99.車窓の外から見えたもの
窓開けによる事故から約2分後。
ようやく言いようのない痛みがまともになってきたのか。
長谷川は未だ右手で腹部を押さえつつも、ゆっくりとした動きで座席へと座り込んだ。
その一部始終を何となく気配で察した未佳が、カメラを構えたまま首だけを右に向けて尋ねる。
「・・・大丈夫?」
「な、何とか・・・・・・。めっちゃ・・・ソコんところで『ドスッ!』ってきたけど・・・」
「歌える? コーラスパート・・・」
「ん? ・・・いや、そこまで深刻やないがな」
「そう? ならいいけど・・・」
正直今一番に心配だったのはそこだ。
せっかく昨日から遥々東京へやってきたというのに、ここでこんな窓開け程度で負傷し、ステージではコーラス無しでの楽曲披露など、もはやノリ下がりどころの話ではない。
逆にイベントでもなんでもない日に負傷したのであれば、それは途中で医務室に放り込むなり、悪ければ自宅早退させるなり、なんでもできる。
しかしそれが地元ではない地方ともなると、色々とややこしいことになるのだ。
とりあえず目立ったほどの重傷ではない様子の長谷川を横目で確認し、未佳は再び海辺写真の画像撮りに没頭する。
意外と車窓から望める絶景ポイントはかなりの長さがあり、こんな出来事がありつつも、窓の向こうには未だ美しい海景色が続いていた。
「結構・・・スポット時間が長いですね」
「はい。この後会場近くの駐車場に曲がるまで、景色は続いております」
「あっ、そうなん!?」
「私、てっきり絶景ポイントは一瞬だけのものなのかと・・・」
「いえいえ。そこそこの回覧時間はありますよ? 一瞬なのは、先ほどの海が『チラッ』となってるところら辺だけですから」
「「ふ~ん・・・」」
「あっ! 鳥!」
ふっとカメラの画面に写り込んだ白い鳥を見て、未佳は即座にピントを合わせ、再びシャッターを切る。
その白い鳥は、まるで未佳達の乗っているバスの速度に合わせるかのごとく、実にゆっくりとしたスピードで。
しかも未佳達のバスと同じ方向に飛行していた。
その翼の形や白と黒の色合いから察するに、どうも海鳥であるらしい。
ちなみにそこまで生物に詳しくない未佳は『海鳥』と聞いてもたった1種類しか思い浮かばず。
この時もひたすらカメラで撮りながら、その唯一知っている海鳥の名前を連発していた。
「カモメ♪ カモメ♪ あっ、ねぇ! ねぇ! 見て見て!! この子バスに合わせて飛んでるよ~?!」
「ニャ~ァ。ニャ~」
「あっ、鳴いた」
「・・・え゛っ? 『カモメ』ってんな鳴き声やったか?」
「『ニャ~』言うてる・・・。『ニャ~ァ ニャ~』やて。ハハッ。カワイイ~♪♪」
ちなみにバスを運転していた運転手には、この鳥が一体何という種類の海鳥なのか判明していたのだが、こちらは未佳が言っている『カモメ』ではなく。
カモメに近い仲間とされる『ウミネコ』という種類の鳥だ。
このウミネコは、豊洲の海辺では極当たり前に見られる存在で、地元の人間にとってはかなり馴染み深い。
そのため運転手も即座にウミネコであると察したのだが、ここで妙に未佳に恥をかかせるわけにもいかず、仕方なく黙っていた次第である。
そんな運転手の思いなど露知らず、一人無我夢中になってカメラのシャッターを切り続ける未佳。
するとここで、再び何かがカメラの下側に写り込んだ。
「あっ・・・・・・。ん?」
「うん? ・・・どないしたん? みかっぺ」
「カモメの羽でも取れたんか?」
「なんだよ。『カモメの羽取れた』って・・・」
「いや『抜けたのかな?』って、一瞬・・・」
「いや、その・・・。羽じゃないんだけど・・・・・・。ほら、この下の方に写ってるの・・・」
「「「ん~?」」」
そう言って未佳が見せてきた画像写真を見てみれば、確かに画面の下側中央に、何かが激しくピンボケになった状態で写り込んでいた。
そのボヤけた姿や形、体勢などから察するに、どうやら歩道を歩いていた二人組の通行人。
それも、これから自分達が向かおうとしている方向に向かって、寒空の中を歩いている最中だったようだ。
しかし、未佳が注目したのはその歩いている二人組ではなく。
その二人組が着ていたTシャツのカラーである。
「ねぇ、この色・・・。一昨年の私達のグッズTじゃない」
「えっ? あの淡いライムグリーンのか?」
「でもまだイベントまで7時間近くあるよ? さすがにそれは偶然なんじゃ・・・」
