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107.ロコモコ登場

メニュー注文後。

しばし料理が出来上がるまでの持ち時間中、ふっと栗野は唐突に思い出したかのように、二つ隣に座っていた手神に尋ねた。


「そういえば手神さん。楽曲練習の方は、もう大丈夫なんですか?」

「えっ?」

「ほら。今日のイベント、少しセットリストを変えるんでしょう? ついでに曲目も」

「あっ、あぁー・・・。でも大丈夫ですよ。一応さっきのリハーサルでも集中的にやりましたし・・・。それに『急遽予定外で別の曲をやる』っていうのも、なんかスリルもあってワクワクするじゃないですか。こういうのも、たまにはいいんじゃないですかね? たまには・・・」


そう言いつつやや苦笑するかのように、手神はハニカミながら笑い返す。

その手神の表情と言葉に、たまたま真ん中で全ての話を聞いていた日向と栗野もまた、そっと安堵の笑みを返すのだった。


一方そんな手神と栗野の会話など一切聞いていなかった窓側組は、ただただこの料理がやってくるまでの時間を適当に持て余していた。

というのも食後のデザートを狙っている未佳と長谷川は、既に第3候補までのデザートメニューを決めたあと。

他に気になるメニューなどを物色したところで、今頭の中で考えているメニュー以外は食べきれない。


『ならば少しでもイベントの練習を』とも思うが、防音対策も何もなされていないこの空間では、楽曲はおろかMCの練習ですら不可能だ。

さらにこの扉の向こう側には、おそらく先ほどよりも大勢のファンの人間が詰めかけているはず。

むやみやたらとイベント内容に関わるようなことはできない。

そうなるとこちらが行動として行えることはかなり限られてしまうため、結局は時間を持て余すような形となってしまうのである。


「坂井さん・・・。大丈夫?」

「あぁ? 何か?」

「いや、さっきのあの・・・。栗野さんの落雷」

「・・・あえてソコ『雷』って言わないところがイキね。さとっち」

「あっ、いや、だって・・・。『未ぃ゛ー佳ぁ゛ーさぁ゛ーん゛?!』の時点で既に・・・。雷落っこちてるやないですか」

「うん・・・。もう頭の中感電してピリピリ言ってる。あぁ~・・・、痛い」

「だから・・・、大丈夫?」

「料理きたら直るから大丈夫」


実際大きなロコモコが登場したところで、この栗野の怒声による耳鳴りがなくなるとは思ってはいないが、少なくとも耳鳴りの存在があまり感じられなくはなるだろうと考え、そう返した。


「ま~ったく・・・。何を二人揃ってウチの注文ボタンあれこれ言うてるのかと思ったら・・・。デザート頼みたかったからなん?」

「「うん・・・」」

「でもここまでので既に2回やし。帰る時で3回やろ? ほんでこのあと料理運ばれてくるので計算やったらー・・・。難しくない?」

「ううん。料理やってきて時に追加注文すれば大丈夫」

「さすがに一度注文したメニューをキャンセルさせるようなマネはせぇへんやろうしな」

「そらそうやけど・・・。そんなにデザートって必要?」

「「うん。必要」」


そう二人が声を揃えて返した、その時だった。



コンッ コンッ



「あっ、はーい」

「失礼します~。・・・お料理をお持ちしました~」

(えっ? 早っ!)

(もう来た?!)

「はーい」


その店員の声に栗野が再度返事を返すと、やがて喫煙室の出入り扉が開き、そこから二段重ねの木製カートを押した店員が、素早く室内へと入ってきた。

しかもよくよくそのカートを覗いてみれば、カートの棚には自分達が注文したロコモコ丼が数点。


この時初めて、未佳はこのレストランがトレー式ではなく、カートで料理を運ぶレストランであることに気が付いた。


「お待たせしました。新鮮野菜の盛り合わせロコモコでお持ちのお客様」

「あっ、はい」

「わぁ~♪ 美味しそ~う♪♪」


店員と栗野の手を返して置かれた厘のロコモコ丼に、思わず未佳が率直な印象を口にする。


厘の目の前に置かれたロコモコ丼は、おからで作られたハンバーグの上に、レタスや水菜、赤キャベツなどの緑色生野菜がふんだんに盛り付けられ、さらにその上からは半熟目玉焼き。

そして仕上げのソースでは、こちらは本来のグレイビーソースではなく、バーニャカウダで作られた特製ドレッシングが掛けられ、まさにサラダを意識したかのような一品であった。


