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01.病み陰キャには勿体ない待遇です


目を覚ましたら、ベッドの上で起こした体は重たくやっとの思いで起き上がった。

「お目覚めですね。では早速ですが…こちらを飲んで下さい」



先ほどの女性より簡素な装いの女の子は、とても綺麗なグラスに入ったお水を私に差しだした。

知らない人から差し出されたものを飲んでいいものかと躊躇していると、女の子はごくっと一息で飲んでしまった。

「ほら、大丈夫です。」そう言ってにこっと笑う女の子。



さすがに申し訳なくなり、お水をいただく事にした。

久しく何かを口にしていなかったので無心でグラスの水を飲みほした。



「おかわりも沢山ありますよ」という女の子に私はついつい甘えてしまい、持って来てくれた水瓶の中の水を飲みほしてしまった。



最後の一口を飲み干しグラスを女の子に返した

「ありがとうございます…」久しぶりに人と話したから、かすれてうまく声が出ない。




「いいのです。何かお困りごとがあれば、わたくし蘭に申しつけ下さい」



「こ、これは…どうも…」かすれた声で言いながら、思わず頭を下げてへこへこお辞儀をしていた。



「では、次です!」

蘭はニコニコで私を担ぎあげ運び出した。



私は何が起こったか理解できず、頭が真っ白になった(ん??んえええ??!!担がれてる!!)



「次は、入浴です。私たちがお手伝いします。」

脱衣所と思われる場所には、4~5人の同じような簡素な服を着た女性がニコニコの笑顔でこちらを見ていた。



「え、あッ、えと、あああ、その…じ、じ、じじぶんで脱ぎます!!」

精一杯の声量で伝えたが、結局、お世話されてしまった。


久しぶりの浴槽、しかも入りながらマッサージとか…何なんだこれ、どこかのファンタジーの世界でしか見たことないぞ。




そんなときに一人のお手伝いさんがこう言った




「こんなにきれいなお顔なのに髪の毛で隠れて勿体ないです。」




綺麗か…私の中でもやもやした

「いや……私よりきれいな方はこの世に星の数います。」



別の侍女は明るい声で関心そうに言った。

「まあ、謙遜なされる必要はないですよ。本当の事です。」



私は否定するかのように言った「そんなことはないです。」



あぁ、またやってしまった。この凍り付いた空気、話を合わせらない…つい言ってしまった。

そんな自分が嫌になった。



会話はここで、蘭さんが入浴から出る準備の指示があり切りあがった。

蘭さんはこそっと「私の部下が気にさっわた事を言ったならごめんなさいね。」



私は、話合わせればよかったのかなと思いながら「いえ、私が…悪いんです。」と伝えた。



蘭さんは優しく、そう、と一言。

食事の準備も出来たからと浴槽から出てタオルを渡してくれた。



(すごいな、肌がすべすべだ…)

久しぶりの湯船にホカホカの体、それだけなのに少し気分が良くなった気がした。


綺麗な服も貸してくれて、私は案内されるがままに気づいたら食事の席についていた。

目の前には、食べきれないほどの食事が前菜からスイーツまでずらっと並んでいて圧倒されていた。




(こ、こんな食事は漫画でしか見たことないんだが…)



蘭さんは嬉しそうに言った。

「ここに並んでいる食事は、うちの料理長自慢のフルコースです。好みがわからなかったので、好きなものを好きなだけお召し上がりください。」



「は、はぁ…(ど、どうしよう…お腹はすいているけど…神託云々でこんなに対応がいいって…一体何をお願いされるんだ…魔王討伐して世界に平和をとか、独裁政治を止めてくれとか、戦争の切り札とか…ううぅ…考えただけで気分が…)



蘭さんは私の顔色を察したのか、気分がすぐれませんか?と声をかけてくれた

私は、擦れた声で答えた「すみません…。お腹はすいてはいますが…」



蘭さんは少し考え、メモを片手に

「でしたら、消化にいいスープや粥にしましょうか。無理はせず残しても構いません。どんなお味が好きですか?」



「どんな…味……」

私は返答に少し困った。精神的に病んでから食事の味が、なにを食べても味気なく感じてしまうからだ。

(私の好きな味…なんだったっけ…ふと食卓をみていたら赤身の魚の上にのっていたレモンみたいなフルーツが視界に入った。)

「さっぱりした味、ハーブや果物のような清涼感あるものが好きだった気がします。」



蘭さんはにっこり微笑んで、「承知しました。」と言って、食卓の料理が何点かさげられ

粥やスープ、ゼリーなど食べやすそうな見た目の料理に様変わりした。



スープとゼリーをいただく事にした。

少しドロッとしたスープはミントのような香りとジャガイモとバターのコクのある味だった。

(あれ、おいしい気がする。もっと食べたい。)



あっいう間に一皿平らげてしまっていた。

ゼリーはレモンティーをゼリーにした上品なものだった。

はちみつをかけて食べるらしい。



「おいしい…」



蘭さんが慌ててハンカチを持って私の所へ来た。

「どうして泣いているのですか?無理においしいと言わなくてもいいのですよ」



私は心配そうな表情でこちらに来た蘭さんに疑問を抱きながら、自分の顔を触った。

ほほが涙で濡れていた。

「えっ…ないて… ますね…。人が作ったっ…ご飯って… こんなにも…温かいかと …とってもおいしいです。」


蘭さんには、申し訳ない。こんなやつのお世話なんてさせてしまって。

でも涙が止まらなかった。

なぜなら食事でこんなにも満たされたのは久しぶりだったからだ。


蘭さんはほっと安堵したかのようにこう言った。

「そうですか。ゆっくり食べて休みましょう。また明日ゆっくりと、王様とお后様にこれからについてお話しする予定になっています。」



その後、気持ちなど落ち着いてから、部屋に戻ってベッドでただ、ぼーっと過ごした。

そこで、私はこの世界の異常に気が付いた。


外がずっと真っ昼間なのだ

時計と思われる物の針を眺めた、私の元の世界の感覚では半日は経っていそうだが日が傾く様子がない。

いったいこの世界で何が起こっているのだろうか。



(ずっと昼って変な感じだな…寝れなくなりそう。)

きっと、明日は神託についての説明とかかな…とか考えていると


蘭さんが部屋に入ってきた。

「失礼します。おやすみの準備に参りました。」



彼女に感謝の意を伝えると、寝る支度を蘭さんと始めた

(やっぱり、この世界はずっと昼の世界なのかな)



カーテンを閉めると部屋は真っ暗になり、部屋のランプの灯りだけで眠るらしい

(遮光のカーテンで強制的に暗くして、小さい明りで寝るか…初めての経験だな。この灯り、なんだか不思議な感じだな、火の感じとはなんだか少し違う。きらきらしててファンタジーな感じがする。)


ベッドに入り、眠りにつき異世界一日目が幕を閉じた。



陰キャには身に余る待遇にすごくありがたいと思いつつどっと疲れてしまった。

何とかここでやっていくしかないのかな…私はこの世界で生き延びれるのかな


そう思いながら眠りについた







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