「だって・・・。こんな季節なのに上にTシャツよ? それにただでさえ珍しい感じの色なのに、それをこんな場所でペアルックにしてる人なんている~?? フツー・・・」
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
そう聞き返されると確かにそうとしか思えなくなり、3人は同時に口を閉ざす。
さらに未佳は、長年のイベントやライヴ経験から、こんなファンの特徴も示唆し始めた。
「それにほら・・・。最初っからグッズTシャツ着こむのって・・・、関東組の“ド定番傾向”じゃない」
「あっ、確かに!」
「そう言われてみれば・・・」
実は関東のファンと関西のファンとでは、ライヴやイベントなどでの参戦態度に、微妙ながらも違いがある。
一般的に地元でもある関西のファン。
通称『関西組』は、基本的にライヴやイベントが始まるまでは、あくまでも私服。
特にグッズTシャツを着込んでいたり、グッズを見える箇所などに飾り付けている人間は少ない。
仮に付けていたとしても、それは極少数な小物のみだ。
一方、地方の関東ファンでもある『関西組』は、イベントやライヴが始まる前。
むしろ朝早くから会場へとやってきたその時点で、既にグッズTを着込んでしまっている人がかなり多い。
もちろん、ツアー初日などでグッズTが手元にない場合などもあるが、その場合は過去のグッズTを着込むなどして代用。
さらにその他グッズの小物なのでも、関東組は最初かできるかぎり身に付けていることが多く、会場近くなどでは非常によく目立つ。
また小物を身に付ける人の中には、各イベント・ライヴグッズを一つずつ身に付けるなどして、自分が今までどの公演に出向いたことがあるのか。
ファン歴がどのくらいあるのかなど、周りの人間に見せつけている人も多い。
つまりは自己主張が激しいのだ。
『では関西組は自己主張をしないのか』と言うと、別にそう言うわけではなく。
関西組は公演が始まる直前などに、その公演に相応しいグッズT。
さらにはステージで盛り上がるための小道具などを用意し始めるのが、関西組の流れであることが多い。
さらに小道具などについては、関西組の場合自分なりにカスタマイズや改造を行うファンも多く、時折その改造型に未佳達が驚かされたこともある。
またグッズ購入時の金額などに関しても、関西組は買い占めを行う率も、グッズを購入する際の指定金額も非常に高い。
特に自己主張等で争っているわけではないのだろうが、こうした両地方での微妙な違いが、関西組と関東組との間では見られるのである。
ではここで改めて先ほどのカメラの件に戻るが、あの映像からでは、その他ライヴやイベント等で購入したグッズを身に付けているのかは分からない。
だがあのTシャツの色合いや微かに見えるプリントカラー。
そして何より、こんな地方ではない東京の一角で、一度に二人もの人間がそのTシャツをペアルックにしていたことを考えると、十中八九関東組のファンだろう。
さらに『一昨年のライヴTシャツ』ということを踏まえて考えると、少なくともファン歴は2年。
ある程度のライヴ経験は積んでいると、考えてしまった方が良さそうだ。
「普通に歩いてるんっすね。ここ・・・」
「まぁ~・・・。会場への最短ルートですからねぇ~。それに皆さん、スマホでながら歩き、してらっしゃるでしょ?」
「ん? あぁ~。地図アプリっすね?」
「まあ・・・。一口に『関東』と言っても、東京と豊洲とでもだいぶ違いますからねぇー・・・。僕だってアプリを使うか・・・、あるいは前日とかにネットで地図を調べるかな?」
「そうねぇ~・・・。とりあえず未佳さん、窓閉めちゃってください」
「えっ?! なんで??」
その栗野の言葉に、未佳はやや驚きながら反論する。
「私まだ写真撮りたいのに・・・!」
「もう十分撮ったでしょ?! それにこのままだと、ファンの方々の目に付きやすくなりますから・・・!!」
「ついでにやっぱり寒いし・・・」
「そうそう。そういうことですから、早めに閉めちゃってください。ほら! 早く!!」
「ちぇ~・・・ッ! さとっちのアホっ!!」
「・・・・・・えっ? な、なんで僕一人だけ怒られた?? ねぇ??」
そんなこちらの反応に戸惑う長谷川を尻目に、未佳は渋々窓を閉めようと、ガラス戸を左方向へと引っ張り出す。
今度は留め具を指で押している必要がないので、先ほどよりは難なく閉められる。
はずだった。
「あれっ・・・? なんか閉まんないんだけど・・・??」
「えぇ~っ?!」
「また変なところに余計な力加わってるんやないっすか?」