「思いっきり小歩路さん好み・・・」

「フフフ」

「・・・こちら、エビブロマヨネーズの単品でご注文のお客様」

「はい」

「前の方、失礼いたします」

「あっ。『エビブロ』ってコレだったんだ~」

「見たことあるんでしょ? よくシーフードサラダとかで」


そう口にする栗野のロコモコ丼は、定番の合挽き肉ハンバーグの上に目玉焼き。

そしてその上から、サラダでお馴染みのエビとブロッコリーをマヨネーズで和えた『エビブロサラダ』が、ボール上に丸められた形で盛り付けられていた。


ちなみに普段未佳達がごひいきしている弁当屋『癒鈴弁当』でも、これとよく似たシーフードサラダを計り売りで扱っている。

もっとも癒鈴弁当の場合はエビやブロッコリーの他に、ペンネパスタや玉ねぎなどの材料も入っているが。


「・・・同じくエビブロマヨネーズで、スープセット付きでご注文のお客様」

「あっ、私です」

「はい。こちらがミネストローネになります。お好みでこちらのパセリを振り掛けてから、お召し上がりください」

「はい」


ふっと日向の前に置かれたミネストローネの香りと中身に、思わず女性陣達の視線がスープに集まる。


それもそのはず。

てっきり『ミネストローネ』と聞いて、定番の人参やら玉ねぎやらじゃがいもやらが入っているだけだと想像していたのに。

いざ置かれたスープの中身を見てみれば、今挙げたものの他にセロリやズッキーニ、茄子、カボチャ、ひよこ豆に貝殻型パスタ。

そしておそらくホールトマトではないトマトまで入っていたりと、かなりの具材料である。

これでセット料金が380円であるのなら、かなり割安だ。


「「「・・・・・・・・・・・・」」」

「・・・あの・・・、皆さんあげないですよ?」

「えぇ~?!」

「私もスープ付ければよかった~・・・」

〔え゛っ? 未佳さんのって、そもそもビーフシチューなんじゃないの?!〕


思わず『ギョッ!』としながらリオが聞き返すと、未佳は一瞬何か言いたそうな視線を送っていたが、すぐにまたスープの方へと視線を移してしまった。

一応、未佳が言わんとしていたことの一つや二つくらいは想像が付くが、そこはあえて聞かずに黙っておいた方がいいだろう。


一方『誰にもやらない』と宣言した日向に対し、納得のいかなかった栗野は思わずこんな悪口を吐く。


「も~う・・・。一口ぐらいいいじゃな~い。向日葵ひまわりのケチ」



ズルッ!!



「ちょっと!? ・・・栗野サン?!」

「ふ~ん・・・♪」

(く、栗野さん・・・)


あまりにも普段の自分と変わらないようなマネをする栗野に、思わず未佳の両目がジト目になる。

これで普段から『小学生みたいな』と注意されるのだから、個人的には少々複雑だ。


(なんだかんだで人のこと言えないじゃない・・・)

〔そういえば『日向あおい』って、漢字にすると『向日葵ひまわり』だったね〕

「うん。・・・だから日向さん、花のヒマワリ嫌いなんだって・・・。なんか見ると痒くなるらしいよ」

〔へぇー・・・。・・・・・・・・・・・・それって花粉症じゃないの?〕

「・・・・・・まあ、確かにねぇ~」

「何ブツブツ呟いてんっすか? 坂井さん」

「どわあぁぁぁああッ!! べっ、別に・・・! なんでもない!!」


未佳はそう身振り手振りをしながら言うと、その場に置いてあった自分のお冷を一気に飲み干し、テーブルへと突っ伏した。


(ハァ・・・。なるべくさとっちの前で喋らないようにしなきゃ・・・)


その後も店員は順番通りに、手神が注文したスクランブルエッグが乗せられたトマトソースロコモコ丼と、長谷川が注文したナポリタン入りロコモコ丼をテーブルに乗せていく。

出来立ての料理が5品ほど置かれたということもあり、喫煙室内には一気に、それぞれのロコモコ丼が放つ美味しそうな匂いに包まれた。


(これだけデパートリーにとんでても、あんまり変な感じの匂いはしないのね~。・・・さてっ。ここに私のビーフシチューが混ざったらどうなるんだか)

