
「! あっ、ひろとおじちゃーん!!」
扉を開けたところですぐさま互いの存在に気付き、由美子はソファー席に座ったまま、メンバーに対して右手振りを。
一方の流星は手神の登場が嬉しかったのか、その姿を見るや否や、一目散に手神の方へと駆け出していった。
まだ小さく短い両足でこちらに向かってくる流星の姿に、手神も思わずいつもの親戚の顔になりながら、笑顔でやってきた流星を抱き上げる。
「おぉ~! 流星く~ん! よく来たね~♪ ・・・よいしょっ」
「うわぁっ♪ たかーい!!」
「高い~?」
「パパよりたかい!」
「ハハハ! そりゃそうだぁ~。おじちゃんの方がねぇ、パパより3センチも高いんだよ~??」
一方その頃、入り口前で流星と戯れているメンバーをよそに、先に由美子の方へと向かった栗野と日向は、お互い苦笑し合いながらも頭を下げる。
「すみませ~ん。ちょっと出掛ける準備に手間取っちゃって・・・」
「もしかしてかなり待ったんじゃないですか? 由美子さん・・・」
「あっ、いえいえ。私も今さっき着いたところだったんで・・・」
しかし実はこの時、流星の周りに集まっていたメンバーもまた、栗野達と同じことを流星に尋ねていた。
「せやけどごめんな~、流星くん」
「ちょっと私達遅くなっちゃって・・・。ずっと待ってたんでしょ~?」
「ううん。ぼく、まってないよ~?」
「ハハハ。そんな気を遣わなくても・・・」
「ううん、ママがね。ママが・・・みっち、まちがぇたもん」
「「「「えっ?」」」」
「さっきおじちゃん、あっちぃ~、っちゃったんだよ? ママとぼく・・・」
そう口にする流星が指差す方角は、このレストランがあるのとはまったく逆方向の通路。
そういえば今頃になって、手神はやや由美子に方向音痴の気があることを思い出した。
(そういえば一昨年だったか・・・。実家の方の初詣ではぐれたことが・・・)
「そうなの。私ちょっと地図の方向見間違えちゃって・・・さっき反対側歩いちゃってたんです・・・」
「あぁ~・・・」
「はぁ~、恥ずかしっ」
「で、でも、ここ入り組んでてかなり分かりにくいですよねぇ~? ・・・まあある意味『穴場』とも言えますけど・・・」
とりあえず出来るかぎりのフォローで場を和まし、8人は改めてテーブル席へと座ると、それぞれ店員から手渡されたメニュー表を二人ずつで見つめる。
ただし流星が見ているメニュー表は、お子様専用メニューなので、こちらは一人独占状態であるが。
ちなみに彼らの席順は、ソファー席に由美子・流星・未佳・長谷川。
反対側の座席の方に、厘・手神・栗野・日向と言った並びで腰かけていた。
「何にしよっか~・・・」
「・・・あれ? 今日って皆さん、お酒とかって呑まれたりとか」
「あっ、いえ。今日は今後のこともあるし、ちょっとアルコールは控えようかと・・・」
「それに流星くんの前で酔い潰れてるトコ見せるのもねぇ~・・・。限りなく大人げないし」
ついでにこのあとのバス帰りやホテル、シャワー入浴などのことも考えると、今はそれらを口にしない方が先決。
彼に今日呑むことがあるとしても、それはホテルに戻ってからの話である。
「で、でもそんなに皆さん、普段酔い潰れちゃうほどお酒呑んだりしないでしょ~う?」
「それが一人おるんよぉ~。普段は酔わん程度のお酒でベロ~ンってなるんが・・・」
「面目ない・・・」
「とるあえず皆さん。一旦ドリンクだけ決めちゃいましょうか」
実はこの洋食レストランでは今どき珍しく、店内にドリンクバイキングの装置が設けられていなかった。
なので当然メニュー表にも『ドリンクバイキング』というお決まりの記載は一切なく、代わりに通常のドリンクメニューが、メニュー表の1ページを占める形で載せられていた。