「う~ん・・・・・・。よし!」
「ん?」
ふっと何かを決め込んだかのように作業の手を止める未佳に、長谷川は『えっ?』という表情を浮かべる。
『まさか作業を完全に放棄したのか?』とも思ったのだが、どうやらそういうわけではなく。
未佳は何か考えがあるかのごとく、何故かある一点を見つめながら立ち尽くし始めた。
しかも、その見つめる一点に向かって、満面の笑みを浮かべながら。
「な・・・、何っすか? その表情・・・」
「フフ~ン♪」
「・・・・・・・・・まさか・・・僕に『閉めろ』言うてる違いますよね?」
「フッフフ~ン♪♪」
ややジト目のまま聞き返す長谷川だったのだが、未佳は相変わらず鼻歌で返すのみ。
しかしその鼻歌のメロディーは、長谷川には『もっちろ~ん♪』と言っているようにしか聞こえなかった。
「・・・・・・ハァー・・・」
「お願いしまーす♪」
「やっぱりか!! 溜息吐いてみたらやっぱりかいな!」
「だって重いんだもん。戸が・・・」
そう言ってさぞ『当然』と言いたげな態度を示しながら、未佳はわざと窓から離れる。
もちろんこれは、長谷川に窓を閉めてもらうためのスペースを確保するためだ。
そんな未佳の行動に、長谷川は何故か断れない自分に嫌気が差しつつ、仕方なく再び座席から立ち上がる。
「ったく・・・。結局はこうなるんやから、も~う・・・」
「ほら、早く♪ 早く~♪♪ ・・・って・・・、さとっち、ちょっと待って!!」
「あ゛っ?」
ふっと閉めようとした矢先いきなりそれを止め出す未佳に、長谷川は完全にムッとした表情を未佳に対して向ける。
一方肝心な未佳はと言うと、何故か再び窓の外を。
ただし今度は正面ではなく、車内から向かって左側方向を凝視していた。
そしてその未佳の見つめる先には、まるで海の上に浮いているかのようにそびえ立つ、丸いドームのような建物。
「ねぇ・・・? もしかしてあの建物・・・」
「は~い。これから皆様がイベントを行う『フェアリーホール TOYOSU』でございます」
「あっ・・・。アレがそうなんっすか?!」
「もう目の前やん!」
「しかも『四方』ならぬ『三方』が海に囲まれてる・・・」
「は~い。まるで海の上に建っているかのようでしょ~う?」
「うん。むしろ橋一つで繋がってるみたいな・・・」
ちなみに三方が海に囲まれているのは、ちょうど近くにあった孤島を橋でつないだからではない。
元々海に面していた一部を埋め立てて建てられたのだ。
この豊洲一帯は、全体の約半分以上が海の埋立地。
そのため常に海辺での災害に備えた造りが求められている場所なのである。
「でも海を埋め立ててドームみたいなの作るって・・・。なんか僕的には沈みそうな気がするんですけど・・・」
「いや、さとっち。そもそも浮いてないから・・・。あれ・・・」
「あそこ地下とかもあるんですか?」
「はい~。地下の方には駐車場が・・・。1階はファッションなどのショッピングモール。2階はイベント会場。3階と各階の数箇所にはレストランもございます。この辺では、一番のショッピングモールなんですよ~?」
「「「「へぇー・・・」」」」
何だかそれを聞くとレストランにも立ち寄りたい気にもなったのだが、さすがにそれは難しい試みだろうか。
とりあえず一度栗野には交渉してみようと、未佳は密かに思った。
「って・・・! ほら、未佳さん!! 長谷川さん!! 早く窓を・・・!」
「えぇ~っ?! だってもう目の前じゃなーい! 今更遅いよ~」
「『遅い』って、二人とも・・・!!」
「いや、僕まだ何も・・・」
「このまま開けてっちゃおうよ♪」
「えぇーっ!?」
「あっ・・・。みかっぺ、前方!」
「前方?」
『一体何のことだ?』と思いつつ、とりあえず厘が言っていた前方に視線を向けてみれば、そこにはざっと7~8人はいるだろうか。
大勢のグッズTシャツを着込んだ常連のファン達が、堂々と会場へと続く歩道を闊歩していた。
しかもよくよくその中を見てみれば、約3人ほど大阪イベントで見かけた顔の者までいる。
当然最初からグッズTを着込んでいたので、そこにいるのは紛れも無く『関東組』だ。
それもこともあろうに、毎度出待ちエリアで見かける顔触れの。
「あっ、出た!!」
「入り・出待ち常連! ベテラン軍団!!」
「エェッ!? っ・・・も~う・・・! こんな時に一番厄介な集団が・・・」
「でも今日はいつもよりも遅いね~・・・。入り待ちやんないのかな?」
「そんなこと未佳さんにはどうでもいぃ」
