女子会
元から女子達が水浴びをしながら色々話していた。
「異世界転生? 転移? よくわからないけどもう3日以上経過したね」
「だね〜、最初はどうなるかと思ったけど前田先生が学校の時とは見違えるほど頼れる大人って感じで凄いビックリしちゃった」
「わかる! どうしても加齢臭とかストレスとかで疲れ切ったおじさんとしか見えなかったのに……異世界に来てから生き生きとしているように見えるし」
「奥さんや子供と上手くいってなかったって聞くし、私達も先生をからかってたからストレスが半端なかったんじゃない?」
「今思うと悪いことしたなって思うわ」
「でも先生超美人じゃね? 身長は元の世界よりも縮んだけど、綺麗で腰まで伸びた黒髪は艶が凄いし、加齢臭だった体臭も柑橘類みたいなフレッシュな香りがするし」
「顔も整ってるよね。私達を含めても一番綺麗な顔つきに変わったんじゃない?」
「確かにそれは思うわ」
皆前田先生の変化について話しているらしい。
私こと宮永も前田先生の変化は好意的に受け止めている。
「私らは元から女だったからよかったけど、いきなり性転換した男子は大変だよね」
和田っちが話の流れからそんな事を言い出した。
確かに男子はいきなりの性転換……しかも周りが美少女や美女に変わった影響で普通なら性的に凄いことになってそうだけど、今のところそう言った話は聞かない。
金やんやオタクと3人で行動した時もこう性的な目で見られることは無かった。
他の女子達も元男子から性的な目線を向けられることが無くなったと話す。
「原村、豪炎寺とはどうなのよ」
和田っちが原村に豪炎寺とイチャイチャしているのかと聞くと
「うーん、豪炎寺君も元の世界みたいにガツガツした感じじゃ無くなって、私的には今の豪炎寺君の方が好みだけど……手を握って寝たりしてるけど襲われるって感じは全く無いかな〜。我慢しているって感じも無いし」
「ふ~ん、あ、でも私達も性欲は減った気がするわ」
和田っちがそう言うと周りの女子達も同意している。
私の横で聞いていたマスコット枠の中園は耳先まで真っ赤になっているが、コクコクと小さく頷いている。
確かに私もムラムラってくることが無くなった気がする。
そういう興奮した時に絵を描くと凄いのが描けたりするんだけど……うーむ、絵を描きたい。
性欲の話から今の男子で誰が頼りになるかとかの話に変わる。
「上がり幅的には前田先生一択だけど、元から頼りになった委員長と野村は外せないよね」
「リーダーシップ取れるし、2人とも人を引っ張る事は得意だもんね」
「正直委員長と野村が先生のストレスを分散してくれているから異世界に来てもクラスが空中分解しないで済んでいる気がする」
「あとは豪炎寺君も外せないよね」
「すっかり料理長として皆の胃袋掴んだもんね」
「今日の鍋美味しかったな〜」
「皮を炙って出汁を取るって普通考えつかないでしょ」
「あー、私ももっと料理を勉強しておくんだった!」
原村の方を見るとニコニコしているが、豪炎寺は原村の彼氏というのが共通認識なので羨ましがるが、それ以上の事は誰も言わない。
「梶っち(梶原)、桑原はどう?」
「島で電気亀に襲われた時に咄嗟に庇ってくれたんだよね〜。咄嗟に動ける男って素敵じゃない?」
「わかる! 良いよね」
「へえ、桑原ってそんなガッツあるタイプだったんだ」
「チャラチャラしているイメージあったけど芯はしっかりしてるんだね」
あとはオタクこと鈴木も異世界に来てから評価を上げた1人だ。
「オタクの知識量は凄いわ。特にスライムを体内で飼うって発想力と行動力よ」
「宮ちゃん(宮永)体内でスライムどう? 違和感とかない?」
「全く……便意とかも特に無いんだよねー……あ、でもお腹を押すと入っているって感覚はあるかも」
「そろそろ出した方が良いんじゃない?」
「そうだね……ちょっと出してくる」
私は水浴びを辞めて、1回トイレへと向かうが、よくよく考えたらトイレでスライムを出したらトイレの中のスライムがどんどん増えていくことになるため、穴を別に掘ってそこで排出し、火炎放射で燃やしてみた。
するとスライムは燃料のように勢いよく燃え始め、一瞬で炭化してしまった。
お腹の中は凄いスッキリしているし、お腹に残留物がある感覚も無い。
