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桃から産まれた桃太郎

作者: まめのき

二十歳の頃に書いた初期作品の一つです。

 役 桃太郎

 役 おじいちゃん

 役 おばあちゃん


 (蝉の声)

桃「聞きたことがあるんだ」

婆「なんだい?突然改まって・・・」

桃「ずっと気になってたんだけど・・・俺って父さん母さんの本当の子供じゃないよね?」

婆「なに言ってんだい!あんたは私たちの子供だよ!」

桃「でも、俺どちらともにも似てないし父さんと母さん俺が子供にしては歳を取りすぎてるし・・・」

婆「今時、高齢出産なんて珍しことじゃないでしょ!それに似てないなんて気のせいよあなたはこの人にも私にもちゃんと似てますよ。」

桃「でも、俺人より成長早いと思うんだ!」

婆「私の料理は栄養満点だからね!」

桃「同い年のけんちゃん、このあいだ初めて歩いたって言ってたじゃあないか!それに母さんナポリタンしか作れないだろ!」

婆「けんちゃんはのんびりした子だからねぇ・・・はいはい卒業するのに二年もかかっただよ」

桃「それに!桃太郎て名前だけどものすごく違和感があるんだけど!」

爺「とうとうこのときがきてしまったか・・・」

婆「あなた!」

爺「いいんだ!桃太郎には真実は知る権利がる」

婆「・・・」

爺「桃太郎、覚悟はよいな?」

桃「うん」

爺「あれは、今日みたいな蒸し暑い日じゃったわしは山に芝を刈に、ばあさんは川に洗濯にいっておった・・・ばあさんはそこで桃を拾ったんじゃ。」

桃「やっぱり・・・」

婆「そう・・・川の上流の方から流れてきてね、普通なら見逃しそうなものだけどなんか目についてね、こんな暑い日だしおじいさんと分けて食べようかねと思って持って帰ったの」

爺「なにせ暑い日じゃったからわしも喜んで食べたんじゃ・・・」

桃「え?待ってその桃から俺が生まれたんじゃないの?大きな桃を割ったらそこから赤ん坊がでできたみたいな・・・?」

婆「大きな桃?そのときの桃は普通のサイズでしたよね?」

爺「そうじゃな・・・なにせ暑い日じゃったから二人で喜んで食べたんじゃ・・・するとなんと不思議なことにわしらは20代のぴちぴちぼでぇになっておった。」

桃「若返ったってこと??」

婆「あれは驚きましたねぇ」

爺「うむ、最初はなにが起こったかわからんかったのぉ・・・事態をちゃんと理解したのは次の日になってからじゃったかの」

婆「そうかしら?次の日も罰が当たっただのなんだのとうるさかったですけどね」

爺「ゴホンッ・・・まあ事態を理解したあとは逆に喜んだな、なにせ体は軽い腰は痛くないぴちぴちぼでぇじゃからな」

婆「最高でしたね」

爺「わしらは毎日のように夜の街にくりだした・・・・そのうち自分内に盛り上がってくるものを感じたずっと前に無くした気持ちじゃ・・・わしはばあさんに頼んだ・・・今晩どうかと!」

 (蝉の声)

桃「・・・聞くんじゃなかった・・・まさかそんなことがあったなんて・・・それで俺が出来たんだね?」

爺「まあ待てまだ話は終わってない。」

桃「え?だって・・・」

婆「断ったんですよ」

桃「え?」

婆「だから、断ったんです。だってそうでしょう?今更そんなこと、それに恥ずかしがるなよとかお前もどきどきするだろとか気持ち悪かったし・・・それにこの人今も昔も不男ですからね」

爺「なにを言うんじゃ!わしとお前は美男美女カップルで有名じゃったろ!」

婆「いえ、この人が街にでるとその街から女が消えるって有名でした。それに私は今でも美女です。」

桃「どんだけ嫌われてんだよ・・・」

爺「しかし、ワシは諦めんかった!いくら足げりされろうが罵声浴びせられようが唾を吐かれようが酒をぶっかけられようが!」

桃「そこまでやられても?・・・気持ち悪っ!」

婆「でしょ?」

桃「何でそこまでしたの?」

爺「だってばあさんマジ可愛かったんだもん!」

 (蝉の声)

