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103.手神の顔モノマネ

栗野からのリハーサルの呼び出しを受け、長谷川・厘・手神の3人は楽器調整のため、ステージの上に上がっていた。

ステージに上がってみると、意外にもこちらはまだファンを入れていないらしく、ステージ付近には自分達とスタッフの数名しかいない。

おそらく、開演時間までは『立ち入り禁止』か何かにしているのだろう。

その証拠に辛うじてステージが見える店屋や上の階の手摺り付近からは、時折誰かの強い視線を感じる。


「・・・・・・開始まで入れないんっすかね? 東京は・・・」


ふっと肩にアコースティックギターを掛けたままの長谷川が、隣でスピーカー配線の様子を見ていた手神に尋ねる。


「ん? あぁ・・・。そういえば姿見えないな。視線は感じるけど・・・。まあ、会場のやり方はその場それぞれだから」

「まあ・・・、そらそうっすけど」

「それにこんな会場なんだから・・・、仮にここにいなくても、リハーサル中の歌声や楽器演奏なんかは聞こえてくるよ」


手神はそう言った通り、こちらのステージがあるのは、3階建ての2階部分にあたる、海側スペース。

会場全体の規模としては、2階フロアのほぼ半分以上を占めている。


見た目の印象としては、こちらもやや吹きっ晒しに近いような環境で、特に観客席は『背中側に海・頭上には空』と言った具合の眺めだ。


ちなみに未佳達の立つステージ側は、ステージ頭上に設けられた屋根の関係上、観客席ほどの空の眺めは期待できない。

しかし逆にステージからは観客席、そしてその背後からは海が見渡せる位置になるので、こちらも眺め的には申し分ないような感じだろう。


そしてこれだけ吹きっ晒しにされている環境であるのなら、仮にこの場に居ずとも、未佳達の歌声や楽器演奏は辛うじて聞こえてくるに違いない。

手神はそう予想しているのだ。


「ところでさっきの曲の件、栗野さんに言ってきたんっすか?」

「うん、言ってきたよ。・・・なんかすご~い面倒臭そうな顔してたけどね? こんな・・・『え゛ぇ゛~?』」

「「ははは」」

「『え゛ぇ゛~?』・・・みたいな」

「「ハハハッ」」


ふっと手神がやり始めたその栗野の面倒臭そうな顔モノマネに、途中から話を聞いていた厘も混ざって、長谷川達は大爆笑。


ちなみにこの手神の言わんとしている表情自体は、これまでも何度か目撃したことのある、栗野特有の表情。

そのためその表情自体は、ここでこのようなモノマネをされなくとも、大体の想像は付く。


問題は、そのモノマネをし始めた際での、手神の顔だ。


「ハハハッ・・・。て、手神さん、それ・・・。サングラス掛けてたら別モンっすよ?! ハハハッ」

「え゛っ!? さっ・・・、さんぐらす??」

「うんっ・・・うんっ! 手神さん、その顔めっちゃおもろ~い♪ ハ、ハハハッ・・・!」

「こう? ・・・『え゛ぇ゛~?』」

「! ブッ・・・ハッハッハッ!! 手神さん、ソレ飲み会でやったらサイコーっすよ!?」

「そ、そう??」

「うん! もう、久々の大当たりギャグ!!」

「ハハハ! あ、あとでみかっぺにもっ・・・、それ見せたげて。キャッ・・・ハハハ」

「でも・・・。こぉ~れ栗野さんが見えたら・・・。めっちゃ激怒るやろなァ~」



バンッ!!



ふっと突然背後から聞こえてきたその物音に、3人の笑い声は一瞬にして静まり返った。

恐る恐る固まる体を何とか動かし、ゆっくりと自分達の背後を振り返る。

恐怖のあまり顔を上げることは出来なかったが、そこには案の定、紺地に白い裏地の服を着た女性が、堂々とその3人の背後に立っていた。

無論、その上着は昨日の今朝から、栗野が身に付けていたショートコートである。


(((ゲッ・・・!)))

