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憑きづきし  作者: 金子よしふみ
第四章

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欄干

 志喜たちが乗ってきたフェリー乗り場近く。島内一大きい湖から海に流れ出る河口に橋がアーチ状にかかっている。自動車が通ることもない。そのちょうど中間地点で、欄干に両肘を置いて、遠くを眺める者がいた。島の稜線も水平線も見えないが、じっと見つめていた。

 そこへ着地したシルエットがあった。佇む人に一歩ずつ近づいていく。

「いか釣り漁船の漁火が見えるって聞いてたんだけど」

「残念だったな、見えなくて」

「まるで武蔵坊弁慶と牛若丸と言いたいとこだが、で、元に戻ったオオカミさんがボクに何か用かな?」

 背中を欄干に預け、ジャケットの君はあおゆきを一瞥した。彼女の知らないはずの戦闘フォーム――とは言っても真紅のマントはないのだが――のあおゆきである。

「元に戻ったってわけじゃないのか」

「語る必要はない。私はあおゆき。姫様の護衛をしている。貴様の名を聞こう」

「小清水暁。それが?」

「私には使命がある。姫様の護衛だ。そして姫様を大切に扱ってくれる都筑志喜殿の護衛もだ。小清水とやら、貴様はそれに抵触した。だから私は使命を果たす」

 左手が右腰に伸びる剣の柄を握る。

「ボクが危害を加えたわけじゃない。君が何者か分からなかっただけだ。って言っても聞いてくれないだろうね」

「無論だ。止めまではささん。ともに来て都筑君に謝罪してもらう。必要とあらば償いもしてもらう」

「拒否したら?」

「力ずくでも」

 柄を握る手に力がこもる。

「でも、ここ、警察が近くにあるよ」

 そう言いって、小清水は五〇メートルほど先を指さした。

「だからどうした、とは言えんか」

「来る途中、小学校があったね。そこのグランドってのはどうだい?」

「覚悟があるという訳だな。よかろう、場所を移そう」

 二つの影が橋から消えるのを、月は無言で見つめていた。


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