桃「母さんって本当に美人だったんだね」

婆「だった?」

桃「美しいお母様」

婆「そうよ・・・モテてモテて大変だったんだから、街へ行けばナンパの嵐よ私好みのイケメンがぞろぞろと」

爺「ばあさんは昔は村一番の美女でなぁ・・・今もじゃな!ばあさん頼むから鉈を下ろしてくれ・・おろして下さい」

桃「じゃ何で村のアイドルだ・・の母さんと村の嫌われ者の父さんが結婚してるの?」

爺「そりゃわしの情熱にころっときたのよ!」

婆「哀れみです!ガチで言うとこんなに美人なのにあえてこの人と結婚するとか私ポイント高いと思ったの・・・血迷ったわ」

爺「マジで?」

桃「俺、涙が出てきた・・」

婆「だから私思ったんです。この若返りはご褒美だわって、この人に十数年連れ添った健気で美しい私を神様が可愛そうだと思いご褒美をくだっさたんだって・・・この機会に若くてイケメンで金持ちの男と結婚しようってね」

桃「え?何でそうしてないの?誰だってそうするよ!」

爺「お前もひどいのぉ」

婆「現実はそう甘くないってことね、寄ってくるやつはいっぱいいたけど金持ちだけど不細工だっだり、男前だけどぐうたらだったり何か足りないのよね薄っぺらいの。」

桃「でも、父さんよりはましでしょ!」

爺「ちょっとおもてでろや」

婆「たしかにねぇ・・・でもね新しい人生は妥協したくなかったのよだからくる奴くる奴みんなフってたの」

桃「いい人は結局見つからなかったんだね。」

婆「そうでもないのよ、お金持ちで男前で優しい人がいてね」

桃「完璧じゃん!何でその人にしなかったの?」

婆「私もその人しかないと思ったの、だからフったのよ」

桃「え?どうして?告白されたってことだよね?」

婆「最後の確認のつもりでね、もう一度告白されたら結婚しようと思ってた・・・でもされなかったあの人は金持ちで男前で優しかったけどそれだけだった別に私じゃ無くてもよかったのね。そんなときにこの人が59回目のプロポーズをしてきたの」

