第5話「“解き放つ者”と呼ばれる少年」
「これは“レ”の文字です。はい、ご一緒に——」
エリシアは、漣とミミの正面に座りながら、にこやかな笑みを浮かべていた。柔らかい長椅子の上でローブの裾を丁寧に整えつつ、指先で見本の文字を丁寧になぞる。その一挙一動からは慈母のような包容力が感じられたが、時折、漣の顔を見てはどこかぎこちなく目を逸らす様子もあった。
「……こうか……?」
漣が手元の紙にぎこちなくペンを走らせる。書き慣れない異世界の文字に戸惑いながらも、一画一画を真剣な眼差しでなぞっていく。
「惜しいですわ! しっかりはらいを意識して……はい、そうです。その調子ですわ!」
「すごい……先生みたいだね、エリシア」
ミミが楽しげに笑いながら言うと、エリシアは少し頬を染めて視線を逸らした。
ミミと初めて会った頃は、奴隷商人との一件もあってか心を閉ざしがちで警戒心を強く持っていたがここ数日で徐々に打ち解けてきた。今では漣にもエリシアにもすっかり心を開き、笑顔を見せてくれるようになった。
「ふふ……先生だなんて、お恥ずかしい」
ミミは隣で紙に向かって文字を描いていた。獣人の村では文字の読み書きの習慣がほとんどなく、最初はペンを持つ手すらぎこちなかったが、今では見違えるような上達を見せていた。しかも、文字を覚える速度は漣よりも早く、伸びやかで力強い筆致が目立った。
「ミミちゃん、上手ですわね。今まで習ってこなかったとは思えません」
「えへへ……ありがとう。でも、書くのってまだちょっと変な感じ……でも、楽しいっ!」
ミミは目を輝かせながら言い、書いた文字を漣に見せてきた。
さらに、ミミは無邪気な笑顔を浮かべながら、何のためらいもなく身体を傾けた。ふわりとした耳と髪が揺れ、柔らかな胸元が自然と漣の肩に触れる。小柄な体がぴたりと寄り添うように近づき、彼の肩へとぐいっと体重をかけるようにして覗き込んできた。その温かさと柔らかさ、そして甘いような獣人特有の香りが一瞬で距離感を崩壊させる。
漣の頬が不意に熱くなり、思わず手元の紙を凝視してしまう。
「ねぇねぇ、漣のも見せて? どれくらい書けてるの?」
「あ、ああ……こんな感じだ」
あまりにも自然に触れられたそのぬくもりに、一瞬、心臓が跳ねるような感覚が走った。
ミミの無邪気なボディタッチに戸惑いながらも、漣は照れくさそうに笑った。
ちらりとミミの文字を見て気を紛らわせようとする。
(……俺より、字が上手だ...)
小さな劣等感が胸に芽生えるが、それ以上に、ミミが楽しそうに学んでいる姿を見るのが嬉しかった。
一方で、エリシアはそんな2人の様子を見て複雑な表情を浮かべていた。
にこやかな笑顔を保ってはいるが、時折、視線がミミと漣の距離に向かうたび、瞳の奥に小さな揺らぎが見え隠れする。
少し強張った表情で軽く立ち上がり——
「ミミちゃん……そんなにくっついたら、漣様が書きづらいでしょう?」
そう言いながら、控えめに囁くように指摘した。
「え? あ、うん。ごめんね、漣」
ミミが素直に離れるとエリシアの少し強張った表情が解け、微かに安堵したように息をついた。
(べ、別に……嫉妬なんてしていませんわ。ただ……あまりにも距離が近すぎますわ……っ)
そう思いながらも胸の奥でざわつく何かに気づきかけていた。
けれど、まだそれが何の感情なのか自分でははっきりと認められない。
エリシアは胸に手を当て、乱れそうになる心を落ち着けようとした。
その後も、ミミは時おり漣の腕に無邪気に触れたり、ペンを持つ手を重ねて「こうやって書くの!」と無遠慮に距離を詰めたりした。
そのたびにエリシアがぴくりと反応し、言葉には出さないまでも恐ろしい気配がにじみ出ていた。
「ミミちゃん……その、男女の間には距離感というものが……」