「はいはい、皆さ~ん。・・・そこで一体、何の話をしてるんですかァ~?!」

「「「ッ!!」」」


次第に語尾がドスの利いたものに変わっていくその声に、3人はまるで弾かれたように上を見上げる。


するとそこには、右手に掴まれた紙の束をテーブルに打ち付けた体勢で固まっている栗野が、やや見下ろす形でこちらを睨み付けていた。

どうやら、先ほどの『バンッ!!』という音は、この紙の束をテーブルに打ち付けた際の音であったらしい。


さらにそんな栗野の背後には、おそらく『準備ができた』と判断し、栗野に呼び出されたのだろう。

少々困惑した様子の未佳が、どうすることもできずにその場に立ちすくんでいた。


もちろんこの場合、第三者である未佳に、長谷川や栗野達に対してしてやれることは何もない。

仮にできることとすれば、これ以上栗野の火に油を注がないこと。

そしてこの状況に、極力首を突っ込まないこと。


「楽器の方は・・・もういいんでしょうねぇ~?!」

「はっ・・・、ハイッ!」

「い・・・、一応準備は調ってます」

「いつでも・・・大丈夫・・・」

「ふ~ん・・・。じゃああとは合同でよろしく。・・・ハイ!!」

「うわっ・・・!」


去り際に持っていた紙の束を未佳に押し付けつつ、栗野はそそくさとステージをあとにしてしまった。

ただし起こってこの場から離れたというわけではなく、別の場所で用意している物販コーナーや、イベント後のポスター手渡し会場の現在状況を確かめに出向いただけである。


ふっと立ち去って行った栗野の後ろ姿を見つめつつ、未佳は未だ固まったままの3人に視線を移した。


「み、みんな~・・・。大丈夫?」

「えっ? あ、うん・・・」

「大丈夫っす・・・」

「何とか・・・」

「そ、そう? ・・・・・・ハァー・・・。みんな一体何やってたの?」

「いや・・・。実は手神さんがこっ・・・」

「こんなの」

「・・・フッ」


と言って再びやり始めた栗野の顔モノマネに、未佳も堪らず肩を震わせながら失笑する。

しかしその反面、その手神の表情を見て『確かにこれは怒るわけだ』と思った。


「ハハハ、なぁ~に? それぇ~!」

「栗野さんの面倒くさがった時の顔です」

「アッハハハ! する! する!! 栗野さんそういう顔する!!」

「でしょ?! するでしょ?!」

「でもその顔は違う。サングラス掛けてたら違っちゃうよ~。ハハハ」

「あっ・・・、やっぱり?」


『なら今度はサングラスを外してやろうか』と、これまでオフの日以外は決して外さなかったサングラスに、手神が手を掛けかけたその時。

ふっと長谷川が、このモノマネをした際の手神の顔を見て、やや関西人にしか伝わらないような例えを口にした。


「何やろ? ・・・浪速の厳ついオバチャンみたいな」

「え゛っ・・・?」

「アッハハハ!」

「そうそうそうそう! よく商店街とか~。道頓堀ら辺とか~」

「いる!! いる!! いる!!」

「え゛っ? ・・・『オジチャン』じゃなくて『オバチャン』なんですか?!」

「「「ハハハハハ」」」

「う~ん・・・・・・。そんなにオバサン顔でやってなぃ・・・ハッ!!」


そう一人で言い零しつつ、ふっと自分のキーボードのところへ戻ろうと向きを変えた、その瞬間。

再び視界に映った人物の姿に、手神は思わず後ろに倒れ込む。


さらに運が悪いことに、その手神の倒れ込んだ先には長谷川が立っており、手神はやや長谷川に背中から背負われるような体制で倒れてしまっていた。

当然、この一連の出来事で一番に被害を被ったのは、他でもない長谷川である。


「ウゲェ~ッ! なっ・・・、何するんっすか!! 手神さん! 重いっすよ~!!」

「はっ、長谷川くん! 前! 前!!」

「んぁ? ・・・・・・ア゛ッ!!」


一体いつの間に戻ってきていたのだろう。

長谷川が振り返った先には、つい先ほど出ていったはずの栗野が、再び恐ろしい形相で。

しかも今度は両腕を胸の辺りで組みながら、4人を見下ろしていた。


ちなみに栗野の身長はほぼ厘と互角くらいで、手神の身長にはまるで届かない。

しかしこの時は、手神が恐怖のあまり仰け反っていたこと。

そして厘がやや中腰体勢になっていたため、目線的には栗野の方が上になっていたのである。


「皆さ~ん? また同じことは聞きたくないんですけどねぇ~」

((((ゴクッ・・・))))