排出したスライムの臭いが酷いということも無く、そしてよく燃えるので処理も容易いし、残りカスは地面に混ぜてしまえばわからない。
「あ、レベル上がった」
スライムを燃やしたらそれでも経験値が入るのかレベルが1つ上がっていた。
私は一応水魔法でお尻を洗ってから女性陣と合流した。
「どうだった?」
「お腹スッキリ……大腸にある便を全て出してくれるみたいな感じだった。それに出したスライムも臭いが全くしないし、火を付けたら燃えてほぼ残らないし」
「へえー……トイレ行くたびに下半身を洗わないといけないから、便の回数が減るし、任意のタイミングで出せるのは良いな」
「後処理が楽なのも良いかも」
「私もやろうかな」
と私が大丈夫とわかったので女性陣の間ではミニスライムを体内で育てるのが流行りとなった。
女性陣だけでなく、男性陣もやるようになり、全員火炎放射を覚え、トイレも増設して尿の場合とスライムを排出する場合に分け、体内のスライムは直ぐに熱処理をしてしまうことになる。
男性陣が体を洗っている間に先ほどの話の続きとなり、誰が誰を好きとか無いのかの恋バナが始まった。
和田っちが進行役になり、全員誰か1人を言う流れになる。
殿堂入りの豪炎寺を除いて、人気なのは委員長と野村で、次に佐々木と金やんが続いた。
「佐々木は野村に比べてリーダーシップは無いけれど守ってくれる力強さみたいなのはあるよね」
「わかる。元から強かったし、それが包容力? うーん、なんか守ってくれるような感じ? に置き換わった様に思えるなー」
「顔面偏差値がほぼフラットになったから中身勝負になったからね」
「中園ちゃんは誰が好きとかあるの?」
和田っちが中園に質問する。
「わ、私は金田君が好きです」
皆ニヤニヤしている。
金田の事が好きではないかと前の世界でも女子の間では噂になっていたが、大学で都心部に行く中園と自衛隊に入隊してどこへ行くかわからない金やんだと長距離恋愛になり難しいと皆思っていたが、状況が変わり、女子組が暗躍して、2人っきりで探索に向かわせたのも良かったらしい。
お揃いの腕輪をして上機嫌だし。
「良いじゃん良いじゃん中園! 私も応援するからくっついちゃえよ」
私は中園を応援すると言って背中をポンポンと叩いた。
「ありがとう宮永さん」
「そう言う宮永はどうなのよ」
「私? 強いて言うなら金やんだけどあくまでLikeの方。友達として好きであってそれ以上は無いかー」
「宮ちゃん(宮永)は男子に興味無いもんねー」
「まぁ恋愛するより絵を描きたいから……あー彫刻でも良いけどやっぱり絵が描きたい!」
「宮ちゃん絵が好きだもんね……ただ現状だと絵を描いている暇は無いよねー」
「それは分かってるよ和田っち。我が儘言うつもりは無いよ」
誰が誰に好意を抱いているか方向性を再確認し、話は委員長が言った全員戦えるようにというのとレベルアップを優先することについて話す。
「直接殴る蹴るは拒否感強い子も居ると思うけど、魔法で男子の援護が出来るくらいにはならないと不味いと思う」
「和田っちと同じ意見でーす」
私も和田っちの意見に同意しておく。
一番戦闘が苦手そうな中園の方を向くと中園も
「わ、私も魔法での攻撃手段は覚えておいた方が良いと思う。ゴーレムを倒す時に魔法を使った方が安全に倒せたし……機械人形は魔法が使えないと倒すのが難しいモンスターだったから……あとドラゴンの体になっているお陰である程度の無茶をしても体にダメージが入らないよ」
「ゴーレムに思いっきりタックルをする場面があったけど、硬そうなゴーレムにタックルしても痛くなかったし、私達素足で地面を歩いたり走ったりしているけど痛くないのもステータスの防御の数値が高いからだと思うの」
「だからレベルが上がればより防御も上がるから外敵に対しての選択肢が増えるし、魔法を覚えるのもレベルを上げるのが手っ取り早く済むし……私と金田君が持ってきた髪飾りは経験値の獲得力を上げる効果があるし、ミスリルの剣を使えば動く木程度なら簡単に倒してレベルを上げられると思うの」
と和田っちの意見に同意していた。
大人しい中園の意見に攻撃するという行動に消極的な子も安全ならばと女子の中では方針が固まった。
そして寝る前にミニスライムを私は希望者に配って注意事項を説明してから寝る準備を始めるのだった。