「そうだね。バイキング形式のやつじゃないんなら、最初にみんなドリンク決めちゃおう。そっちの方が、あとで注文する時にごちゃごちゃしないし」
「流星くんは~? 何飲む~?」
「ぼく、これ!」
半ば即答する形で流星が指差したのは、お子様メニューのオレンジジュースであった。
ちなみにオレンジジュース自体は、未佳達の見ている通常メニューのメニュー表にも載っていたのだが、そちらはお子様メニューのものよりも量が多く、その分30円ほど値段も高い。
ただしお子様用のは特権として、ジュースの中に缶詰のさくらんぼが入れられていた。
「あぁ。お子様オレンジジュース、ね。じゃあ私は・・・・・・どうしよう・・・。せっかくだし、ピンクレモネードにでもしよっかな~?」
「栗野さん達、どうします? 私カフェラテにするつもりなんですけど・・・」
「あっ、じゃあ私もカフェラテ♪」
「う~ん・・・。ウチ普通のコーヒーにしよっかなぁ~」
「あっ、じゃあ僕もコーヒー」
「私もっ」
「ちょちょちょ・・・! ちょっとタンマ! あんまりここで集団注文するとごった返すから、こっちドリンクメモるわ」
ふっと周りの状況を見てメモった方がいいと判断した長谷川は、おもむろにリュックの中からメモ帳とボールペンを取り出す。
こういうところで即座に行動を起こすのが、この長谷川のいいところである。
「すみません、長谷川さん」
「さとっち、Thank you♪」
「あいよ~! とりあえず一番人数多そうなのから・・・・・・。え~っと、コーヒーの人!」
「「「はーい」」」
まずコーヒーの段階で手を挙げたのは、反対側に座っていた手神・厘・栗野の3人。
「1、2、3人。・・・・・・次多かったの・・・カフェラテか。カフェラテの人!」
「「はい」」
「・・・二人っすね? ほいっ」
「あっ・・・。さとっち、ゴメン!」
「ん?」
「ウチやっぱりコーヒーキャンセルで、カプチーノ」
「・・・へいへい。小歩路さんカプチーノな? ・・・あっ。カプチーノはええけど、みんなドリンク、ホットでいいんっすよね? あとで『わしゃアイスやなきゃ飲まん!!』とか言うても、僕知りませんよ~??」
「「「「「「ハハハ」」」」」」
少々ラジオの場で養えたボケトークも入れつつ、長谷川は今現在の注文ドリンクと数をメモ帳に記入する。
「よしっ。・・・じゃあそれ以外の人!」
「「「はーい♪」」」
「はい・・・。そうっすよね」
「ハハハ」
「流星くん、オレンジジュースやったっけ?」
「うん♪」
「あっ、さとっち」
「うん?」
「流星くんのジュース、通常じゃなくて、お子様用の。お子様メニューに載ってる方のだから」
「さくらんぼが入ってる」
「あっ・・・。了解~♪ さくらんぼ入りのやな~?」
長谷川はそう聞き返しながら敬礼のポーズを取ると、メモ帳に書いた『オレンジジュース』の文字の頭に『お子様』と書き加えた。
「んでー・・・。坂井さんレモネードやったっけ?」
「えっ? ・・・違う違う。私のは、ピンクレモネード!」
「んなぁ、別に頭に『ピンク』付こうが付けまいが関係な・・・・・・あっ。ここレモネード両方あるんか・・・」
ふっと改めてドリンクメニューを見直してみると、確かにこのレストランには通常のレモネードだけでなく。
淡い薄ピンク色が特徴のピンクレモネードも、ソフトドリンクとして取り扱っていた。
「そうよ、だから言ってるんじゃな~い!」
「はいはい・・・。んじゃ“色付け”の方な~?」
「いっ・・・! 『色付け』って何ぃ~っ?!」
「えぇ~っと・・・・・・・・・ん? ・・・あれ?」
「・・・今度はどうしたの?」
「いや・・・。二、四、六・・・あれ? 人数と数合わへんぞ? ・・・誰か記入漏れしとらへんか??」
「「「「「〔「さとっち」〕」」」」」
「・・・・・・あっ。・・・そうや! COKE書き忘れとるやん!! 俺!」
ドテッ!!