「く、栗野さん、ところでなんで・・・? さっき物販コーナー見に行ったんじゃ・・・」

「ええ。見に行きましたよ? そしたらミョ~に楽しそうな未佳さんの笑い声が聞こえてきたんで」

「あっ! ・・・・・・」


指摘されたと同時に口元を押さえ込んだ未佳だったが、時既に遅しだ。


「どぉ~うも先ほどから皆さんの様子を見ていると、ことの発端者は手神さんですか?」

「ギクッ・・・!」

「手神さん、先ほどからなぁ~にをして、皆さんの笑いを誘ってらっしゃるんですぅ~?」

「あっ、いや・・・! そのぉ~・・・」


そう栗野に問い詰められる度、手神の体は自然と後ろの方へ。

そして後ろに下がれば下がるほど、手神の下になっている長谷川に負担が圧し掛かった。


(てっ・・・、手神さん・・・。お、重い・・・!)

「そ、そんな大したことは~・・・」

「ふ~ん・・・。大したことじゃないんですか。ふ~ん」

((((・・・・・・・・・・・・))))

「だったらとっととリハーサルを開始してください!! 仮にもあなたはリーダーなんですから、ボヤボヤしてないで全員をまとめる!! ホラッ!」

「「「ひぃっ・・・!」」」

「あっ、はい! すみません!! すぐそうします!」


たとえ年下であったとしても、この般若顔の形相と声には恐れをなしたのか。

手神はまるで逃げるように、慌てるように、その場からキーボードの方へと走り出していった。

さらに残された長谷川と厘の二人も、栗野が再度こちらを睨み付けてくる前に移動する。


「あっ! ほっ、ほな僕もギターに・・・!」

「ウチ、キーボードやってくるわ!」

「・・・・・・・・・」

「・・・未佳さん?」

「うわぁあっ!! えーっと・・・、え~っと、え~っと・・・、あっ、がっ・・・、楽譜配って来まーす!」


ふっと先ほど栗野に手渡された紙束が楽譜であることに気付き、まるでそれを口実に逃げるよう、未佳もその場を離れた。

一方そんな4人の姿に、栗野が思わず重い溜息を吐いたのは、もはや言うまでもない話である。


「み、みんな~! ・・・その前にコレ。渡し忘れてた」

「ん? ・・・・・・あぁ~、入れ替え楽曲楽譜」

「えっ? もうプリントアウトしてもろたん?!」

「みたいよ? 仕事早いね♪ ハハッ」


そう軽く口にして笑いつつ、未佳は楽譜に書き込まれた音符や文字を確認し、それぞれの楽器担当者に楽譜を渡す。


「・・・じゃあ、はい。これ手神さん」

「あぁ~、ありがとう」

「これは小歩路さん」

「はいは~い」

「ラストさとっち!」

「はい、サンキュー!」

「で。歌詞メインは私、っと・・・」


ふっと最後に手元に残された楽譜を見つめ、未佳は『う~ん・・・』と、胸中で唸る。


未佳の持つ楽譜と、長谷川が持つ楽譜の二つには、歌詞の一部に『()』がいくつも付けられている。

実はこの『()』は、全て長谷川がコーラスとして歌わなければならない歌詞。

もしくは長谷川のみが担当する歌詞なのだ。


しかもその大半は、本来の本編歌詞カードには載せていない部分。

ある意味間違えてもごまかしは利くだろうが、一方でコーラスの歌詞は、演奏・披露をする時にしか確認できない、ということにもなる。


もちろん初めから、この曲はコーラスパートが多いことを熟知していた。

だからある程度の覚悟を決めた上で、この曲を演奏・披露するという話に決めたのだ。


しかしいざ改めて楽譜を見てみると、こちらが予想していた以上にコーラスが多く、おまけにキーが少し高かったりもする。

そんな楽譜の内容に、未佳は恐る恐る長谷川に尋ねた。