「すみません。ご注文中のアボカドビーフシチューなんですが」

「えっ?」


ふっと店員の切り出し方が丁寧過ぎたあまり、一瞬『品切れ』という言葉が過ったが、内容は『取り消し』ではなく『延長』についての話であった。


「ただ今お作りしておりますので、もうしばらくお待ちください」

「あっ、はい・・・」

「では、失礼します」


内心、その予感はしていた。


大体スープ系やら煮込み系やらのメニューは、こちらが予想している以上に調理に時間が掛かる。

普段からそう言ったメニューが取り分け大好きで、よく出掛けた先などで注文している未佳からしてみれば、それらはとっくに知り尽くしていることでもあるし。

同時に慣れていることでもあった。


「あら・・・。未佳さんのまだなの?」

「うん、ちょっと時間掛かるみたい・・・。みんな先食べちゃっていいよ? ほらっ、熱々なのが冷めちゃうから」


そう言うと未佳は、先に料理が運ばれてきた5人に両手のひらを差し、先に食べるよう勧める。

もちろん『先に食べて』と言われて即座に食べ始めるはずもなく、5人はしばし戸惑にも似たような苦笑を浮かべた。


「えっ・・・そう?」

「うん。・・・どうぞ? どうぞ? 冷めちゃうから」

「・・・・・・じゃあ・・・」

「お言葉に甘えて・・・」

「「「「「いただきまーす」」」」」

「はいはーい」


変に皆が遠慮せぬよう、あえて未佳は明るいテンションでそう言ってみたいのだが、やはりそれなりに気が進まないのか、5人は気持ち遅め。

もしくはスプーンの一すくいを少なめに、料理を食べ始めた。


そんな周りの様子に薄々感付きつつも、それを口にしたところで何の変化もないことは分かり切っていたので、特に未佳は何も言わず、右手で頬杖を付きながら扉を見つめる。

そういえばうっかり追加デザートを頼み損なったが、それは自分の料理がやってきた時に注文すればいい。

それに、そもそも自分の料理の量が分からないことには、デザートは注文できないのだ。


(まあ・・・。みんな料理の量見る限りだと余裕ね)

〔・・・来ないね。未佳さんの〕

(・・・仕方ないよ。時間掛かるメニューみたいだから)


先ほどから隣に座っている長谷川に会話を聞かれ掛かっていたので、未佳は昨日の大浴場同様、あえて口パクだけでの会話方法を行った。

これなら一応リオにも言葉は通じるし、今は料理の方にしか目を向けていない皆にも見つからない。


〔ねぇ、ねぇ。・・・このあとイベント本番なんだよね?〕

(一応ね? ただその前にメイクとか色々あるけど・・・。それに本番まではまだ時間もあるみたいだから)

〔・・・イベント見ててもいい?〕

(えっ?)


その言葉を聞いて、未佳は『はて?』と小首を傾げる。


確か3日前の大阪公演の時、リオはポスター手渡しの場にいたように思う。

いや、確かにいた。

ちょうどポスター手渡しの場の通路の辺りに、リオはずっと立っていたはずだ。

それはハッキリと覚えている。


しかしイベントのステージで歌っていた時は、特にこちらも探してはいなかったが、リオの姿はまったく見掛けていない。

そのことをふっと思い出して、未佳はリオがライヴステージだけを見ていないのだということに気が付いた。


(別にそんなのわざわざ聞かなくてもいいのに・・・。イベントライヴはどなた様も回覧OKなのよ?)

〔・・・それは知ってたけど。なんかすごい大音量だったみたいだから、ちょっと気が引いて・・・〕


『そういえば』と、未佳はリオがドラムやスピーカーなどから発せられる爆音がかなり苦手であったことを思い出す。

以前小屋木結衣のライブリハーサルを行おうとした時も、リオはその爆音を嫌がるがあまり、勝手に未佳のウォークマンで音楽を聴いていた。


だが一応爆音は嫌いでも音楽自体は好きであるらしく、今挙げたようにウォークマンの音楽はよく聴くし、メンバーの演奏なども特には嫌がらない。

さらに未佳のピアノに関しては、個人的には複雑な心境ではあるものの、リオからしてみたら子守唄のようであるらしく、気が付いたら普通に寝ていたりする。

それに、これは音楽とは関係のない話ではあるが、リオは時折こちらが呟いた言葉に対し、即座に反応するかのような場面もあった。


それらのことから察するに、おそらくリオは自分達。

あるいはそれ以上に、聴覚が優れているのだろう。

それが特別な存在であるからそこなのかまでは分からないが、リオがいつも嫌がる爆音は、いくつものメロディーがぐちゃぐちゃに入り混ざっているかのような状態。

つまりは不協和音と似ている時の音なのだ。

その証拠にリオが嫌いなドラムサウンドも、ウォークマンで聴く場合には何の問題もない。


(・・・まさかこの子・・・。『ドレミの歌』とか弾いたら音階分かるのかしら・・・)