「あっ、そうだ! さとっち~♪ ちょっと自分のとこの窓も開けて~♪」
「え゛っ?」
「ちょっと・・・!」
必死で未佳の存在を隠そうとしている栗野のことなど露知らず、未佳は長谷川の方の車窓も開けるように頼み出す。
さらに未佳の行動はそれだけに留まらず、その長谷川の後ろに座っていた厘や手神にも、すぐに窓を開けるように催促する。
当然、何を考えているのかまったく読めない長谷川と手神は、窓の留め具に手を添えつつ、身を乗り出す。
「えっ? ・・・どゆこと??」
「坂井さん・・・、何する気?」
「だからっ。あの常連組を脅かそうよ♪♪」
「『脅かす』~?! どうやって・・・?」
「みんなが窓から顔だけ出して、一人ずつイベントの宣伝を言うの♪ たとえば私からのスタートで『新曲リリース記念イベント~!』って言ったらー・・・」
「僕が会場名言うて、小歩路さんが時間。手神さんが宣伝、・・・みたいな??」
「そうそうそうそうそうそう♪ ねっ? なんか良くない??」
「良いわけないでしょう!?」
まるで当然のことのように、栗野が間髪を空けずにそれを言い止める。
「そんな『顔出す』だなんて・・・。一体何のためにサングラスやら何やらやって・・・」
「でも宣伝よ? 私が普段ステージで『物販で♪』って言ってるのと変わんないじゃない・・・」
「あの人達はわざわざ言わなくてもやってくるでしょう?!」
確かにこんな時間からイベント会場へ向っているのだから、この集団がイベントへやってくるのはほぼ確実。
むしろイベントの宣伝を行うのであれば、グッズTシャツを着ていない。
もしくは、会場とはまったく違う方向に向かって歩いている人間に対してのみ、行うべきことである。
だからこれはあくまでも、未佳のちょっとした遊び心の行為に過ぎないのだ。
「まあまあまあ・・・。何もそんなイベント前に言い合いにならなくても・・・」
「だって、日向さん・・・!」
「どうせもうソコなんでしょ? 別にこんな場所で顔を見られても、何にもやってはこないんじゃない? どうせ数時間後にはイベントなんだから・・・」
「それは・・・! ・・・・・・・・・そうだけど・・・」
「ねぇ~、ダメ? 栗野さん・・・」
最後に事務所の女性陣お得意のおねだりまで始まり、とうとう栗野は『あまり大きなことはしないように』という条件付きで、それを渋々了承。
あくまでも少しは名の知れたアーティストであるのだから、多少たりとも警戒心だけは持っていてほしい。
一方相変わらず栗野の思いには気付かぬままの未佳は、栗野からの了承が得られたと同時に、早速宣伝ドッキリの担当振り分けと手順を決め始める。
ちなみに未だ『やる』の一言すら言っていない長谷川達に関しては、半ば強制参加だ。
「じゃあ、集団を追い抜いた辺りで、みんなで窓から顔出してー・・・。私がイベント名。さとっちが会場名。小歩路さんが開始時間。手神さんが最後の挨拶。っていう流れでどう?」
「『どう?』って、言われても・・・」
「他の人が担当のことやってる間も、僕らは顔出したままなの?」
「そっ♪ ずっと手を振ってる感じ・・・。ねぇねぇ。やろうよ♪ やろうよ♪♪」
「う~ん・・・」
「こういう時は何言っても引かんからなぁ~・・・・・・。ところで妙に僕の位置寒いんやけど??」
そう思いふっと背後を振り返ってみれば、こともあろうにあの厘が、既に窓を全開に開けてしまっていた。
ただしこちらは車内が見られぬよう、カーテンを閉め切った状態である。
「さっ・・・! 小歩路さん、もう開けとったんっすか!?」
「へっ? ・・・だって時間言うだけやもん。ウチ他の人より話さない役やから。ほなら別にえぇかなぁ~って・・・」
「そ、そういう理由??」
「小歩路さんありがと~♪ ほら、みんな早く! 早く!!」
そうやって急かされるまま断ることもできず、残っていた長谷川と手神も渋々、窓を開放した。
車内の気温が一気に下がり、窓からは潮風の香りが吹き込んでくる。
「やっぱり寒っ・・・!」
「ほら! もうすぐ追い越すよ? みんな準備して~!」
まるで隠れるように身を屈めながら、未佳は集団を追い抜くタイミングを見計らう。
改めて近くになった集団を見てみると、人数は8人。
しかも全員顔なじみの人間であった。
さらにその手に『みかっぺ★ダイスキ!!』と書かれたプレートを持っているということは、このあとで出待ちを行うつもりらしい。
「あんなん常に持ち歩いてるんやねぇ~」
