婚約者を辞めたら、お金持ちの聖女になりました!~聖女だけど、お金も欲しいんです~
夢咲が頭を空っぽにして書いたら、こうなりますという。
「フィルミル!お前との婚約は破棄する!!」
ここはアーヴェル学園、卒業ダンスパーティーの会場である。
煌めくシャンデリアの下、私は公衆の面前で婚約破棄を突き付けられている。
どこかで聞いたような言葉かと思ったら、大衆小説のセリフだった。
この阿呆な第三王子殿下との婚約は政治的な物だったのだが、はて。
最近流行っている「真実の愛」とやらを見つけたのだろう。第三王子殿下の肘に、無い胸を押し付けて、見えないように悪い顔をしているのは、かつて同級生だった男爵令嬢だ。
胸なら私が勝っているが、彼はそういう癖だったのだろう。ご期待に沿えなくて、まことに遺憾である。
八歳から聖女として田舎から徴収された私ことフィルミルは、自分で言うのも何だが、優秀な方の聖女だった。聖女と言うのは癒しの力を持ち、結界を張ったりと、忙しかった。学生と聖女の二足のわらじで、七面六腑な働きをしていたと思う。忙しすぎて殿下とろくすっぽ会わなかった間に、あちらは着々と愛を育んだのだろう。
「それは陛下のご決断ですか?」
「父上に伺う必要も無い、そなたに私の隣は相応しくないのだからな」
「確かに……学園トップクラスの成績の私と、学園下位の殿下ではつり合いが取れませんね」
「うるさい!」
私は何か間違った事を言っただろうか、事実ですよ。
「それでは、私もここに居る必要も無いですね。お世話になりました。失礼いたします」
「おい、本当に良いのか!婚約破棄だぞ!!何か、言う事は無いのか」
殿下は、私にもっと狼狽えて欲しかったのだろうが、王族の一員にもなりたくなかったので丁度良い。殿下は顔だけは良かったが、別にタイプでも無いので未練も無い。というか、何一つ私にとって魅力的な要素が無かった。
「あ、言い忘れました。婚約破棄、厚く御礼申しあげます?」
淑女教育で太鼓判を押されたカーテシーを披露し、その言葉を残して私は会場を出た。その後のパーティーで二人がヒソヒソされてパーティーは台無しになったと、後の親友からの手紙で知った。真実の愛なら、後ろ指刺されても貫いてもらわねば。障害は有れば有るほど燃えるんでしょう?
何より私は解放されて嬉しいので、さっさと荷物を纏めて、出て行く一択だ。
私は少ない荷物をトランクに詰め込み、馬車乗り場へ行く。片道三日の所に、目的の修道院がある。あそこならエンジョイライフが送る事が出来るだろう。
鍛えた肉体で馬車に乗る事3日、寝ている内に修道院に着いた。ストンと馬車から飛び降り、伸びをして体をほぐす。ピンピンしている私に対して、馬車のおじさんは呆れているようだ。
「嬢ちゃん、育ちが良さそうなのに乗り心地の良くない馬車で、よく寝れるな」
「丈夫なのが、とりえなので!」
本来馬車が通るような場所では無いので、私は多めに運賃を払う。聖女の給料は国から出ていたので安い物では無かったし、使う場面が無かったので、使う時はドカンと使うべきだ。
「それじゃオジさん、ありがとう!」
「おい、嬢ちゃん料金が随分多いぞ!?」
「ほんの気持ちです、では!」
私は外門を開いてスタスタと歩き、ノックをして扉が開くのを待つ。
奥から、優しそうなシスターが出迎えてくれた。
「あら、あなたは王都の聖女様じゃないの」
総白髪でふっくらしたシスターが私を出迎える。
「はい!婚約破棄されたので、こちらでお仕事させてください、お役に立てます!」
ぺこりと礼儀正しくお辞儀をする。
シスターは聖都に居た私が連絡も無く一人で来た事に、度肝を抜かれたようだ。
「こちらの修道院は、清貧を心掛けているから畑仕事もするし、炊き出しもするし、安い金額で患者さんを治療するし、かなりの力仕事ばかりよ……大丈夫かしら」
「実家はもう無いですし、元々は畑仕事もさせられていたので、畝を作るのとかプロ級ですよ」
私は拳を握り、胸を張ってアピールする。
「あなたが良いのでしたら良いですけど……。それでは歓迎しますよ。シスター・フィルミル」
「はい、お願いします!」
それからは、畑仕事、掃除、病人・怪我人の治療など、多岐にわたる仕事で、大多数のシスターに感謝されることになった。
修道院の仕事は、してもしても終わらないので、人手は有れば有るほどいいのだ。毎日の労働は確かに大変であるが、自由時間には寝てても良いし、自室でだらしない恰好をして、ベッドで本を読んでいても良い。辺境サイコーである。
そんな素敵なスローライフを送って早三か月、お呼びでないお客が来た。
「王都の神職では、こいつの怪我は治せないと言われた。フィルミル、お前なら治せると神殿長に言われたぞ」
患者は膝の粉砕骨折らしい。早く処置をすれば普通の医師でも治せるのだが、さては放っておいたな。変な風に骨がくっついている。
第三王子殿下の横に座っているのは、彼の幼馴染にして護衛のアーディガル小公子。確か……学園の成績では下の方で殿下と団子になっていた筈だ。思い出した、思い出した。
「卒業出来たのですね、おめでとうございます」
「今は、そんな事を言っているのではない!……治せるのか、治せないのか」
患者を診ろと言われたので、遠慮無く上から下まで。おおよそ髪の毛の先から足の指の先まで手をかざして体の中の悪い所を探す。悪いのは膝の粉砕骨折で一部の骨が吸収されて減ってしまった事と、怪我の間負担をかけた反対の足の足首くらいか。あと、頭かな?
