表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/201

38話「模索」

双方同じ構えを取る。

しかしその後の動きは対照的だった。


クレイグはカタナを振り上げ、守りを捨てた。対するクリフは重心を下げ、受けの構えを取る。


「同じ流派なのかと思ったんだけどな」


クリフは肩を竦める。


「どっちの親父が真似したんだろうな?」


クレイグはそう呟き、大股で踏み出す。

防御をかなぐり捨てたその構えは、一種の狂気を滲ませていた。


「強え方だろ」


クリフは短く答えると、剣を振り返した。

振り出しは、クリフが早い。


「じゃあ俺だな」


クレイグは後出しで剣を振り下ろす。


一切の迷いなく繰り出されたそれは、クリフの剣を追い抜き、彼の頭を割った。


「がっかりだぜ」


クレイグがそう呟いた瞬間、遅れて振られたクリフの一撃が、彼の腹を輪切りにした。


「うおっ……と」


クレイグはカタナを手放し、別れそうになる上半身を手で押さえた。


「やっぱり、不健全だよな。そうそう死なないと戦い方が雑になる」


クリフの髪が金に染まり、刺さったカタナを砕きながら頭部が再生する。


「……なんだよ、面白ぇのあるじゃねえか」


クレイグは微笑む。

彼もまた、輪切りにされた身体が繋がっていた。


「仕切り直しだ」


クリフは剣に魔力を纏わせ、力任せに振り下ろす。

破城槌の如き一撃を前に、クレイグは値踏みしていた。


「受けても良いが……少し勉強させてやるか」


クレイグはカタナを再生成し、切先を斜め下に向ける。


クリフの剛剣が彼の頭を掠めようとした時、クリフの両手が五つに切り分けられ、崩れた。

既にクレイグは、カタナを振り上げていた。


「不死になった奴はよく勘違いをする」


クレイグの掌底突きが直撃し、クリフは両腕を残して吹き飛ばされる。


クレイグはそのままクリフに肉薄すると、血液で複数本のカタナや大剣を創り上げる。


「手足や心臓は幾らでも生えるなら犠牲にすれば良いと」


クレイグは呼び出した武具を自在に扱い、両腕のないクリフを切り刻む。


「だがな、それは雑魚しか相手してねぇ奴の考えだぜ?」


クレイグは絶え間なくクリフを刻み続け、肉片の集合体となった彼の身体に次々と剣を打ちつける。


「走るのには何が要る?剣を握るのに何使ってんだ!?手足が無えとよ、おもちゃにされちまうぞ!!」


クリフの再生を絶えず阻害する形でクレイグはカタナを振るう。

クリフの身体は既に、ペースト状になるまで切り刻まれてしまっていた。


「さあどうする、俺は死ぬまで続けれるぜ!」


クレイグが叫んだ時、地面に落ちたオムニアントが高速で回転し、クレイグの背後から迫る。


「おっと、彼女のお出ましか」


クレイグはオムニアントを弾いて防御する。

そこに、コンマ数秒の隙があった。


肉塊からクリフの腕が飛び出し、剣を掴む。


「……適度な脅威なら良い。だがお前は、論外だ」


次いで再生した唇が呟くと、振られた剣がクレイグの胴を切り裂いた。


「おぉ……これは、クリフじゃねぇな?」


クレイグがそう呟いた瞬間、彼の肉体が二十もの肉片に分割される。

その現象はまるで、機械で同時に裁断したかのようだった。


「ああ……少し肉体を借りた」


クリフの全身が再生し、オムニアントの表面が剥離し、膨張すると、衣服へと変じ、クリフに巻き付いた。


「何もんだ……って聞くのは無粋だよな!!」


クレイグは体を再生させ、カタナを振り下ろす。


「その剣技、義辰のものか」


クリフは淡々と呟き、剣を振り返した。

一度の激突で複数の金属音が響き、周囲の草木が突風で吹き飛び、樹木の枝が弾け飛ぶ。


「親父殿を知ってんのか!そうか、息子の身体を取って黄泉帰ったか!!アードラクト!!!」


クリフを乗っ取ったアードラクトは、刀身に黄金の炎を纏わせ、振り払った。


〈__白明(フレイ)


火砕流の如き火炎が瞬時に湧き上がり、クレイグの視界を埋め尽くした。

後方に広がる木々が一瞬で灰化する程の熱が生じ、積雪していた雪が一瞬で蒸発する。


「渡津の獣め、人殺しを未だ愉しむか」


アードラクトは剣を振り払い、燃えるクレイグを見下ろす。


「応とも、それが俺の在り方だ」


黄金の炎が切り払われ、焼け跡からクレイグが踏み出す。


「やはり死なんか」


アードラクトはため息を吐き、手招きした。


「エスコートしてくれるのか!」


クレイグは素早くカタナを振り抜く。

アードラクトはまたもそれを受け止め、一瞬で彼の両腕を斬り飛ばした。


「悪いが、もう誓った相手が居るのでな」


「親父殿が嫉妬しちまうぜ!!」


クレイグは血の武具を複数作り上げ、両脚で蹴り飛ばした。


「俺は貴様と本気で剣を交えるつもりはない」


アードラクトは剣を軽々と弾き、クレイグの腕が再生するのを待った。


「だが俺はここに居るぜ。どうするよ!!」


クレイグは両腕を広げ、一歩ずつアードラクトに近付く。


「逃げる」


彼は冷淡にそう言ってのけると、クレイグの顔は曇り、血の武器を投げ捨てた。


「そうかよ」


それは、お気に入りのおもちゃを取られた子供が拗ねる様に似ていた。


「……案ずるな、最強のヒトよ。お前の飢えはいつか、クリフが満たしてくれるだろう」


アードラクトは剣を両手で掴み、天へ振り上げる。

その切先からは、燃え滾るような魔力が収束していた。


「……まさか」


クレイグの目が輝きを取り戻す。


「魔法は使わん。だが、かつての最強が貴様に餞別をくれてやろう」


「そなたの心遣い忘れぬ。礼を申す!!」


クレイグは満面の笑みを浮かべ、両腕を広げた。


「受け取るが良い!」


アードラクトが剣を振り下ろす。


次の瞬間、大気が歪んだ。

圧倒的な力によって空気は一気にせり出され、過熱。

軸線上に伸びた魔力の軌跡が、遠くに広がる雲を裂き、クレイグの肉体を圧壊させた。


そして切先が地面に激突した瞬間、地面が切り裂かれ、その後に歪んで捲れ上がった。


その日、ジレーザでは軽度の地震が起こった。


「噛み締めておけ」


アードラクトは惨憺な破壊痕を空に立って見下ろしていた。

彼は呟くと、突然空気をシルク生地のように掴み、引っ張った。

そしてそれを纏った瞬間、彼はその場から消失した。


「……ありがとう、最高のプレゼントだ。俺の前に最強だった男よ」


焦げた肉塊から再生を終えたクレイグは、満足げに呟く。


「さて、帰るか」


クレイグは自身の身体に入った亀裂を撫でた後、転移門を呼び出し消えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