爺「へへっ」

桃「照れんな!58回フられてるんだからな!でもすげーな」

婆「凄いでしょ、私がどれだけ蹴っても殴ってももどってくるの、そのうちやばい何これ気持ちいいってなってね・・・(うっとり)」

爺「へへっ」

桃「照れんな!うっとりするな!」

婆「それにだんだん何にもないこの人が可愛く思えてきてね・・・何でこんなに何もないの?まじやばいってかんじかしら。」

爺「いえーい」

桃「褒められてないからな!ハイタッチしようとすな!」

婆「さっき何もないって言ったけどねこの人情熱だけはあったね、この人だけはわたしを見続けてくれる。それって女にとって一番の幸せじゃないかね」

爺「わしはばあさん以外考えられん。」

婆「・・・・」

爺「・・・・」

桃「やめて!親のそうゆうの思春期の子供に見せないで!いいから続きを話して!」

爺「ゴホンッ・・・・そうじゃな・・それでどこまで話したかの?」

桃「59回目のプロポーズまで!」

爺「おおそうか!わしが59回目のアタックも失敗しての!」

桃「またフられたの?いつ終わるの?いい感じだったじゃん!またフったの?」

婆「今更、言えなかったんですよ!」

爺「そういう女心が分からんとはだからモテんのじゃおまえわ」

桃「うるせぇじじい!」

爺「反抗期じゃあ・・」

婆「はいはい・・よしよし」

桃「はぁ・・・で次の告白で夫婦に戻ったんだね?」

爺「いや、そこからばあさんは40回、うんとは言ってくれんかった。」

桃「嘘でしょ?どっちも頑固だなぁ。」

婆「なんか、嬉しいような懐かし気がしてねあの時、この人遠い昔もこうだったと思って・・・」

桃「なんだ・・・昔もちゃんと好きで結婚したんじゃん。」

婆「どうかしら・・・あの時は本当に私の印象の為だったと思うんだけど・・なにせ昔のことだから忘れました。」

桃「ふ~ん」

婆「なんだいその顔は?この人そっくりだよ?」

桃「嘘だ!イヤだ!」

爺「お~い似てなくてなやんどったんじゃろ?」

婆「フフッ」

爺「まぁそんなこんなでちょうど100回目のプロポーズで彼氏候補に昇格したんじゃ!」

桃「長いよ!!いつになったら僕は生まれるんだよ!まだ彼氏候補?終わりが見えないよ!」

婆「まあまあ・・・その後ちゃんと夫婦になりましたよ!」

爺「再びばあさんを追いかけることの出来る幸せな三年じゃったの」

桃「僕の予想を遙かに越えてたよ・・・」

婆「その三年の間も色んな人と出会ったけれど結局この人にしちゃった・・・安心感が違うのねぇこの人仕事はサボったことないし浮気はしないし何より話が合うの」

爺「ばあさんのことでワシが分からんことはない!」

桃「ともすればただのストーカーだけどかっこよく思えてきた。」

婆「何だかんだ夫婦してきたってことだね、私にもこの人だけだった・・・そのことが若返ってよくわかったよ。」

爺「ばあさん・・・」

桃「すごいいい感じのとこ悪いんだけどおれは?」

爺「ん?あ~お前はその後拾った桃を割ったら出てきたんじゃ」

桃「うぇ?・・・・だって大きな桃じゃないって・・・割って出てきたんじゃないって・・・」

爺「だから最初の時はな。次に流れて来たのが大きな桃でなそこからお前が出てきたんじゃ」

桃「は?・・・じゃ俺は桃から生まれた・・・」

爺「桃太郎じゃ!」

桃「嘘だろ!今までのは何の話だったの?何で俺はじじいとばばあの恋物語をきかされなきゃいけないんだよ!」

婆「ばばあ?」

桃「すみませんでした・・・・・」

爺「まあまあ・・・しかし桃太郎よわしらが話した話は必要だったんじゃ」

桃「何で?・・・十文字で終わる話だよ桃から産まれた桃太郎・・・」

爺「いやいや考えてみろ普通流れてきた大きな桃なんか拾うか?不気味じゃろ?それに絶対まずいぞ・・・」

桃「そんなこと分からないだろ・・・拾う人は拾うよ」

爺「腰の痛い爺と婆・・とは思えない美しいお方じゃぞ?苦労してまで取らんて」

桃「え?若返ってたんでしょ?」

爺「言って無かったかの?そん時にはもう元に戻っておった」

桃「戻ってた?」

爺「そうじゃ・・・なにせ三年も若返っておったからのまさかじゃったわ」

桃「だから・・・?」

爺「そうじゃわしら命がけで桃を取った、これでまた若返るとな何せ大きな桃じゃ今度はもっと若返っていられると思ったんじゃが家に持って帰ってさあ食べようと割ったらお前が出てきたんじゃ正直がっかりじゃった」

桃「聞きたくないわ!桃から生まれた桃太郎でよかったわ!」

婆「いちよう桃も食べてみたんですけどね何も起こりませんでした」

爺「でもこうしてわしらの前で生まれてきたのも何かの縁、わし等には子供もおらんかったしきっと神様が授けてくれたんだと思って大事に育てようとわしがばあさんにいったんじゃ」

桃「父さん・・・」

婆「いいえそれを言ったのは私です。この人は天罰だの祟りだのラブラブ生活の終わりだのうるさかったです。」

桃「くそじじい!」

爺「ばあさん桃太郎の目が怖いよ・・・」

婆「そうそう名前ももう桃太郎でよくね?って言ってましたね」

爺「ばあさん!」

婆「この人いたぶるの楽しい」

桃「はあ・・・まあいいよ何かすっきりした!それと急なんだけど俺旅にでるね」

婆「本当に急だね・・・私もこの人も口ではああ言っててもお前が家に来てくれて凄く嬉しかったんだよ?」

桃「分かってるよ・・・うっとおしいぐらい愛を感じてた・・・俺は幸せだった。でも自分が何者なのか知りたいんだ!だから旅にでる。」

婆「そおかい・・・寂しくなるね・・・」

桃「こんなに大きくなるまで育ててくれてありがとう。この家で本当によかった・・・明日出発するよ」

  翌日、明朝(鳥の鳴き声)

桃「それでは行ってまいります、今まで本当にありがとうございました」

婆「こちらこそありがとうございました・・・なんか変な感じになっちゃたねぇ、いつでも帰ってきていいからね」

爺「二度と帰ってくるな!わしとばあさんのラブラブタイムがなくなってしまうからな」

桃「俺がいてもおかまいなしだろうが」

婆「このいがみ合いが聞けなくなると思うと寂しいねぇ・・・せめてものだこれをもっておいき。」

桃「これは?まさか・・きび・・」

婆「ナポリタン」

桃「風呂敷に入れたの!?」

爺「お前、何かあてはあるのか?」

桃「とりあえず、川を上って見るよそこからは決めてないけど自分で納得出来るまでは旅を続けるよ」

爺「ふん、次流れてきても拾わんからな。」

桃「うん、分かった・・・じゃいくよ・・・ありがとう」

婆「行ってらっしゃい」

   数時間後

  (ぐぎゅ~)

桃「やっぱり腐ってたなぁナポリタン・・・・夏

だもんな・・・物語通りにいかないなぁ人生。」

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