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憑きづきし  作者: 金子よしふみ
第五章

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観光

 一行はバスを使って、島を旋回するように廻った。島の南西部には五百年前、船の発着をしていた港に行き、小清水はどことなく郷愁にふける表情を浮かべた。祖父に思いを馳せていたのだ。本州から祖父が乗った船は、そこに着くはずだったのだから。そこから近くにたらいでできた小舟が何艘も浮かんでおり、自分で操縦することができるとのことだったが、三月はまだ利用期間に入っておらず、

「それは残念だったね」

 と小清水は遠い目をしていた。

 そこから島の西側の海岸線を北上し、観光地ごとにバスを降りた。時間を見計らっての昼食はそういった観光地で魚介類がメインの定食とか丼物とかを口に入れた。

 バスから見える風景に、例えばゴツゴツした岩肌が見る角度によって人の横顔に見えたり、怪獣のように見えたりして、車内から歓喜と驚きの声を上げたりもした。

 そして、出発地であるカーフェリー乗り場へと戻っていた。時はすでに夕刻となっており、

「暁、他に行きたいところは?」

「うーん、特に要望はないかな。他によく知らないし」

「茅……ほのかは、どっかいいところ知らない?」

「この島ん中に、うら若き男女が好みそうな娯楽施設やテーマパークがあると思ってのか?」

「いや、観光だから」

 小清水と茅野の返答は志喜にはつれないものに感じられたが、そこに羽多がもじもじしながら何かを言いたげに入って来た。

「あの……」

「何だい、優タン」

「私、行きたいところがあるんですが」

「じゃ、明日はそこへ皆で行こうよ。時間は今日と同じ時間に集合でいいかな?」

 挙手による承認が下りた。

 すると、チコのお腹がク~となった。

「そろそろご飯か。みんなで夕ご飯にする?」

「私は帰るよ。さすがに出歩きすぎだしな」

「ボクも旅館の夕食が出るから」

「私もホテルのレストラン利用券があるので」

 茅野も小清水も羽多も各々の宿があり、そこでの食事はすでに用意されている。

「そうか。皆で一緒に食べれたら、楽しかったのにね」

「昼に食っただろ。遊び疲れたし、じゃあな」

「ボクも行くよ、じゃあね」

 そう言うと茅野も小清水も行ってしまった。

「優タンの泊まっている所は?」

「ホテル宝船ってとこ」

「じゃあ近くだね、送るよ」

 残った志喜たちも帰途になる。チコの手を引く志喜に並んで、羽多が歩く。あおゆきは少し距離を取り、後方につけていた。羽多にはそれが気になるようだった。

「後ろに歩いている人はどこかに泊まっているの? 茅野さんの知り合いとか言ってたけど」

「ああ、予約の手違いで宿が取れてないから僕の家に、まあおじいちゃんの家なんだけど、泊まっているんだ」

「都筑君と?」

えらい勢いで詰め寄る羽多を

「いや、だからじいちゃんの家だから」

 落ち着かせようとするものの

「でも、思春期を迎えた男女が同じ閨を共にするとは」

 いささか以上に興奮気味な羽多に何とか説明を聞いてもらわなければならない。

「閨って。家は田舎だからだだっ広いし、両親も祖父母もいるし、チコがあおゆきさんと仲良いから、何も心配ないよ」

「うん、そうだよね」

 と言っていると、徒歩一〇分もかからずに、羽多が宿泊するホテルの玄関前に到着をした。羽多は落ち着いたようだ。

「じゃあ明日」

「うん、おやすみ」

「バイバーイ」

 手を振るチコに同じく手を振って応える。その横にあおゆきが並んだ。それを見て、羽多はぎゅっと手を握りしめた。

 ――茅野さんの知り合いなのに、何で都筑君の家に? ……そっか、あのチコって子と仲が良いって言ってたもんね。きっとそれが理由よね。都筑君、優しいから。きっとそうよね……


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