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憑きづきし  作者: 金子よしふみ
第四章

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真夜中のチャリ

 その日をまたいだ真夜中、志喜は自転車を疾走させていた。寒冷な風が頬を凍えさせる。ダウンジャケットで体幹はいいものの、手袋をしていなければ、すでにかじかんでブレーキに指を伸ばすことさえもままならかっただろう。

「ちょっとキセツ、待て」

 後ろから息を切らせてシティサイクルで茅野が追いかけていた。薄手のロングコートは寒そうである。赤い長髪が大きく左右に揺れる。

「だから、無理しなくていいって言ったろ」

「それはお前もだろ。連中に深入りしてもな……」

「そんなこと言っても……」

 海岸線沿いに進むため、鼻先や頬に潮を感じる。チコが受けたおつかいの目的地はまだ先である。

「それにしてもすごいよな。な、チコ」

 志喜の背中からひょっこりとチコが顔を出す。あおゆきからもらった香袋の他に、志喜には身を守るすべが増えた。茅野が茅で編んだミサンガのようなものを左の手首に巻いているのである。その作成方法のレクチャーをあおゆきからされて茅野は不機嫌だったが、志喜の身を守れるという目的からすれば、我慢しなければならなかった。おかげでこうして志喜がチコと接触しても具合が悪くなってない。

「何が?」

「あおゆきさんのこと、ほら」

 志喜もチコも顔を仰いだ。あおゆきは戦闘フォームでもないのに、陸上競技の三段跳びを反復しているように跳躍をしていた。まるで虹を描くような連続ジャンプである。夜空の星々を背景にしていると、それはまるで映画のワンシーンにさえも見えてくる。

「チッ」

 それを忌々しそうに見ているのは茅野であり、

「キセツ、あいつに引っ張っていってもらえないのか?」

「悪いだろ、そんなの」

「悪くない。あいつら絡みなんだから、使えばいいんだよ」

「僕が協力するって言ったんだから、いいんだよ」

 それまでの跳躍のスピードと方向を緩和させ、必死にペダルをこぐ茅野の横にあおゆきが降り、同時に走り出す。

「私とて都筑君一人を抱えて一っ飛び位できるのだ。けれども、貴様がいるからという理由で、それを断った彼の意向をくんでいるのだ。都筑君の良心に感謝することだな」

「んだと、コラ!」

 言うが早いか、あおゆきは再び跳躍を始め進行方向に向かってスピードを上昇させていった。それまで以上にペダルを回転させ、茅野が追いかけて行った。あっという間に追い抜かれ、小さくなっていくあおゆきと、茅野の背中を見ながら

「二人とも元気だなあ」

「そだね……」

「おい、チコ寝るなよ」

 あくまでもマイペースな志喜はチコがお役目を果たせないことが無いように眠らないように声をかけながら、自転車を滑らせていった。

 天空には曇りなく満月が煌々と輝いていた。


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