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02.詰んだここは、精神力至上主義の世界でした


この世界には、朝の概念がないようだ。

お世話をしてくれている蘭さんがカーテンをあけたら、昨日と変わらない日差しの屋外だった。


ベッドから体を起こしたら、昨日より体が軽かった。

(体が、軽い…いつぶりだろう)


蘭さんに身支度を手伝ったもらい、朝食はスープとふわふわのオムレツをいただいた。

やっぱり美味しい。食べると少し安心する気がする。


自分のペースで食べ終えたあと、少し部屋でくつろいでいたら蘭さんに呼ばれた。

遂に、その時が来たらしい。

「白昼の間にお連れしますね。そこでお二人が御待ちです。」


(お二人ってやっぱり、私がここに来た時にいた。あの華やかな二人か)



白昼の間についたようで、目の前にはある大きな引き戸が開くと、眩しくて一瞬目を閉じた。

目の前の空間は光あふれるとてもきれいな場所で光の反射でそこら中、きらきら輝いていた。



(うわぁ…元の世界では絶対見れない光景だし、なんだか不思議な雰囲気だな。洋、中華、和風が絶妙に混ざってるからなのか?)



目の前には、玉座に座る男性と女性。

蘭さんに、二人の前まで案内され3人だけになった。


なんて声をかけようかと思っていたら…

向こうから話が展開された。

「待っていたよ、神託を遂行する使者殿。私は成陽国の王である(ヤン)だ。」


「私はこの人の后、(スミレ)よ。昨日より顔色が良くなってて安心したわ。あなたの事、教えてくれないかしら。」



雰囲気の良い声で少し緊張がほどけ、自己紹介をした。

「わ、わたしは、古藤 灯です。こんな謁見する文化は向こうにはないので、ご迷惑をおかけしていたら…すみません…」



菫様は、大丈夫ですよと言い、こう続けた。

「こちらの都合で急に転移させてしまってごめんなさいね。私は后であり神託を受けた巫女なの。これから説明するお話をしかっり聞いて欲しいの。」

その眼差しは真剣そのもので、冗談なんかではないとすぐに察した。



楊様も真剣な面持ちで話始めた。

「私の曽祖父はこの国の先々代の王だった。とある国との戦争で勝利を治め帰還してきた数日後から夜が訪れなくなり、天気も1年の8割~9割が晴れしか訪れなくなった。そのおかげで、人々は不眠障害が急増し、雨が少なくなり自然の生態系の崩壊、内陸側の国もいくつも滅んでいった。幸いこの国は海と山に囲まれていて、水などの資源は海から引いて飲める状態にしている。しかし、ここ数十年で国民の性格までが過激なものも表れ初めていて、この国も隣国と同じように滅亡の一途をたどっている。しかし、后であり巫女の菫が半年前に神託を授かった。」


「異なる世界から夜を秘めた少女を呼び。少女から夜を解放できれば再び空が時を刻みだすだろう。私は、神託通りにあなたを呼びだしまして、今に至ります。あなたはこの世界の秩序を再び通り戻す存在なのです。ここまでで、わからない事などはありますか。」


私は話を理解するのに必死だった。頭がぐるぐるする…だけど

(朝や夜が来ない世界というのはなんとなく察してはいたけど、やはりそうなのか。だけど夜を秘めた少女?私は何も持ってない…ここに来る時も手ぶらだった。していうなら着ていた服くらいだ。)


「私には夜に値するなにかの心当たりがないです。なので私じゃない可能性も…」


王である楊様は、思い出したかのように言った。

「それは、精神力を確かめてみないとな」



「精神力?」

私は思わず口に出していた。



「君にも後日に神御社で受けてもらうが、この世界は精神力が高ければ高いほど至高とされる。地位や役目、性質を扱う能力の強さは精神力の高さで決まるんだ。なぁに心配することはない、神託が降りてる君は絶対に大丈夫。」


(終わった…つんだああ…私、精神疾患持ちなんですが?!精神力なんて皆無だし。神、絶対人選ミスじゃん。ていうかこれもう死ぬしかなくね。どうやって私の息の根を止めようか…)



「私にはできません。私は…その…心が……病んでるので。あなた方が思ってるような力はないです。」

この世の終わりの顔をしながら言うと


王は、全く動じずに笑いながら言った。

「それでも、私たちにとっては希望なのだよ。もし、これで君じゃなくても生きていけるくらいの資金や寝るところは整えよう。だから試してみないかい?君の可能性に」



どれくらいぶりに人の顔を見たのだろうか。そして一瞬だけ見た王様の瞳は不自然なくらいに曇りがない黄金色で、その眩しさに恐怖心があふれ、すぐに目線を外した。



自分の可能性?今更何を言っているんだ。しかし元の世界に帰れたとしても死ぬだけだ、だったらここで判定を下しておいて好きなタイミングで死ねばいい。

そうだそれがいい、どうせ精神力がないなら話は早い。

自分の中でそう消化をして、精神力判定を後日受けることになった。



私の可能性?そんなもの…とっくも昔に見えなくなっていたことだ。


世界に夜を訪れさせるなんて、そんなのできっこない

私ができるならみんなできる。


だから、自分に希望を抱くんじゃない

空は晴れているのに、私の心はすごく暗く重たい

この先の不安しかない。


部屋に戻りカーテンを閉め、ランプの灯をつけ、深いため息とともに

気持ちが沈んでいった。


そんな気持ちで、検査に挑んだのであった。



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