「距離? なんで? あったかくていいじゃん!別に一緒に住んでるんだし家族みたいなものだもん!」
その一言が、まるで心の奥に石を投げ込まれたように、エリシアの胸に波紋を広げた。
「か……家族……? ふ、二人で……一緒に……住んでる……っ!? そ、それは……っ、ふ、不埒というか、いえ……ええっ!? な、なんですのそれはっ……!」
声が裏返り、思わず机の上の書類を取り落としそうになる。エリシアの顔は一瞬で真っ赤に染まり、目をぱちぱちと瞬かせながら、明らかに混乱していた。
「か、家族……って、そ、それはもう、ほとんど、つ、つまり……夫婦のような関係というかっ!? い、いえ、ち、違いますわよね!? べ、別に、決めつけるつもりは……っ、あの……その……!」
いつもの冷静沈着な様子はどこへやら、エリシアはまるで熱でも出たかのように慌てふためき、視線を泳がせながら椅子に座り直す。
普段なら口にしないような、己の感情の揺れ戸惑うエリシア。
エリシアの慌てぶりがあまりにも珍しく、漣は思わずぷっと吹き出してしまった。
「な、なんだよその反応……ははっ」
「えへへ、エリシア変なのー!」とミミも楽しそうに笑い声をあげる。
その笑い声に、エリシアは一層顔を赤らめ、眉を寄せながらふいっとそっぽを向いた。
「わ、笑わないでくださるかしら! わたくしは至って真剣なのですから……!」
そう言いながらも耳の先まで染まった赤と、少し膨れた頬がその言葉とは裏腹に可愛らしい怒りを滲ませていた。
そんな三人のやりとりが、教会の中の静かな空気に溶け込むようにして穏やかで心温まるひとときを育んでいた。
エリシアには教会に通い始めた初日から、ミミの身体に刻まれていた契約紋の存在・漣が奴隷商人からミミを助けたこと・さらには漣自身が他人の契約紋を破棄できるという特異な力を持っていることまですべてを包み隠さず話していた
ミミがどのような境遇で契約をさせられたかを聞いたときには静かに目を伏せ「なんと哀しきこと……」と呟いた。
「でもねエリシア、漣が助けてくれたの!それだけじゃないんだよ。私の身体に刻まれてた“契約紋”まで……漣が、ぱぁって光らせて、消してくれたんだ!」
「け、契約紋を……解除した、ですって?」
目を見開いて漣を見つめた。声はかすれ、表情には驚きと戸惑いが交錯していた。
「そんな……契約者本人以外からは絶対に解除できないはず……それを、漣様が……」
エリシアは漣がこの世界に“女神によって導かれた存在”であることを知っている。
契約紋の解除——本来、絶対に破ることのできない神秘の封印を漣はまるで祈りに応えるかのように解き放った。
それを聞いたとき、エリシアの胸には直感のような確信が走った。
(この方は、女神様が——苦しむ人々を救うためにこの世界へ遣わしてくださった希望そのものなのでは)
理屈ではない。そうとしか思えなかった。
「……けれど、もし一歩違えば命を落としていたかもしれません」と言葉を絞り出すように呟いた。その声には、張り詰めた緊張と、深い憂いがにじんでいた。
「……奴隷商人たちは、裏社会と深く結びついていると聞いています。漣様、どうか……本当にお気をつけてくださいませ」
手を胸元で握りしめる彼女の指先は、ほんのわずかに震えていた。
漣の行動を誰よりも尊敬し信じているからこそ、命を懸けてまで無理をしてほしくない——その想いが、エリシアの全身から溢れ出していた。
ただ、それでも漣は街を歩くたびに目にした“契約紋”に苦しむ人々を黙って見過ごすことができなかった。
夜の帳が下り喧騒が静まり返る頃。漣は一人、外套を羽織り人通りのない通りへと足を向ける。
——《契約紋章管理》