「ってか・・・。デザインがニューバージョンになった気がするの、僕だけっすか?」
「いや・・・。僕もなんか多くなった気が・・・」
「ですよ、ねぇ?」
「・・・・・・よ~し。・・・今だ!!」
ちょっとバスが追い抜くか、追い抜かないかのギリギリなところで、未佳達4人は一斉に顔を窓から出す。
そしてこれまたほぼ同時に、4人はややバスの後ろ辺りを歩いていた集団に手を振ってみる。
すると窓から顔を出しただけでは気付かなかったファンの数名が、その手振りにチラッと視線を向け。
そして興奮のあまりの大声を上げた。
〈あっ! みかっぺ~!!〉
〈エッ!?〉
〈アレさとっちじゃない?! さとっち~!!〉
〈!! マジだ! ってかみんないる!!〉
〈ウッソ・・・!〉
〈小歩路様ーッ!!〉
〈手神さ~んっ!!〉
〈お~い!! お~い!!〉
未佳達に気が付くや否や、常連集団は未佳達に対して手を振りつつ、当然のことながらやや小走りでバスを追い掛ける。
そんな常連集団に対し、未佳達4人は手順通り、あのイベント宣伝を窓から叫んだ。
「ニューシングル! リリース記念イベントー!!」
「め、目の前の『フェアリーホール TOYOSU』でッ!!」
「夜7時から開始~!」
「皆さん遊びにいらしてくださいね~!」
「「「「バイバーイ♪♪」」」」
〈〈〈〈はーい!!〉〉〉〉
〈〈〈〈絶対に行くよ~!!〉〉〉〉
するとここで、ふっと常連の中にいた一人の女性が、ふっと小首を傾げる。
〈あれ? ・・・・・・夜7時だっけ??〉
〈〈〈〈〈〈〈〈イエ~イ・・・・・・・・・7時?〉〉〉〉〉〉〉〉
「「「7時??」」」
「? ?? ・・・・・・・・・あっ、違う! 開演5時やぁっ!!」
ドテッ!!
ズルッ!!
ズベッ!!
バンッ!!
「さ、小歩路さ~ん!!」
「なんで時間を・・・!」
「ハハハ・・・。『1』見てなかったわ・・・」
ちなみにこの時手元にあったイベント予定帳には『開演 5:00』ではなく『開演 17:00』と書かれていた。
『二度寝』
(2006年 6月)
※さとっちの自宅。
ピピピピッ ピピピピッ
さとっち
「ん? ・・・ん~・・・! 毎回恒例の8時目覚まし!(自棄)」
バンッ!(止)
さとっち
「・・・・・・って、今日は仕事休みやないか(orz) しかも夜のサッカーまでやることないし・・・(爆)」
※現在 TIME8:01
さとっち
「よ~しっ! もう一回寝よ・・・(爆) 昨日深夜作業で疲れたし・・・zzz」
※結局二度寝するさとっち。
プルルル・・・ プルルル・・・
さとっち
「zzz・・・・・・んぁ? ・・・なんや? 電話か?」
※とりあえず電話に出てみるさとっち。
さとっち
「は~い? ・・・もしもし?」
手神
『もしもし~? 長谷川くん、起きてる~?』
さとっち
「あれ? ・・・手神さん? どうしたんっすか? こんな日に・・・。ってか、今何時?(振向)」
※TIME 9:18
さとっち
(って・・・。まだ二度寝してから1時間ちょっとしか経ってないし・・・(ーー゛))
手神
『いや、実は・・・。今日の集合時間変更の話なんだけど』
さとっち
「あっ、はいはい。集合時間の変・・・・・・ちょっと待ってや・・・。『変更』って『明日』のことっすよね?」
手神
『えっ? 違うよぉ~、長谷川く~ん(苦笑) 今日は前から「楽曲制作がある」って、言ってたじゃないか~』
さとっち
「えっ?! でも今日は・・・」
手神
『休みは昨日だろ~?(笑)』
さとっち
「・・・・・・・・・て、手神さん、すみません(シドロモドロ) 今日って・・・9日っすよね?」
手神
『いや、10日だけど?』
さとっち
「・・・・・・・・・」
手神
『・・・は、長谷川くん? もしもし、大丈ぅ』
さとっち
「おっ・・・! 俺の休日があ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!(絶叫) サッカーがア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ!!(号泣)」
未「どうしたの?(ーー゛)」
手「いや、なんかその・・・(汗) 長谷川くんが絶叫しながら泣き出して(困惑)」
しかし・・・。
まさか某チャリティーテレビを見続けるよりも難しいことを・・・(爆)
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『180回目の朝明けに・・・』100話突入記念!
