VS機械人形
「中園さん! 走った勢いのままゴーレムにタックル! そして首を思いっきり引っこ抜く!」
「う、うん分かった!」
俺は中園さんから手を離してゴーレムの1体に思いっきり飛び蹴りを食らわせる。
胸部に命中した足はゴーレムの体内までめり込み、足の形にへこんだ。
そのまま押し倒して俺はフリーの左足で思いっきりゴーレムの頭を踏み抜く。
ドシャ……
ゴーレムは動かなくなると砂になって消えてしまった。
「ハァハァ……中園さん!」
俺は中園さんの方を見ると中園さんは言われた通りにゴーレムにタックルをして馬乗りになると首を掴んで引き抜いて居た。
中園さんがそのゴーレムに夢中になっている間に後ろから最後の1体のゴーレムが中園さんを襲おうとしていることに気がついた。
俺は急いで地面を蹴って、中園さんに近づくと、襲いかかっていたゴーレムの拳を右手で受け止める。
そのまま腕力でゴーレムの体勢を崩すと勢いよく膝蹴りでゴーレムの顔面を蹴り飛ばした。
ゴーレムの首はもげて空中を3回転すると地面に落ちて砂になり、頭部から宝石が露出する。
「中園さん大丈夫だった!」
「あ、ありがとう金田君……助かったよ」
中園さんはペタリと座り込んでしまった。
「でもゴーレム倒せたよ中園さん! 凄いじゃんか!」
「そ、そうかな……力任せに首をもいだだけなんだけど……」
「最初のゴーレムで頭に宝石があったから胴体と切り離せば動かなくなると思ったけど……ちゃんと倒せたね」
「あ、す、ステータスオープン……ちゃんとレベルが上がってる」
「俺も2体倒してレベルが20に上がった。スキルポイント増加のスキルで1レベル毎に6ポイント入るようになった。もう5レベル上がればペイできるな」
「あれさっき10上がったのに今回は2体倒したのに5レベルだけ?」
「最初のゴーレムはボスみたいな感じでレベルアップに必要な経験値が多い個体だったかもしれない。あと中園さん、スキルに余裕があるなら攻撃に転用できる魔法を覚えた方が良いかも……中園さん直接攻撃するのに凄い抵抗がありそうだし」
「う、うん……正直無機物のゴーレムだったから体が動いたけど、首長竜みたいなのだと殴ったり蹴ったりできる気がしない」
「となると土魔法かな」
「土魔法? なんで?」
「土の塊をトゲを出してモンスターを串刺しにしたり、土なら周囲にいっぱいあるから中級まで伸ばせば色々な攻撃が出来そうだし……俺も覚えるから一緒に色々試してみない?」
「う、うん! 私やる!」
俺は10ポイント支払って初級だった土魔法を中級に伸ばすと、また頭の中に色々な情報が入ってきた。
「魔法を覚える時に情報の暴力で酔うのは慣れないな……中園さんは大丈夫?」
「ちょっと頭痛がするけど大丈夫……落ち着いてきた」
「よしじゃあ慣らしで穴を掘ってみようか……大きさをイメージして体の一部に魔力を流す感じで……」
俺と中園さんは1時間近く土魔法についてその場で色々試してみた。
まず中級になったために土の塊を生み出せるようになった。
ただ熟練度が足りないからか手で触れている場所にしか増やす事が出来ない。
俺は中園さんに投擲のスキルを習得してもらい、狙った場所にある程度当てられるようにしてもらった。
土の塊でもドラゴンの力で思いっきり投げればプロ野球選手並の球速が出る。
そんなのに当たれば大抵のモンスターは倒すことができるし、倒せなくても怯ませることができる。
近づいてきた敵は落とし穴を作って底を針山にしておけば大抵の敵は倒すことができるだろう。
「よし実際にやってみよう」
ということでもう一度ゴーレムを2人で探していると赤く塗られてフレームが金色の箱が置かれていた。
「宝箱2個目!?」
「こういうのがあるってことは異世界のダンジョンなんだなぁって思うわ」
とりあえず罠が無いかを確認してみてから開けてみると色違いの髪留めが5個入っていた。
色によって効果が変わり、赤が体力、青が防御、黄色が力、水色が素早さ、紫が魔力が1つ装備する毎に100上がるっぽい。
あと経験値増加(小)が付いていた。
「装備品がどんどん増えていくね」
「宝箱が出やすいフロアなのかな?」
とりあえず俺は赤色の髪飾りを、中園さんは紫色の髪飾りを着ける。
それぞれ少し長いヘアピンみたいなのに花みたいな飾りが付いている感じだ。
最初着けるには抵抗があったが経験値(小)の補正は欲しいし、中園さんから今の金田君なら似合うと思うよと言われたので取り付けた。
金髪の髪に赤色の髪飾りが凄い目立つが、中園さんは似合う似合うと言っていた。
中園さんも焦げ茶色のショートカットの髪だけど、それに紫色の髪飾りが地面から生える花みたいに見えて綺麗だった。
まぁ女性の髪を土に例えるのは良いとは思わないので髪飾りが似合っていることだけ伝えるけど……。