かつて奴隷商人からミミを救ったときに手に入れたこのスキルは本来契約者と契約対象を繋ぐ"紋”を契約対象に刻み込むスキル。本来ならば契約者本人以外、絶対に干渉できない呪縛らしい。それを漣は“模倣”によって例外的に解除できるようになっていた。
「……ここか」
彼が足を止めたのは、昼間にミミと街を散策していた際ふと目に入った場所だった。
大きな屋敷の門前で警備の任に就いていたのは獣人の青年。エリシアとの勉強会を終えた帰り道、ミミと並んで歩きながら通り過ぎたとき、彼の手に刻まれた“鎖”のような契約紋が夕日を受けてかすかに輝いていたことを、彼の顔や体についた無数の傷を漣は見逃さなかった。
そして今、夜の帳が降り人通りがまばらになった裏通りに漣は静かに姿を現す。
漣は言葉を交わさない。ただ、すれ違いざまに軽く手をかざす。
——パァァ……ッ。
微かに光る紋章。そこから、光の粒がふわりと舞い上がるようにして消えていった。
「な…紋章が消えた……?」
男が恐る恐る腕を見ると、そこにはもう何の痕跡もなかった。
目を凝らして何度も手の甲や前腕を確かめる。だが、あれほど濃く刻まれていた“鎖”のような紋章は、まるで最初から存在しなかったかのように消え去っていた。
「な……なんで……? 契約紋が……」
信じられないという表情を浮かべながら、男は顔を上げ、静まり返った通りを見渡す。そして、数秒前にすれ違った一人の少年の姿を思い出す。
「……まさかな。あの子が、やったってのか……?」
誰にも気づかれないように、そっと手をかざすだけで——
「ありがとう……誰か知らんが……本当に……ありがとう……」
漣は背を向けたまま小さく手を振る。
獣人の男は周囲を警戒するように素早く辺りを見回し、足音を忍ばせながら闇の中へと駆け出していった。刻まれていた呪縛の鎖は、もうない。
契約紋の解除は制度そのものへの反逆に等しい。奴隷という存在に依存する者たち——とくに奴隷商人にとって、それは稼ぎを根こそぎ奪われることを意味していた。
このまま続ければいずれ敵と見なされ衝突は避けられない。裏社会との確執も現実味を帯びていく。
だからこそ、この活動にミミを巻き込みたくなかった。
それに、もし自宅に彼女を一人で残しておけば報復や巻き添えの危険がないとも言い切れない。奴隷商人たちとの対立は避けられない未来だ。その時、最も狙われるのは、漣にとって大切な存在——ミミだ。
だから彼は活動に出るたび必ずミミをエリシアのもとに預けることにしていた。
「ミミを……少しのあいだ、預かってもらえないか」
その願いにエリシアは一瞬目を見開いた。外套を羽織り、表情を引き締めた漣の姿に言葉にはしなかったが彼が何をしようとしているのかをなんとなく察したのだ。
「もちろんです」
迷いのない返事。しかしその声音には漣の決意と、そこに潜む危うさを感じ取った者だけが持つ張り詰めた静けさがあった。
その日から、漣が夜の街に出るとき、ミミは必ずエリシアのもとへと預けられるようになった。教会の静かな部屋で、孤児院の子どもたちと笑い合うミミの姿。それは、漣にとって何よりも安心できる光景だった。
「ミミちゃんのことは教会と孤児院のみんなでちゃんと見ておきますので……漣様、どうかお気をつけて」
エリシアはそう言いながら微笑もうとするが、その表情には複雑な感情がにじんでいた。
漣のしていることが人々を救うための尊い行いであることは分かっている。だからこそ、止めたいとは言えなかった。
けれど同時に彼が危険な道を歩んでいることもまた、理解していた。
(どうか無事に帰ってきてくださいませ……)
彼女の瞳には不安と敬意、そして漣への信頼が静かに揺れていた。
漣が背を向けるたび彼女は祈るように見送る。静かに、しかし確かに——誰よりもその無事を願っていた。
そんな活動を続けていたある頃から街のあちこちで静かに、しかし確実に広がる噂が立ち始めた。