ちょいダラダラ・・・の(苦笑)
☆作者インタビューコーナー☆
歌音黒:
どうも~☆
『180回目の朝明けに・・・』作者の歌音黒で~すv(^^)v
リオ:
・・・はい!
そしてインタビュー役は僕。
『180回目の朝明けに・・・』にて、坂井未佳に憑く謎の少年こと。。。
リオが、お送りいたします。
よろしくお願い致します(_ _)
ということで・・・(チラッ)
歌音黒:
・・・・・・なんか大人っぽくなったね。
私が書いてるのより・・・(苦笑)
リオ:
まああれからだいぶ経ったからね?(冷静)
この話から・・・。
歌音黒:
そうだよね。
ここにいるリオは、私が書いてる物語から数・・・・・・年?
数か月??(聞返)
リオ:
いや、言わない方がいいと思うけど?(苦笑)
歌音黒:
(笑)
経ってるんだもんね?
この小説は、ここにいるリオからしてみたら過去の出来事で・・・。
今私のところにいるリオは、展開全部知ってるんだもんね?(笑)
リオ:
まあ・・・。
(過去の)思い出だから・・・(orz)
でも僕がこんなインタビュアーでいいの?(確認)
もっと適任いなかった??(爆)
歌音黒:
いや、だって・・・(ーー;)
あんまりここで他の人が出てくると、展開バレそうなんだもん。。。(orz)
それにリオは後書きコントに出ることのない存在だから・・・このくらいいいんじゃない?
リオ:
そう?
・・・まあ別にいいんならいいんだけどさ。
んじゃ早速・・・でもないけどインタビューへ(苦笑)
歌音黒:
(苦笑)
リオ:
何度か感想コメントでも書いたとは思うんだけど・・・。
この小説を書こうと思ったキッカケは?
歌音黒:
単純に・・・・・・。
コナン以外の小説を書こうと思ったのがキッカケ。
初めてこのサイトで小説書き始めたのがー・・・(考)
たぶん中2とかだったと思うんだけど。。。
その頃からずっとコナンの連載小説とか短編しか書いてなくて。
それである時父親に『なんか長いこと作家サイトやってるみたいだけど、二次元以外の小説は書かないの?』って言われて、そこから『んじゃ、書いてみるか』ってなったのが始まり。。。
最初は・・・あんまり二次元から離れる感じしなくって。。。
むしろちょっとボーダーラインみたいな(苦笑)
リオ:
(苦笑)
歌音黒:
でも今は坂井未佳にしろ、長谷川智志にしろ。
みんなオリジナリティーになってきたような気がする。。。
二次元的なのからはどんどん放れていけたような気が、自分の中ではする。
リオ:
なるほど・・・。
ところでなんでこんなストーリーに?
歌音黒:
・・・・・・あんまりソコ詳しくは・・・(汗)
リオ:
んじゃ『未佳さんが自殺する』っていう部分において。
歌音黒:
う~ん・・・(考)
そこよりもまず第一に『その当時の流行小説がどんな傾向だったかな?』っていうのを考えて、ストーリーを考えた。
リオ:
・・・この当時って?
歌音黒:
どちらかというとサスペンス&ミステリーみたいな。
リオ:
確かに自殺理由とか・・・。
まだここじゃあ当然出てきてないけど、その辺りも謎だったもんね。
歌音黒:
そう・・・。
だから『ミステリアスでサスペンスな方が取っ付きやすいからー・・・』って考えながら、高校の近くにあった田舎の畑道を歩いてて・・・。
リオ:
は、はたけみち・・・?(笑)
歌音黒:
そこで、これ(ストーリー)が思い浮かんだ。
リオ:
ちょっと待って・・・!
ってことは、何?
『朝明け』はド田舎の畑道から生まれたの?!(爆)
歌音黒:
(爆笑)
もちろん本編には一切関係ないよ?(笑)
リオ:
当たり前だよ!!(爆)
歌音黒:
(笑)
でもそこで。
とりあえず始まりから・・・『どうしても話の中に入れたい!!』っていう重要な場面の大半は、既に出来上がってた。
リオ:
頭からお尻まで??