〔? どうしたの?〕

(! ううん、別に)



コンッ コンッ



「! はーい」

「失礼しまーす。・・・お待たせしました~。こちらアボカドとビーフシチューのロコモコ丼になります」

「は~い。・・・~ッ!! 美味しそ~♪♪」


そっとテーブルに置かれた自分のロコモコ丼に、未佳は両手を合わせながら、音が鳴らぬよう小さく指先だけで拍手をする。

未佳の目の前に置かれたロコモコ丼は、楕円形に膨らんだハンバーグの上にたっぷりとビーフシチューが掛けられ、その上から少量の生クリーム&アボカドソースとパセリ。

さらにそのハンバーグの上には、目玉焼きの代わりに盛り付けられた半熟温玉。

そして三日月型に切られたメインのアボカドが4切れほど、温玉の隣に添えられるように盛り付けられていた。


ちなみに肝心のライスについては、今のところビーフシチューに埋もれてしまってまったく見えない。


「こちら容器が大変お熱くなっておりますので、食べる際には十分お気を付けください」

「あ、はーい」

「・・・こちらサラダになります。以上でご注文の品は全てお揃いでしょうか?」

「あっ、すみません。追加で」

「追加?!」


その未佳の発言に即座に反応した栗野が、聞き返すのと同時に未佳を睨み付ける。

しかし一方の未佳はというと、その栗野の表情とタイミングに、思わず皆で失笑してしまった。

関西人からしてみても、今のはナイスタイミングなツッコミであったと思う。

ふっとさり気なく店員を見てみれば、店員もわずかながら笑っていた。


「えっと・・・。食後に、キャラメルハニーパンケーキを一つ」

「はい。キャラメルハニーパンケーキがお一つ」

「はい。・・・・・・おいっ? さとっちはー??」


未佳の料理がやってきたことで気をよくしてか、今度は遠慮せずにランチにガッツク長谷川の脇腹を、未佳は軽く叩いて尋ねる。

本当はこのまま『以上です』と言ってしまってもよかったのだが、あえてそうしないのが、未佳のいいところだ。


長谷川に注文するよう知らせたものの、タイミング悪く口の中に料理が入っていて話せなかったらしく、長谷川は未佳が開いていたメニューの一点を数回、指で差しながら叩いた。