「契約紋が……消えるらしい」
最初は一部の路地裏や貧民街の噂話にすぎなかった。だが、紋を失った者の数が少しずつ増えるにつれやがてそれは“誰かが解除している”という話へと変わっていく。
「ある夜、何者かとすれ違った直後に紋が消えた」
「少年のような姿だった」「名乗りもせず、ただ手をかざしただけだった」
そんな断片的な目撃情報がまるで都市伝説のように語られ始める。
やがて人々はその存在をこう呼ぶようになった——
“解き放つ者”と。
ミミと市場を歩いている最中、何気ない雑談の隙間からその噂は何度も耳に飛び込んできた。
「“解き放つ者”が契約紋を消して回ってるらしい」
「まるで神の使いだって話だ……」
言葉の端々に驚きと期待が混じっている。
(……まずいな。思っていたより広まってる)
噂が広がればそれだけ自分の足跡も残る。無記名の英雄ではいられなくなる。
歩くたびに耳に入るその声が、漣の胸に警鐘を鳴らしていた。
(奴隷商人たちも、そろそろ動き始めるかもしれない)
そう思うと、背筋に微かな緊張が走る。
エリシアやミミ、教会の孤児院の子どもたち——守りたい存在は増えていくのに、自分の力はまだ足りない。
「……強くならなきゃな」
心の底からそう呟いた。
そう思うと漣は静かに冒険者ギルドへと歩を進めていった。
強くなるためには使える手段はすべて使う。
理想だけでは守りたいものを守れない——それを漣はようやく理解し始めていた。
《努力模倣》
触れることで相手の努力をなぞり成長を自分のものとするスキル。これまで使ってきたのは戦いの中や偶然の状況だけだったが、これからは違う。
意識して、意図して、強者たちと接触し彼らの技術や鍛錬の成果を掴み取っていく。
打算でも下心でも構わない。
「力を手に入れるためなら媚びるくらい安いもんだ。仲良くなるさ。どうせなら徹底的に」
そう心に決めて彼は冒険者ギルドの扉を押し開けた。
ギルドに併設された酒場兼食堂は日夜多くの冒険者たちが集まり、武勇談を交わしながら盛り上がる活気に満ちた場所だった。
漣はその中に混ざるようにして空いた席へと腰を下ろす。そして、強そうな冒険者たちの会話に耳を澄ませながら目を細めた。
冒険者という職業柄彼らの努力値は一般人と比べても桁違いであり、漣にとってはまさに宝の山のような場所だった。
最初こそ場の雰囲気に圧倒されかけたが、漣には《交渉術》という武器があった。
ちょっとした気配りや軽妙な言葉選び、空気を読む観察眼——それらを駆使して会話を交わすうちに、数日もしないうちに彼は何人かの冒険者たちと自然に打ち解けていた。
「おい新人、飯奢ってやるから今日の依頼ついてこいよ」
「おう、最近ちょっと根性見えてきたじゃねえか」
そんな声をかけられるようになったころには、漣はギルドの常連たちの輪の中にすっかり馴染んでいた。
午前中はエリシアとの勉強会で文字や知識を学び、午後には先輩冒険者たちに同行して依頼をこなす、そして夜には"解き放つ者"として人々を救う日々。そんな生活を繰り返すうちに、漣の冒険者としてのレベルは着実に上がっていった。
最初はLv2だった彼のステータスも仲間たちとの実戦経験を通じて数日でLv4へと到達。地道に積み重ねた努力と《努力模倣》によって吸収した他者の成長が、確かな成果として表れ始めていた。
そして、そのスキル《努力模倣》もレベルアップによってさらに強化された。模倣可能なスキルが1つ増え、さらに相手のレベルまで視認できるようになったことで次に何を模倣するべきかという判断も精度を増していく。
そんな折、ミミも冒険者としての一歩を踏み出した。
「わたしも、漣と一緒にがんばる!」
屈託のない笑顔でそう言って冒険者登録を済ませた彼女を見て、漣は笑みを浮かばせていた。