歌音黒:
そう・・・。
ツルッと・・・(笑)
リオ:
うん・・・。
わざとソレわせる機会設けたんだけど(爆)
歌音黒:
酷っ!(ショック)
リオ:
(笑)
全体のストーリーが思い付いたのは、大体どれくらい?
歌音黒:
・・・3・・・日くらい?
リオ:
えっ?!(驚)
そんなハイスピード?!
歌音黒:
でもキャラクターの名前っ・・・!
特に『小歩路厘』は、いい名前が思い付くまで2週間も掛かった!!(暴露)
リオ:
そんなに?!(驚)
なんでそんなに大変だったの??
歌音黒:
いや、とりあえず名前考える時に。。。
『豆の名前』と『数字表記』で考えて。
『厘(数字表記)』はすぐに決まったんだけど、豆の方が中々いい音のがなくて・・・。
それで、そのことが真夜中まで気になって眠れなかったこともあるの・・・(爆)
リオ:
(苦笑)
それで結局『小歩路』は何から持ってきたの?
歌音黒:
あれ、小豆の品種名なのよ(爆)
そこに、自分でいい感じの漢字を当てて・・・。
リオ:
とうとう品種になっちゃったんだ・・・(爆)
名前のやつ。。。
歌音黒:
(失笑)
リオ:
んじゃあここで話の内容を変えて・・・。
ここがたぶん今日一番重要な内容だったんだと思うんだけど(爆)
歌音黒:
(笑)
リオ:
今回のお話で。。。
『180回目の朝明けに・・・』が、連載100話目に突入しましたーっ!!
リオ&歌音黒:
イエーイ!!(拍手!!)
リオ:
100話だよ?!
100話!!(大興奮)
歌音黒:
ちょっと最初の1話が『0話』だから『「99話」で「100話目」』っていう中途半端さはあるけどね。
私自分の小説で100話は初めて。。。(嬉)
リオ:
えっ?!(驚)
そうなの?!(聞返)
コナンでも?
歌音黒:
たぶんコナンも80話代止まりだったと思う。
リオ:
じゃあもう本当に記念すべきだね。
歌音黒:
でも180日中16日しか終わってないの。
リオ:
うん・・・、マズイね(爆)
歌音黒:
(爆)
だよね!?(笑)
『いつ完結するの?!』みたいな・・・(苦笑)
もう小説が100話目達成したっていう自覚もなかったけど・・・。
日にちがこんなにノロノロしてたっていう自覚もなかった・・・(orz)
リオ:
まあ1日に29話も使ってる、なんていうのもあったからね(爆)
歌音黒:
そう!(同感)
私この間ここの作家知り合いの・・・誰とは言わないけどね?!(爆)
リオ:
(笑)
その人とプライベートで会って食事してた時に
『これ・・・。単純計算すると、完結50年後だよ?』
って言われてさぁ~!!(orz)
リオ:
(爆笑)
歌音黒:
『そんなワケ』って思ったんだけど・・・!
改めて考えてみたらそうなってもおかしくないっていうか・・・!(爆)
リオ:
・・・50年後・・・。
おたく何歳??(笑)
歌音黒:
(笑)
少なくとも大好きな『7』が先頭に来る・・・。
リオ:
それ元にした方々生きてるかどうかも危ういよねぇ?!(爆)
歌音黒:
(笑)
リオ:
むしろ小説の人達も、平均寿命になっちゃうよ?!(笑)
手神さんなんて90のお爺ちゃんじゃん!!(爆)
歌音黒:
(苦笑)
まあそこまでは続かないよ。
せいぜいあと4年くらいで完結させたい。
・・・話長引いてもね?
リオ:
あっそ・・・(ーー゛)
ところでこちらの小説・・・連載を開始したのが2011年の5月5日!
まさに『「こどもの日」に投稿』っと言った感じだけど・・・。
歌音黒:
もう2年も前なんだね!!w(°0° )wワオッ!
リオ:
そうなんだよね。。。
どう?
ちょっとさっき『100話の自覚ない』とか言ってたけど・・・。
歌音黒:
でも書いてる間は『色々あったなぁ~』って思う・・・。
現実の方と、小説の方とで。。。
もちろんガネ(※GARNET CROW)にどっぷりハマってたのもあるけど(苦笑)
あの関東大震災とか・・・。
リオ:
計画停電とか親戚絡みで、1回(書くの)止めたもんね?
歌音黒:
んま大したことなかったんだけどね?
結局・・・(苦笑)
あと高校卒業とか・・・。
『なろう』の二次元小説が全面禁止になったこととか・・・。
専門学校の入学と、大学編入。
でも一番大きかった出来事と言ったらー・・・・・・。
リオ:
解散?
