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憑きづきし  作者: 金子よしふみ
第四章

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20/60

約束

 そこは、とある小山であった。まるで人工的に作ったかと思うほどの整然とした円錐形が一目として認められ、頂上には社がある。道路を挟んだ波打ち際は、ゴツゴツとした岩肌の海岸線であり、アスファルトの石段がそこを舗装していた。

 月と星が鮮やかに、そこに腰を下ろしている一人を照らしている。自転車の音と人の気配に気づいたのか、おもむろに立ち上がると、志喜たちの方に近づいて来た。

「これは、これはご丁寧に、こんなに大勢で迎えられるとは聞いてなかったんだが」

 いささかハスキーな声が耳に届いた。銀色の短い髪と、きりっとした目じり、レザージャケットとデニムがすっかりと似合うスタイリッシュな人だった。

 チコがスタスタと歩み寄り、一礼をした。

「私が使いで参りました。祖父からあなた様にこれを渡すよう命じられてきました」

 そう言って一枚の葉を差し伸べた。ジャケットの君は身を屈め、それに手を伸ばす。月を光源にしているようにして目を葉に泳がせる。

「なるほど、了解した。それじゃ、ボクはこれで」

 踵を返そうとする。

「もう終わり?」

 志喜はたまらずにそう言っていた。返しかけた姿勢を元に戻し、ジャケットの君は志喜に一歩近づいた。志喜は目を見開いた。

 ――人じゃ、ない?

「ふ~ん。君はどうやらボクがただものじゃないって気付いたみたいだね。君だけじゃないか」

 その視線の先には身構えをし、目つきを鋭くしている茅野がいた。

「何もしないさ。ボクはただこの子の祖父君とボクの祖父との約束を確認しに来ただけさ。そういう意味ではこの子と同じだ」

 チコを見下ろして言った。

「ただ会っておきたかったんだ。ずっとそれが約束だったからね。それにしても、君たちは一体なんだ? この子はいいとして、君と君は人間だろ?」

 チコ、志喜、茅野と順番に指を指す。

「ん? そうか。この子は君にとり憑いているわけか。どうりでこんな所でいいはずだ」

「何を言っている?」

 茅野は臨戦態勢を解かない。

「だから何もしないって。この子と君は匂いが同化している。君がボクの匂いを嗅ぎつけたようにね」

 見透かしたような視線が志喜に向かう。

「匂い?」

「おや、気づいてないのか? 君は匂いであやかしの、妖怪の気配を感じているはずだがな」

 そう言われて、先程直感的にこの人物を人ではないと感じたことに合点がいった。あおゆきが言っていた香りに寄る体調不良は、彼にとってむしろ妖怪と人間を識別する手段でもあったのだ。

「ところで」 

 チコ、志喜、茅野と廻った視線が止まった。その先には

「君は?」

 あおゆきだった。

「何かな?」

 初対面とは思えないほどの緊迫感が二人の間に漂った。前日にはあおゆきと茅野が一戦を交えた。とはいえ、それは茅野からの一方的な宣戦布告から始まるものであり、ここまでシリアスなものではなかった。

「君は何者だ?」

「そなたに話す必要性はないし、そなたが気に掛けることでもあるまい。私は姫様の護衛に来ているだけだ」

 それを聞いてチコに視線を向けた後、再び志喜たちに背を向け歩き、距離をとる。

「護衛ね……ま、ボクの力もこんなもんてことさ。一目であやかしの格好をしている者、人間それらは分かるのだけれどね、そうでないと鼻さえも利かない。ただ……」

 細くなった目があおゆきの身を一瞥した。

「君たちはそちらの方が何なのか、知っているのか?」

 茅野はかぶりを振り、志喜はいささか不機嫌そうに

「そんなこと関係ないじゃないか。君は何が言いたいんだ?」

 志喜にしてみれば、初対面の相手に友人が愚弄されているように聞こえたのだ。

「知らないってことか。じゃ、確かめてみるか」 

 ジャケットの君は、ポケットから何かを投げた。それは一線、あおゆきの首元に向かって行ったが、頭を傾げそれを交わした。が、


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