「小公子、身長少し縮みました?」
「お・ま・え・は~~~!!」
殿下は相当お冠の様だ。場を和ませるための、ジョークだったのに。
「冗談です、治せますよ。金貨40枚ですかね」
「は?」
「あれ、殿下の一か月の予算ってもっと多かったですか?失敬しました。じゃあ、金貨70ーーーー」
「貧民からは、一銭も取っておらんと聞いたぞ!?」
殿下は身を乗り出して、私の目の前でがなりたてる。うるさっ。
私は身を引き、耳を自分の手で覆う。
「彼等はお金を持ってませんから、とりたてようがないですよ。農民の方とか、収入が有る方からはお代をいただいています……現物支給な事も有りますけど」
「では、金貨70枚などという大金はどこから出たんだ!」
「はぁ、依頼人の一か月の予算の内の半月分で計算しているので……今回の依頼人は殿下なので、それくらい出せると思ったのですけど、意外に渋いんですねぇ……」
ぶるぶるえながら、殿下の顔は怒りのあまり顔が真っ赤だ。今にも噴火しそうである。
「それでも高すぎるだろう」
「あらあら、殿下は小公子をお見捨てになるのですね」
私が、よよよっと泣きまねをすると、小公子が殿下を不安げに見る。大事な幼馴染みで部下なんだから出してあげなよ。
「分かった……手持ちを全部置いていく。足りない分は後で届けさせる」
「施術する前に、文書を書いて血判押して行ってください。踏み倒されると困るので」
「お前、俺が約束をたがえるような奴に見えるのか」
「きちんとしたお約束だった、婚約を破棄されたもので」
「ぐっ」
殿下は諦めて血判状を書いた。
よしよし、これで安心して治療が出来る。
「痛くしておきますねー、はい、さーん、にー、いーち」
「ちょ、フィルミル嬢、うわぁぁぁぁ!!」
小公子の絶叫が応接室に響き渡る。本来、聖女の治療は壊れた組織を強制的に再生させるので、自然の摂理に反しているとも言えないこともない。痛みを無くして治療するのも治療の一環なのだが、そういうのは疲れる。手っ取り早く治してあげよう。
「おまえ、本当に治したのか?アーディガルが床を転げまわっているぞ!?それに、そう言う時は『痛く有りません』と言う所だろ!?」
「間違いなく治ってます。では、お代はいただきますね。またどうぞ~!」
「二度と来るかっ!」
殿下は、アーディガル小公子に肩を貸しドアから出て行く。お見送りくらいはしてあげよう。
修道院の門までトコトコと着いていくと、めっちゃ睨まれた。われ、恩人ぞ?
馬車に乗り込むと、殿下は更にこちらを睨んできた。お金持ちなのに金貨70枚くらいで、ケチだなぁ。しかし、殿下を見て思い出した事が有った。
「殿下」
「まだ何かあるのか」
「いえ、男爵令嬢は貴族令息と複数関係を持っていましたよ。私が把握してるだけで6人でしたかね?お子さん産まれたら、親子鑑定した方が良いですよ。じゃ!」
私は言いたいことは言えたので、修道院に戻る。
うるさい殿下を乗せた馬車が遠ざかって行く。
すっきりしたぁ。
私は殿下からせしめた金貨で、修道院をリフォームして、極上の布団を手に入れることにした。清貧って言ってもお布団は良いに越した事は無い。
さて、今頃王都はどうなってるのかなぁ。あ、婚約破棄の慰謝料って貰えるのかな、請求してみよう。
くふっ。
久しぶりに胸のすく思いがして、その夜はいつもよりよく眠れた。
有難うございました。
またこういうギャグっぽいの書きたいですね。
よろしければ、星とかお願いします。
長編はこれ書いてます。
解析スキル「アナライズ」でチートだけど、私は鑑定士なので裏方業務で静かに暮らしたい~なのに、呪われた兎のアーティファクトや有名冒険者に目を付けられました~
https://ncode.syosetu.com/n3381ma/
AIくんと相談したらタイトル長くなったのですが、直すかもしれません。
若干ギャグ、時々希釈された恋愛、時々配置換えギルド嬢のお話です。ギルド職員なのに冒険者に拉致されています。こちらもよろしく。