ミミは初期状態で既にLv4だった。聞けば、故郷である獣人の村では一定の戦闘訓練が日常的に行われていたらしい。ミミのスキルは2つ。
ひとつは《気配察知》(努力値5)──周囲の気配を鋭敏に察知する能力であり、隠密行動や奇襲の回避に効果を発揮する。
もうひとつは《疾風爪舞》(努力値12)──鋭い爪による高速連撃で一瞬のうちに敵を切り裂く獣人特有の戦闘スキルだ。
どちらも、獣人としての彼女の特性を活かした技であり、元々故郷の村で訓練を受けていたことがこれらのスキルの修得と磨き上げに繋がっている。
まだ危険な依頼には参加させていないが、比較的安全な任務に漣と先輩冒険者とともに臨むことでミミ自身も少しずつ経験を積んでいた。実戦の中で仲間と息を合わせ状況に応じた判断を学びながら、彼女は確実に成長していた。今では、その瞳にも迷いはなく以前よりもずっと自信に満ちた表情を見せるようになっていた。
任務を行う傍ら、漣は日々ギルドの中で様々な冒険者たちのスキルを観察していた。だが、ただ覗き見するだけでは、そのスキルが本当に実戦で通用するものなのか判断しきれないことに気づく。そのため、ギルド内で実力者と噂される存在のスキルであれば強いということが保証されていると考え、ある日信頼している先輩冒険者に素直に尋ねてみた。
「このギルドで、1番強い人って誰なんですか?」
すると、その先輩だけでなく近くにいた数人の冒険者たちも一様に頷いて口を開く。
「そりゃあ、エリザ・ヴァレンタインだろうな」
皆が口を揃えて名前を挙げたのはAランク冒険者として知られるという女性冒険者だった。
足繁く冒険者ギルドに通っていたが一度もそのような人の姿も名前も聞いたことが無い。
「お前知らないのか? エリザ・ヴァレンタインって名前だ。ギルドの連中の中でも別格の強さだぞ」
「ひと睨みされたら動けなくなるって噂もあるくらいだ」
「ソロでドラゴン討伐したって話もある。信じるかどうかは任せるけどな」
漣はその名を聞いたのは初めてだったが、周囲の冒険者たちの語り口からその人物がただ者ではないことをすぐに理解した。
「まあ、あの人ギルドにはほとんど顔出さねえからな。俺たちは実際に話したことあるわけじゃねえけど……」
「年に何回か来るかどうかってレベルだし、依頼の受注もほとんど個人ルートだって噂だ」
「でも、目撃情報があるたびに一瞬で話題になるんだよ。まあ、それだけ圧がすごいってことさ」
そんな話をしていると、冒険者ギルド内がざわめき出した。
まるで噂に引き寄せられたかのようにギルドの扉が静かに開く。
重い足取りひとつ立てず、堂々と歩みを進めてきたのは青いポニーテールを揺らす一人の女性だった。
重そうな金属の鎧を軽々とに身を包みながらもその動きには一切の無駄がなく、まるで空気さえ従わせるかのような威圧感が漂っていた。
冷ややかで感情の読めない眼差し。その一瞥を受けただけで、空気が一瞬にして凍りついたような錯覚すら覚える。
「……噂をすればなんとやらってやつだな。……見ろ、あいつだ」
小声でそう呟いた先輩冒険者の指さす先には、まさに噂通りの“氷の戦女神”が、確かな足取りでギルドに姿を現していた。
名前:霧島 漣
種族:人間
職業:模倣者
レベル:4
HP:58/58
MP:28/28
■ 保有スキル
《努力模倣》
└ 触れた対象の“努力”に応じてスキルをコピー(最大6つ)
└ 模倣したスキルを固定化(模倣枠を使用せず永続的に使用できるようになるが、努力値の更新が不可能になる)
└他者のレベルを感知することができる。
【模倣済みスキル】
・《ウィンドカッター》(努力値:23)
・《交渉術》(努力値:51)
・《価格看破》(努力値:49)
・《並列思考》(努力値:5)
・《契約紋章管理》(努力値:28)