「はいはい・・・。ナッツ~・・・、チョコバナナパンケーキ? を一つ」

「はい。ナッツチョコバナナパンケーキがお一つ」

「みんなは~? 追加で他何かいる~??」

「いや、別に」

「大丈夫」

「・・・だけでいい? さとっち」


最後に未佳が確認で尋ねると、未だ話せない長谷川は1回だけ、コクリっと大きく頷いた。


「以上で」

「かしこまりました。・・・伝票失礼します。ごゆっくりどうぞ」


店員はそれだけ言うと、伝票を持って喫煙室をあとにした。


店員が出ていったあとで、未佳は改めて自分のロコモコ丼に視線を落とす。

先ほど店員が『容器が熱い』と言っていたことから想像するに、おそらくこのメニューは一度、オーブンか何かで容器ごと熱しているのだろう。

その証拠に未佳のロコモコ丼にだけ、他の皆とは異なり、木製の鍋式が敷かれていた。


「なんか・・・。坂井さんのだけすっごい美味しそうなんだけど」


思わず手神の口から本音が零れる。


「エヘヘ~♪ もうビーフシチューの匂いがスゴイ! 手で仰がなくても薫ってくるもん!!」

「おまけに容器アッツアツですもんね! アボカドもいい色してるわぁ~」

「ビーフシチューに合わせて温玉まで乗ってはるし・・・。みかっぺこの手の堪らへんやろ?」

「そりゃあ~も~う♪♪ ちょっと温玉どのタイミングで突っ突こうか迷うけど・・・。あっ! そうだ、写真撮っとこ♪」


『記念に』とデジカメをカバンから取り出し、未佳は構図の違う写真を3枚ほどパシャリと撮った。

そんな未佳の撮影風景を眺めていた日向はふっと、隣でロコモコ丼を食べる栗野に確認する。


「ここ撮影OKなの?」

「んっ。私昨日電話で聞いた。・・・というか・・・、未佳さん食べ物撮影するの好きだから、撮影できる店屋でないと入れないのよねぇ~」

「あぁ~、なるほどね」

「・・・よしっ。こんなもんかな? ・・・さ~ってと」

「肉もらい~!」

「ほえっ? ・・・へっ?!」


その長谷川の発言に、デジカメをカバンの中へ仕舞おうとしていた未佳は、ハッとロコモコ丼を確認する。

すると先ほどまで見える位置にあったはずのシチューのビーフが1切れ、器から無くなっていた。

しかもその辺りの生クリームソースが、途中から不自然な途切れ方をしている。

確実に何かがシチューに触れた証拠だ。


その変化にサッと視線を隣へと移してみると、既に長谷川は、盗んだ一口大ビーフを口いっぱいに頬張っているあとであった。

一応一度も口を付けていない箸で取ったようだが、気を利かしている利かしていないの問題ではない。


「あ゛ぁ゛~っ!! ちょっと~!! 私まだ食べてないのにぃ~・・・ッ!!」


『注文した人間よりも先に食べる人がいるか!!』と吠える未佳だったが、意外にも長谷川への罰は自然と訪れた。


「・・・ッ!! 熱っ! 熱っ!! この肉、熱ッ!!」

「えっ・・・ハハハハッ!! や~い。や~い。一気に入れるから火傷してやんの♪ ハハハ」

「ちょッ・・・、水! 水!! 熱ッ・・・!!」

「も~う! そんなん容器見たらすぐ分かることやん・・・。なんで一口で頬張るん? さとっち」

「・・・・・・・・・」


その後容器の熱が適度に下がるまで、未佳が食べる際に息を吹くようにしていたのは、言うまでもないことである。


『プリン』

(2007年 5月)


※関西の弁当屋『癒鈴ゆりん弁当』。


さとっち

(あっちゃ~・・・! もうこんな時間かぁー・・・。昼休み、そんなに時間残ってへんなぁ~(困) ・・・しゃあない! 今日は適当に作り置き弁当で我慢して、急いで事務所に戻ろ)


※店内に入り、作り置きされている弁当を物色するさとっち。


さとっち

(う~ん・・・(迷) のり弁でええかな? 他に手頃なのあらへんし・・・・・・。よし!)

「最後はプリンや♪ プリン♪♪(笑顔) ここのプリン買わずに帰るわけにはぃ・・・・・・な゛っ!!Σ(@□@;)」


※既に棚の上のプリンが売り切れ。


さとっち

(ぷっ、ぷっ、ぷっ・・・! プリンが売り切れとる!!(ショック!) 嘘やろ!?(絶叫))

「そ、そんな・・・・・・(__;)ガクッ(悲)」


※事務所 控え室前通路。


さとっち

(結局買うたのはのり弁と緑茶だけ・・・(しょぼ) プリン・・・。プリン楽しみやったのになぁ~・・・(哀))


ガチャッ!


さとっち

「ただいま~・・・」←(テンション↓↓)


みかっぺ・厘・手神

「「「お帰り~」」」


手神

「って・・・。なんか落ち込んでるね。どうしたの?」


さとっち

「いえ、ちょっと・・・。楽しみにしてたのがなかったんっすよ・・・(/_\)」


「さとっち、悲しそう。。。 ホンマに大丈夫?(心配)」


みかっぺ

「・・・・・・よし! じゃあそんなさとっちに、ちょっと元気が出るものあげるね♪(ガサゴソ)」


さとっち

「『元気が出るもの』・・・?」


みかっぺ

「そう!(ガサゴソ・・・) ジャ~ン!!(見)」


さとっち

「ん? ・・・・・・!! あ゛ぁっ!!Σ( ̄□ ̄;)」


※みかっぺのレジ袋から、癒鈴弁当のプリン登場。


さとっち

「なっ、なななななっ・・・、なんで?!(震)」


みかっぺ

「朝早くに栗野さんと行ったのよ。お昼買いに。ついでに私とみんなのデザートも買って・・・」


「ウチらの分のデザートも買うてくれたよ~?(^^)」


手神

「もっともこっちは杏仁豆腐だったけどね?(笑)」


みかっぺ

「感謝してよ~? そのプリン最後の2個だったん・・・あれ? さとっちも癒鈴弁当行ったの?」


さとっち

「よかったぁあああ~!!(感激) プリンあったぁあああ~っ!!(嬉涙)」


みかっぺ

「え゛っ・・・? どっ、どしたの? さとっち(/ー□ー ;)/」



この感動はさとっちにしか分からない!!(爆)



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