別に長谷川が何を頼もうとしていたのかまでは考えていなかったのだが、とりあえず今の発言で、長谷川が自分達と同じソフトドリンクを頼もうとしていたということだけ、未佳は理解した。
「結局ソフトドリンク・・・」
〔ところで長谷川さんって、キレなくても『俺』って言うの?〕
「なんか・・・。たまに興奮すると出てくる時があるみたい・・・」
〔ふ~ん・・・・・・・・・〕
ふっとそんな長谷川の言動に軽く頷きつつ、おもむろにリオは自分の真隣りに座っていた人物に視線を移す。
隣に座っていた流星との座高は、自分とたった二回りくらいの差しかなかった。
元々リオは、未佳が推定として考えている子供の年齢よりも、身体付きがかなり小さい。
それ故この二人が並んで座っているのを見ると、一応リオの方が成長した顔付きや身体をしてはいるのだが、体格的にはかなり負けているように見える。
いやむしろ、リオは細すぎて不健康そうだ。
「フッ・・・。リオよりも体格しっかりしてて丈夫そう」
〔・・・ほっといてよ〕
「フフフッ・・・。でもリオよりも小さいのよ?」
〔だって3歳だもんね・・・。まだ・・・〕
「そうよ? リオの方がお兄ちゃんよ? ・・・・・・何かあったら助けてあげてね?」
〔!! 『何か』って何!?〕
「うん? ・・・『何か』は『何か』よ。とりあえず一番歳近いんだから、見えないなりにちゃんと見てあげてね?」
〔『歳近い』って・・・〕
思わずその未佳の発言に反論しようとして。
止めた。
正直己の年齢など、そんなものはとうの昔に忘れてしまった。
特に数えようという気もなかったし、逆に数えていったからと言って『だから一体何なのだ』という話になる。
自分は人間でもなければ、命ある“イキモノ”でもない。
『イキモノでない』ということは、生きてもいない。
つまり自らの目の前にあるのは、おそらくほとんどの生き物が手にすることのない『永遠』なのだ。
死ぬことがない、生きているわけでもない、まさに“生”のみの存在なのだ。
〔(・・・・・・・・・今更言ったところで・・・無駄か・・・)〕
「よろしくね? リオ」
〔(・・・・・・ったく・・・)〕
「みかっぺ、メニュー決まった~?」
「あっ、ゴメン! 今決める! ・・・・・・ところでみんな何頼むの~?」
ふっと先ほどから両手に抱えていたメニュー表をパラパラとめくりつつ、未佳は軽いノリで7人に問い掛ける。
すると最初に口を開いたのは、いつも厘と並んでマイペースであるはずの、あの日向であった。
「う~ん・・・。私ビーフシチューかなぁ~?」
「あら? 日向さん結構行くわねぇ~」
「うん、なんか・・・。昼間未佳さんが食べてたの見てたら気になっちゃって・・・」
「あらら・・・」
「日向さん、すみませ~んっ」
「えっ? 未佳さん達、お昼もここだったんですか?」
「ん? ・・・ううん。お昼は別のお店だったんですけど、未佳さんそこでビーフシチュー風ロコモコ丼なんて食べてたものだから・・・。それで日向さん気になっちゃったのよね~?」
半ばジト目寄りの笑みを浮かべながら聞き返すと、日向はまるで噛み締めるかのような声で『はい・・・!』と返した。
「ほならウチ・・・。久々に春野菜のグラタンでもいっとこうかなぁ~・・・」
「まさか厘さん・・・。注文するのそれだけじゃないでしょうねぇ~?」
「・・・・・・ほならブールセットで・・・」
「ならよしっ! ・・・・・・イベント後にグラタンだけじゃ、体力的にもよくないわよ」
「じゃあ僕は、ライス付きでサーロインステーキにでもしようかな? ・・・流星くんは? 何食べる?」
「ぼくねぇ! ぼくっ・・・! はんばぁーぐとねぇ! かれぇ~らいすとねぇ・・・! あとおこさまらんちッ!!」
「そんなにたくさん食べられるわけないでしょ!! 流星!」
思わずその発言に由美子が反論すると、流星は口元を『へ』の字に曲げながら、プクゥ~っと頬を膨らませた。
その姿と言い、注文内容と言い、その可愛らしい言動に、周りにいたメンバーからは一斉に笑い声が飛ぶ。
「ハハハハ。流星くんったら、欲張り~♪」
「それはさすがにどれか一つだな~。・・・もしかしてどれか一つでも難しいか?」
「そうなの。まだそんなに食べられないのに・・・。何処か連れていくといつもこうなの」
「まあでも・・・。小さいお子さんにはよくありますよね? 『食べたいものを好きなだけ食べたい!!』みたいな」
「でもいくらなんでも多過ぎるよ~、流星くん。さとっちだってそんなにたくさん食べられないよ~?」
「うん。僕を例題に上げたことにスッゴイ悪意を感じる」
しかしその長谷川の心中の叫びは虚しくも、隣に座っている未佳の耳には一切として届かなかった。
「ところで流星くん、嫌いな食べ物とかはないの?」
「うん。ぼくみんなたべられるお!」
「フフフ。まだ食べたことない食べ物の方が多いんですけど。好きなのはあっても、嫌いなのはないんだよね~? 流星」
「うん♪」
「へぇ~、お野菜も食べられるんだ~。好き嫌いなくて偉いね~。流星く~ん」
「ホンマ見習ってほしいくらいやわぁ~。この姉ちゃんなぁ、未だにピーマン食べられへんねんで?」
ゴッ!!