「・・・・・・改めて見るとコーラス多いね。・・・大丈夫?」

「ん? ・・・もうそんなん言ってられんっしょ~。決めてしもたんやから・・・。あっ・・・、でもリハは数回したいな・・・」

「・・・・・・分かった。じゃあ今日はお客さんも入れてないし、コレと新曲のリハだけやろう! 『flying』はやらなくても何とかなるよねぇ~?」

「うん。ウチは平気ー!」

「こっちも大丈夫。むしろみんなー・・・・・・入れ換えの方を集中してやりたいでしょ?」

「はーい」

「「イエース」」

「じゃあリハーサルはその2曲中心で・・・。せっかくだから入れ換え先にやるか」


その手神の指示により、リハーサルは急遽挿入した海楽曲と新曲の、合わせて2曲。

さらに曲全体のメロディーやイメージなども考え直し、イベントのセットリストは、新曲と海楽曲の順番を入れ換えての、披露となった。


『七夕』

(2002年7月)


※事務所 出入り口扉前。


みかっぺ

「わぁー♪♪ 飾り付けしたら本当に華やかになったねぇ~♪ 笹の枝」


「ホンマ。このちょっと萎れ始めて薄い茶緑になってる感じも・・・。なんか古風でええねぇ~」


みかっぺ

「ねぇ~(^▽^ )」


栗野

「じゃあ皆さん。そろそろ短冊飾りましょうか」


みかっぺ

「さんせーい!(挙手)」


手神

「それじゃあ、まず僕から・・・」


英雄夫婦の第一子が

無事生まれてくれますように・・・

                手神 広人


さとっち

「! そっかぁ・・・! もう来年の春なんっすもんね?! 予定期間・・・」


手神

「そう。ちょっと自分のことを書こうかどうしようか迷ったんだけど・・・。ここは二男として! 英雄(向こう)の奥さんを応援したいなと、思ってさ」


さとっち

「いい弟やないっすか~・・・! 手神さんっ!!(感動)」


「ほな、次ウチね?」


変動することなく

世の中が巡ってくれますように。。。

               小歩路 厘


さとっち

「な・・・、なんかテーマがデカイっすね(苦笑)」


「・・・ちょっと偽善っぽいかな?」


みかっぺ

「そんなことないよ(⌒▽)」


さとっち

「んじゃ、次僕・・・」


来年こそ!

ギターでモテますように・・・!!(祈)

              長谷川 智志


みかっぺ・厘・手神・栗野

「「「「なってるじゃない(ジト)」」」」


さとっち

「なってない!!(キッパリ)」


手神

「というかこれはー・・・。正月の抱負なんじゃないか?(苦笑)」


栗野

「織姫と彦星もドン引きな内容ね・・・(爆)」


みかっぺ

「もっと他にお願いすることないの~?!(呆) 手神さんみたいな暖かいのとか、小歩路さんみたいな深いやつとかさぁ~!!(苛)」


さとっち

「そう言う坂井さんは何を書いたんっすか?(ジト)」


みかっぺ

「私はコレよ! コレ!!(指差)」


いい加減私の周りの人達が

私の誕生日を覚えてくれますように♪


              みかっぺ★

厘・手神・栗野

「「「( ̄□ ̄;)( ̄□ ̄;)( ̄□ ̄;)(茫然・・・)」」」


みかっぺ

「分かってる?! 私の誕生日、未だにファンの人達しか把握してくれてないのよ!?(怒)」←(7月7日生まれ)


さとっち

「知るかッ!!(爆)」



というか・・・!

レベル的にどっちも内容変わらんわ!!(爆)


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