残りの髪飾りは俺のポケットの中に全て入れた。
探索を再開するとゴーレムが2体歩いていた。
「中園さん土の塊を出して投げて牽制して欲しい。俺が牽制したところを奇襲する」
「うん!」
中園さんは野球ボール位の土の塊を魔法で作り出すと思いっきり握って、それをゴーレムに投げた。
ボゴンボゴンとゴーレムの体が土の塊が当たったところが陥没する。
俺は意識が中園さんに向いたゴーレムの首に飛びついて一気に頭を引き抜いた。
それだけで1体は崩れ始め、また崩れてない引き抜いたゴーレムの頭をもう1体のゴーレムの頭めがけて投げた。
バコーン
衝突したゴーレムは頭がぶつかるとだるま落としの様に頭が吹き飛んで崩れ始めた。
崩れたゴーレムの頭からはやっぱり拳より少し小さい位の宝石が露出する。
俺は拾った宝石をポケットに入れると、流石にポケットがパンパンになってきた。
「ここのフロアにはゴーレムしか居ないのかな?」
「どうだろうか……ん、何か音がする」
ガシャンガシャンと金属が地面と擦れる様な音がする。
すると一つ目の赤い瞳、丸い緑色の金属質の頭、三角錐形のボディをしていて下半身には緑色の球体が浮かんでいた。
その両手にはカトラスと呼ばれる昔の海賊が持っていたような片手の剣とナタの中間の様な物を2本握っていた。
「金田君なにあれ」
「わかんないけど……ゴーレムを金属に置き換えた感じ……機械人形か? ……中園さんは落とし穴を作って欲しい。攻撃が効かなかったら誘導して生き埋めにする」
「うん!」
俺は真正面でこちらを見ている機械人形相手に走って近づくと機械人形もこちらに気がついたのか攻撃を開始した。
カトラスを振り回しながら機械人形も近づいてくる。
剣術もへったくれも無いが、刃物を振り回すというだけで普通なら尻込みしそうだが、俺の目にはスローモーションの様に機械人形の動きが見えていた。
(この身体になって動体視力もあがったか?)
剣筋は見えているし、それを避けるために体も反応する。
機械人形が右のカトラスを振り下ろしてきたのを左手で払うとグルンと機械人形の体が半周し、背中を向けた。
俺は思いっきり右足で頭を蹴ると、機械人形の金属の顔が陥没する。
そのまま機械人形は吹き飛ぶが、機械人形はまだ動いている。
蹴りでは致命傷が与えられないと判断した俺は中園さんの掘った落とし穴の方に機械人形を誘導する。
機械人形も釣られてこちらを追いかけ、俺との距離が縮まった瞬間に俺は落とし穴を飛び越えた。
機械人形はストンと穴に落ちて、俺が振り向いた時には中園さんが土を生み出して機械人形の頭だけが出るように土で体を埋めた。
俺はターンして首だけ地面から出ていた機械人形の頭を手刀で切り飛ばそうとしたが、傷を付けるだけだったので、頭を思いっきり踏み抜いた。
すると機械人形の瞳になっていた赤い宝石が潰れた拍子に飛び出し、機械人形は動きを止めた。
「勝った……勝った!」
「ふぅ、中園さんナイスアシスト」
「うん! 金田君も凄かった! 一瞬の攻防ってやつ? 武術の達人みたいな動きをしていたよ!」
「あはは……痛」
俺は足を見ると踏み抜いた時に尖った金属片が足の皮膚を少し切って血が出ていた。
「金田君血が! 今治すね!」
中園さんは直ぐに近づくと俺の右足を回復魔法で治癒してくれた。
中園さんの右手が光ると血は直ぐに止まり、傷口がみるみる塞がり、あっという間に綺麗に治った。
「うん、痛くなくなった……中園さんありがとう!」
「うん! 良かった!」
俺は機械人形の頭を持って力を入れるとズボッと埋めた体が抜けた。
するとバラバラと機械人形が金属片に変わっていき、カトラス2本を残して崩れてしまった。
「剣だけ残して崩れちゃった……」
俺は飛び出した赤い宝石を拾って
「機械人形もゴーレムと同じでこの宝石が本体だったのかもしれねぇな」
「ねぇこの剣めちゃくちゃ軽いよ!」
「本当だ。料理に使った金属プレートと同じ金属なんじゃないか? 確かミスリルってオタクが言っていたな」
「じゃあミスリルの剣ってこと?」
「うーん、剣とナタの中間だからミスリルのカトラスってかんじか? 木を切る時に重宝されそうだな」
「ナタとして使うの?」
「そっちのほうが使えるしな。中園さん、レベルは上がった?」
「えっと……おお! サポートだけで6も上がったよ」
「となると……」
俺は10レベルも上がっていた。
最初のゴーレムより強く感じたがレベルが上がる毎にレベルアップに必要な経験値が上がっていく仕組みなら最初の大きなゴーレムよりも多くの経験値が入ったことになるが……。
「とりあえず手持ちも多くなってきたから持って帰ろうか」
「そうだね」
俺と中園さんは探索をここで切り上げて皆の所に戻るのだった。