ある意味これだけの長い付き合いであればいい加減予想できそうな展開であったのだが、何の警戒も回避策も考えていなかった長谷川は、呆気なく未佳の気合いのグーパンチを脳天に喰らい。
そしてそのまま問答無用に、勢い任せにソファー座席に顔を埋める形となってしまった。
しかもその際の脳天に喰らった時の音が、これまた実に鈍いこと。
そのかなり鈍った音に、厘は呆れ返ったような顔で口を開く。
「みかっぺ・・・。たぶんウチの記憶の中やと、今日一番の鈍い音やったと思うよ・・・?」
「えっ? そう?? ゴメン、私全っ! 然っ! 記憶にないんだけど」
「ま、まあ・・・。グーで脳天垂直にやったら、普通~にこうなるよな・・・」
「しかも長谷川さんには大変申し訳ないんですけど・・・。流星くん、大ウケ」
「ハハハハッ!! おねぇちゃん、おもしろぉ~いっ!!」
「フフフッ。そ~ぉ~?」
「でもおにぃちゃん、ないてるよぉ~??」
「うん? ・・・・・・あっ、きっと気のせいよ~♪♪」
「未佳さんッ!!」
その後流星は由美子と話し合い、結果一番無難なお子様ランチを注文することとなった。
『ダイエット』
(2005年 10月)
※事務所 控え室。
さとっち
「え~っと・・・。今日は朝からギター録音で。その後はサポメンのギタ練! そこから昼過ぎには急いで京都に行って、ラジオ収録!! ・・・うわぁ~・・・。めっちゃハードやなぁ~」
みかっぺ
「そう言ってる割りには、妙に嬉しそうだけど?」
さとっち
「いや『嬉しい』っていうわけ違うんですけど・・・。こうやって移動だの喋るだのするでしょ? ・・・ちょっとはダイエットになるかなぁ~なんて(^_^;)」
みかっぺ
「あぁ~、なるほど~。・・・また太ったの?(ーー;)」
さとっち
「まあ、そこはノーコメで(苦笑) でも痩せれる可能性は十分ありますよ!?(^^)v」
みかっぺ
「そうね。じゃあさとっち、頑張って♪(応援)」
さとっち
「アイヨ!!(気合)」
※12時間後。
手神
「『ダイエット』ねぇ~・・・」
厘
「この手の当てにするんはどうかと思うけどなぁ~」
ガチャッ・・・
みかっぺ
「あっ。噂をすれば帰ってきたんじゃない? ・・・さとっちお帰・・・り・・・んんっ?!(二度見)」
さとっち
「さ・・・、坂井さ~ん・・・。今帰って来ました・・・(疲) どうっすか? 僕・・・痩せてます?」
みかっぺ
「いや『痩せた』というかー・・・(汗)」
厘
「さとっち今朝より老けたよ?!(爆)」
さとっち
「ぇっ? ・・・マジで?() ̄。 ̄(|||)」
みかっぺ
「うん。『痩せた』『痩せてない』の前に・・・。“死にそう”(爆)」
その後みかっぺ達と夕食を取ったおかげで、さとっちは一命を取り留めました・・・(笑)