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領土を持たない系の渡邊帝国はアメリカ合衆国で外交上承認されるのか (10)

   ホワイトハウス ワシントンD.C.

   昭和一四(一九三九)年 七月五日


「何事においても、例外のないルールはない。そうだろう?」


 フランクリン・デラノ・ルーズベルト大統領は、陽気に振る舞ってみせ、ウィンクまで飛ばした。



 予定通りに、七月五日の午前八時四五分、ホワイトハウスの主人であるルーズベルト大統領が帰ってきた。


 だが、民主党の大物上院議員二人、共和党の合衆国下院議長の三人から始まり、退役軍人事業管理運営人の准将まで、午前の五つの予定を全てキャンセルしていた。合衆国政府として、「皇帝」の問題に対応する為だ。


 バージニア州出身のクロード・オーガスタス・スワンソン海軍長官は、ここ数カ月体調を崩し、ルーズベルト大統領の許可を得て、バージニア州にあるラピダン・キャンプで療養中だった。


 そこは、ハーバート・クラーク・フーヴァー前大統領が建設し、フーヴァー以降の大統領にも使って欲しいと、連邦政府に寄付された。キャンプ・フーヴァーの別名を持ち、ホワイトハウスを捩った、木造のブラウンハウスとして有名な場所だ。


 そのせいで、スワンソン海軍長官の代わりに、海軍贔屓のルーズベルト大統領が、ずっと海軍長官の役回りも兼ねている。


 ウッドリングは、陸軍だけが、貧乏くじを引かされないことを願っていた。



 ルーズベルト大統領は、渡邊帝国との外交上の関係としては、以下の意見を採用した。


 一 渡邊帝国を「二〇二三年の世界から来た『難民』の政府」として承認する。


 一 モンテビデオ条約第一条にある四つの国家の要件は変更しない。

 

 ハル国務長官は、以上の二点を叩き台として、「皇帝」との交渉に入ることになった。正式な国家としての承認は、二〇二三年以降に改めて検討するという事実上の「先送り」案だ。



 七月一一日の第七回MLBオールスターゲーム観戦後、「皇帝」は、スイスのジュネーブにあるパレ・デ・ナシオンで、国際連盟の加盟国に対して、国家としての外交上の承認を求めに行くらしい。


 渡邊帝国に関する合衆国政府としての公式見解は、「皇帝」が合衆国を発ってから発表されることになった。


 それまでは、毎晩日替わりで、違ったイルミネーションを見せ、ニューヨーク湾の観光名所になりつつある、一六のフロートに絡めた笑い話の一つとして、事実上の報道官制を敷くことも決まった。



 

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