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憑きづきし  作者: 金子よしふみ
第一章
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帰省

 県立高校の受験を無事合格した志喜は、両親とともに父親の実家に帰省をすることになった。合格発表後の昨日の今日ではあったが、

「受験勉強で盆も正月もじいちゃんとばあちゃんに会ってないだろ」

 父からせっつかれ、確かに一年も会ってない祖父母に合格の知らせをするには、メールや電話よりも自身が面と向かってした方が喜ばれるのではないかと、彼は当然のように思った。

 信濃川の河口から出航するカーフェリーに乗って、祖父母の住む島を目指す。午前中の便に乗り二時間半の、晴天とはいえやや時化気味の渡航の後、正午前に着船した。そこから父の運転で、海岸線沿いに一〇分ほどで祖父母の家に着いた。家の様子は、あまり変わりがなかったが、祖父母の頭に白い物が、そして顔にしわが増え、手の甲に浮き出る骨が目立つのを見ると、志喜は一年という時間の長さを思い知らされた。自身についても、高校受験の勉強に費やした日々に、使ったノートと、解いた問題集やプリントの量を思い出しても、その時間がどれほど流れたのかは言うに及ばずだった。

祖父母は笑みを浮かべ、志喜に、

「受かって良かったなあ。それにしても、一年ですっかり大人気(おとなげ)ぇになったのォ」

 と目を細めていた。それをうれしく、またむず痒く感じ志喜は照れ臭そうに頭を掻いた。

 仏壇に蝋燭を灯し、父母についで線香を立て合掌をし、会ったこともないご先祖たちに高校合格を報告した。

 居間で祖母が用意してくれた昼食を摂った後、ドライブとなった。街の様子は、来ないうちに少し違っていた。帰省した際、祖父とよく行ったおもちゃ屋はシャッターを下ろしたり、更地だった所には全国チェーンのドラッグストアや弁当店が出店したりしていた。志喜は車中から、その様相の変化に驚きの声を発した。


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