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憑きづきし  作者: 金子よしふみ
第三章

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茅野VSあおゆき

 茅野はそう言いながら、懐から編んだ縄――随分と長い注連縄のようなものに志喜には見えた――を取出し、それをまるで鞭のように扱うと、その先端がチコに向かってくる。となれば、当然彼女を守る役目のあおゆきが黙っているわけがなかった。変身。瞬間的に、あの戦闘フォームになる。なびく瑠璃色の長髪、翻る真紅のマント。そして腰元を飾る鞘。そこから抜刀した次の刹那には縄を切断していた。鞘に剣を納める。志喜はそこでふと気づく。

 ――こんな戦闘、誰かに見られたら……

 それは杞憂にもならなかった。彼の傍らにいるチコが既に文言を唱え、制止した幻術世界を作り出していたからである。

「終わりか?」

「ふん。なかなかやるようだな」

 再び縄を取出し、チコへと駆ける茅野。そこに立ちふさがり、剣が収まった鞘ごと腰から抜き、茅野が投げた縄に絡める。それを引くと、あおゆきと茅野の距離が、あっという間に縮まり、茅野の下腕に鞘をブチ当てた。痛みを堪えた表情のまま鞘を押し続け、力比べになっていた。

女の戦いに志喜は呆然としていたが、そうもしてはいられない。どうにかしなくてはと当たりを見回した。そして落ちていた古びた竹の棒を手にすると、彼女たちの間に入ろうとダッシュをした。

 まさにその時である。あおゆきは鞘の向きを変え、剣を自然落下の法則に従って出すと、柄を握り振り上げた。拮抗していた力が崩れ、よろめいた茅野だったがもちなおし、宙に浮いた鞘を握りそれを振り下ろした。

 が、二人は視界に志喜を捉えた。しかし勢いのついた剣先、鞘の動きを変えるのには間に合わない。

「来るな!」

「キセツ、避けろ」

 あおゆき、茅野の二人の叫びに志喜がしたことは。竹の棒を投げつけることだった。必然剣が竹を切断し、茅野は手にしていた鞘で竹の片方を打ち払った。

「あ……っぶねえなぁ」

 寸での所で志喜は急ブレーキをかけた上に、身を反らし剣と鞘の攻撃を回避する努力をしてみた。

「危ないのは君だ!」

「そうだ、何考えてんだ、キセツ」

 戦闘していたあおゆきと茅野に非難されるのは、理不尽な感じもしたが、戦闘が収まったのを志喜はほっとしていた。

 が、

「シキ! 上」

 チコの絶叫に、志喜は空を仰いでみた。旋回しながら勢いよく落下してくるものがあった。竹の棒である。あおゆきが切断し上下に分かれたうち、茅野が薙ぎ払った上の部分が円を描いて、今になって落下をしてくるのであった。先程剣と鞘の攻撃を回避し、すっかり安堵した者にとって、想定もしていない攻撃に対処する思考がすぐに働くわけもなく、あっけなく志喜は竹の棒の一喝のような殴打を頭部に食らう羽目になった。当たり所が悪かったのであろう、志喜は景色がゆっくりと横転していくのを見た。が、実際は彼が卒倒したのだった。


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