31/60
想起
都筑志喜は眠りの中にいると分かっていた。彼は想起していた。
妖怪ってのは雲みたいなものかもしれない。雨雲が一面に広がれば、それはもう空と同じだ。
あるいは妖怪ってのは空なのかもしれない。そこにあるのに見ているのは青い空間、平面で空という場所も、物も見ているわけじゃないし、でもそこにあるっては分かってる。
拡がっているのを分かっているだ、空だって。
それでも今、チコがちゃんと見えているし、あおゆきに触れることもできる。
雲が流れて行くように、空の色が一様でないように、もうすぐチコとあおゆきはいなくなる。けれども、今はともにいよう。それが彼にとっての今の日常なのだ。