歌音黒:
だね・・・。
あの時本気で・・・・・・目の前から生きる気力すら消え去ったというか。。。
リオ:
いや、それは言い過ぎでしょ?(苦笑)
歌音黒:
今は流石にないよ?!(言聞)
もうそこまでは思ってない!!(否定)
・・・・・・・・・でも4月の2、3週間くらいは、ずっとそんな感じ。。。
正直・・・小説もこのまま凍結にしようかなって。。。
リオ:
それがなんで再開しようと?
歌音黒:
やっぱり読んでくれる人は少数ながらもいるし・・・。
それにこれは。。。もうオリジナルに走っちゃってるから。
“あの人達じゃない!”って、キッパリ思うようにした。
そしたら今までみたいに一応は書けた。。。。。。一応ね?(笑)
リオ:
(笑)
なるほどね?
気持ちの整理・・・というか区切りを付けたと?
・・・ところで小説内での思い出は?
歌音黒:
色々あるよ?
1日分話が抜けてたのとか・・・(苦笑)
リオ:
あっ・・・あったね(爆)
歌音黒:
あと・・・!
日本人として大変申し訳ないけど・・・!!(爆)
『ひな祭り』と『節分』の月を間違えてた(爆笑)
リオ:
本っ当に申し訳ないね!!(ズバッ!)
歌音黒:
(苦笑)
リオ:
えっ?
でもアレって確か・・・。
『節分』の話の前に『ひな祭り』のくだりを入れ忘れてただけじゃなかったの??
歌音黒:
いや、あれ・・・。
。。。。。。ガセ(爆)
リオ:
あ゛ぁ゛っ?!(爆)
歌音黒:
恥ずかしくてそう言って誤魔化してた・・・(失笑)
リオ:
・・・・・・あなたって結構そういうことやるの?(ーー゛)
歌音黒:
いやいやいやいやいや・・・!!(慌)
アレだけよ?!
アレだけ!!(必死)
他には一切やってない!!
言ってない!!(キッパリ)
リオ:
・・・・・・・・・まあいいや・・・。
まあこのままだと話が尽きないんで。。。(苦笑)
今後の『180回目の朝明けに・・・』は・・・。
どういう展開になっていきますか?
歌音黒:
私の中では・・・『朝明け』は、大きく分けて第1章と第2章になると思うの。
リオ:
・・・うん。
僕も何となく分岐点は身に覚えがあるけど・・・。
歌音黒:
でも今は、まだ第1章。
たぶん第2章まではー・・・・・・・・・。
まだちょっと時間があると思う。
リオ:
第2章はどんな感じのストーリー展開を?
歌音黒:
とりあえず坂井未佳の自殺理由が判明する。。。
そこがまず全体図としては大きい。
それとその人その人の感情とかが・・・かなり裏表で見え隠れしてくる。。。
欲望とか妬みとか・・・恨みとか悲しみとか・・・。
希望が消えて絶望になったり・・・。
その人その人が心に抱えてる・秘めてる想いとかが、とにかく暗く出てくる感じ・・・・・・。
とにかく「暗い」!
「ダーク」とか「ビター」とか「シリアス」という感じの表現じゃなくて、本当の『“人の心の闇”がむき出しになる』。。。
そんなストーリーになってしまうと思う。
第2章からは・・・。
リオ:
とにかく「重く」そして「暗く」みたいなね。。。
今までの話の内容とは大きく変わってくるでしょ?
歌音黒:
そうだね。
あんまり今みたいな『ギャグ』は減っていくかも・・・。
それかもしくは、暗い部分が多くなっていく。。。
やっぱり進んでいくと、そういう展開にはなってしまうと思う・・・。
でもそこが、実は一番自分が書きたかったものかもしれない。。。
リオ:
『案外自分の中では』ってことね?(笑)
さて・・・。
じゃあ長かったトークもここまでにして、そろそろ閉めましょうか。
歌音黒:
これ今後もやるの??(笑)
リオ:
・・・・・・・・・まあ・・・(苦笑)
100話行くごとに?(笑)
歌音黒:
しんどいなぁ~・・・(__;)
リオ:
(爆笑)
まあまだ分かんないですけど(^_^;)
とりあえず『100話行くごとに』ってことで♪
歌音黒:
せめてあと3、4回がいいな(笑)
リオ:
(爆)
はい、じゃあ・・・。
そろそろ。。。
歌音黒:
そうだね。
それでは!
歌音黒・リオ:
以上!
インタビュートークでした~♪♪
バイバ~イ♪